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第1章・廃棄ダンジョン編

第18話・冥府の一撃

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 ルインの力が大幅に上昇します。レベル《26→126》になりました。レベル1のゴブリンと比べた場合は約25倍の強さになります。拳や蹴りの一撃で簡単に全身の骨を粉々に粉砕する事が出来ます。

(くたばれ!)

 ブン! ゴォバァーン‼︎

 ルインの右拳が扉を閉めていたゴブリンの頭部を簡単に粉々にしました。視界に入ったゴブリン達を次々に殺していきます。殴る、蹴る、掴んで折る、斬って、斬って、殴って殺します。羽虫を叩き潰すように簡単にゴブリン達が死んでいきました。でも、羽虫は羽虫でも鋭い針を持つ危険な羽虫です。油断すると痛いでは済みません。

「邪魔!散らバレ!動ケナイ!」

 城内のホールはゴブリン達でギューギューの寿司詰め状態です。身動きが取れないゴブリン達が一方的に蹂躙され続けます。何とか抵抗しようと一部のゴブリンは骨槍を突き出しますが、余りの遅さに、武器を奪われて、逆に刺し殺されてしまいます。

(この広さなら十分に戦える。攻撃が見えたら最小限の回避で、すぐに反撃出来る。残り時間は3分強!少しヤバイな…)

 殴る蹴るの直接攻撃だけでは倒せる数には限界があります。奪った骨槍をゴブリンの集団に思い切り投げつけても、貫通するのは2、3匹だけです。これならば殴って殺した方が早いです。

「さあ、どうする?ルイン・バンクス。1回で足りないのなら、2回使えばいい。2回で足りないのなら、3回使えばいい……」

(……自分にとって大切な人間は片手で数える程度しか存在しない。100人でも、200人でも好きなだけ命を使えばいい。それで守れるならば……私ならそうする)

 凄惨な殺戮パーティーが始まったホールから、外に出ようとゴブリン達が古城の大扉を頑張って開けようとしますが、ビクッともしません。外側から誰かが動かないように押さえているようです。その前にいつ扉が閉まったのか誰も気が付かなかったようです。

「何デ!何デ開かナイ!何デ‼︎」

 扉を押すゴブリンの数は50匹以上です。全員のレベルを足せば、単純計算でも500以上です。そんな事が出来る人間がいるはずがありません。

「ハァハァ!ハァハァ?外に誰かいるのか?」

 大量のゴブリンの赤文字が邪魔して、木扉の外側に誰かがいても分かりません。その前に見えるかは不明ですが。

 レベル126でも全力で動き続ければ、1分もすれば呼吸は苦しくなります。10分の1程度の力で手加減して戦えば、5分ぐらいは戦い続けられますが、それは…。

(…命が勿体ない!休むな!動き続けろ!1秒も無駄にする事は許されない。許されないんだ!)

 ルインは圧倒的なパワーとスピードで戦い続けます。もう限界です。街に戻ったらまた服を買う必要があります。ゴブリンの血と肉が服にベタベタに張り付いています。自分の汗とゴブリンの血が混ざって、気分はもう最低最悪です。

「ハァハァ!ハァハァ!ハァハァ!レベル26!時間切れか」

「クッソ‼︎俺かよ!ルイン!皆殺しにしてくれ!俺の命を無駄にするなよ!」

(ハァハァ、ハァハァ、あの人は漁師のガルボ何とかさん……いや、今は集中しないと、まだ、50~60匹は残っている。ゴブリングールが来ないのは助かるけど、ホールが血と臓物の海だ。掃除が大変そうだな)

 さすがに呼吸は乱れています。けれども、そんな事を気にしている暇はありません。古城に現れたガルボ何とかさんの命はすぐに消えてしまいます。彼の為にも戦いを中途半端に止める訳にはいきません。ルインは今日2回目の代償魔法を使用しました。

 代償魔法《アンミリテッド・キル》発動‼︎

 残り252人……。

 最初の《アンミリテッド・キル》で100匹近くのゴブリンを殺しました。でも、ルインの呼吸はかなり苦しそうです。それもそのはずです。この古城は有害な空気に汚染されています。短時間でも身体に深刻な害を与えます。でも、それはゴブリン達も同じです。

「苦シイ。助ケテ。苦シイ…」

 少しずつホールの床に膝をついて倒れていくゴブリンが増え始めていきます。

「ああ、そういう事か。俺が毒にやられるのを待っていたのか?」

 ペタペタ! ペタペタ!

(レベル48、52。昨日だったら強敵だっただろうが……残念ながら、もう格下だ。さっさと退場してもらう)

「やっぱり、来タ。また殺ス」

 剣と盾を持った2匹のゴブリングールが3階へと続く階段から下りて来ました。ゴブリングールの中でも精鋭に分類される2匹なのでしょうが、疲弊した状態のルインにも、おそらく勝てないでしょう。

「普通はゴブリン達を先に倒すんだろうな。けど、1分だけ全力で相手をしてやる。かかって来い!」

「殺ス。殺シテ、増ヤス」

 剣と盾を正面に突き出して、ゴブリングール2匹はルインに向かっていきます。悲しい事にこのモンスター達にはレベルが見えないようです。見えていたら、武器を捨てて逃げ出していたでしょう。

(ただの突き。全力で走って、2つの頭部を粉々に粉砕するだけ)

 両腕に力を込め、左右に握る短剣一体型のナックルダスターを強く握り締めました。武術も駆け引きも不得手です。ただ力任せの一撃で目の前の敵を倒すだけです。ルインは目の前の敵に向かって走り出しました。

 ダッダッダッ! ダァン!

 ルインは攻撃が届く間合いまで接近すると、両足に力を入れて飛び上がり、瞬時に敵との距離を無くします。

「邪魔だ!冥府の一撃《ヘル・ナックル》‼︎」

 ブォーン‼︎ ゴォバァーン‼︎

 左右の拳がほぼ同時に、2匹のゴブリングールの口から上の頭部を木っ端微塵に吹き飛ばしました。

(残り時間は4分。アイツらの剣を奪って、斬り殺した方が早そうだな)

 ルインは両手に装備していたナックルダスターを外すと、ゴブリングールの死体から黒く変色した剣を1本奪い取りました。形状と刀身の長さからブロードソードなのは分かりますが、金属の種類までは分かりません。おそらくはアイアンか、シルバーのどちらかでしょう。

 ブン!ブン!

(よし、使える)

 右手に装備したブロードソードを振るうと、意外と手に馴染みます。ナックルダスターとほとんど握った感触は同じです。間合いは確かに広範囲になりましたが、でも、手数は明らかに減った感じがします。間合いの広さか、手数か。

「終ワリ。ダメ。俺達、死ヌ」

 ゴブリン達は上位種であるゴブリングールが倒された事で戦うのを諦めたようです。外に逃げられても焼け死ぬだけ。このまま中に居ても殺されるだけ。戦っても勝てる可能性はほとんどありません。もう死ぬ事を理解したようです。それでも、諦めないゴブリンはいるようです。

「マダ女王様イル。女王様イレバ、俺達の仲間増エル。最後マデ女王様、守ル!」

「ソウダ!ソウダ!女王様守ル!」

(女王様?このゴブリン達をまとめているボスのようなゴブリンがいるのか……だったら、そいつを倒せば終わりという事か)

 動けるゴブリン達20匹程度が階段を上って行きます。古城の見取り図を調べた限りでは5階までありましたが、5階は見張り部屋のような小さな部屋です。実際にゴブリンの女王がいるとしたら3階か、4階になるはずです。

「楽に殺してやる」

 ザァン!

 ルインは古城の汚染された空気毒で弱ったゴブリン達を次々と殺していきます。死なれると経験値が入りません。素早く殺して、上に逃げた奴らを早く追いかける必要があります。でも、どんなに素早く殺しても、代償魔法の効果は階段を上っている途中で切れてしまうでしょう。

(もう間に合わない。焦って追いかけるよりは、目の前の敵を確実に殺そう。それに1回死なないと、もうロクに動けそうにないしな)

 ホールに残っているゴブリンを皆殺しにすると、ゆっくりと階段を上り始めました。死ぬならば、ゴブリン女王の目の前です。

 ❇︎







 





 



 

 

 

 


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