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第一章 古代遺跡で凌辱される

第4話 囚われた女性達【リュドミラ視点】

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「カルル! お前は何やってんだ! 家は一軒だけじゃねぇんだぞ! ガキと遊ぶのは仕事が終わった後にしろ。この馬鹿が!」
「すみません。抵抗されたんで少し脅していました」
「言い訳はいいんだよ。さっさと外に運び出せ!」
「へい……」

 扉の方から怒鳴り声が聞こえると、私の胸を乱暴に触っていた男の手が止まった。
 さっき話していた親がやって来たみたい。
 父親は息子を叱った後に部屋には入らずに、階段の方に歩いていった。

「チッ。いちいち、うるさいんだよ。おら、さっさと立て!」
「あゔっ!」

 男はイライラしながらも私を無理矢理立たせると、親の言う通りに家の外に連れて行こうとする。
 こんな奴でも怖くて父親には逆らえないみたい。

「あっ、お母様⁉︎ お母様、大丈夫ですか!」
「おい、勝手に動くな」

 部屋から出ると、廊下にお母様の姿が見えた。男の腕を振り解いて、急いで駆け寄った。

「リュラ、私は大丈夫です。それよりも落ち着いて聞きなさい。お父様が殺されました」
「はい、お父様が勇敢に戦って死んでいった声は私も聞きました。立派な最後でした」
「さっさと歩け。話しなら後で二人一緒に仲良くさせてやるよ」
「くっ!」

 男が背中を押して命令してきた。お母様は腕を後ろに縛られて普通に歩けない。
 急いで階段を下りたら転げ落ちてしまう。
 そんなことも分からない馬鹿に、お父様が殺されてしまうなんて。

「申し訳ありません」
「お母様⁉︎ こんな奴に謝る必要ありません! コイツはお父様を殺した奴なんです! 私達もお父様みたいに!」

 力で勝てなくても、服を掴んで一緒に階段から転げ落ちるぐらいは出来る。
 運が良ければ首の骨が折れて死んでくれる。覚悟を決めた目で男を睨みつけた。

「リュラ! それは駄目です。戦って死ぬのは簡単です。どんなに辛くても生きることを選びなさい!」
「お母様……」

 男を道連れにする覚悟だったのに、お母様は男を庇うように私の前に立って叱ってきた。

「そうだ。お母様の言う通りだぜ。どんなに辛い人生でも、生きていれば楽しいことはあるんだ。お前達が同じ場所に行けるように頑張って手配してやるよ」

 たぷん……たぷん……むにゅ、むにゅ!
 
「んっ、ふぅ、はぁ、はぁっ……」
「くぅっ!」

 男の言葉と行動にハラワタが煮えくり返る。
 下卑た笑みを浮かべて、お母様の大きな胸を後ろから触っている。今すぐに殺したい。
 だけど、お母様の言う通りに我慢しなければならない。

「……酷い」

 階段を下りて家の外に出ると、村の中を我が物顔で武器を持った盗賊達が歩いていた。
 地面には倒れたまま動かない人達が沢山見える。

「凄えなぁ。小さな村なのに50人近くいる。これだと楽しんだ後に、少しずつ売りに行くしかねぇな。ほら、あとは自分達で仲間の所に行けよ。俺は他の家を襲うのに忙しいんだよ」
「うぐっ! いちいち押さなくても言えば分かります!」

 男に背中を押されて、一ヶ所に集められている村の人達の所に歩いていく。
 女性の姿しか見えないのは、お父様のように男性は殺されたからでしょう。

「エレオノーラ様‼︎ リュドミラ様も‼︎ ご無事で何よりです!」
「心配をおかけしました。もう大丈夫です」

 お母様と私の姿を見ると、囚われていた人達の表情が一瞬で輝いた。
 そうよ! これだけの人がいるなら、盗賊達に村を好きにさせる必要ないわ。
 皆んなで反撃すれば逃げ出すはずです。

「お母様、皆んなで戦いましょう。人数はこちらが勝っています」
「やめなさい。戦って勝てる相手じゃありません」
「そんなぁ……では、お母様はあんな奴らに我慢して犯され続けろと言うのですか? 私は屈辱に耐えて、あんな奴らの顔色をうかがって生きるなんて嫌です!」
 
 盗賊達に聞かれないように小声で、お母様と集められた人達に訴える。
 さっきの男に胸を触られた感触を思い出すだけで、身体が怖くて震えてしまう。
 あんな怖くて気持ち悪い思いを、他の女性達にさせるわけにはいかない。

「リュラ、あなたの気持ちは分かります。娘の初めての相手がケダモノなんて、私も耐え切れません。だから、私の命に換えても子供達だけは逃します。皆さんも協力してください」
「お母様……」
「リュラ、この指輪を持って森の遺跡を目指しなさい。代々村の長に伝わる指輪です。村に危機が訪れた時、これを持って遺跡を目指すように伝えられています。あなたが次の村長です。子供達を頼みましたよ」
「はい、お母様!」

 お母様が握り締めていた手を開くと、そこにはお父様がいつも嵌めている指輪があった。
 指輪をしっかりと受け取ると、盗賊達の隙を見つけて、お母様と縛られている人達の縄や布を解いていく。

「皆さん、出来るだけ色々な方向に走って逃げてください。それだけで捕まえられる確率は減ります。子供達の為にも自分の為にも頑張りましょう」

 お母様の言葉に皆んなで頷くと、一斉に走り出した。
 私はお母様と取り巻き達と一緒に、森の遺跡の方向を目指した。
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