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第五十八話 猫と戦ってみた
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『焼き鳥! 焼き鳥! 焼き鳥!』
両手に枝を持って振り回して、勝利の晩ご飯だ。
枝を折って、木の板に押し当てて、手の平で回して火種を作ると千切った小麦を投入した。
燃やせる小麦はたくさん収納袋に入れて持ってきたから困らない。
今はダンジョンの外で、蛇、鳥、キツネ肉を手製の枝串に刺して、たき火の周りに並べている。
大きな蛇の身体からは必要な分だけ肉を切り取った。
三つ目の二つ尻尾があるキツネも見つけたけど、蛇と比べたら弱かった。
見つめられると、ちょっと身体が重くなったぐらいだ。
だから、さっさと倒して晩ご飯の食材に変えてやった。
『もぐもぐ、もぐもぐ……うむ、美味い』
やっぱり魔物の肉は小さく切った方が美味しく焼ける。
魔物の肉の味を調べるには串焼きが一番らしい。
強い魔物の肉は焼けにくいし硬い。だから何度も肉を叩いて柔らかくした。
食べられるように加工するのが一番難しいとお父さんが言っていた。
一番美味しかったのは蛇肉で、次が鳥肉だった。
キツネ肉は正直言って美味しくなかった。
肉に特別な効用がないのなら、売れそうなのは毛皮だけになる。
『ふぅー、満足じゃあ』
串焼き二十本でお腹いっぱいになってしまった。たき火を消すとテントの中に寝転んだ。
たくさん動いたからもっと食べられると思ったのに、胃袋は強くなってなかった。
『さてと、今日は早く寝よ』
明日はDダンジョンがある大地の裂け目まで飛んでいく。
結構な長旅になりそうだ。
しっかり食べて、しっかり休んで万全の状態で挑んでやる。
♢♢♢
『えっ~~、ここから探すの⁉︎』
冷めた串焼きを食べながら飛び続けて、やっと目的地に到着した。
海の真ん中が割れて、水が抜けた後みたいに大きく割れた大地が広がっていた。
『はぁ~、ここまで来たんだから探すしかないかぁ』
まずは立て札を頑張って探してみた。
そこから大地の裂け目を注意深く下りていく。
ピーちゃんみたいにダンジョンの入り口を見落としたりしない。
探すのは一回で十分だ。
『あっ、これかな?』
見つけたけど、今までのダンジョンの入り口よりもちょっと小さい。
大人が一人通れるぐらいの大きさしかない。これだと身体が大きい人は大変だ。
そんなトンネルを歩いていくと、大きな森を上から見渡せる壁に出た。
ここからロープで下に降りると思うと大変だ。
翼があって助かった。翼を出して地上に楽々降りた。
『よし、初のDランクだ! 絶対飲んでやる!』
ピーちゃんが倒した大鳥とヒゲ猫の死体を持ってきてないから、まだ血を飲んでない。
本当に倒したのか信じられないぐらい飲んでない。
収納袋から剣を出すと探索を開始した。
警戒するのはヒゲ猫だ。ピーちゃんの速さにも付いて来れるぐらい速いらしい。
もちろん大鳥も警戒だ。こっちも速いらしいから、僕の速さが全然活かせない。
そうなれば剣と身体能力で勝負しないといけなくなる。
まったく勘弁してほしいでござる。
エイィ、ヤァァと剣を振り回して、邪魔な枝やツルを切り落として進んでいく。
前に向かって素振り百回するよりも、こっちの方が修行になる。
これで飛ぶのに邪魔な障害物が減った。僕の全力が出せる。
ガサガサ。ガサガサ。
『……来たようだね』
草を踏み砕く音が近づいてくる。
剣を振り回すのをやめて立ち止まると、音の方に視線を向けた。
待っていると太い樹木が細く見えてしまうほどの大きな猫が現れた。
黄色い身体に黒い斑点模様、顔には白いドクロの仮面を付けている。
そして、長いムチのようなヒゲが左右に一本ずつ生えている。
まさに【ヒゲ長猫】だ。
『グゥルルルル!』
可愛い子猫がこんな怖い唸り声を出してきたら怖いけど、怖い猫からなら平気だ。
怖いと分かっているから全然怖くない。
『さあ、行こうか』
両手に握る剣に向かって言うと突撃した。
『シャー!』
左右のヒゲが波打つように真っ直ぐ飛んできた。
速いけど見える。
背中から翼を出して斜め上に飛んで躱すと、そのまま斜め下に急降下して、剣を頭に振り下ろした。
『ぐぅっ!』
けれども、岩のように硬いドクロ仮面に剣が止められた。
ついでに剣と仮面の激突の硬直を狙って、ヒゲ猫が右前脚を振り払ってきた。
『くぅぅぅ!』
鋭く太い爪を後ろに向かって飛んで躱すと地面に着地した。
思った以上に速い。もしも速さが同じなら、先に必殺の一撃を決めた方が勝つ。
翼を背中にしまうと剣先を真っ直ぐ向けた。
『止められるものなら止めてみろ』
僕の本気を見せてやる。両足と両腕に全力を込めると前に向かって加速した。
『ぐぅっ、うぅぅ……!』
真っ直ぐ飛んできた二本のヒゲが僕の身体をかすった。
けれども、止まらない。あの日からもう止まらないって決めた。
ヒゲの痛みを我慢して乗り越えると、ヒゲ猫が口を開けて噛み付いてきた。
鋭い二本の牙が伸びている。
でも、もう僕の剣の間合いだ。大きく深く前に一歩踏み込んだ。
噛みつきを身体を地面スレスレに倒して躱すと、さらにヒゲ猫の顎の下で踏み込んだ。
『”超速突き”』
『ガフッ……!』
ヒゲ猫の喉に向かって剣先を力いっぱいブチ込んだ。
刃が深々と突き刺さり、切り口から血が流れ落ちてきた。
でも、この程度で倒せる相手じゃない。
剣から手を離して、両手足で首にしがみ付くと噛みついた。
『お前の力を全て貰う!』
『かはっ……!』
生きたままのヒゲ猫から血を吸っていく。
さらに両手足で思いきり首を締め付ける。
出血死か窒息死か、どちらも時間の問題だ。
ヒゲ猫が地面に崩れ落ちた。暴れる力もないようだ。
こっちはヒゲに打たれた痛みが引いていく。
身体の中に眠っていた力が目覚めたように溢れていく。
『ハァハァ、ハァハァ』
血が吸えなくなった。手足をヒゲ猫から離して立ち上がった。
身体が熱いし、目も熱い。心臓が燃え上がり、両腕が鋭い鉄の刃になったような気分だ。
今なら拳で木を殴れ倒せそうな気がする。
『うっ……りゃあ!』
もちろんそんな気分なだけだ。ヒゲ猫の喉から剣を足と手を使って引き抜いた。
『手こずらせやがって』
口元の血を手の甲で拭き取るとヒゲ猫の腹を蹴飛ばした。
何が人よりも大きな猫だ。ピーの野朗、いい加減なこと言いやがって。
牛よりデカかったじゃないか。馬車引けるぞ、馬車。
『ふぅー、スッキリした』
とりあえずピーちゃんへの怒りは猫で晴らした。
ちょっと足が痛い。これだと大鳥も超大鳥の可能性がある。
ヒゲ猫との実力は僅差だったので、安全安心の一対一で戦ってやる。
ピーちゃんみたいな馬鹿な真似はしない。
両手に枝を持って振り回して、勝利の晩ご飯だ。
枝を折って、木の板に押し当てて、手の平で回して火種を作ると千切った小麦を投入した。
燃やせる小麦はたくさん収納袋に入れて持ってきたから困らない。
今はダンジョンの外で、蛇、鳥、キツネ肉を手製の枝串に刺して、たき火の周りに並べている。
大きな蛇の身体からは必要な分だけ肉を切り取った。
三つ目の二つ尻尾があるキツネも見つけたけど、蛇と比べたら弱かった。
見つめられると、ちょっと身体が重くなったぐらいだ。
だから、さっさと倒して晩ご飯の食材に変えてやった。
『もぐもぐ、もぐもぐ……うむ、美味い』
やっぱり魔物の肉は小さく切った方が美味しく焼ける。
魔物の肉の味を調べるには串焼きが一番らしい。
強い魔物の肉は焼けにくいし硬い。だから何度も肉を叩いて柔らかくした。
食べられるように加工するのが一番難しいとお父さんが言っていた。
一番美味しかったのは蛇肉で、次が鳥肉だった。
キツネ肉は正直言って美味しくなかった。
肉に特別な効用がないのなら、売れそうなのは毛皮だけになる。
『ふぅー、満足じゃあ』
串焼き二十本でお腹いっぱいになってしまった。たき火を消すとテントの中に寝転んだ。
たくさん動いたからもっと食べられると思ったのに、胃袋は強くなってなかった。
『さてと、今日は早く寝よ』
明日はDダンジョンがある大地の裂け目まで飛んでいく。
結構な長旅になりそうだ。
しっかり食べて、しっかり休んで万全の状態で挑んでやる。
♢♢♢
『えっ~~、ここから探すの⁉︎』
冷めた串焼きを食べながら飛び続けて、やっと目的地に到着した。
海の真ん中が割れて、水が抜けた後みたいに大きく割れた大地が広がっていた。
『はぁ~、ここまで来たんだから探すしかないかぁ』
まずは立て札を頑張って探してみた。
そこから大地の裂け目を注意深く下りていく。
ピーちゃんみたいにダンジョンの入り口を見落としたりしない。
探すのは一回で十分だ。
『あっ、これかな?』
見つけたけど、今までのダンジョンの入り口よりもちょっと小さい。
大人が一人通れるぐらいの大きさしかない。これだと身体が大きい人は大変だ。
そんなトンネルを歩いていくと、大きな森を上から見渡せる壁に出た。
ここからロープで下に降りると思うと大変だ。
翼があって助かった。翼を出して地上に楽々降りた。
『よし、初のDランクだ! 絶対飲んでやる!』
ピーちゃんが倒した大鳥とヒゲ猫の死体を持ってきてないから、まだ血を飲んでない。
本当に倒したのか信じられないぐらい飲んでない。
収納袋から剣を出すと探索を開始した。
警戒するのはヒゲ猫だ。ピーちゃんの速さにも付いて来れるぐらい速いらしい。
もちろん大鳥も警戒だ。こっちも速いらしいから、僕の速さが全然活かせない。
そうなれば剣と身体能力で勝負しないといけなくなる。
まったく勘弁してほしいでござる。
エイィ、ヤァァと剣を振り回して、邪魔な枝やツルを切り落として進んでいく。
前に向かって素振り百回するよりも、こっちの方が修行になる。
これで飛ぶのに邪魔な障害物が減った。僕の全力が出せる。
ガサガサ。ガサガサ。
『……来たようだね』
草を踏み砕く音が近づいてくる。
剣を振り回すのをやめて立ち止まると、音の方に視線を向けた。
待っていると太い樹木が細く見えてしまうほどの大きな猫が現れた。
黄色い身体に黒い斑点模様、顔には白いドクロの仮面を付けている。
そして、長いムチのようなヒゲが左右に一本ずつ生えている。
まさに【ヒゲ長猫】だ。
『グゥルルルル!』
可愛い子猫がこんな怖い唸り声を出してきたら怖いけど、怖い猫からなら平気だ。
怖いと分かっているから全然怖くない。
『さあ、行こうか』
両手に握る剣に向かって言うと突撃した。
『シャー!』
左右のヒゲが波打つように真っ直ぐ飛んできた。
速いけど見える。
背中から翼を出して斜め上に飛んで躱すと、そのまま斜め下に急降下して、剣を頭に振り下ろした。
『ぐぅっ!』
けれども、岩のように硬いドクロ仮面に剣が止められた。
ついでに剣と仮面の激突の硬直を狙って、ヒゲ猫が右前脚を振り払ってきた。
『くぅぅぅ!』
鋭く太い爪を後ろに向かって飛んで躱すと地面に着地した。
思った以上に速い。もしも速さが同じなら、先に必殺の一撃を決めた方が勝つ。
翼を背中にしまうと剣先を真っ直ぐ向けた。
『止められるものなら止めてみろ』
僕の本気を見せてやる。両足と両腕に全力を込めると前に向かって加速した。
『ぐぅっ、うぅぅ……!』
真っ直ぐ飛んできた二本のヒゲが僕の身体をかすった。
けれども、止まらない。あの日からもう止まらないって決めた。
ヒゲの痛みを我慢して乗り越えると、ヒゲ猫が口を開けて噛み付いてきた。
鋭い二本の牙が伸びている。
でも、もう僕の剣の間合いだ。大きく深く前に一歩踏み込んだ。
噛みつきを身体を地面スレスレに倒して躱すと、さらにヒゲ猫の顎の下で踏み込んだ。
『”超速突き”』
『ガフッ……!』
ヒゲ猫の喉に向かって剣先を力いっぱいブチ込んだ。
刃が深々と突き刺さり、切り口から血が流れ落ちてきた。
でも、この程度で倒せる相手じゃない。
剣から手を離して、両手足で首にしがみ付くと噛みついた。
『お前の力を全て貰う!』
『かはっ……!』
生きたままのヒゲ猫から血を吸っていく。
さらに両手足で思いきり首を締め付ける。
出血死か窒息死か、どちらも時間の問題だ。
ヒゲ猫が地面に崩れ落ちた。暴れる力もないようだ。
こっちはヒゲに打たれた痛みが引いていく。
身体の中に眠っていた力が目覚めたように溢れていく。
『ハァハァ、ハァハァ』
血が吸えなくなった。手足をヒゲ猫から離して立ち上がった。
身体が熱いし、目も熱い。心臓が燃え上がり、両腕が鋭い鉄の刃になったような気分だ。
今なら拳で木を殴れ倒せそうな気がする。
『うっ……りゃあ!』
もちろんそんな気分なだけだ。ヒゲ猫の喉から剣を足と手を使って引き抜いた。
『手こずらせやがって』
口元の血を手の甲で拭き取るとヒゲ猫の腹を蹴飛ばした。
何が人よりも大きな猫だ。ピーの野朗、いい加減なこと言いやがって。
牛よりデカかったじゃないか。馬車引けるぞ、馬車。
『ふぅー、スッキリした』
とりあえずピーちゃんへの怒りは猫で晴らした。
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