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第6話「天葉凶星の末路と天国への導き」
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「黒刃さま!」
『まかせなさい!!』
お互いに息を合わせると鞘は黒刃に超生命を注ぎ込む。同時に黒刃が呪文を唱え始める。
『材質変化の我が刀身よ、強靭な力を秘めしものへと変化せよ!』
すると呪文に呼応し、光に包まれた黒刃の刀身が鉄から石へと変化したのだ。
鞘は飛んできた岩石を次から次へと黒刃を振り下ろし砕いていく。
【天葉には自ら意思を持ち言語を話す日本刀・黒刃が宝刀として置かれているらしい。その刀、自らの刀身を様々な材質に変化させる能力を持つようだ】
このような噂がいつからか囁かれるようになり、方方から高値で黒刃を譲ってほしいとの話をされたものの、当主は絶対譲らなかった。
実は、凶星もあの事件を利用して黒刃を盗もうとしたが、黒刃は跡形もなく忽然と消えたのだ。
凶星は久々に目にした黒刃に「......貴様。この17年間どこにいた?」と恨めしく尋ねた。
『お前なんかには教えてやらない。ま、ヒントを出すならお前には絶対見つからない安全な場所だよ』
黒刃がいたのは鞘の深層心理の中だ。なるほど、確かに凶星には絶対見つからずたどり着けない場所と言えよう。身の危険を感じた黒刃にとって最大の安全地帯だった。
「僕は貴様が鞘に振るわれてる事自体、許してないんだよ」
『仕方ないだろ。俺と鞘は波長が合っちゃったんだし、血の契約だってしてるんだ。お前にとやかく言われる筋合いはない』
「き、貴様ぁーーー!!」
激昂する凶星に黒刃が『それよりも。俺なんかに意識を向けてていいのか?』と尋ねた。
「何を.....」
すると凶星の顔スレスレに黒刃の刃先があったのだ。その直後に『鞘がお前に向かってるぞって教えようとしたんだけど、遅かったか』という黒刃の声がした。
突然の事に凶星はその場に崩れ落ちた。一方、刃先を彼に向けた鞘がゆっくりと黒刃を振りかざした。このまま振り下ろせば、凶星の頭をかち割る事になる。
刀身も元の鉄の刃に戻っていた。
「あ...あ...あ...さ、鞘......? 本当にこの僕を、殺すつもりなのかい?」
「はい」
「......ヒッ」
「あなたは17年前、私を助けるのではなく殺すべきだったのです。あの時から私の中にあったのは......あなたへの復讐心だけでしたから」
鞘から言い放たれた言葉に凶星は、彼女が自分に振り向く事は永遠にないと気づいた。
「さよなら。天葉凶星」
別れの言葉をつぶやいて鞘が凶星めがけて黒刃を振り下ろした......次の瞬間!
どこからともなく糸が凶星に襲いかかり、彼の体をぐるぐる巻きにしたのだ。
「な、なんだ!! う、うわぁぁぁ!!」
凶星はその状態のまま、天井へと連れ去られてしまった。それはクモの糸でありそこには1ぴきのクモがいた。
「まだ1ぴきいたのか」
音羽の元に駆けつけた光琉が悔しそうにつぶやくと、クモを見上げていた音羽がある事に気づく。
「ねぇ、あのクモの顔......人間の顔じゃないかな」
「え?!」
半信半疑の光琉もよく見てみると......確かに人間の顔だと認識出来た。
「それにあの顔、知ってる顔だぞ」
そう。
クモの顔になっている人間顔は、先程クモたちに喰われたハズの真弥であった。驚愕する2人に対して鞘は冷静につぶやく。
「何らかの力でクモに喰われた真弥さんが逆にクモを取り込んだのです」と。
一方、連れ去られた凶星も真弥の驚愕の姿に「真弥......お、お前......!」とパニックになった。糸で体をグルグル巻きにされてる以上、もはや凶星になす術なしだ。
更に驚くべきはクモを取り込んでさえも、凶星への一途な想いを抱き続けている事だ。その証拠に凶星を見つめる彼女の表情は喜びに満ちていた。
「私は嬉しいです。こうして凶さまに再び会えるなんて......」
だが、次第に彼女の言動がおかしな方向に向かっていく。
「やっと...やっと凶さまとひとつになれるのですね」
「ま、真弥......お前......何する気だ?!」
すると真弥はガブリと凶星の頭部にかぶりついたのだ。
「や、やめろ真弥!! 僕を食べるなぁぁぁ!! ウギャァァァ!!」
抵抗の叫びをあげていた凶星だったが、やがて「ガハっ」という声を最後に声があがらなくなった。おそらく息絶えたのだろう。
そして周囲にはシャリシャリ、ゴリゴリという咀嚼音が響いていた。
やがて音はしなくなり、真弥の口周りは血で真っ赤に染まっていた。
「あぁ、美味しかった。私、凶さまを頂いちゃったのね......ウフフ...アーハッハッハッハ」
恍惚の表情を見せ高笑いする真弥。そんな彼女を前に言葉を失っている光琉と音羽に対し、鞘は悲壮な表情を浮かべた。
『......鞘』
「わかっています。私に出来るのは、せめて彼女を安らかに天国へ送る事です」
一方、高笑いしていた真弥は突如、憎悪の眼差しで鞘を見下ろし、ナント彼女の前に飛び降りてきた。つまり鞘の体がすっぽり、クモの真弥に覆われてしまったワケだ。
「「鞘さん!!」」
心配する2人に鞘は「大丈夫です」と返してから、目の前の真弥を見上げる。
「どう? 天葉鞘!! 凶さまは私が頂いたわよ! 悔しいでしょ?! 腹が立つでしょ?! 凶さまを私は食べちゃったんですもの。あなたも食べたかった?」
「......」
「口もきけないほど悔しいのね」
「......いいえ。悔しいのは、あなたがたどったこの末路です。天葉凶星に...あんな男に出会わなければ、あなたがこんな最期を迎える事はなかった」
「......なにをっ」
「あなたは医者です。その知識を利用すれば私を治療するふりをしつつ殺せたのです。あの男には「手を尽くしたがダメだった」と説明すれば受け入れられなくてもあなたを疑う事はしないでしょう。でもあなたは懸命に私を治療し、冷凍保存までして下さった。それだけで、あなたが本当は心の優しい人であり、患者の命を第一に考えられる素晴らしい医者である事がわかります」
「な、何を言ってるのよ! 私はアンタを殺そうとしたのよ!!」
「存じ上げてます。ですが反面、女性としてのあなたの気持ちもわかるのです。好きな人に決して振り向いてもらえない辛さ......もしあの人が私以外の人に夢中になり、振り向いてくれないとしたら、私もあなたと同じように嫉妬を抱きあの人が夢中な相手を憎んだでしょうから」
「......私は......アンタが嫌いなのよ......!」
真弥はいつしか泣いていた。鞘を襲おうとした数本の手もダランと下に落ちていた。
「わかってます。でもあなたを憎めない。むしろ感謝してます」
「......私に感謝って......っ、バカじゃないの、アンタ...」
「そうなんですかね」
「そうよ、大バカよ......!」
鞘は真弥の頭上に黒刃を振りかざす。
「せめてあなただけは天国に送らせて下さい」
「天国? こんな私でも......行けるのかしら?」
「はい。行けます」
すると黒刃の刀身が白く輝きを放ち始めた。
「魂刈り」
鞘が振り下ろした黒刃によって胴体を斬られた真弥だが、彼女の魂だけクモから断ち切りやがて霊体へと姿を変え、クモは跡形もなく消え去っていった。
そして真弥の霊体は空高くへと昇っていったのだった。
見上げながら鞘は祈った。
「どうか来世では、幸せな人生を送れますように」と。
『まかせなさい!!』
お互いに息を合わせると鞘は黒刃に超生命を注ぎ込む。同時に黒刃が呪文を唱え始める。
『材質変化の我が刀身よ、強靭な力を秘めしものへと変化せよ!』
すると呪文に呼応し、光に包まれた黒刃の刀身が鉄から石へと変化したのだ。
鞘は飛んできた岩石を次から次へと黒刃を振り下ろし砕いていく。
【天葉には自ら意思を持ち言語を話す日本刀・黒刃が宝刀として置かれているらしい。その刀、自らの刀身を様々な材質に変化させる能力を持つようだ】
このような噂がいつからか囁かれるようになり、方方から高値で黒刃を譲ってほしいとの話をされたものの、当主は絶対譲らなかった。
実は、凶星もあの事件を利用して黒刃を盗もうとしたが、黒刃は跡形もなく忽然と消えたのだ。
凶星は久々に目にした黒刃に「......貴様。この17年間どこにいた?」と恨めしく尋ねた。
『お前なんかには教えてやらない。ま、ヒントを出すならお前には絶対見つからない安全な場所だよ』
黒刃がいたのは鞘の深層心理の中だ。なるほど、確かに凶星には絶対見つからずたどり着けない場所と言えよう。身の危険を感じた黒刃にとって最大の安全地帯だった。
「僕は貴様が鞘に振るわれてる事自体、許してないんだよ」
『仕方ないだろ。俺と鞘は波長が合っちゃったんだし、血の契約だってしてるんだ。お前にとやかく言われる筋合いはない』
「き、貴様ぁーーー!!」
激昂する凶星に黒刃が『それよりも。俺なんかに意識を向けてていいのか?』と尋ねた。
「何を.....」
すると凶星の顔スレスレに黒刃の刃先があったのだ。その直後に『鞘がお前に向かってるぞって教えようとしたんだけど、遅かったか』という黒刃の声がした。
突然の事に凶星はその場に崩れ落ちた。一方、刃先を彼に向けた鞘がゆっくりと黒刃を振りかざした。このまま振り下ろせば、凶星の頭をかち割る事になる。
刀身も元の鉄の刃に戻っていた。
「あ...あ...あ...さ、鞘......? 本当にこの僕を、殺すつもりなのかい?」
「はい」
「......ヒッ」
「あなたは17年前、私を助けるのではなく殺すべきだったのです。あの時から私の中にあったのは......あなたへの復讐心だけでしたから」
鞘から言い放たれた言葉に凶星は、彼女が自分に振り向く事は永遠にないと気づいた。
「さよなら。天葉凶星」
別れの言葉をつぶやいて鞘が凶星めがけて黒刃を振り下ろした......次の瞬間!
どこからともなく糸が凶星に襲いかかり、彼の体をぐるぐる巻きにしたのだ。
「な、なんだ!! う、うわぁぁぁ!!」
凶星はその状態のまま、天井へと連れ去られてしまった。それはクモの糸でありそこには1ぴきのクモがいた。
「まだ1ぴきいたのか」
音羽の元に駆けつけた光琉が悔しそうにつぶやくと、クモを見上げていた音羽がある事に気づく。
「ねぇ、あのクモの顔......人間の顔じゃないかな」
「え?!」
半信半疑の光琉もよく見てみると......確かに人間の顔だと認識出来た。
「それにあの顔、知ってる顔だぞ」
そう。
クモの顔になっている人間顔は、先程クモたちに喰われたハズの真弥であった。驚愕する2人に対して鞘は冷静につぶやく。
「何らかの力でクモに喰われた真弥さんが逆にクモを取り込んだのです」と。
一方、連れ去られた凶星も真弥の驚愕の姿に「真弥......お、お前......!」とパニックになった。糸で体をグルグル巻きにされてる以上、もはや凶星になす術なしだ。
更に驚くべきはクモを取り込んでさえも、凶星への一途な想いを抱き続けている事だ。その証拠に凶星を見つめる彼女の表情は喜びに満ちていた。
「私は嬉しいです。こうして凶さまに再び会えるなんて......」
だが、次第に彼女の言動がおかしな方向に向かっていく。
「やっと...やっと凶さまとひとつになれるのですね」
「ま、真弥......お前......何する気だ?!」
すると真弥はガブリと凶星の頭部にかぶりついたのだ。
「や、やめろ真弥!! 僕を食べるなぁぁぁ!! ウギャァァァ!!」
抵抗の叫びをあげていた凶星だったが、やがて「ガハっ」という声を最後に声があがらなくなった。おそらく息絶えたのだろう。
そして周囲にはシャリシャリ、ゴリゴリという咀嚼音が響いていた。
やがて音はしなくなり、真弥の口周りは血で真っ赤に染まっていた。
「あぁ、美味しかった。私、凶さまを頂いちゃったのね......ウフフ...アーハッハッハッハ」
恍惚の表情を見せ高笑いする真弥。そんな彼女を前に言葉を失っている光琉と音羽に対し、鞘は悲壮な表情を浮かべた。
『......鞘』
「わかっています。私に出来るのは、せめて彼女を安らかに天国へ送る事です」
一方、高笑いしていた真弥は突如、憎悪の眼差しで鞘を見下ろし、ナント彼女の前に飛び降りてきた。つまり鞘の体がすっぽり、クモの真弥に覆われてしまったワケだ。
「「鞘さん!!」」
心配する2人に鞘は「大丈夫です」と返してから、目の前の真弥を見上げる。
「どう? 天葉鞘!! 凶さまは私が頂いたわよ! 悔しいでしょ?! 腹が立つでしょ?! 凶さまを私は食べちゃったんですもの。あなたも食べたかった?」
「......」
「口もきけないほど悔しいのね」
「......いいえ。悔しいのは、あなたがたどったこの末路です。天葉凶星に...あんな男に出会わなければ、あなたがこんな最期を迎える事はなかった」
「......なにをっ」
「あなたは医者です。その知識を利用すれば私を治療するふりをしつつ殺せたのです。あの男には「手を尽くしたがダメだった」と説明すれば受け入れられなくてもあなたを疑う事はしないでしょう。でもあなたは懸命に私を治療し、冷凍保存までして下さった。それだけで、あなたが本当は心の優しい人であり、患者の命を第一に考えられる素晴らしい医者である事がわかります」
「な、何を言ってるのよ! 私はアンタを殺そうとしたのよ!!」
「存じ上げてます。ですが反面、女性としてのあなたの気持ちもわかるのです。好きな人に決して振り向いてもらえない辛さ......もしあの人が私以外の人に夢中になり、振り向いてくれないとしたら、私もあなたと同じように嫉妬を抱きあの人が夢中な相手を憎んだでしょうから」
「......私は......アンタが嫌いなのよ......!」
真弥はいつしか泣いていた。鞘を襲おうとした数本の手もダランと下に落ちていた。
「わかってます。でもあなたを憎めない。むしろ感謝してます」
「......私に感謝って......っ、バカじゃないの、アンタ...」
「そうなんですかね」
「そうよ、大バカよ......!」
鞘は真弥の頭上に黒刃を振りかざす。
「せめてあなただけは天国に送らせて下さい」
「天国? こんな私でも......行けるのかしら?」
「はい。行けます」
すると黒刃の刀身が白く輝きを放ち始めた。
「魂刈り」
鞘が振り下ろした黒刃によって胴体を斬られた真弥だが、彼女の魂だけクモから断ち切りやがて霊体へと姿を変え、クモは跡形もなく消え去っていった。
そして真弥の霊体は空高くへと昇っていったのだった。
見上げながら鞘は祈った。
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