18 / 47
第18章 夜が裂ける音
しおりを挟む
放課後・公園のベンチ
柔らかな夕焼けが街を包むころ、律とノアは静かな公園の片隅にいた。
人気のないそのベンチで、律は黙ったまま俯いている。
「……律」
ノアが静かに口を開いた。
「君といると、俺は……普通の人間みたいになれる気がするんだ。
笑ったり、困ったり、戸惑ったり。そんな感情、ずっとなかったのに……」
その言葉に、律は顔を上げた。
ノアの瞳はいつもよりも少しだけ、揺れていた。
「律、俺は──君が好きだ」
律の心臓が跳ねた。
思考が追いつかないまま、鼓動だけが暴れ出す。
「……うそ、だろ……?」
「これは“うそ”じゃない。俺にとって、初めての──“本物”だ」
律は言葉を失いながらも、ノアの目を見つめ返していた。
その奥に、冷たさではない、痛いほどの真剣な感情が宿っているのを確かに感じた。
⸻
同時刻・宗一の家、アルマの部屋
窓辺に佇んでいたアルマの元に、一本の黒い羽が舞い落ちる。
その羽は宙で形を変え、赤黒い印章に姿を変える。
(……魔界からの通達)
無言でそれを手に取ったアルマの表情が、次第に凍りついていく。
今宵、ノアを始末せよ。
応じぬ場合、次に消されるのは貴様だ。
姉──長女からの命令だ。
容赦のない一文に、アルマの血が音を立てて凍る。
「……こんな形で……」
選択の余地などなかった。
だが心は叫んでいた。
ノアを殺せば、律はどうなる? 宗一はどう思う? ──自分は、何のためにここにいる?
重く、冷たい夜が迫ってくる。
心臓の奥から、感情がちりちりと焼けるように疼いた。
⸻
夜・宗一の部屋
アルマは無言で宗一の寝室の扉を開いた。
宗一は本を閉じて、顔を上げる。
「……眠れないのか?」
「……うん」
ベッドの縁に腰を下ろすアルマ。
宗一は彼の沈んだ顔を見つめ、そっと問いかける。
「なにか、あったのか?」
アルマは答えない。ただ、そっと宗一の方に身体を向ける。
「お前に……ひとつだけ、伝えたいことがある」
「ん?」
その瞬間だった。
アルマは、震える指先で宗一の頬に触れ──そのまま唇を重ねた。
甘く、短く、けれど確かに熱を孕んだ初めてのキス。
宗一は驚きながらも、その温度に黙って目を閉じた。
唇が離れ、アルマは静かに言った。
「……ありがとう。俺は、お前に出会えてよかった」
「おい、待て──」
宗一が手を伸ばそうとしたその瞬間、アルマは姿を消していた。
ただ一枚、黒い羽が床に落ちていた。
柔らかな夕焼けが街を包むころ、律とノアは静かな公園の片隅にいた。
人気のないそのベンチで、律は黙ったまま俯いている。
「……律」
ノアが静かに口を開いた。
「君といると、俺は……普通の人間みたいになれる気がするんだ。
笑ったり、困ったり、戸惑ったり。そんな感情、ずっとなかったのに……」
その言葉に、律は顔を上げた。
ノアの瞳はいつもよりも少しだけ、揺れていた。
「律、俺は──君が好きだ」
律の心臓が跳ねた。
思考が追いつかないまま、鼓動だけが暴れ出す。
「……うそ、だろ……?」
「これは“うそ”じゃない。俺にとって、初めての──“本物”だ」
律は言葉を失いながらも、ノアの目を見つめ返していた。
その奥に、冷たさではない、痛いほどの真剣な感情が宿っているのを確かに感じた。
⸻
同時刻・宗一の家、アルマの部屋
窓辺に佇んでいたアルマの元に、一本の黒い羽が舞い落ちる。
その羽は宙で形を変え、赤黒い印章に姿を変える。
(……魔界からの通達)
無言でそれを手に取ったアルマの表情が、次第に凍りついていく。
今宵、ノアを始末せよ。
応じぬ場合、次に消されるのは貴様だ。
姉──長女からの命令だ。
容赦のない一文に、アルマの血が音を立てて凍る。
「……こんな形で……」
選択の余地などなかった。
だが心は叫んでいた。
ノアを殺せば、律はどうなる? 宗一はどう思う? ──自分は、何のためにここにいる?
重く、冷たい夜が迫ってくる。
心臓の奥から、感情がちりちりと焼けるように疼いた。
⸻
夜・宗一の部屋
アルマは無言で宗一の寝室の扉を開いた。
宗一は本を閉じて、顔を上げる。
「……眠れないのか?」
「……うん」
ベッドの縁に腰を下ろすアルマ。
宗一は彼の沈んだ顔を見つめ、そっと問いかける。
「なにか、あったのか?」
アルマは答えない。ただ、そっと宗一の方に身体を向ける。
「お前に……ひとつだけ、伝えたいことがある」
「ん?」
その瞬間だった。
アルマは、震える指先で宗一の頬に触れ──そのまま唇を重ねた。
甘く、短く、けれど確かに熱を孕んだ初めてのキス。
宗一は驚きながらも、その温度に黙って目を閉じた。
唇が離れ、アルマは静かに言った。
「……ありがとう。俺は、お前に出会えてよかった」
「おい、待て──」
宗一が手を伸ばそうとしたその瞬間、アルマは姿を消していた。
ただ一枚、黒い羽が床に落ちていた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる