病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?

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第十二話 激しい戦いだった

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 コツコツ、コツコツ。

「ん? あれ、ピーちゃん?」

 三日後、窓を叩く音にベッドから起き上がり見ると、窓の外に青い鳥が飛んでいた。
 ピーちゃんなら自分で開けられるようになったのに、どうしたんだろう?
 ベッドから出ると不思議に思いながら窓を押し開けた。

『は、激しい戦いだった』
「…………」

 ピーちゃんはそれだけ言うと窓枠に倒れ込んだ。
 身体は傷だらけだ。一皮、いや、一羽根剥けたようだ。
 窓から出ると花壇の竜薬草を一本引き抜いて、葉っぱを食べさせた。

『マズイ……』
「良薬は口に苦しだよ。食べれば元気になるから我慢して食べて」
『ぐぅぅぅ!』

 僕もマズイのは知っている。でも、お陰で効果も知っている。
 今なら玄関から花壇に行くぐらいは楽に出来るようになった。
 ピーちゃんのクチバシの中に遠慮なく葉っぱを突っ込んだ。

『ふぅー、死ぬかと思った』
「死ななくてよかったね」

 クエストと竜薬草、どっちで? とは聞かなくても分かる。多分両方だ。
 ピーちゃんが回復したようなので、僕はもっと気になることを聞いてみた。

「それでクエストは成功したの?」
『ふぅー、激しい戦いだった』

 一羽根剥けるとちょっとウザくなるんだね。
 窓の外の遠くの方をピーちゃんが見つめている。
 一人で思い出さなくていいから、何があったのか早く教えてね。

 ♢♢♢

 ブラックバードの討伐に出発したピーちゃんはまずは村を目指したそうだ。
 討伐を依頼したのは村で農家をやっている人達だ。僕にとっては農家の手伝いをしているお母さんだ。
 この村の畑は被害にあってないけど、似たような村が被害にあっているのなら他人事じゃない。
 頑張ってね、ピーちゃん。

 パタパタとのんびり飛んで、ピーちゃんは目的地の村に到着した。
 畑がたくさんあって、近くに森がある村だったそうだ。
 ブラックバードはその森に住んでいて、お腹が減ったら畑の野菜を食べに来るそうだ。

『討伐クエスト受けてきた。鳥、どこにいるの?』
「俺の目の前にいる。喋る鳥なんて初めて見た」

 農作業をしている男に聞いたら、指を指されて言われたそうだ。
 確かにその通りだ。
 
『僕、違う。黒い鳥探している』
「黒でも青でもどうでもいい。鳥はみんないなくなればいいんだ」
『じゃあ僕もいなくなる』
「待ちやがれ! 受けた仕事は最後までやり遂げるのが礼儀だろうが!」
『…………』

 そりゃー一羽根剥けるよ。面倒な人に当たったんだね。
 帰ろうとしたら怒られた。すっかり鳥嫌いになっている男にめちゃくちゃ怒られた。

「見ろ、この畑を! あの鳥共は野菜なら芋でもニンジンでも何でも食いやがる!」

 男が指差す畑には食い散らかされた野菜がたくさん転がっていたそうだ。

『何でもは食べない』
「お前の話は聞いてねえ! 今は鳥の話をしてるんだ‼︎」
『…………』

 ピーちゃん、ヤバい村人がいたんだね。
 もう話を聞くのは諦めて逃げた方がいいよ。
 このままだとピーちゃんが討伐されちゃうよ。

「もう誰でもいいから、あの森にいる鳥共を何とかしてくれ!」
『うん、分かった。行ってくる』

 良かったね、ピーちゃん。逃げられるね。
 男がめちゃ広い森を指差した。
 我慢して話を聞くよりは、飛んで探した方が早そうだね。
 
 でも、ピーちゃんは男から逃げると森を目指さなかった。
 広い森を探すよりも屋根の上でやって来るのを待つことにしたんだって。
 ピーちゃん、賢い。

『アイツ、あとでぶっ飛ばす。絶対ぶっ飛ばす』

 屋根の上で怒って待っていると、青い空に黒い雨雲が現れたそうだ。
 ピーちゃん、ぶっ飛ばすのは鳥だけで我慢するんだよ。

『飯の時間だ。飯の時間だ』
『今日もアイツの畑にしようぜ』
『全部食って泣かせてやろうぜ』

 人にはカァーカァー鳴いているだけだけど、ピーちゃんにはなんて言ってるのか分かる。
 集団野菜泥棒の登場だ。黒い盗賊団は一目散にヤバい男の畑に向かったそうだ。

「俺の畑に近づくんじゃねえ! やめろって言ってるだろうが!」
『…………』

 男がクワを振り回して、五十羽以上のブラックバードの群れを追い払おうとしている。
 でも、広い畑を一人で守るには限界がある。
 一羽を追い払っている間に別の一羽が野菜を食べ、そっちを追い払おうとしたら、別の一羽が降りてきて野菜を食べてしまう。
 もうお手上げ状態だ。男がクワを手放すと畑には座り込んでしまった。

「うぅぅぅ、お願いだからもうやめてくれぇ…」
『ヒャヒヒヒヒ。馬鹿な人間だな。空も飛べねえから、食い放題、逃げ放題だぜ』
『…………』

 ねえ、ピーちゃん。泣くまで見ている必要あった?
 気が済んだなら、もう助けてもいいんじゃない。

『僕の出番みたいだね』

 とっくに出番は始まっていたよ。雨雲現れた時が出番だったよ。
 ヤバい男が泣くのをしっかり見届けると、ピーちゃんは屋根から飛び立った。
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