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너를 관리! 2
しおりを挟む数日後
「今月末、シウの誕生日だったな」
腕を組んで社長室の大きな窓から空を見上げる父。
社長室に呼び出したと思ったら何だよ、急に。
「そうですね」
「あの子も もう25か・・・。ここへ来た時は確か18だったか?」
「そうですね」
「そうか・・・。では祝ってやらないと」
「・・・そうですね」
父の言う『誕生日を祝う』とは、自分が行きつけの焼肉屋の食事券10万円分だ。毎度毎度、捻りの無い誕生日プレゼント。だがしかし、肉が大好物のシウにとっては最高のプレゼントだ。
「その日のスケジュールはどうなっている」
「休みが欲しいと言われましたが、立ち上げたファッションブランドの新作発表の会場がその日しか抑えられなくて、翌日をオフにしましたが・・・何故です?」
「そうか」
食事券は毎年 俺が親父の秘書から預かってんだ。スケジュールなんて関係無いだろ。
「つかぬ事を聞くが、お前はシウの・・・その、女装などというものを見たいと思うか」
「は・・・?」
つかぬ事過ぎるだろ。わざわざデスクワーク中に強引に呼び付けて息子にする話なのか、これは。
「女装は趣味ではありませんね。俺は女が好きな訳ではないので」
「ふむ。了解した」
一人納得した父に、もういい下がれ、と言われて社長室を出る。
なんの時間だったんだ。もしかして女装のオファーでも来たか?まあシウなら女装でも何でも似合うだろうけど・・・。
やっぱり俺は、普段シウが着てるような大きめのシャツとゆったりめのテーパードトラウザーだとか、ビッグTシャツにスキニーだとかの方が好みだな。
体のラインを隠しつつもユルい感じで萌え袖になっていたり項や足首が見えてたり・・・ああ、堪らん。
じゃなくて!!
俺の服の好みは今どうでもいい。
親父がまた何かを企んでいる事の方が重要案件だ。
帰ってすぐにキッチンへ入り夕飯の支度をしながら、リビングのソファに座り クアイルのライブ映像を観ているシウに、俺は探りを入れてみる事にする。
「誕生日、オフに出来なくて悪かったな」
「んー? ああ、別にいいよ。次の日オフにしてくれたじゃん」
「ならいいけど・・・。どこか行きたいとか、何かしたいとか、希望あるか?」
「んー・・・。万里と一緒に居れるなら何だっていいよ、俺は。・・・すげー、このテヒョニヒョンのソロカッコいいなぁ。俺も久しぶりにラップやりたいなぁ」
シウは俺の話をさほど気にする様子もなく、大画面に映るクアイルのパフォーマンスに魅入っている。
シウは何も知らなそうだな。
『誕生日』『祝い』『女装』・・・。親父が言ったこれらのキーワードから連想してみようと試みるが、フリフリのワンピース姿でケーキをデザインしたおふざけメガネを掛けて焼肉を食べるシウしか頭に浮かばなくて、とりあえず考えるのをやめる事にした。
そうこうしている内にあっという間にシウの誕生日当日。
ドラマのオファーが激減したこともあり、コスメのプロデュースと、自身で立ち上げたファッションブランドのデザインに力を入れているシウ。今やタレント兼実業家になりつつある。
無事新作発表を終えて、モデルやスタッフ達との打ち上げ後、ほろ酔いのシウが車の後部座席でショーを振り返る。
「あー、良かった。お客さんの反応悪くなかったよね?特にすばるには感謝しなきゃだよね。トリ飾ってくれたし、すっげーカッコよかったし!すばるが出た時の歓声ヤバかったよな」
「そうだな。さすが何年もトップアイドルやってるだけの事はある」
正直、歓声がヤバかったのは、シウとすばるが手を繋いでランウェイを歩いたからだと思うけどな。
「うー・・・ねえ万里、俺きょー誕生日。25だよ?」
「ああ。おめでとう。明日ゆっくり祝ってやるからな」
「そーじゃなくてぇ、25って恋愛解禁だよね?」
「・・・まあ」
だとしたって、俺たちの関係を世間に公表するなんてできるはずないだろ。
「ねぇ、明日、遊園地行きたいな。前に万里と一緒に行ったところ。そんでさぁ、またバーベキューしたい」
シウは何年経っても変わらない。突然子供みたいな我儘を言って、もっと欲張ってもいいのに、いつまでも純粋なままだ。
「わかった。連れてってやるよ。酔ってんだから、マンション着くまで寝てろ」
「うん・・・寝る・・・。起きたら・・・別荘だと、いいな・・・・・・」
バックミラーを見ると、背もたれに寄りかかって目を閉じているシウが映る。
起きたら別荘か・・・。よし!
シウの我儘を叶えるために、俺はマンションへは戻らず首都高へと入る。
本当なら明日、ずっと買えずにいた指輪を買いに行くつもりでいたが、シウの希望を優先する事にした俺は、別荘の管理人に連絡を入れ深夜の中央自動車道を山梨に向け車を走らせる。
別荘に到着すると、午前2時を回っていたにも関わらず、管理人のオヤジが出迎えて鍵を手渡してくれた。
「すみません。こんな時間に」
「いいんですよ。めでたい日なんだから。それに社長に・・・・・・っと、これはいいか。ではよい休日を」
片手を上げて軽く頭を下げた管理人はそそくさと帰って行く。
・・・ん? つーかあのオヤジ、「社長に・・・」とか言ってなかったか?
それに「めでたい日」って何だ。なんでシウが誕生日だって知ってるんだ。まるで、俺たちが今日ここへ来るのを父から聞いていたような口振りだった。
俺はスライドドアを開け、シウの肩を揺する。
「おい、起きろシウ。おまえの望み通り別荘に連れてきてやったぞ」
「んー・・・うんー・・・」
項垂れたまま曖昧な返事しかしない。
「起きろって!おまえまた親父と結託してたんじゃないだろうな!?」
「んー・・・しゃちょー?うーん・・・ばんり、おんぶー・・・」
ダメだ。ここ2、3日はショーの準備でマトモに寝れていなかったから、シウは相当疲れているようで起きる気配が無い。
俺は仕方なくシウを背負って別荘へと入り、寝室のベッドに寝かせてから屋内を隈無く調べる。
特に変わった所は無さそうだ。
明日、シウが目覚めてから聞くか・・・。
シウ同様、疲れ切っていた俺はベッドで横になり、いつの間にか眠ってしまっていた。
予想もしなかった事が、翌日に待ち構えているとも知らずに・・・
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