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エピソード3 エルフの館の女主人とのセックスバトル
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「セックスバトル、申し込んじゃっていいかしら?」
開口一番、エルフの館の女主人——エルフの館というイケメンかつ精力旺盛なエルフ男子を集めた店の女主人なのでこう呼ばれている——はそう言った。
「ほう……セックスバトルときたか」
黒魔女の館——自らの根城にて受付業務を行っていた黒魔女は、面白そうに黒い瞳を輝かせた。
「ええ、セックスバトルよ。負けるのが怖いなら、受けてくれなくともいいわ」
女主人は挑発的に長い髪をかき上げた。
金の髪、金の瞳、白い肌、尖った耳。美しい顔立ち。どこからどう見てもファンタジーでよく見る系統の正統派エルフである。
肉付きはよく、胸も尻もデカい。線は細くない。デカい胸と尻に比例して、程よくむっちりとしている。腰を掴めば腰肉——セックス業界ではラブハンドルと呼ばれるそこが、しっかりと掴めそうなドスケベセックスに向いている肉体である。
服は、薄布を一枚纏ったのみ。
尖った乳首のピンク色が布越しにも見える——否、それは明らかにはっきりと「ここが乳首です」と自己主張をしている。何故なら乳首の先からびゅっと噴き出たであろう母乳で布が湿り、乳首に覆い被さるように張り付いているからである。
濡れたおまんこ。滴る愛液でぬらりと光る太もも。
言葉通りの意味でのセックスアピール——これからセックスをしますよ。という雰囲気を強く漂わせている。
「ふむ……その様子じゃと、セックスバトルをする準備は万端と見えるのう……一応聞いておくが、お前さんどこまで潜った?」
「六階層よ」
女主人は淡々と答えた。
「む……」
黒魔女は驚きに目を細めた。
偶然この場に居合わせ、面白そうなのでなんとなく近くでことの成り行きを見守っていた女騎士は「六階層……だと!?」と驚きを露わにした。
驚いた理由は二つ。
一つ目は、単純に六階層まで降りたということ。そこまで降りるということはそれだけの数の淫紋をその身に受ける覚悟をしていなければならない。このドスケベなる女騎士でさえ、六階層にはまだ行ったことがない。もし行くとすれば入念な準備が——宿の予約やセックスを行う男を前もって複数人用意しておくなど、様々な仕込みが必要になるからである。
二つ目は、六階層から出てきた女主人が平然としていることである。先日のお嬢様などは出てきただけで絶頂していた。一般的な女ならあれが普通の反応である。自身の容量を超えた快楽を受け止めきれず、イくしかない。イキまくるしかない。本能のままに男を求めるしかない。だというのに、目の前の女主人はどうだ。
非常に平然としている。
六階層から出てきたことで様々な部位に様々な効果を持つ淫紋を刻まれているというのに、その快感に支配されている様子が一切見られない。
(かなりの強者だな……エルフは若さと長命を誇る……その長い寿命と若い肉体を活かして淫紋ダンジョンに幾度となく潜り淫紋セックスに勤しんだのであろう……私などとは年季が違う……淫らな性生活に身を浸している時間が違いすぎる……)
タイムスケールの異なる者を前にして、女騎士は畏怖の念を抱いた。
(長年使い込まれたオナニー用の棒を見た時の感覚……ではないな。うん。違う。全然違う。上手い例えをしようと思ったが無理だ……上手い例えが出てこない……何にせよ、凄まじいセックスを行う者であることは疑いようがない……だがしかし、おっさんであればあるいは……)
いけるのではないか。
イカせられるのではないか。
そう考えていたところで、丁度おっさんが部屋から出てきた。
「休憩終わりました。次のお客さんはどなたでしょうか?」
「あたしよ……と言いたいところだけど」
女主人がちらりと黒魔女に視線を送った。
それを受けて、黒魔女がおっさんに尋ねた。
「おっさんよ……お前さん、こやつとセックスバトルする気はあるかね?」
「セックスバトル……? それはどのようなセックスですか?」
わからないことは素直に聞く。流石はおっさん。社会人の鑑である。
この店も黒魔女の館という名前だがブラック企業ではないので、即座に答えが返された。
「なに、単純なもんさ。セックスして、参ったと言った方が負けの勝負さね」
「参ったと言った方が負け、ということは、言わなければ負けないのですか?」
「そりゃあまあそうだけども、本当にもう死ぬ直前まで搾り取られたりイカされたりするバトルだからね、これは」
「真剣セックス勝負というわけですね」
「まあ、そうだね」
「その勝負を、そこの方とやればいいのですか?」
「そうよ。ちなみにこの勝負にはもう一つルールがあるの」
そこの方と呼ばれた女主人が、続きを語った。
「負けた方は、勝った方の言うことを何でも絶対に聞かなければならない。っていうルールがね」
「何でも、ですか?」
「何でも、よ」
「絶対に、ですか?」
「絶対に、よ」
「それはまた大事ですね」
おっさんは黒魔女に視線を送った。どうすればいいですか? と指示を仰いでいるようだったが、黒魔女は笑うだけだった。好きにしな、という意味であるとおっさんは受け取った。
なのでおっさんは腕組みして、ほんの少し考えてから口を開いた。
「ではひとつ聞きますが、あなたが勝ったら私をどうするつもりなのですか?」
「あたしのところで働いて欲しいの。うちはエルフの男の子だけの店なのだけれど、あなたは特別に雇ってあげる。お給料もここより多く出してあげるわ。もちろん、住むところも食べるものも用意してあげる。必要とあれば、仕事以外で女も用意してあげる」
「なるほど。つまり私を引き抜きたいというわけですか」
「そうよ。あなたが欲しいの」
「そうですか。熱烈なアプローチは嬉しいのですが……自分は今の生活で満足していますので。移籍などは特に考えておりません」
「そう言うと思ったわ。だから、あなたにセックスバトルを申し込んでいるのよ」
「なるほど」
「ちなみにだけど、このバトルは受けなくともいいのよ。ただ、受けなかった場合、あなたはあたしとのセックスバトルから逃げた男って言われることになるでしょうけどね」
上手いやり口であった。
おっさんのヘッドハンティングを狙うだけでなく、断られた場合もおっさんの評判を下げることの出来る隙を生じさせぬ二段構え。
同じ街に生きる者として、おっさんの実力は知っているだろうに、それでもおっさんの退路を絶つとは……それだけセックスバトルに自信があると見える——否、見えるではなく、あるのだ。
おっさんは思った。
たぶんこの人は、これまでずっとこういうやり口でお店を大きくしてきたのだろうなぁ、と。
ライバル店のエースを倒して自らの店に引き込む。
店の強化とライバル店の弱体化が図れる一石二鳥のバトルである。
そうすると、たぶん……いや間違いなくセックスが上手いのだろう。
……しかし、これは悲しい生き方だなぁ。とおっさんは思った。
セックスで無理矢理、というやり方では、そこには愛がないではないか。
セックスとは愛を育むものである。
愛があるから、セックスはその気持ちよさを増すのである。
おっさんは一夜の相手であっても全力でセックスし、全力で愛した。それにより、一夜の相手が一夜で終わらなかったことが多々あった。
エロ漫画などでよく「おちんぽが子宮にキスしてるぅっ!」などというセリフが叫ばれるが、愛しているからこそ、キスという表現が子宮から響いてくるのである。
愛は必要なのだ。
これまで誰もこの人にそれを教えることが出来なかった——であれば、自分がそれをこの人に教えてあげなければならないのではないか——否、教えなければならない。
おっさんの心は決まった。
「受けましょう。セックスバトル」
「決まりね。それじゃあ一室借りるわよ、黒魔女さん」
「はいよ。勝ち負けがどうなるにせよ、料金はきっちり頂くからね」
女主人と黒魔女が不敵に笑い合い、そして、セックスバトルの開戦の狼煙が上がったのだった。
開口一番、エルフの館の女主人——エルフの館というイケメンかつ精力旺盛なエルフ男子を集めた店の女主人なのでこう呼ばれている——はそう言った。
「ほう……セックスバトルときたか」
黒魔女の館——自らの根城にて受付業務を行っていた黒魔女は、面白そうに黒い瞳を輝かせた。
「ええ、セックスバトルよ。負けるのが怖いなら、受けてくれなくともいいわ」
女主人は挑発的に長い髪をかき上げた。
金の髪、金の瞳、白い肌、尖った耳。美しい顔立ち。どこからどう見てもファンタジーでよく見る系統の正統派エルフである。
肉付きはよく、胸も尻もデカい。線は細くない。デカい胸と尻に比例して、程よくむっちりとしている。腰を掴めば腰肉——セックス業界ではラブハンドルと呼ばれるそこが、しっかりと掴めそうなドスケベセックスに向いている肉体である。
服は、薄布を一枚纏ったのみ。
尖った乳首のピンク色が布越しにも見える——否、それは明らかにはっきりと「ここが乳首です」と自己主張をしている。何故なら乳首の先からびゅっと噴き出たであろう母乳で布が湿り、乳首に覆い被さるように張り付いているからである。
濡れたおまんこ。滴る愛液でぬらりと光る太もも。
言葉通りの意味でのセックスアピール——これからセックスをしますよ。という雰囲気を強く漂わせている。
「ふむ……その様子じゃと、セックスバトルをする準備は万端と見えるのう……一応聞いておくが、お前さんどこまで潜った?」
「六階層よ」
女主人は淡々と答えた。
「む……」
黒魔女は驚きに目を細めた。
偶然この場に居合わせ、面白そうなのでなんとなく近くでことの成り行きを見守っていた女騎士は「六階層……だと!?」と驚きを露わにした。
驚いた理由は二つ。
一つ目は、単純に六階層まで降りたということ。そこまで降りるということはそれだけの数の淫紋をその身に受ける覚悟をしていなければならない。このドスケベなる女騎士でさえ、六階層にはまだ行ったことがない。もし行くとすれば入念な準備が——宿の予約やセックスを行う男を前もって複数人用意しておくなど、様々な仕込みが必要になるからである。
二つ目は、六階層から出てきた女主人が平然としていることである。先日のお嬢様などは出てきただけで絶頂していた。一般的な女ならあれが普通の反応である。自身の容量を超えた快楽を受け止めきれず、イくしかない。イキまくるしかない。本能のままに男を求めるしかない。だというのに、目の前の女主人はどうだ。
非常に平然としている。
六階層から出てきたことで様々な部位に様々な効果を持つ淫紋を刻まれているというのに、その快感に支配されている様子が一切見られない。
(かなりの強者だな……エルフは若さと長命を誇る……その長い寿命と若い肉体を活かして淫紋ダンジョンに幾度となく潜り淫紋セックスに勤しんだのであろう……私などとは年季が違う……淫らな性生活に身を浸している時間が違いすぎる……)
タイムスケールの異なる者を前にして、女騎士は畏怖の念を抱いた。
(長年使い込まれたオナニー用の棒を見た時の感覚……ではないな。うん。違う。全然違う。上手い例えをしようと思ったが無理だ……上手い例えが出てこない……何にせよ、凄まじいセックスを行う者であることは疑いようがない……だがしかし、おっさんであればあるいは……)
いけるのではないか。
イカせられるのではないか。
そう考えていたところで、丁度おっさんが部屋から出てきた。
「休憩終わりました。次のお客さんはどなたでしょうか?」
「あたしよ……と言いたいところだけど」
女主人がちらりと黒魔女に視線を送った。
それを受けて、黒魔女がおっさんに尋ねた。
「おっさんよ……お前さん、こやつとセックスバトルする気はあるかね?」
「セックスバトル……? それはどのようなセックスですか?」
わからないことは素直に聞く。流石はおっさん。社会人の鑑である。
この店も黒魔女の館という名前だがブラック企業ではないので、即座に答えが返された。
「なに、単純なもんさ。セックスして、参ったと言った方が負けの勝負さね」
「参ったと言った方が負け、ということは、言わなければ負けないのですか?」
「そりゃあまあそうだけども、本当にもう死ぬ直前まで搾り取られたりイカされたりするバトルだからね、これは」
「真剣セックス勝負というわけですね」
「まあ、そうだね」
「その勝負を、そこの方とやればいいのですか?」
「そうよ。ちなみにこの勝負にはもう一つルールがあるの」
そこの方と呼ばれた女主人が、続きを語った。
「負けた方は、勝った方の言うことを何でも絶対に聞かなければならない。っていうルールがね」
「何でも、ですか?」
「何でも、よ」
「絶対に、ですか?」
「絶対に、よ」
「それはまた大事ですね」
おっさんは黒魔女に視線を送った。どうすればいいですか? と指示を仰いでいるようだったが、黒魔女は笑うだけだった。好きにしな、という意味であるとおっさんは受け取った。
なのでおっさんは腕組みして、ほんの少し考えてから口を開いた。
「ではひとつ聞きますが、あなたが勝ったら私をどうするつもりなのですか?」
「あたしのところで働いて欲しいの。うちはエルフの男の子だけの店なのだけれど、あなたは特別に雇ってあげる。お給料もここより多く出してあげるわ。もちろん、住むところも食べるものも用意してあげる。必要とあれば、仕事以外で女も用意してあげる」
「なるほど。つまり私を引き抜きたいというわけですか」
「そうよ。あなたが欲しいの」
「そうですか。熱烈なアプローチは嬉しいのですが……自分は今の生活で満足していますので。移籍などは特に考えておりません」
「そう言うと思ったわ。だから、あなたにセックスバトルを申し込んでいるのよ」
「なるほど」
「ちなみにだけど、このバトルは受けなくともいいのよ。ただ、受けなかった場合、あなたはあたしとのセックスバトルから逃げた男って言われることになるでしょうけどね」
上手いやり口であった。
おっさんのヘッドハンティングを狙うだけでなく、断られた場合もおっさんの評判を下げることの出来る隙を生じさせぬ二段構え。
同じ街に生きる者として、おっさんの実力は知っているだろうに、それでもおっさんの退路を絶つとは……それだけセックスバトルに自信があると見える——否、見えるではなく、あるのだ。
おっさんは思った。
たぶんこの人は、これまでずっとこういうやり口でお店を大きくしてきたのだろうなぁ、と。
ライバル店のエースを倒して自らの店に引き込む。
店の強化とライバル店の弱体化が図れる一石二鳥のバトルである。
そうすると、たぶん……いや間違いなくセックスが上手いのだろう。
……しかし、これは悲しい生き方だなぁ。とおっさんは思った。
セックスで無理矢理、というやり方では、そこには愛がないではないか。
セックスとは愛を育むものである。
愛があるから、セックスはその気持ちよさを増すのである。
おっさんは一夜の相手であっても全力でセックスし、全力で愛した。それにより、一夜の相手が一夜で終わらなかったことが多々あった。
エロ漫画などでよく「おちんぽが子宮にキスしてるぅっ!」などというセリフが叫ばれるが、愛しているからこそ、キスという表現が子宮から響いてくるのである。
愛は必要なのだ。
これまで誰もこの人にそれを教えることが出来なかった——であれば、自分がそれをこの人に教えてあげなければならないのではないか——否、教えなければならない。
おっさんの心は決まった。
「受けましょう。セックスバトル」
「決まりね。それじゃあ一室借りるわよ、黒魔女さん」
「はいよ。勝ち負けがどうなるにせよ、料金はきっちり頂くからね」
女主人と黒魔女が不敵に笑い合い、そして、セックスバトルの開戦の狼煙が上がったのだった。
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