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最後の恋は神さまとでした
真面目にやりやがれ/4
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結婚前の挨拶は最近きっちりカットされて、おまけの倫礼には事後報告のみとなっていた。
「初めまして、倫礼と申します」
倫礼が頭を下げると、神である火炎不動明王は肉体も同時に見ていて、少し驚いた顔をした。
「おや、君はあの時の女性ではありませんか」
「そうなんです。こんなふうにまた会うとは思っていませんでした」
悪と戦っている時に、ほんの一メートルほどに近づいた時があったのだ。言葉を交わしたわけではないが、近くにきた気配は、おまけにも感じ取れた。
あの戦いは、二人の心の中に昨日のことのように残っていた。火炎不動明王はあごに手を当てふむと真面目な顔でうなずく。
「あの時すでに、運命の出会いだったわけです」
「確かに運命でした。こんな未来が待っているとは思ってませんでしたから」
神と守護される人間という間柄で、夫婦になるという未来が待っているとは思っていなかった。
「僕もです」
あの時代は、神々の力も今よりずっと弱いもので、自分の未来を予測することができず、ずっと悪が続いてゆくのだと、誰もが信じていたのだ。まさか、悪が崩壊する日がくるとは夢にも思わなかった。
愛には誠意を。おまけの倫礼はいを決して、話を切り出した。
「はっきり伝えたほうがいいと思うので、言いますが、テレビゲームの火炎不動明王さんのキャラクターをプレイしたんですが、恋愛対象として見てはいませんでした」
「そうですか」
恋愛対象ではないのは、お互い様だ。しかし、愛せる可能性が少しでもあるから、結婚に踏み切るのだ。戸惑っている暇はない。みんな仲良くの法律があるのだから。
「それではまず、本名で呼んでいただくところから始めましょう」
「え……?」
火炎不動明王の提案に、おまけの倫礼はぽかんとした顔をした。すぐに、意識が戻ってきて、納得の声を上げる。
「あ、あぁ、そうですよね。明王がついてる本名なんてないですもんね。何て言うんですか?」
「たかふみと言います」
感心したため息を、倫礼は思わすもらした。
「ゲームのキャラクターと呼び方は一緒ですね」
「あちらはこうなることを考慮されていたのかもしれません」
「さすがだ。神さまの神さまは……」
倫礼は目をキラキラ輝かせていたが、すぐに戸惑い顔になった。
「え~っと、字は……」
「君ほどの霊感があればあれられるはずです」
たかふみから言われて、倫礼は神経を研ぎ澄ました。どこか遠くを見ているような瞳をする。
「ん~~?」
「というか、僕は君に当ててほしいです」
子供たちの名前を聞いたり、大人の神さまの名前を着たりした経験が生かされ、倫礼の頭の中でピカンと電球がついたようにひらめいた。
「わかった。貴いが増える、参はたくさんの意味。で、貴増参ですよね?」
「えぇ、正解です。これを初めに、仲良くなっていきましょう」
「はい、よろしくお願いします」
初めの挨拶も済んで、夫婦十六人の生活が始まった。
「初めまして、倫礼と申します」
倫礼が頭を下げると、神である火炎不動明王は肉体も同時に見ていて、少し驚いた顔をした。
「おや、君はあの時の女性ではありませんか」
「そうなんです。こんなふうにまた会うとは思っていませんでした」
悪と戦っている時に、ほんの一メートルほどに近づいた時があったのだ。言葉を交わしたわけではないが、近くにきた気配は、おまけにも感じ取れた。
あの戦いは、二人の心の中に昨日のことのように残っていた。火炎不動明王はあごに手を当てふむと真面目な顔でうなずく。
「あの時すでに、運命の出会いだったわけです」
「確かに運命でした。こんな未来が待っているとは思ってませんでしたから」
神と守護される人間という間柄で、夫婦になるという未来が待っているとは思っていなかった。
「僕もです」
あの時代は、神々の力も今よりずっと弱いもので、自分の未来を予測することができず、ずっと悪が続いてゆくのだと、誰もが信じていたのだ。まさか、悪が崩壊する日がくるとは夢にも思わなかった。
愛には誠意を。おまけの倫礼はいを決して、話を切り出した。
「はっきり伝えたほうがいいと思うので、言いますが、テレビゲームの火炎不動明王さんのキャラクターをプレイしたんですが、恋愛対象として見てはいませんでした」
「そうですか」
恋愛対象ではないのは、お互い様だ。しかし、愛せる可能性が少しでもあるから、結婚に踏み切るのだ。戸惑っている暇はない。みんな仲良くの法律があるのだから。
「それではまず、本名で呼んでいただくところから始めましょう」
「え……?」
火炎不動明王の提案に、おまけの倫礼はぽかんとした顔をした。すぐに、意識が戻ってきて、納得の声を上げる。
「あ、あぁ、そうですよね。明王がついてる本名なんてないですもんね。何て言うんですか?」
「たかふみと言います」
感心したため息を、倫礼は思わすもらした。
「ゲームのキャラクターと呼び方は一緒ですね」
「あちらはこうなることを考慮されていたのかもしれません」
「さすがだ。神さまの神さまは……」
倫礼は目をキラキラ輝かせていたが、すぐに戸惑い顔になった。
「え~っと、字は……」
「君ほどの霊感があればあれられるはずです」
たかふみから言われて、倫礼は神経を研ぎ澄ました。どこか遠くを見ているような瞳をする。
「ん~~?」
「というか、僕は君に当ててほしいです」
子供たちの名前を聞いたり、大人の神さまの名前を着たりした経験が生かされ、倫礼の頭の中でピカンと電球がついたようにひらめいた。
「わかった。貴いが増える、参はたくさんの意味。で、貴増参ですよね?」
「えぇ、正解です。これを初めに、仲良くなっていきましょう」
「はい、よろしくお願いします」
初めの挨拶も済んで、夫婦十六人の生活が始まった。
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