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第7話「ネーミングと自己紹介と胸の痛み」
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空を見上げ、両手を合わせて祈る鞘の姿を音羽は美しい......と思い見惚れていた。
棺のフタを開け、自分を殺そうとした相手を憎めず感謝してると言った鞘。 ❝自分も好きな人に振り向いてもらえない辛さはわかる。「あの人」が私以外の人に夢中になったら......❞ と言っていたので彼女にも想い人がいるのだろう。
ーーーズキン。
ふと。音羽は胸のかすかな痛みを感じた。それも
鞘に想い人がいると考えた直後に。
(何? 今のズキンって。私、鞘さんに想い人がいる事にショックを受けてるの?! なんで?!)
その意味がわからず音羽はひとり悶々としていた。そんな妹に「どうした?」と声をかける光琉。
「え?」
「え? じゃないだろ。お前が頭抱えてウンウン唸ってるから」
そう教えられた音羽は確かに光琉の指摘どおりだったのであわてて「な、なんでもないの」とごまかした。自分ですらわからないのだから、ここはそう言った方が無難だ。
それを信じた光琉は「さぁ、鞘さんに挨拶とお礼に行くぞ」と音羽の手を掴んで駆け出した。同時に音羽は鞘が自分たちの母親の名を知っており、なおかつ姉だと言っていたと話すと光琉からは「そりゃそうだよ」と返ってきた。
「だって鞘さんは母さんの妹だからね。つまりは叔母さんって事になるんだよな」
「え? そうなの?」
音羽が知らないのも無理はない。母・葵は2人が5歳の時に病気で他界し、母っ子だった音羽はそれがショックで、まったく口を利かない時期があったのだ。
光琉は鞘に駆け寄ると、改めて自己紹介し、それにならって音羽も同じ事をした。
対して鞘は改めて姉の忘れ形見である甥と姪を見つめると「嬉しいです! 光琉さんと音羽さんに再び出会えて......あの事件で無事だった方々がいて下さって......」と言って2人を抱きしめたのだ。
一方、光琉も「音羽を守ってくれて、ありがとうございました」とお礼を言えば音羽も「鞘さんがいなかったら私はクモたちに喰われていました......ありがとうございました」と述べた。2人からお礼を言われた鞘は笑顔で「無事守れてよかったです」と返した。
その時だ。
『あの~鞘さん? 俺も2人に自己紹介したいんだけどなぁ』
鞘の手の中の黒刃が不貞腐れ気味に声を発したのだ。事実、鞘は黒刃を忘れていたので「申し訳ありません黒刃さま!! 姉上のご子息とご息女に会えた嬉しさでつい......」と言葉をにごした。
だが黒刃も2人を知っているのか『ああ! 葵の双子か?!』と反応し鞘が「はい」と返す。
『そうか~。あの赤ん坊がこんなに大きくなったんだなぁ』
鞘は改めて黒刃を2人の前に差し出すと、黒刃が自己紹介する。
『はじめまして。俺は黒刃。天葉に奉納されてた宝刀ってヤツ。こうやって言葉を話す刀だけどよろしくね』
一方の光琉は我が家の宝刀にお目にかかれて興奮しきりだ。
「お、俺は光琉といいます。よろしくお願いします! 今日は鞘さんだけでなく黒刃さまにも会えていい日になりました」
「私は兄・光琉の妹で音羽といいます。鞘さんと黒刃さまとのコンビネーション素敵でした」
『ありがとう~!! そうだなぁ。お兄ちゃんはピカ坊、妹ちゃんは音ちゃんって呼ぼう!』
黒刃からそれぞれ呼び名を与えられた2人は喜んだが、すかさず鞘から「相変わらず変わったネーミングですね黒刃さま。お2人とも、嫌なら断ってもよろしいのですよ?」と言葉をかけられた。
「とんでもない。我が家の宝刀に呼んでいただけるなら、どのようなものでも俺は大歓迎です!」
「私も。【おと】と読むところを【おん】と呼ばれた黒刃さまのネーミング気に入りました」
2人からの返答に鞘は「気に入ってもらえてよかったですね黒刃さま」と呆れ気味につぶやいた。
「ところで、黒刃さまは鞘さん呼びなんですね」
音羽が不思議そうに尋ねると鞘は「実は、私もネーミングされました」と返した。
「え? でも鞘さん呼び......」
「私が丁重にお断りしたんです」
「それはまたどうして?」
「黒刃さまには申し訳なかったのですが、ネーミングがイマイチ......だったので」
「......いったい黒刃さまはなんと?」
「【元鞘】。そう呼ばれました」
「元鞘......」
「そんな経緯で私の事は鞘と呼んで下さいと切実にお願いしました」
「......」
なるほど、と音羽は納得した。元鞘に収まるとか主に恋愛において別れた恋人がよりを戻す意味で使われる。むしろ良い意味合いを含んではいるが、何と言うか......呼ばれるたびに何やらひっかかるような気持ちになるのは勘弁してほしいと思った。
こ
棺のフタを開け、自分を殺そうとした相手を憎めず感謝してると言った鞘。 ❝自分も好きな人に振り向いてもらえない辛さはわかる。「あの人」が私以外の人に夢中になったら......❞ と言っていたので彼女にも想い人がいるのだろう。
ーーーズキン。
ふと。音羽は胸のかすかな痛みを感じた。それも
鞘に想い人がいると考えた直後に。
(何? 今のズキンって。私、鞘さんに想い人がいる事にショックを受けてるの?! なんで?!)
その意味がわからず音羽はひとり悶々としていた。そんな妹に「どうした?」と声をかける光琉。
「え?」
「え? じゃないだろ。お前が頭抱えてウンウン唸ってるから」
そう教えられた音羽は確かに光琉の指摘どおりだったのであわてて「な、なんでもないの」とごまかした。自分ですらわからないのだから、ここはそう言った方が無難だ。
それを信じた光琉は「さぁ、鞘さんに挨拶とお礼に行くぞ」と音羽の手を掴んで駆け出した。同時に音羽は鞘が自分たちの母親の名を知っており、なおかつ姉だと言っていたと話すと光琉からは「そりゃそうだよ」と返ってきた。
「だって鞘さんは母さんの妹だからね。つまりは叔母さんって事になるんだよな」
「え? そうなの?」
音羽が知らないのも無理はない。母・葵は2人が5歳の時に病気で他界し、母っ子だった音羽はそれがショックで、まったく口を利かない時期があったのだ。
光琉は鞘に駆け寄ると、改めて自己紹介し、それにならって音羽も同じ事をした。
対して鞘は改めて姉の忘れ形見である甥と姪を見つめると「嬉しいです! 光琉さんと音羽さんに再び出会えて......あの事件で無事だった方々がいて下さって......」と言って2人を抱きしめたのだ。
一方、光琉も「音羽を守ってくれて、ありがとうございました」とお礼を言えば音羽も「鞘さんがいなかったら私はクモたちに喰われていました......ありがとうございました」と述べた。2人からお礼を言われた鞘は笑顔で「無事守れてよかったです」と返した。
その時だ。
『あの~鞘さん? 俺も2人に自己紹介したいんだけどなぁ』
鞘の手の中の黒刃が不貞腐れ気味に声を発したのだ。事実、鞘は黒刃を忘れていたので「申し訳ありません黒刃さま!! 姉上のご子息とご息女に会えた嬉しさでつい......」と言葉をにごした。
だが黒刃も2人を知っているのか『ああ! 葵の双子か?!』と反応し鞘が「はい」と返す。
『そうか~。あの赤ん坊がこんなに大きくなったんだなぁ』
鞘は改めて黒刃を2人の前に差し出すと、黒刃が自己紹介する。
『はじめまして。俺は黒刃。天葉に奉納されてた宝刀ってヤツ。こうやって言葉を話す刀だけどよろしくね』
一方の光琉は我が家の宝刀にお目にかかれて興奮しきりだ。
「お、俺は光琉といいます。よろしくお願いします! 今日は鞘さんだけでなく黒刃さまにも会えていい日になりました」
「私は兄・光琉の妹で音羽といいます。鞘さんと黒刃さまとのコンビネーション素敵でした」
『ありがとう~!! そうだなぁ。お兄ちゃんはピカ坊、妹ちゃんは音ちゃんって呼ぼう!』
黒刃からそれぞれ呼び名を与えられた2人は喜んだが、すかさず鞘から「相変わらず変わったネーミングですね黒刃さま。お2人とも、嫌なら断ってもよろしいのですよ?」と言葉をかけられた。
「とんでもない。我が家の宝刀に呼んでいただけるなら、どのようなものでも俺は大歓迎です!」
「私も。【おと】と読むところを【おん】と呼ばれた黒刃さまのネーミング気に入りました」
2人からの返答に鞘は「気に入ってもらえてよかったですね黒刃さま」と呆れ気味につぶやいた。
「ところで、黒刃さまは鞘さん呼びなんですね」
音羽が不思議そうに尋ねると鞘は「実は、私もネーミングされました」と返した。
「え? でも鞘さん呼び......」
「私が丁重にお断りしたんです」
「それはまたどうして?」
「黒刃さまには申し訳なかったのですが、ネーミングがイマイチ......だったので」
「......いったい黒刃さまはなんと?」
「【元鞘】。そう呼ばれました」
「元鞘......」
「そんな経緯で私の事は鞘と呼んで下さいと切実にお願いしました」
「......」
なるほど、と音羽は納得した。元鞘に収まるとか主に恋愛において別れた恋人がよりを戻す意味で使われる。むしろ良い意味合いを含んではいるが、何と言うか......呼ばれるたびに何やらひっかかるような気持ちになるのは勘弁してほしいと思った。
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