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第10話「鞘と美咲と超消滅士」
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今、鞘は晃伸に案内された大広間で天葉の者たちに囲まれる中、ひとりポツンと中央に正座していた。向かいに座るは現当主・美咲だ。
光琉と音羽は晃伸に促され、天葉の列に並んでいた。内心、ハラハラしっぱなしだ。
シーンと静まり返る大広間。それを破ったのは美咲だった。
「あなたが、天葉鞘さんなのですか? 17年前、あの事件で瀕死の重傷を負い消息を絶っていたと言われている......」
その問いに鞘は正真正銘嘘偽りはありません、神に誓いますと心で唱えてから
「ーーーはい」と答えた。
その直後、周囲からざわめきが起こり、数人が立ち上がって鞘に向かって「そんな話まともに信じられるか!」と声を荒げた。
「確か鞘さんは当時17歳、なのにどうしてあなたはあの頃と変わらないままなんだ? 普通に考えて17年経っているのだから34歳の大人の姿になっているハズじゃないか!」
「そうよそうよ! あなたの今のその姿で鞘さんだと名乗られても、信じる気にはなれませんわ!」
次から次へと鞘に向けられる非難の言葉。中には美咲に「その者は怪しすぎる」と忠告する者もいた。
その様子に光琉と音羽は何とかしないと思い、揃って立ち上がる。
「皆さん落ち着いて下さい! 彼女の以前と変わらない姿に戸惑うのも無理はありませんが、それには深い理由があるんです!」
「鞘さんは天葉凶星によって連れ去られ、今まで元天葉邸の地下空間のとある部屋に冷凍保存状態で眠り続けていたんです。鞘さんが以前と変わらない姿なのもそのためです」
音羽の口から出た凶星の名に一族が反応した。
「凶星だと?」
「確かに、17年前の魔物襲来も瀕死の重傷を負った鞘さんをどこかに連れ去ったのも凶星の仕業だったのではないかと長い間囁かれていたが......」
「どちらの疑惑も本当だったという事なのか」
「やはり、彼を危険人物と判断したのは正解だった」
ちなみに凶星には両親がいない。孤独だったからこそ出会った鞘の「境遇」に共感を抱きやがて歪んだ愛へと変化した。
そして当時の当主・局に鞘と結婚させてほしいと頼み込んだものの断られた末、魔物に一族を襲わせるという恐ろしい凶行に及んだのだ。
しかし、ここで待ったがかかる。
「おいみんな! こんな得体の知れない小娘の口車にまんまと乗るな! たとえあの事件が凶星の仕業だとしても、この小娘が天葉鞘であるという証明にはならない! もしかしたら凶星の仲間かもしれないんだぞ!!」
この発言に光琉と音羽は反撃する。
「確かに凶星には仲間がいました。でもそれは別の女性で凶星は真弥と呼んでいました」
「凶星は真弥さんに鞘さんの救命を願い出ています。それを受けて真弥さんは鞘さんの体から攻撃の際受けた毒をぬくために冷凍保存を施したのです!」
一族の何人かは真弥を知っていた。真弥の凶星に対する想いも知っていたし、それに対し冷たく接する凶星の姿も。
一族と鞘とのやりとりを聞いていた美咲は凶星と真弥の行方を尋ねた。
それに対して光琉はためらいつつ、ゆっくりと重い口を開いた。そして、凶星の残虐性とそんな彼を愛しながらクモのエサにされてしまった真弥に一族の者は言葉を失ったのだった。しかし凶星もクモと一体化した真弥によって食い殺されたと聞くと「自業自得」「因果応報」と皆、口を揃えた。
そんな中、鞘が顔をあげ口を開く。
「本当なら、私がこの手で天葉凶星を葬るべきでした。あの人は17年前、私から大切な人たちをたくさん奪ったのです。私のような人間を優しく迎え入れて下さった天葉の皆さんを.....! あげくに私といえば17年前不甲斐ない戦いをして皆さんを守れませんでした。超消滅士の力を授かった瞬間、誓ったのに......私を受け入れて下さった皆さんをこの手で守ると......あの時、戦線離脱してしまい、まことに申し訳ありませんでした......!!」
悔しさのあまり手を拳にしてそれを見つめる鞘。そして両手を揃えて深々と頭を下げる彼女の姿に皆揃って息を呑んだ。
目の前の少女から語られた言葉は鞘でなければ知り得ない。やはりこの少女は天葉鞘なのかと、一族の中に変化が見え始めていた。
それでもまだ、疑う方が大半を占めている。
「でしたら......」
発言したのは、美咲だ。彼女は更に続ける。
「超消滅士のどなたか、この鞘さんと今から一線交えてみたらどうですか?」
これには「え?!」という空気が周囲にはしった。
「それが天葉鞘さんかどうかを判別出来る1番の方法ではありませんか? あなた方にやられてしまったらこの鞘さんは真っ赤なニセモノ。ですがあなた方を負かせばこの鞘さんは本物という事になります」
確かに、美咲が提示した案はナイスと言える。しかし「自分が」と立候補する超消滅士はいなかった。
それを眺めていた美咲はトドメの言葉を大広間じゅうに声高々に響き渡らせた。
「ひょっとして、怖いんですか?」
一族は皆、黙ってしまった。つい先程まであれだけ鞘を叩いていたくせにだ。
そこから、美咲の声色が低くなる。
「我が誇り高き超消滅士は、いつから弱腰になったのですか? 超消滅士は敵が2度と遭遇したくないとまで言わしめた戦士なのですよ」
ここまで言っても声はあがらない。
美咲はため息を吐いた。
「挙手がないという事は、こちらの鞘さんを本物だと認めてるものと捉えてよろしいのですね?!」
その時、光琉が美咲に「俺が戦ってもいいですか?」と発言したが却下された。
「光琉さんと戦わせたところであなたも鞘さんとグルなのではないかと皆さんが言いかねませんからね。出来るなら鞘さんと初対面である光琉さん以外の超消滅士に戦ってほしいのです」
そこへついに挙手する者が現れた。
その者、鞘たちが天葉邸に着いた時に晃伸の前に出迎えに現れた50代の男性であった。鞘を見るなりあわてて屋敷へ入っていったあの者だ。
「美咲さま。どうか私に戦わせて下さい。あの娘が天葉鞘さん本人かどうか確かめてご覧にいれます」
美咲も一族から名乗り出てくれて安心したようだ。
「隆史さん、どうかよろしく頼みますよ」
そして鞘には「これからあの者と戦っていただきます。くれぐれも怪我はなさいませんように。ニセモノであるならば早々に白旗を上げた方が賢明ですよ」と説明と警告をした。
鞘は何も答えず、ただ覚悟を決めたように1度頷いただけであった。
光琉と音羽は晃伸に促され、天葉の列に並んでいた。内心、ハラハラしっぱなしだ。
シーンと静まり返る大広間。それを破ったのは美咲だった。
「あなたが、天葉鞘さんなのですか? 17年前、あの事件で瀕死の重傷を負い消息を絶っていたと言われている......」
その問いに鞘は正真正銘嘘偽りはありません、神に誓いますと心で唱えてから
「ーーーはい」と答えた。
その直後、周囲からざわめきが起こり、数人が立ち上がって鞘に向かって「そんな話まともに信じられるか!」と声を荒げた。
「確か鞘さんは当時17歳、なのにどうしてあなたはあの頃と変わらないままなんだ? 普通に考えて17年経っているのだから34歳の大人の姿になっているハズじゃないか!」
「そうよそうよ! あなたの今のその姿で鞘さんだと名乗られても、信じる気にはなれませんわ!」
次から次へと鞘に向けられる非難の言葉。中には美咲に「その者は怪しすぎる」と忠告する者もいた。
その様子に光琉と音羽は何とかしないと思い、揃って立ち上がる。
「皆さん落ち着いて下さい! 彼女の以前と変わらない姿に戸惑うのも無理はありませんが、それには深い理由があるんです!」
「鞘さんは天葉凶星によって連れ去られ、今まで元天葉邸の地下空間のとある部屋に冷凍保存状態で眠り続けていたんです。鞘さんが以前と変わらない姿なのもそのためです」
音羽の口から出た凶星の名に一族が反応した。
「凶星だと?」
「確かに、17年前の魔物襲来も瀕死の重傷を負った鞘さんをどこかに連れ去ったのも凶星の仕業だったのではないかと長い間囁かれていたが......」
「どちらの疑惑も本当だったという事なのか」
「やはり、彼を危険人物と判断したのは正解だった」
ちなみに凶星には両親がいない。孤独だったからこそ出会った鞘の「境遇」に共感を抱きやがて歪んだ愛へと変化した。
そして当時の当主・局に鞘と結婚させてほしいと頼み込んだものの断られた末、魔物に一族を襲わせるという恐ろしい凶行に及んだのだ。
しかし、ここで待ったがかかる。
「おいみんな! こんな得体の知れない小娘の口車にまんまと乗るな! たとえあの事件が凶星の仕業だとしても、この小娘が天葉鞘であるという証明にはならない! もしかしたら凶星の仲間かもしれないんだぞ!!」
この発言に光琉と音羽は反撃する。
「確かに凶星には仲間がいました。でもそれは別の女性で凶星は真弥と呼んでいました」
「凶星は真弥さんに鞘さんの救命を願い出ています。それを受けて真弥さんは鞘さんの体から攻撃の際受けた毒をぬくために冷凍保存を施したのです!」
一族の何人かは真弥を知っていた。真弥の凶星に対する想いも知っていたし、それに対し冷たく接する凶星の姿も。
一族と鞘とのやりとりを聞いていた美咲は凶星と真弥の行方を尋ねた。
それに対して光琉はためらいつつ、ゆっくりと重い口を開いた。そして、凶星の残虐性とそんな彼を愛しながらクモのエサにされてしまった真弥に一族の者は言葉を失ったのだった。しかし凶星もクモと一体化した真弥によって食い殺されたと聞くと「自業自得」「因果応報」と皆、口を揃えた。
そんな中、鞘が顔をあげ口を開く。
「本当なら、私がこの手で天葉凶星を葬るべきでした。あの人は17年前、私から大切な人たちをたくさん奪ったのです。私のような人間を優しく迎え入れて下さった天葉の皆さんを.....! あげくに私といえば17年前不甲斐ない戦いをして皆さんを守れませんでした。超消滅士の力を授かった瞬間、誓ったのに......私を受け入れて下さった皆さんをこの手で守ると......あの時、戦線離脱してしまい、まことに申し訳ありませんでした......!!」
悔しさのあまり手を拳にしてそれを見つめる鞘。そして両手を揃えて深々と頭を下げる彼女の姿に皆揃って息を呑んだ。
目の前の少女から語られた言葉は鞘でなければ知り得ない。やはりこの少女は天葉鞘なのかと、一族の中に変化が見え始めていた。
それでもまだ、疑う方が大半を占めている。
「でしたら......」
発言したのは、美咲だ。彼女は更に続ける。
「超消滅士のどなたか、この鞘さんと今から一線交えてみたらどうですか?」
これには「え?!」という空気が周囲にはしった。
「それが天葉鞘さんかどうかを判別出来る1番の方法ではありませんか? あなた方にやられてしまったらこの鞘さんは真っ赤なニセモノ。ですがあなた方を負かせばこの鞘さんは本物という事になります」
確かに、美咲が提示した案はナイスと言える。しかし「自分が」と立候補する超消滅士はいなかった。
それを眺めていた美咲はトドメの言葉を大広間じゅうに声高々に響き渡らせた。
「ひょっとして、怖いんですか?」
一族は皆、黙ってしまった。つい先程まであれだけ鞘を叩いていたくせにだ。
そこから、美咲の声色が低くなる。
「我が誇り高き超消滅士は、いつから弱腰になったのですか? 超消滅士は敵が2度と遭遇したくないとまで言わしめた戦士なのですよ」
ここまで言っても声はあがらない。
美咲はため息を吐いた。
「挙手がないという事は、こちらの鞘さんを本物だと認めてるものと捉えてよろしいのですね?!」
その時、光琉が美咲に「俺が戦ってもいいですか?」と発言したが却下された。
「光琉さんと戦わせたところであなたも鞘さんとグルなのではないかと皆さんが言いかねませんからね。出来るなら鞘さんと初対面である光琉さん以外の超消滅士に戦ってほしいのです」
そこへついに挙手する者が現れた。
その者、鞘たちが天葉邸に着いた時に晃伸の前に出迎えに現れた50代の男性であった。鞘を見るなりあわてて屋敷へ入っていったあの者だ。
「美咲さま。どうか私に戦わせて下さい。あの娘が天葉鞘さん本人かどうか確かめてご覧にいれます」
美咲も一族から名乗り出てくれて安心したようだ。
「隆史さん、どうかよろしく頼みますよ」
そして鞘には「これからあの者と戦っていただきます。くれぐれも怪我はなさいませんように。ニセモノであるならば早々に白旗を上げた方が賢明ですよ」と説明と警告をした。
鞘は何も答えず、ただ覚悟を決めたように1度頷いただけであった。
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