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暴言2
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「それと、今回の件で色々とお調べになったようですが……
殿下はそうやって、いつも私の周りをコソコソと嗅ぎ回っているのですか?」
「……必要とあらば。
だがプライベートな事には介入してない」
それはつまり……
部屋の中に聞き耳を立てたり、隠れて盗み聞きしたりなどは、させてないという事で。
足を挫いた事を知らなかったのが、それを裏付けたいた。
となると、ヴィオラの推測通り……
ラピズとの関係ややり取りも、バレていないという事で。
ホッと胸を撫で下ろすと同時。
ーーなんて正直な人なんだろう……
素直に認めたサイフォスの誠実さに、胸を打たれていた。
しかし、今後調べられるのを防ぐため。
そして、ラピズの命を守るため。
さらには、サイフォスとフラワベルを本来の関係に戻すため。
悪妃に徹しなければと、ヴィオラは心を鬼にする。
「……だとしても、不愉快極まりないです。
はっきり言って、気持ち悪いです!」
「妃殿下!」
あまりの暴言に、ウォルター卿が口を挟むも。
すかさずサイフォスが、制止の手をかざした。
だがその表情には、ショックが滲み出ていて……
ヴィオラはぐっと涙を飲んで、胸を切り裂かれながら悪妃を続けた。
「っ、そもそもこれまでも。
私を喜ばそうと、勝手に色々なさってますが……
殿下が何をなさろうと、私は不快でしかありませんっ。
むしろ、恩着せがましくて迷惑です!
それとも、忙しいのは格好つけで。
そんなに暇を持て余してるのですかっ?」
「いい加減にしてくださいっ!」
ヴィオラのために陰ながら、倒れそうなほど尽力しているサイフォスを、目の当たりにしてきたウォルター卿は……
さすがに堪忍袋の緒が切れて、サイフォスの制止に逆らい怒鳴り込むも。
逆にサイフォスから、「黙れ!」と怒鳴られる。
「しかし殿下は妃殿下の分まで!」
「聞こえなかったのか?黙れ」
サイフォスの、背筋が凍るような重低音に遮られ。
ウォルター卿は、続く言葉を飲み込んだ。
あまり重圧に、ヴィオラまでもが息を飲み。
気まずさと申し訳なさから、捨て台詞で締めくくって立ち去ろうとした。
「と、とにかくっ。
そんなにお暇なら、舞踏会でも開いて遊んでいたらどうですかっ?」
すると、「待て」と呼び止められ。
さすがのサイフォスも、一連の暴言に怒ったのかと……
ヴィオラは覚悟を決めて向き戻った。
「何でしょう?」
「舞踏会が、好きなのか?」
「はいっ?」
思わぬ返しに、拍子抜けする。
「別に好きではありませんが……」
むしろ不器用でのろまなヴィオラは、ダンスが下手で舞踏会は苦手だった。
というのも、ダンスは出世や淑女の教養として必須だったため。
それが下手な事が、見掛け倒しだと幻滅や批判をされてきた、最大の理由だったからだ。
そんな中。
長年の付き合いで、ヴィオラのダンスを熟知しているラピズだけは。
なんとか様になるように、エスコートする事が出来たため。
いつしかヴィオラは、ラピズ以外とは躍らなくなっていた。
その事でふと、ヴィオラは最大の悪妃作戦を思い付き。
「……いい気晴らしにはなりそうですね」
と、舞踏会の開催を促した。
上手くいけば、それが離婚の決定打になるんじゃないかと思ったからだ。
「そうか。
ならばすぐに、開催の手配をしよう」
「そんな時間はありません!」
慌ててウォルター卿が止めに入る。
「なければ、作ればいいだけだ」
「ふざけないでくださいっ!
そんな事をすれば本当に倒、」
「舌を切り落とされたいのか!」
そうキレるサイフォスに、ウォルター卿は押し黙る。
ヴィオラは……
立場も顧みず、主君を怒るほど心配しているウォルター卿と。
それを蔑ろにしてまで、それどころかこれほど暴言を吐かれたというのに、妃のために尽力しようとしているサイフォスに。
申し訳なくて、やるせなくて、胸が千切れそうだった。
殿下はそうやって、いつも私の周りをコソコソと嗅ぎ回っているのですか?」
「……必要とあらば。
だがプライベートな事には介入してない」
それはつまり……
部屋の中に聞き耳を立てたり、隠れて盗み聞きしたりなどは、させてないという事で。
足を挫いた事を知らなかったのが、それを裏付けたいた。
となると、ヴィオラの推測通り……
ラピズとの関係ややり取りも、バレていないという事で。
ホッと胸を撫で下ろすと同時。
ーーなんて正直な人なんだろう……
素直に認めたサイフォスの誠実さに、胸を打たれていた。
しかし、今後調べられるのを防ぐため。
そして、ラピズの命を守るため。
さらには、サイフォスとフラワベルを本来の関係に戻すため。
悪妃に徹しなければと、ヴィオラは心を鬼にする。
「……だとしても、不愉快極まりないです。
はっきり言って、気持ち悪いです!」
「妃殿下!」
あまりの暴言に、ウォルター卿が口を挟むも。
すかさずサイフォスが、制止の手をかざした。
だがその表情には、ショックが滲み出ていて……
ヴィオラはぐっと涙を飲んで、胸を切り裂かれながら悪妃を続けた。
「っ、そもそもこれまでも。
私を喜ばそうと、勝手に色々なさってますが……
殿下が何をなさろうと、私は不快でしかありませんっ。
むしろ、恩着せがましくて迷惑です!
それとも、忙しいのは格好つけで。
そんなに暇を持て余してるのですかっ?」
「いい加減にしてくださいっ!」
ヴィオラのために陰ながら、倒れそうなほど尽力しているサイフォスを、目の当たりにしてきたウォルター卿は……
さすがに堪忍袋の緒が切れて、サイフォスの制止に逆らい怒鳴り込むも。
逆にサイフォスから、「黙れ!」と怒鳴られる。
「しかし殿下は妃殿下の分まで!」
「聞こえなかったのか?黙れ」
サイフォスの、背筋が凍るような重低音に遮られ。
ウォルター卿は、続く言葉を飲み込んだ。
あまり重圧に、ヴィオラまでもが息を飲み。
気まずさと申し訳なさから、捨て台詞で締めくくって立ち去ろうとした。
「と、とにかくっ。
そんなにお暇なら、舞踏会でも開いて遊んでいたらどうですかっ?」
すると、「待て」と呼び止められ。
さすがのサイフォスも、一連の暴言に怒ったのかと……
ヴィオラは覚悟を決めて向き戻った。
「何でしょう?」
「舞踏会が、好きなのか?」
「はいっ?」
思わぬ返しに、拍子抜けする。
「別に好きではありませんが……」
むしろ不器用でのろまなヴィオラは、ダンスが下手で舞踏会は苦手だった。
というのも、ダンスは出世や淑女の教養として必須だったため。
それが下手な事が、見掛け倒しだと幻滅や批判をされてきた、最大の理由だったからだ。
そんな中。
長年の付き合いで、ヴィオラのダンスを熟知しているラピズだけは。
なんとか様になるように、エスコートする事が出来たため。
いつしかヴィオラは、ラピズ以外とは躍らなくなっていた。
その事でふと、ヴィオラは最大の悪妃作戦を思い付き。
「……いい気晴らしにはなりそうですね」
と、舞踏会の開催を促した。
上手くいけば、それが離婚の決定打になるんじゃないかと思ったからだ。
「そうか。
ならばすぐに、開催の手配をしよう」
「そんな時間はありません!」
慌ててウォルター卿が止めに入る。
「なければ、作ればいいだけだ」
「ふざけないでくださいっ!
そんな事をすれば本当に倒、」
「舌を切り落とされたいのか!」
そうキレるサイフォスに、ウォルター卿は押し黙る。
ヴィオラは……
立場も顧みず、主君を怒るほど心配しているウォルター卿と。
それを蔑ろにしてまで、それどころかこれほど暴言を吐かれたというのに、妃のために尽力しようとしているサイフォスに。
申し訳なくて、やるせなくて、胸が千切れそうだった。
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