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心霊探偵はエレガントに〜karma〜
夕闇を翔る死装束/7
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聖霊師が千里眼で見たものと、小さな子供が体験したことの相違点を探してゆく。瞬は振り返って、玄関へと続く石畳を小さな手で指差した。
「あそこに、ひとがいたの」
「女の人でしたか?」
「たぶん……そう」
「どのような服を着ていましたか?」
死装束だとわかっているが、幻を見せられているかもしれない、という可能性が残っている以上、崇剛は決して断定しない。
「しろい……きもの?」
崇剛は聞きながら、不自然にならないよう会話を続けてゆくという、デジタルにふたつの動作を両立してゆく。
生霊であるという可能性が45.56%あります。
念[脚注]を飛ばして、こちらへきている以上、望みがあるという可能性が98.97%――
冷静な水色の瞳と純心なベビーブルーの瞳は真っ直ぐ見つめ合う。
「何か言っていましたか?」
「たすけてって、いってた……」
「そうですか」
崇剛は間を置くための言葉――相づちを打って、情報を素早く処理する。
(死期が迫っていて、助けて欲しいのでしょうか? そうでしたら、あちらを言ってこないとおかしいです)
走ってきた衝動で乱れてしまった、紺の後れ毛は神経質な指先で耳にかけられた。
「他には何か言っていませんでしたか?」
「いってなかった」
「そうですか」
崇剛は館の二階でも一番東にある部屋を見上げた。未だに姿を現さない住人一人の面影を脳裏でなぞる。
瑠璃さんが気づかない。起きてこないということは……。
生霊であるという可能性が高くなり89.98%――
助けてを求めて、こちらへきているのでしたら居場所を言うという可能性が78.45%――
しかしながら、言っていないみたいです。
そうなると――
背中を見せている、聖霊師のロイヤルブルーサファイアのカフスボタンが高貴な光を放っている袖口を、瞬の小さな手が引っ張った。
「せんせい、あとね?」
「えぇ」
優雅にうなずき、崇剛は顔を元へ戻した。
「ひとがたくさんいて……ん?」
五歳の子供には少々伝えづらく、よく覚えていないから、闇に染まり始めた夕暮れの空を見上げて難しい顔をした。
崇剛は千里眼を使って、今ここにいない死装束を着た女の霊を霊視する。時間を巻き戻し、石畳の上でさっきあったことを視覚、聴覚化した。
今世での記憶……という可能性が46.78%――
今しがた瞬が見たものと同じものを時間差遅れで全て霊視して、冷静な頭脳に記録した崇剛は、子供が答えやすいように質問を簡単にした。
「何かがぶつかった音が、聞こえたのではありませんか?」
「そう」
「あとは、夜ではありませんでしたか?」
「そう」
瞬は少しだけ不安げな顔をした。崇剛は大きな手のひらで、ずいぶん暗い色になってしまった小さな頭を優しくなでながら、
夜、女性の悲鳴が聞こえ、血の匂いがした。
こちらは、過去世の記憶……という可能性が78.87%――
実際にその場を見たわけではなく、策略家は何ひとつ事実として断定できなかった。
「あとは落ちませんでしたか?」
「んー……? たぶん、そう」
空が遠くなっていく風景をぼんやりと思い出して、瞬は首を傾げた。
「そうですか」
崇剛は立ち上がってあごに手を当て、思考時のポーズを取った。生霊がいたであろう石畳の上を眺めたまま、
今世での記憶であるという可能性が45.46%――
ここまで出てきた情報に歪みがないか推し量り始めた、策略家神父の冷静な頭脳には、理論と数値が規律を美しく生み出した。
死装束を着た女は一人でした。
ですが、声が複数聞こえてきました。
冷静な水色の瞳はついっと細められる。
おかしい――
[脚注]想い
「あそこに、ひとがいたの」
「女の人でしたか?」
「たぶん……そう」
「どのような服を着ていましたか?」
死装束だとわかっているが、幻を見せられているかもしれない、という可能性が残っている以上、崇剛は決して断定しない。
「しろい……きもの?」
崇剛は聞きながら、不自然にならないよう会話を続けてゆくという、デジタルにふたつの動作を両立してゆく。
生霊であるという可能性が45.56%あります。
念[脚注]を飛ばして、こちらへきている以上、望みがあるという可能性が98.97%――
冷静な水色の瞳と純心なベビーブルーの瞳は真っ直ぐ見つめ合う。
「何か言っていましたか?」
「たすけてって、いってた……」
「そうですか」
崇剛は間を置くための言葉――相づちを打って、情報を素早く処理する。
(死期が迫っていて、助けて欲しいのでしょうか? そうでしたら、あちらを言ってこないとおかしいです)
走ってきた衝動で乱れてしまった、紺の後れ毛は神経質な指先で耳にかけられた。
「他には何か言っていませんでしたか?」
「いってなかった」
「そうですか」
崇剛は館の二階でも一番東にある部屋を見上げた。未だに姿を現さない住人一人の面影を脳裏でなぞる。
瑠璃さんが気づかない。起きてこないということは……。
生霊であるという可能性が高くなり89.98%――
助けてを求めて、こちらへきているのでしたら居場所を言うという可能性が78.45%――
しかしながら、言っていないみたいです。
そうなると――
背中を見せている、聖霊師のロイヤルブルーサファイアのカフスボタンが高貴な光を放っている袖口を、瞬の小さな手が引っ張った。
「せんせい、あとね?」
「えぇ」
優雅にうなずき、崇剛は顔を元へ戻した。
「ひとがたくさんいて……ん?」
五歳の子供には少々伝えづらく、よく覚えていないから、闇に染まり始めた夕暮れの空を見上げて難しい顔をした。
崇剛は千里眼を使って、今ここにいない死装束を着た女の霊を霊視する。時間を巻き戻し、石畳の上でさっきあったことを視覚、聴覚化した。
今世での記憶……という可能性が46.78%――
今しがた瞬が見たものと同じものを時間差遅れで全て霊視して、冷静な頭脳に記録した崇剛は、子供が答えやすいように質問を簡単にした。
「何かがぶつかった音が、聞こえたのではありませんか?」
「そう」
「あとは、夜ではありませんでしたか?」
「そう」
瞬は少しだけ不安げな顔をした。崇剛は大きな手のひらで、ずいぶん暗い色になってしまった小さな頭を優しくなでながら、
夜、女性の悲鳴が聞こえ、血の匂いがした。
こちらは、過去世の記憶……という可能性が78.87%――
実際にその場を見たわけではなく、策略家は何ひとつ事実として断定できなかった。
「あとは落ちませんでしたか?」
「んー……? たぶん、そう」
空が遠くなっていく風景をぼんやりと思い出して、瞬は首を傾げた。
「そうですか」
崇剛は立ち上がってあごに手を当て、思考時のポーズを取った。生霊がいたであろう石畳の上を眺めたまま、
今世での記憶であるという可能性が45.46%――
ここまで出てきた情報に歪みがないか推し量り始めた、策略家神父の冷静な頭脳には、理論と数値が規律を美しく生み出した。
死装束を着た女は一人でした。
ですが、声が複数聞こえてきました。
冷静な水色の瞳はついっと細められる。
おかしい――
[脚注]想い
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