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第五十九話 何もしてないのに襲われた
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人生思い通りにいかないって、知っているのに何でこうなったんだろう。
木の上で変な形の赤い果物を見つけて食べていた。
そしたら群れで巡回していたのか、大鳥達が急降下して襲ってきた。
『これってピーちゃんのせいだよね! これってピーちゃんのせいだよね‼︎』
五羽の大鳥に襲われる理由なら分かっている。ピーの野朗のせいだ。
調子に乗って、このジャングルの魔物を全員敵に回したからだ。
お姉さんに頼まれて果物取りに行った時に魔物倒さなかった理由はこれだ。
あの野朗倒さなかったんじゃなくて、倒せなかったんだ。
『ヒュー!』
『くぅぅぅ!』
もう駄目だ、逃げられない。風を切るような鳴き声が迫ってくる。
樹木やツルを避けて、森の中を逃げ回るけど、逃げ切れる自信がまったくない。
真っ直ぐ飛ぶのはそこそこ速いけど、樹木とツルを避けてジグザグ曲がって飛ぶのは普通に遅い。
こっちは人間だ。生まれた時から飛んでいる鳥に飛んで勝てるわけがない。
『来るなら来い!』
逃げるのをやめると剣を構えた。空よりもまだ障害物のある地上の方が戦いやすい。
馬ぐらいなら脚で掴んで運べそうな大鳥が真っ直ぐ向かってくる。
ピーちゃんみたいな小さな小鳥なら、大鳥が見失なうこともあるかもしれない。
『うおおおおお!』
だけど、僕は期待するだけ無駄だ。倒すか倒されるか、それだけだ。
剣をしっかり握り締めると、大鳥に向かって全速力で飛んだ。
正面衝突覚悟の攻撃だ。【僕ストライク】だ。ピーちゃんよりも威力はあるぞ。
一発で僕の身体がボロボロになるけどね。
『ヒャア!』
『‼︎』
大鳥がぶつかる前に急停止すると両脚を突き出してきた。
鋭いクチバシ攻撃を予想していたのに、予想外の攻撃が飛んできた。
もちろん避けられないし、もちろん最初から正面衝突するつもりはなかった。
ちょっと覚悟していただけだ。ギリギリで避けて切るつもりだった。
でも、もう無理。ぶつかるか、脚に捕まえられてクチバシで滅多刺しにされるかだ。
『ふぐぅ!』
ぶつかるのも刺されるのも嫌なので、大鳥に抱き着いた。
チクチク痛いし、毛深いから、顔を羽根に埋めて血も飲めない。
飲むなら倒して羽根をむしって丸裸にするしかない。
だったら、このチャンスを掴んでやる。
右手に持った剣を大鳥に向けた。このまま僕が滅多刺しにしてやる。
『ヒュー!』
『がはぁ……!』
けれども、刺す前に僕の背中に大きな岩の塊が直撃した。
ううん、岩じゃなかった。別の大鳥が仲間ごと僕にバードストライクしてきた。
仲間と一緒に跳ね飛ばされて地面に倒された。
『ぐぅぅぅ』
でも、寝ている暇はない。
両手を地面につけて、プルプルさせながら何とか立ち上がった。
『ハァハァ』
この鳥達、僕を倒す為なら手段を選ばないみたいだ。
仲間を何羽犠牲にしてでも確実に僕を殺しに来る。
『ヒャア!』
ほら、来た。上空から両脚を僕に向けて、三羽も高速降下してきた。
踏み潰されるのはゴメンだ。反射的に地面を走った。
いざという時に頼りになるのは翼じゃなくて、自分の足だ。
『ヒュー!』
『がはぁ……!』
頼りにならない足だった。まだ足りなかったみたいだ。
さっきの大鳥が再び僕にバードストライクしてきた。
顔と右翼の人間でいうところの右肩が、僕の腹に激突した。
しかも、そのまま右肩で僕を真っ直ぐ押し運んでいく。
『っ……‼︎』
そして、右翼ごと僕を大木に叩きつけた。
意識が飛んで頭が真っ白になった。
再び意識が戻ると地面に倒れていた。
『ぁぐぅ……』
駄目だ。身体が痺れて動かない。これが本当の瀕死状態なのだろうか。
ピーちゃんに地面食べさせられた時よりも身体も意識も重い。
だけど、こんな所で死ねない。足も身体も震えるけど頑張るしかない。
死にものぐるいで立ち上がった。今日の晩ご飯は唐揚げにするって決めたんだ。
どこかで鍋、油、小麦粉、片栗粉、ニンニク、酒、しょう油を買わないといけないけど決めたんだ。
『ヒャア!』
『‼︎』
でも、あっちも倒すって決めているみたいだ。
僕の肩を大鳥が両脚で掴んだ。そのまま掴んだまま上に向かって飛んでいく。
『ぐぅ、離せ……』
右手で何とか持っている剣を弱々しく振り回した。
あっ、でも、やっぱり離さないでほしい。背中の翼が折れていた。
しかも両方だ。これだと飛べない。
でも、一度背中にしまえば、折れているのが治っているかもしれない。
『…………』
駄目だった。やってみたけど、ボキィと折れて垂れ下がったままだった。
仕方ないから左手で鳥の脚を掴んだ。僕達、友達だよね?
『ま、ましゃか……』
友達だと思っていたのは僕だけみたい。
上に上に飛んでいくと天井の岩壁が見えてきた。
それなのに速度をまったく落とさない。
絶対にぶつかるつもりだ。いや、ぶつけるつもりだ。
『おらっ、このぉ!』
左手でしっかり脚を掴んで、右手の剣で大鳥の身体を軽く突き刺していく。
大鳥殺してしまったら僕も死ぬことになる。殺したら駄目だ。
死なない程度の怪我させて、地上にゆっくり降りてもらう。
僕が助かる方法はそれしかない。
『ヒュー!』
『あばぁ……!』
間に合わなかった。というよりも最初から死ぬ気だった。
大鳥が身体を反転させて、僕を天井に脚ごと叩きつけて、自分も激突している。
天井は木なんかよりもめちゃくちゃ硬い。身体がぐちゃぐちゃのミンチ肉にされた気分だ。
右手から剣を、脚を掴んでいた左手も離してしまった。身体も脚から離されている。
大鳥と剣が先に落ちていく。同じように僕を待っているのは遠く離れた地面だ。
飛べない状態で待っているのは死だけだ。
『ぐぅ……』
『…………』
落ちていく僕を見守るように、追いかけてきた四羽の大鳥達が止まって見ている。
『いやだぁ……死にたくない』
涙が出てきた。
いっぱい魔物を倒してきた僕だけど、自分が死ぬのは嫌だ。
死ぬのは怖い。いつもそう思って生きてきたのに、そんな当たり前のことを忘れていた。
明日が来ないと怯えるのをやめて、死ぬまでにしたいことをベッドの上で考えた。
考えるのも疲れて、神様に『早く死ねますよう』にと願ったこともある。
でも、僕が本当に叶えてほしかったことはそんなんじゃない。
『明日も明後日も一年後も元気に生きられますように』って、願いたかった。
『いやだぁ、いやだぁ、嫌だあああ‼︎』
神様でも誰でもいい。助けてほしいと心の底から願った。
木の上で変な形の赤い果物を見つけて食べていた。
そしたら群れで巡回していたのか、大鳥達が急降下して襲ってきた。
『これってピーちゃんのせいだよね! これってピーちゃんのせいだよね‼︎』
五羽の大鳥に襲われる理由なら分かっている。ピーの野朗のせいだ。
調子に乗って、このジャングルの魔物を全員敵に回したからだ。
お姉さんに頼まれて果物取りに行った時に魔物倒さなかった理由はこれだ。
あの野朗倒さなかったんじゃなくて、倒せなかったんだ。
『ヒュー!』
『くぅぅぅ!』
もう駄目だ、逃げられない。風を切るような鳴き声が迫ってくる。
樹木やツルを避けて、森の中を逃げ回るけど、逃げ切れる自信がまったくない。
真っ直ぐ飛ぶのはそこそこ速いけど、樹木とツルを避けてジグザグ曲がって飛ぶのは普通に遅い。
こっちは人間だ。生まれた時から飛んでいる鳥に飛んで勝てるわけがない。
『来るなら来い!』
逃げるのをやめると剣を構えた。空よりもまだ障害物のある地上の方が戦いやすい。
馬ぐらいなら脚で掴んで運べそうな大鳥が真っ直ぐ向かってくる。
ピーちゃんみたいな小さな小鳥なら、大鳥が見失なうこともあるかもしれない。
『うおおおおお!』
だけど、僕は期待するだけ無駄だ。倒すか倒されるか、それだけだ。
剣をしっかり握り締めると、大鳥に向かって全速力で飛んだ。
正面衝突覚悟の攻撃だ。【僕ストライク】だ。ピーちゃんよりも威力はあるぞ。
一発で僕の身体がボロボロになるけどね。
『ヒャア!』
『‼︎』
大鳥がぶつかる前に急停止すると両脚を突き出してきた。
鋭いクチバシ攻撃を予想していたのに、予想外の攻撃が飛んできた。
もちろん避けられないし、もちろん最初から正面衝突するつもりはなかった。
ちょっと覚悟していただけだ。ギリギリで避けて切るつもりだった。
でも、もう無理。ぶつかるか、脚に捕まえられてクチバシで滅多刺しにされるかだ。
『ふぐぅ!』
ぶつかるのも刺されるのも嫌なので、大鳥に抱き着いた。
チクチク痛いし、毛深いから、顔を羽根に埋めて血も飲めない。
飲むなら倒して羽根をむしって丸裸にするしかない。
だったら、このチャンスを掴んでやる。
右手に持った剣を大鳥に向けた。このまま僕が滅多刺しにしてやる。
『ヒュー!』
『がはぁ……!』
けれども、刺す前に僕の背中に大きな岩の塊が直撃した。
ううん、岩じゃなかった。別の大鳥が仲間ごと僕にバードストライクしてきた。
仲間と一緒に跳ね飛ばされて地面に倒された。
『ぐぅぅぅ』
でも、寝ている暇はない。
両手を地面につけて、プルプルさせながら何とか立ち上がった。
『ハァハァ』
この鳥達、僕を倒す為なら手段を選ばないみたいだ。
仲間を何羽犠牲にしてでも確実に僕を殺しに来る。
『ヒャア!』
ほら、来た。上空から両脚を僕に向けて、三羽も高速降下してきた。
踏み潰されるのはゴメンだ。反射的に地面を走った。
いざという時に頼りになるのは翼じゃなくて、自分の足だ。
『ヒュー!』
『がはぁ……!』
頼りにならない足だった。まだ足りなかったみたいだ。
さっきの大鳥が再び僕にバードストライクしてきた。
顔と右翼の人間でいうところの右肩が、僕の腹に激突した。
しかも、そのまま右肩で僕を真っ直ぐ押し運んでいく。
『っ……‼︎』
そして、右翼ごと僕を大木に叩きつけた。
意識が飛んで頭が真っ白になった。
再び意識が戻ると地面に倒れていた。
『ぁぐぅ……』
駄目だ。身体が痺れて動かない。これが本当の瀕死状態なのだろうか。
ピーちゃんに地面食べさせられた時よりも身体も意識も重い。
だけど、こんな所で死ねない。足も身体も震えるけど頑張るしかない。
死にものぐるいで立ち上がった。今日の晩ご飯は唐揚げにするって決めたんだ。
どこかで鍋、油、小麦粉、片栗粉、ニンニク、酒、しょう油を買わないといけないけど決めたんだ。
『ヒャア!』
『‼︎』
でも、あっちも倒すって決めているみたいだ。
僕の肩を大鳥が両脚で掴んだ。そのまま掴んだまま上に向かって飛んでいく。
『ぐぅ、離せ……』
右手で何とか持っている剣を弱々しく振り回した。
あっ、でも、やっぱり離さないでほしい。背中の翼が折れていた。
しかも両方だ。これだと飛べない。
でも、一度背中にしまえば、折れているのが治っているかもしれない。
『…………』
駄目だった。やってみたけど、ボキィと折れて垂れ下がったままだった。
仕方ないから左手で鳥の脚を掴んだ。僕達、友達だよね?
『ま、ましゃか……』
友達だと思っていたのは僕だけみたい。
上に上に飛んでいくと天井の岩壁が見えてきた。
それなのに速度をまったく落とさない。
絶対にぶつかるつもりだ。いや、ぶつけるつもりだ。
『おらっ、このぉ!』
左手でしっかり脚を掴んで、右手の剣で大鳥の身体を軽く突き刺していく。
大鳥殺してしまったら僕も死ぬことになる。殺したら駄目だ。
死なない程度の怪我させて、地上にゆっくり降りてもらう。
僕が助かる方法はそれしかない。
『ヒュー!』
『あばぁ……!』
間に合わなかった。というよりも最初から死ぬ気だった。
大鳥が身体を反転させて、僕を天井に脚ごと叩きつけて、自分も激突している。
天井は木なんかよりもめちゃくちゃ硬い。身体がぐちゃぐちゃのミンチ肉にされた気分だ。
右手から剣を、脚を掴んでいた左手も離してしまった。身体も脚から離されている。
大鳥と剣が先に落ちていく。同じように僕を待っているのは遠く離れた地面だ。
飛べない状態で待っているのは死だけだ。
『ぐぅ……』
『…………』
落ちていく僕を見守るように、追いかけてきた四羽の大鳥達が止まって見ている。
『いやだぁ……死にたくない』
涙が出てきた。
いっぱい魔物を倒してきた僕だけど、自分が死ぬのは嫌だ。
死ぬのは怖い。いつもそう思って生きてきたのに、そんな当たり前のことを忘れていた。
明日が来ないと怯えるのをやめて、死ぬまでにしたいことをベッドの上で考えた。
考えるのも疲れて、神様に『早く死ねますよう』にと願ったこともある。
でも、僕が本当に叶えてほしかったことはそんなんじゃない。
『明日も明後日も一年後も元気に生きられますように』って、願いたかった。
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