元妻からの手紙

そして明かされる真実②

「け、計画……とは……」
私はやっとの事でそれだけを口にする。
チュニックは凄い形相でフレアをずっと睨みつけていた。

確かにフレアの言う通り父も母も言っていた『計画』。
そしてフレアも言っていた。
「どこから説明するべきでしょうか」
フレアのそんな声が聞こえる。
「いつ、から…」
フレアの声に途切れ途切れにそう言った私をフレアは一瞥し、少し考えるようにした後話し出す。
「いつから、そうですね……私が……チュニックさんが今までやって来た事を全て明るみにして罪を償って貰おうと決意したのは……チュニックさんがこの屋敷に来て私を再び虐め始めてからですかね」
そんなに…早くから……。
と言うか……本当にチュニックがフレアを虐めていたのだな、と今までチュニック本人の口から聞いたが信じたく無かった事実がフレアの口から聞くことではっきりと現実になった。
「チュニックさんはアカデミーの頃から私を目の敵にしていました。流石に表立って自分よりも高位の貴族を虐めるなんて事は無かったですが足を引っ掛けられたりお茶をかけられたりは日常茶飯事でした。持ち物やドレスを破られるなんて事もありました。ですが私は特に気にせず日々を過ごしていました。だって私がやめて欲しいと言った所でやめてくれるような人では無いと思いましたし、証拠もなくそんな事を言っては私が逆にチュニックさんに罪を着せようとしている、なんてありもしない事言われそうでしたし」
ね？と言いながらチュニックに微笑むフレア。
「……アカデミー時代は何とか我慢して過ごしたのですけれど…あの夜会で出会って、貴方は私になんの相談もせずチュニックさんの言う事を信じて私の侍女へ据えた。もうその時にはチュニックさんが何か企んで近付いて来ていると分かっていましたが………同時に思ったのです、私の傍にチュニックさんを置いておけば……私は被害に合うかもしれないけれど、他の方達の被害が減るのではないか、と」
「………………………」
「思った通りチュニックさんは私を虐め始めました。まず、私が持っていたものを全て奪い売り払いました。そして私の部屋の中では自分が主であるかのように振る舞いました。きっとチュニックさんは私が大人しく貴女を怖がって何も言い返したりしないのだと思っていたのでしょうね……外には聞かせられないような暴言も沢山言われましたわ………勿論その辺も全て記録済みです。何月何日何時にどこでどんな事を言ったか……それももう然るべき所に提出済みです」
「何ですって！？……でも、そんな…記録しただけの物…証拠になんてなる筈……」
「なりますよ？毎日毎日全て記録しましたから。それに私だけで無く使用人にも記録して貰っていましたので……チュニックさんと私…どちらの言うことが信用されるでしょうね？」
そう言ってフレアは楽しそうに笑う。
本当に、本当にあれはフレアなのか？
堂々と私達の前に立ちチュニックに負けずはっきりものを言う………私の隣に立っていた頃とは全く違う…。
そんな事をぼんやり思う私にチュニックの聞くに耐えない怒鳴り声が聞こえてくる。
「なんなの？なんなの？今更何？負け惜しみ？私に虐められて何にも出来なかったあんたが！何？全部？計画？ふざけんなよ！私があんた如きに踊らされてたとでも言うの？有り得ないわ！」
そう言って肩で息をするチュニックにフレアは冷たく言い放つ。
「そうですよ、貴女は……ずっと私の掌の上で踊らされていただけです……ご愁傷様」
その瞬間チュニックがフレアの頬を平手で打っていた。
「ふっ……とうとうみんなの前で手を出して下さいましたね」
フレアがそう言ったのと同時に部屋の中に憲兵が入って来た。
目の前で取り押さえられるチュニック……。
「今日のこの日をどれだけ待ち望んでいた事か…………まだまだ先は長いですからね、牢の中でしっかり自分のやって来た事を見つめ返して下さい。貴女が反省する事などないと思いますが……一応そう言っておきますわ」
チュニックを見下ろしながら言ったフレアのその言葉を最後にチュニックは両腕を憲兵に捕まれ引き摺られるように連れて行かれた。


私は何も言えずその光景を見ている事しか出来なかった。