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★1 順風満帆の終わり
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私がオフィスを移動すると多くの社員は自ずと姿勢を正す。
私への悪印象からだとしても良い事だと思ってる。
弛んでサボっていたり、午後の気怠さで緩んだ気持ちが引き締まっているという事なのだから。
世間で言えばバリキャリになるのだろう。
アラサーの頃は御局とも言われていたがアラフォーになったからか、出世したからか、いつしか歳のことは言われなくなった。
私は私を悪く言う人達を蹴落とそうと人より仕事を頑張った自負がある。
幸い体力にも恵まれ、難しい案件を片付ける力量も機転もあった。
プライベートではずっと恋人がいなかったわけでは無いが、学生時代に最低な男と付き合って痛い目を見たせいかドライな交際…とでもいうのだろうか?そうなりがちだった。
結果、結婚の話が出るほど深い付き合いになることもなく大体相手の浮気で終わりを迎える。
その度に私なりに凹んだりもしたが、その気持ちをバネに資格を取ったり語学を学んだり自分を磨けたから結果的にはどれも良い思い出だ。
気が強くて怖い、冷たい感じで近寄りがたい、自分にも厳しいけど人にも厳しい上司、敵に回したくない女…陰で色々言われているのも知っている。
ただ、憧れが紐付いた畏怖なので私には都合が良かった。
怖がられているから舐めてくる部下もいない、プライベート時間にかかわろうとされない、公私ともに詮索されない。
でも憧れを持ってもくれてるから害意に晒されることも無いし、敵に回られることもない。
お陰で仕事が回しやすく結果がついてくる。
まさに上司として理想的な環境じゃなかろうか。
きっと会社の人たちは、まさかオフの日は家でウェブ小説を読んでニヤニヤとだらしない顔をしているなんて誰も思わないだろう。
いつからか胸キュンな溺愛系の小説やザマァ系の小説が無い生活が考えられないくらいにハマってしまっていた。
プロが書いた市販の書籍でなく、素人やセミプロが投稿する小説サイトの異世界転生の話や悪役令嬢の話を読み漁る休日。
うん、至福。
これは絶対書籍化するよね!ってくらい面白いもの、展開が残念になっていって飽きるもの、作者のメンタルが心配になるような作風になっていくもの…プロじゃ有り得ない自由な展開!発想!表現!そして何より無尽蔵に更新されていく終わりなき世界。
読んでも読んでも作品が尽きることのないそのサイトを眺めていれば一日が終わってしまうのだから仕方ない。
昔は両親に結婚しろとうるさく言われたりしたものだ。
だけど父は両親が年の差婚だったのもあり数年前に既に他界しているし母は少し早く呆けちゃって施設のお世話になっている。
兄もいるが父の死後、海外赴任をきっかけに兄一家揃って移住すると聞いたのを最後に連絡すら取ってない。
まぁ元気にやってるんだろう、多分。
昨日、ふとサイトを眺めつつ晩酌してる時に「私って孤独死したら腐敗臭するまで誰にも気付いて貰えないかも」なんて思ったのがフラグだったのだろうか。
ずっと健康だったのに高熱を出し、会社を休んで何とか病院に行こうとタクシーを呼んだ。
そして来るのをマンションのロビーで待とうとエレベーターのボタンを押して……。
「こんな所で倒れたら迷惑を掛けてしまう」
体中の力が抜け、暗くなっていく視界の中、妙に冷静にそう思った。
私への悪印象からだとしても良い事だと思ってる。
弛んでサボっていたり、午後の気怠さで緩んだ気持ちが引き締まっているという事なのだから。
世間で言えばバリキャリになるのだろう。
アラサーの頃は御局とも言われていたがアラフォーになったからか、出世したからか、いつしか歳のことは言われなくなった。
私は私を悪く言う人達を蹴落とそうと人より仕事を頑張った自負がある。
幸い体力にも恵まれ、難しい案件を片付ける力量も機転もあった。
プライベートではずっと恋人がいなかったわけでは無いが、学生時代に最低な男と付き合って痛い目を見たせいかドライな交際…とでもいうのだろうか?そうなりがちだった。
結果、結婚の話が出るほど深い付き合いになることもなく大体相手の浮気で終わりを迎える。
その度に私なりに凹んだりもしたが、その気持ちをバネに資格を取ったり語学を学んだり自分を磨けたから結果的にはどれも良い思い出だ。
気が強くて怖い、冷たい感じで近寄りがたい、自分にも厳しいけど人にも厳しい上司、敵に回したくない女…陰で色々言われているのも知っている。
ただ、憧れが紐付いた畏怖なので私には都合が良かった。
怖がられているから舐めてくる部下もいない、プライベート時間にかかわろうとされない、公私ともに詮索されない。
でも憧れを持ってもくれてるから害意に晒されることも無いし、敵に回られることもない。
お陰で仕事が回しやすく結果がついてくる。
まさに上司として理想的な環境じゃなかろうか。
きっと会社の人たちは、まさかオフの日は家でウェブ小説を読んでニヤニヤとだらしない顔をしているなんて誰も思わないだろう。
いつからか胸キュンな溺愛系の小説やザマァ系の小説が無い生活が考えられないくらいにハマってしまっていた。
プロが書いた市販の書籍でなく、素人やセミプロが投稿する小説サイトの異世界転生の話や悪役令嬢の話を読み漁る休日。
うん、至福。
これは絶対書籍化するよね!ってくらい面白いもの、展開が残念になっていって飽きるもの、作者のメンタルが心配になるような作風になっていくもの…プロじゃ有り得ない自由な展開!発想!表現!そして何より無尽蔵に更新されていく終わりなき世界。
読んでも読んでも作品が尽きることのないそのサイトを眺めていれば一日が終わってしまうのだから仕方ない。
昔は両親に結婚しろとうるさく言われたりしたものだ。
だけど父は両親が年の差婚だったのもあり数年前に既に他界しているし母は少し早く呆けちゃって施設のお世話になっている。
兄もいるが父の死後、海外赴任をきっかけに兄一家揃って移住すると聞いたのを最後に連絡すら取ってない。
まぁ元気にやってるんだろう、多分。
昨日、ふとサイトを眺めつつ晩酌してる時に「私って孤独死したら腐敗臭するまで誰にも気付いて貰えないかも」なんて思ったのがフラグだったのだろうか。
ずっと健康だったのに高熱を出し、会社を休んで何とか病院に行こうとタクシーを呼んだ。
そして来るのをマンションのロビーで待とうとエレベーターのボタンを押して……。
「こんな所で倒れたら迷惑を掛けてしまう」
体中の力が抜け、暗くなっていく視界の中、妙に冷静にそう思った。
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