黒羽の約束

猫目オテテ

文字の大きさ
12 / 47

第12章 秘密の温度

しおりを挟む
昼休み・校舎裏

 冬の日差しがわずかに暖かさを持つ昼下がり、律はノアと一緒に校舎裏のベンチに座っていた。

「なんでまたここなんだよ。寒いだろ」

「教室、うるさいし……君と静かなところで話したかったんだ」

 ノアはぽつりと呟き、視線を遠くに投げた。

「君、変わってるなって言われない?」

「しょっちゅう」

「僕も。……変わってる者同士、気が合うかもね」

 そう言って微笑むノアの目に、どこか寂しさが滲んでいた。

 律は何も言えずに、ただ缶コーヒーを差し出した。
 手が触れた、その一瞬。
 冬の空気に紛れた温もりが、ふたりの距離を少しだけ縮めた気がした。



夜・宗一の家・リビング

 律はアルマの隣でソファに寝転がりながら、またぶつぶつと話していた。

「ノアさ、時々ふっと遠く見てんだよ。誰か思い出してんのかなって……聞けなかったけど」

 アルマは静かに手元の書類を片づけ、顔を上げた。

「その男、君のことどう思ってると思う?」

「さあな。でも……俺は、なんかドキドキする。目が合うと、時間止まるみたいでさ。声聞くと落ち着く。あいつのこと、知りたくて仕方ねえ」

 言いながら、律は自分の胸に手を当てた。

「これって、やっぱ……恋なのかな」

 その言葉に、アルマはわずかに目を細めた。
 律が語る“ノア”の姿と、記憶の中の三男の面影が重なっていく。

 ――白銀の髪。
 ――感情の奥を見せない笑顔。
 ――人間界へと姿を消した、聡く、逃げ足の早い男。

 ほぼ間違いない、とアルマは確信しかけていた。



深夜・ノアの部屋

 ノアはベッドに横たわり、律のことを思い出していた。

 ――真っ直ぐで、臆さない目。
 ――隠すことができない想いが、表情に滲んでいた。

 危うい、と思いながらも惹かれてしまう。
 人間とこんな風に心を通わせるなど、あり得ないことだったはずなのに。

「……律」

 ノアは小さく呟き、目を閉じた。

 次に会った時、彼の目が自分の正体を見抜いてしまったら――
 それでも、笑っていてくれるのだろうか。



翌朝・宗一の家・キッチン

 アルマは朝食の準備をしながら、宗一に問いかける。

「……律の通う学校に“ノア”という名の生徒はいないか」

「ん? ああ、最近来た転校生か。あいつ、律と結構つるんでるらしいな」

「……そうか」

 静かに返したアルマの手が、わずかに震えていた。

 律が知らずに惹かれている相手が、自分の兄弟。
 しかも、魔界で命を狙われる対象のひとり。

 アルマは口の中に広がる苦味を、飲み込むしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

処理中です...