毒華王女伝

毒華の嘆き

「ふざけるな！お前ら貴族は農家から種籾すら奪っていくじゃないか！」
「そうだ！俺の叔父一家はそれで離散したんだぞ！」
「あら、それは王国法に反しますわね。何処の領地の話なのかしら？すぐにでも止めさせなくてはなりませんわ」
「な、なに？」
別の誰かが叫べば、王女は美しき眉ねを寄せて貴族の不正を嘆いてみせる。
「王国では決められた税率がありますもの。それに、たとえ不作であったとしても種籾には手を出してはいけませんわ。その様な場合には、領主が国に申請を行い、一時的な税の免除や、必要な援助を受けられる事が王国法できちんと定められているのですから」
「そ、そんなデタラメ……」
スルリ、パラリ、パラパラパラパラ……
どこから取り出したものか、いつの間にか分厚い書物を手にし、ページを捲る王女。
「ここですわ。徴税に関する特別措置について……読めますかしら？」
「お、俺は、その、あんまり字は……」
しどろもどろに答えれば、王女は再び嘆く。
「いけませんわ。字がちゃんと読めないと、契約書を確かめられないじゃありませんの。計算は出来るの？」
「い、いや」
「何のために神殿や祠で神官が読み書き計算を教えていると思っているの!?貴族の領都すべてに庶民学校を建てて、予算を組んでいるのに、その意味がわかりませんの!?」