代償魔法《デッド・オア・キル》〜260人の命を背負う不死身の冒険者〜

もう書かないって言ったよね?

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第2章・海賊編

第24話・情報提供者

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 折角早起きして、宿屋前の徒歩3分の冒険者ギルドに一番乗りしたものの、ギルドの女性職員から予想外の返答が返ってきました。

「えっーと、つまりはこのクエストは無くなったという事でしょうか?」

 冒険者ギルドは朝8時から夕方6時まで営業しています。国営の建物なので夜遅くまでは営業していません。緊急時は街の兵士詰所つめしょまで起こしください。いやいや、今はそういうのはいいですから!

「そういう事になります。昨日の夜、警備船3隻が海賊船にやられた事で魔法使い協会に討伐の依頼を出す事が決定しました。討伐推奨レベルは128から190にアップしましたので、ランク4相当になります。レベル150以上の冒険者が数十名集まれば話は別ですが……」

 冒険者はレベル以外にもランクというものがあり、レベル1~49までがランク1。レベル50~99までがランク2です。ランク4はレベル150~199の冒険者の事を指しています。

(魔法使い協会か……詳しくは知らないけど、レベル250以上の魔法使いがウジャウジャいる恐ろしい所だって聞いた事がある。依頼料が馬鹿高いらしいけど)

 このままだと魔法使い達にデレスは倒されてしまいそうです。でも、船がなければ海賊船を見つける事は出来ません。だったら、船関連のクエストを見つければいいだけです。

「あのぉ~、商船の護衛…」

「ありません。危険なので海賊船が全て排除されるまで、商船の入港と出港は禁止されました。でも、ご安心ください。安全な陸のクエストが豊富にありますので、こちらをどうぞご覧ください」

 ♡《オーガ》の討伐。推奨レベル44。森林地帯に迷い込んだ人型の怪物の討伐。確認数4体。討伐報酬1体につき8000ゴールド。

 ♧《ナイトウルフ》の駆除。推奨レベル42。家畜を襲う夜行性の狼の駆除。夜間手当て有り。討伐報酬1体につき2000ゴールド。

 ♧《甲羅ネズミ》の駆除。推奨レベル32。農作物を荒らすネズミの駆除。背中の甲羅で岩に擬態しているので注意!討伐報酬1体につき3000ゴールド。

 ♢《渡り熊》の駆除。推奨レベル45。鉱山地帯に住み着いた凶暴な熊1頭の駆除。報酬金額1万ゴールド。

 ♡は教会の依頼で、♧は住民の依頼で、♢は商人の依頼です。前にいたルカテリナの街は1日の基本報酬が決まっていましたが、このダリアの街は完全に出来高で報酬が支払われるようです。つまりはモンスターを倒せないとタダ働きになります。

(おそらくはクエストをやる時間はないだろうな。船に乗れなくなったなら、ウェインが接触して次の指示を出すだろうし、まあ、念の為に自分でも少しは探した方がいいかもな)

「すみません。ゆっくりと考えてからまた来ます。ありがとうございました」

 ガァタ! ルインは椅子から立ち上がるとギルドの女性職員にお礼を言って、建物から出て行きました。

 ❇︎

 カラァン♪ カラァン♪ 教会の鐘の音が昼12時を告げています。ウェインが来るのを宿屋で待っていましたが、全然やって来ません。やっぱり自分でも海賊船を探す方法を見つける必要がありそうです。

「まあ、ただ無意味に待っていた訳じゃないし、南部で情報収集を始めようかな」

 ダリアの街の南部では沢山の魚介類が毎日売られています。つまりは漁師が漁業をしている事を意味しています。商船は狙われて、漁船が狙われない理由があるのでしょうか?

「おそらくは大量の魚を奪っても意味がないだけだろうけど、それ以外の理由もあるかもしれない」

 今度は話を聞く相手はキチンと選びます。この辺の海の男は気が荒いようです。セルカ島の漁師達が紳士に見えてしまいます。

 まずは取ってきた大量の魚を、種類ごとに木箱に仕分けしている、30歳ぐらいの男性に聞く事にしました。昨日の若いのとは違い落ち着いた雰囲気があります。

「すみません。海賊船に乗るにはどうしたらいいですか?」

「はぁっ~?お前、馬鹿じゃないのか。仕事の邪魔だ。消えろ!」

「教えてくれたら、金貨3枚払いますよ」

「いいか、俺に聞いたなんて言うんじゃないぞ!」

 ペラペラペラ!ペラペラペラ!と凄い速さで口が動きます。信じられない口の軽さです。

「えっーと、つまりは漁師をやりながら海賊に情報を売っている人達がいるんですね」

「まあ、商船1隻で金貨10枚だからな。いつ頃、港を出港しそうか調べて教えるだけでそれだけ貰えるらしい。俺は絶対にやらねぇけど、若いのは良い小遣い稼ぎになっているらしいぜ。まあ、それをネタに無理矢理海賊にさせられるのもいるけどな。船に乗りたいなら、若い奴らに片っ端から聞いていくんだな」

 チャリン♪ チャリン♪ チャリン♪ 金貨3枚の価値はありました。つまりは金回りの良い若い漁師を探せばいいだけです。漁師は大抵が日に焼けて肌が浅黒く日焼けしています。でも、探すなら南部ではありません。金を持った若い漁師が行く場所は北部の歓楽街です。嫌々ながらもこれも情報収集です。ルインは早足で歓楽街に向かいました。

 ❇︎

 キャッキャッ♪ ウフフ♪ 楽しそうな声が飛び交っていました。ルインが想像していた歓楽街とは全く違いましたが、水着を着た若い男性店員と女性店員が店の前でお客と楽しそうに話していました。

「まさか?まさか!歓楽街って、ただの商店街の事じゃないよね!」

 商店街です。一部の成人男性向きのお店もありますが、それは数店舗だけです。ほとんどのお店が真っ当に商売しています。外国から仕入れた品物はこの北部に運んで販売しています。現在は海賊の所為で陸路から仕入れた品物が圧倒的に多いようですが品質は折り紙付きです。

(でも、見るだけならタダなんだよね?)

 ルインは少しだけ前屈みになると、浅黒い肌の漁師を探して歩き始めました。商店街にいる人達は日に焼けていない人が多いです。それでもチラホラと漁師の男が目に入り込んできます。

(若くて、如何にも楽しんでいる男か……どう見ても買い物袋をぶら下げているのは違うだろうな。やっぱりそういう店で調べた方が早いかも)

 別にルインが行きたい訳ではありません。探している漁師の男が如何わしい店に行きそうだから調べるだけです。ルインは早足で商店街の裏通りに入って行きました。

「あっ!お兄ちゃん。朝から元気だね。私と遊ぼう!遊ぼう!」

(お兄ちゃん⁉︎俺はこんな妹は知らないぞ!)

 いきなり年上の女性に声をかけられました。年上なのに年下のルインを『お兄ちゃん』と呼びます。どうやら、とんでもない所に迷い込んでしまったようです。

「どうしたの、お兄ちゃん?ぼっーとして?ハッ!ミユミユがあんまり可愛いから見惚れちゃったな?もう~~」

(この子、恥ずかしがっちゃて。多分初めてね。ここは私がしっかりとリードして大人の男にしてあげないと)

 ミユミユは背中までの届く長い黒髪をゆるく波立たせて、何故だか冒険者ギルドの女性職員が着ていた制服と似た服を着ています。思わずこっちが『お姉ちゃん』と呼びたくなる程に身体の色々な部分が豊かに成長していました。

「あっ、違います。人を探しているんです。金回りの良い漁師の男が来ていませんか?」

「はいはい!分かっていますよ。さあ、ミユミユのお部屋でゆっくり話しましょうね!」

 キチンと否定したものの、ルインはミユミユの部屋という如何わしい部屋に、強引に腕を掴まれて引き摺り込まれようとしています。必死に抵抗したものの、予想外にレベル1の女性の腕力は強く、ルインはお店の中に引き摺り込まれてしまいました。

(あれ?もしかして?)

 お店の中に入るといきなり廊下でお姉ちゃんとお客の男とすれ違いました。浅黒い肌の日焼けした漁師風の若い男でした。もしかすると探していた人物かもしれません。思い切ってルインは男に話しかけました。

「すみません。良い情報があるんですが、紹介してもらえませんか?紹介料も払いますから」

 もちろん、いきなり海賊船に連れて行ってとは言えません。情報、紹介だけで海賊に情報を売っている人には分かるはずです。

「何の事だ?誰かと勘違いしてねぇか。俺じゃねぇよ」

(レベル51かよ。強いな。冒険者か、街の兵士だろうな)

 明らかに警戒しています。ルインのレベルは51。この男は8です。魔眼を得る為に冒険者登録しているだけの男です。そこまで強くありません。

「お願いします!助けてください!お金がないから、このままだとミユミユと遊べないんです!」

(何だよ、ただの盛りのついたガキかよ♪)

 ルインが金に困っていると信じてくれたようです。男は警戒心を解くと表情も態度もかなり柔らかくなりました。

「俺じゃねぇけど、もしかしたら知り合いにそういうのがいたかもしれねぇな。ついて来いよ!紹介してやるぜ」

「ありがとうございます。ミユミユ、またね!」

「うん、お兄ちゃん。私待ってる。お金いっぱい持って来てね!」

 ミユミユはあれだけしっかりとルインの腕を掴んでいたのに、お金がないと分かると簡単に離してくれました。ルインは男と一緒に店を出て行きました。

(もう一度来よう。島の皆んなを助けた後に)

 今のルインは島の皆んなと視覚と感覚を共有しています。そんな事が許される訳がありません。許される訳がないのです!

 ❇︎
 





 



 

 
 


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