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第12話「青天白日、そして・・・」
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当時6歳の鞘にわいせつ行為を働こうとした天葉一族の男性。しかし、突如超消滅士の力に目覚めた鞘によって返り討ちにあい、思い切り壁へと飛ばされ激突。
片や鞘は今、何がどうなって自分を襲おうとした男性が突然宙に浮き、壁に激突したのか全くわからなかった。
わかったのは自分が何かしたせいだという事。
鞘は物置部屋を飛び出した。だが、脳裏に父、母、姉の姿がよぎった事でとたんに恐ろしくなり、その場で足が止まってしまった。
理由は何にせよ、天葉の人間に怪我を負わせたのだ。この事があの男性の口から知られれば、引き取りたいと言ってくれた父と母、そして妹のように接してくれる姉たちに迷惑がかかる。
それでも今から再びあの男性のもとに戻る気にはなれなかった。
その時、女当主・局が鞘の前に現れた。彼女もまた天葉の血を半分しか引いていない鞘を優しく迎えてくれた人である。
鞘は局の胸に飛び込んで泣き出してしまったが、理由は口に出来ないまま。
彼女は3人に迷惑が被るのを恐れるあまり、この事を絶対口外はすまいと墓場まで持っていくと決めた。
男性からも鞘にやられたという報告はなかった。思い切り壁に激突して相当痛い目にあったにも関わらずだ。
当時は意味がまだわからなかったのでいつ男性が発言するかと怯えた鞘だが、成長してから「あの人が当時、私にやられたとお祖母さまに報告するという行動をとらなかったのも当然でしたね」と考えられるようになった。
なぜなら万が一、男性が当時鞘にやられたと局に報告してもどうしてそうなったかは聞かれるハズ。そうなれば正直に話さなくてはいけないし、同時に自分の性癖も知られてしまう。
そのため男性はそれらの事をひた隠しにするしかなかったのだろう。
ところが。
その秘密が現代の今、意外な人物の口から明るみに出ようとしている。
その人物とは鞘と竹刀を交え、彼女が放った力をその身に受けて壁に激突した隆史だった。
一方、無意識に力を隆史に放ってしまった鞘は呆然としながらも隆史のもとへ駆け寄ろうとした。しかし、それを制したのはゆっくりと立ち上がった隆史だ。
彼はそのまま美咲の前に正座すると「美咲さま。この方は間違いなく天葉鞘さんご本人です」と鞘へ視線を向けながら証言したのだ。彼は更に「彼女の力を受けてそれがよくわかりました」と続けた。
「......?」
美咲はふと疑問に思った。実は隆史には1度戦った相手の力をその身に記憶出来る、という力がある。
それをふまえて美咲は隆史に尋ねる。
「と言うと......あなたは以前にも鞘さんの力をその身に受けた事があるのですね?」
自分に尋ねているのが美咲だからだろう。隆史は何かを観念したかのようにガバっと額が床板につくぐらいに頭を下げ「も、申し訳ありません!!!」と大声で謝罪の言葉を口にした。
当然美咲も、その場にいる鞘、光琉、音羽を含めた一族の皆も隆史が謝る意味がわからなかった。
「隆史さん。あなたは誰に対して謝っているのですか?」
2度目の美咲からの問いに隆史は小さい声で「......天葉鞘さんにです」と答えた。
そして隆史は話しだしたのだ、ある出来事を。
それは先程も出てきた、6歳の鞘の身に起こったいまわしい出来事に関するものだった。
結論から言うと、幼少時の鞘にわいせつ行為をしようと旧天葉邸の物置き部屋に連れ込もうとしたのは自分だと隆史が告白したのだ。
「美咲さまから天葉鞘さんが来ると聞いてまさかと思いました。きっと本人ではない偽物だろうと......。でも直にこの人を見た時、子供の鞘さんの目が重なったのです。力を発動した後、俺を見つめる彼女の怯えた目に。気がつけばあの時の俺の破廉恥な行いが明るみに出る事に恐怖を感じるあまり、お迎えの挨拶も忘れて屋敷に入ってしまいました」
先程、晃伸の前に3人を出迎えに屋敷から現れた隆史が鞘を見るなり挨拶もせずにあわてて去ったのには、こういう理由があったワケだ。
一方、隆史の性癖を知っていたのか何人かの一族の者からは「お前......まだそんな事をしていたのか」や「子供にイタズラするクセは治ったんじゃなかったの?」などの言葉が隆史に向けられる、知らなかった者からは「まさか、君がそんな性癖の持ち主だったなんて」「あなた、子供になんて事を......」まだ幼い娘がいる者からは「まさかあなた! うちの子に手を出したりしてないわよね?!」と疑惑の目を向けた。
それらに対して隆史は強く否定した。確かに若い頃は子供にイタズラをしたが子供が生まれてからはそんな事は一切してないと。
だがその発言もまた火に油を注ぐ結果となり、一族の者からの更なる非難を受けてしまう。
鞘にひたすら謝る隆史。鞘は思わず彼から離れて距離をとった。
ここにきて隆史の衝撃事実を知る事になったワケだが、美咲は改めて一族の者たちに確認する。
「隆史さんの証言にもあったように、この鞘さんは天葉鞘さんご本人であるとこの場で証明されました。皆さんもその事に同意でよろしいですか?」
美咲に尋ねられた一族の者はそれぞれに首をタテにうなずく。やっとの事で鞘は17年前に行方不明になっていた天葉鞘であると証明出来、認めてもらえたのだ。
次に美咲は、鞘にこのまま天葉邸に住んでほしいと思っていると彼らに提案してみた。
それに関して一族の返事は「NO」。これには光琉と音羽も疑問を抱いた。
なぜ? 美咲が尋ねる。
一族の言い分はこうだ。
「もう超消滅士がバケモノと呼ばれ畏れられた時代は終わった。我々は普通の人間としてこれからは生きていく。つまり戦う意思はないのだ。だから魔物に襲われる心配ももはやない」
「だから、そう思っている我々の元にあなたのような超消滅士がいてもらっては困る。あなたがいては、また魔物に襲われるやもしれない」
「もしもあなたが17年前戦線離脱した事を申し訳なく思っているのなら、どうかこの屋敷から出ていってくれないだろうか。平穏を取り戻して17年経った......もう我々の暮らしを邪魔しないでくれ」
光琉と音羽は彼らが言った言葉の数々が同じ天葉一族のものなのかと怒りを抱いた。
「みんなが言ってる事は超消滅士を否定してるように聞こえるんだけど」
光琉が問い詰めると彼らは「その通り。超消滅士は必要ないという事だ」と言い切った。一族の中には光琉や隆史以外にも超消滅士は何人かいる。だがそんな彼らでさえ「これからは普通の人間として生きていきたい」と答えたのだ。
「......」
彼らの話を聞いていた鞘は「わかりました」と言うと「私を天葉鞘本人であると認めて下さっただけで十分です」と結んだ。
その後彼女は一族の者、美咲、隆史に「長い事時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」と一礼すると、光琉と音羽の元に向かい黒刃を受け取った。
「光琉さん、音羽さん本当にお世話になりました。私を見つけて下さって目覚めさせて下さってありがとうございました」
2人にも一礼した鞘は布袋に入った黒刃を持ち、道場をあとにした。
『俺が宝刀として収められてた天葉一族って、あんなに腑抜けた連中だったっけ?』
歩きながら鞘の腕の中にいた黒刃が怒りを含めた声で話しかける。
「あのような体験をしたのです、弱気になっても仕方がありませんよ。普通の人間としてこれからは生きていきたいとおっしゃる皆さまの気持ちを尊重します」
『器が大きいんだな鞘は』
「そんなものではありません。せめてもの償いのつもりなだけです。理由はどうであれ私はあの時戦線離脱をしたのですから、私に発言権などありませんよ」
『で? これからどうするんだ? ここ以外に頼れる先はないんだろ?』
確かに黒刃の言う通りだった。ここの人たち以外に鞘を知ってるものは17年経った今は皆無なのだから。
その時だ。
「お待ちくださいませ、鞘さん!」
遠くから聞こえてきた声に足を止める鞘。
彼女を引き止めたのは、他でもない美咲だった。
片や鞘は今、何がどうなって自分を襲おうとした男性が突然宙に浮き、壁に激突したのか全くわからなかった。
わかったのは自分が何かしたせいだという事。
鞘は物置部屋を飛び出した。だが、脳裏に父、母、姉の姿がよぎった事でとたんに恐ろしくなり、その場で足が止まってしまった。
理由は何にせよ、天葉の人間に怪我を負わせたのだ。この事があの男性の口から知られれば、引き取りたいと言ってくれた父と母、そして妹のように接してくれる姉たちに迷惑がかかる。
それでも今から再びあの男性のもとに戻る気にはなれなかった。
その時、女当主・局が鞘の前に現れた。彼女もまた天葉の血を半分しか引いていない鞘を優しく迎えてくれた人である。
鞘は局の胸に飛び込んで泣き出してしまったが、理由は口に出来ないまま。
彼女は3人に迷惑が被るのを恐れるあまり、この事を絶対口外はすまいと墓場まで持っていくと決めた。
男性からも鞘にやられたという報告はなかった。思い切り壁に激突して相当痛い目にあったにも関わらずだ。
当時は意味がまだわからなかったのでいつ男性が発言するかと怯えた鞘だが、成長してから「あの人が当時、私にやられたとお祖母さまに報告するという行動をとらなかったのも当然でしたね」と考えられるようになった。
なぜなら万が一、男性が当時鞘にやられたと局に報告してもどうしてそうなったかは聞かれるハズ。そうなれば正直に話さなくてはいけないし、同時に自分の性癖も知られてしまう。
そのため男性はそれらの事をひた隠しにするしかなかったのだろう。
ところが。
その秘密が現代の今、意外な人物の口から明るみに出ようとしている。
その人物とは鞘と竹刀を交え、彼女が放った力をその身に受けて壁に激突した隆史だった。
一方、無意識に力を隆史に放ってしまった鞘は呆然としながらも隆史のもとへ駆け寄ろうとした。しかし、それを制したのはゆっくりと立ち上がった隆史だ。
彼はそのまま美咲の前に正座すると「美咲さま。この方は間違いなく天葉鞘さんご本人です」と鞘へ視線を向けながら証言したのだ。彼は更に「彼女の力を受けてそれがよくわかりました」と続けた。
「......?」
美咲はふと疑問に思った。実は隆史には1度戦った相手の力をその身に記憶出来る、という力がある。
それをふまえて美咲は隆史に尋ねる。
「と言うと......あなたは以前にも鞘さんの力をその身に受けた事があるのですね?」
自分に尋ねているのが美咲だからだろう。隆史は何かを観念したかのようにガバっと額が床板につくぐらいに頭を下げ「も、申し訳ありません!!!」と大声で謝罪の言葉を口にした。
当然美咲も、その場にいる鞘、光琉、音羽を含めた一族の皆も隆史が謝る意味がわからなかった。
「隆史さん。あなたは誰に対して謝っているのですか?」
2度目の美咲からの問いに隆史は小さい声で「......天葉鞘さんにです」と答えた。
そして隆史は話しだしたのだ、ある出来事を。
それは先程も出てきた、6歳の鞘の身に起こったいまわしい出来事に関するものだった。
結論から言うと、幼少時の鞘にわいせつ行為をしようと旧天葉邸の物置き部屋に連れ込もうとしたのは自分だと隆史が告白したのだ。
「美咲さまから天葉鞘さんが来ると聞いてまさかと思いました。きっと本人ではない偽物だろうと......。でも直にこの人を見た時、子供の鞘さんの目が重なったのです。力を発動した後、俺を見つめる彼女の怯えた目に。気がつけばあの時の俺の破廉恥な行いが明るみに出る事に恐怖を感じるあまり、お迎えの挨拶も忘れて屋敷に入ってしまいました」
先程、晃伸の前に3人を出迎えに屋敷から現れた隆史が鞘を見るなり挨拶もせずにあわてて去ったのには、こういう理由があったワケだ。
一方、隆史の性癖を知っていたのか何人かの一族の者からは「お前......まだそんな事をしていたのか」や「子供にイタズラするクセは治ったんじゃなかったの?」などの言葉が隆史に向けられる、知らなかった者からは「まさか、君がそんな性癖の持ち主だったなんて」「あなた、子供になんて事を......」まだ幼い娘がいる者からは「まさかあなた! うちの子に手を出したりしてないわよね?!」と疑惑の目を向けた。
それらに対して隆史は強く否定した。確かに若い頃は子供にイタズラをしたが子供が生まれてからはそんな事は一切してないと。
だがその発言もまた火に油を注ぐ結果となり、一族の者からの更なる非難を受けてしまう。
鞘にひたすら謝る隆史。鞘は思わず彼から離れて距離をとった。
ここにきて隆史の衝撃事実を知る事になったワケだが、美咲は改めて一族の者たちに確認する。
「隆史さんの証言にもあったように、この鞘さんは天葉鞘さんご本人であるとこの場で証明されました。皆さんもその事に同意でよろしいですか?」
美咲に尋ねられた一族の者はそれぞれに首をタテにうなずく。やっとの事で鞘は17年前に行方不明になっていた天葉鞘であると証明出来、認めてもらえたのだ。
次に美咲は、鞘にこのまま天葉邸に住んでほしいと思っていると彼らに提案してみた。
それに関して一族の返事は「NO」。これには光琉と音羽も疑問を抱いた。
なぜ? 美咲が尋ねる。
一族の言い分はこうだ。
「もう超消滅士がバケモノと呼ばれ畏れられた時代は終わった。我々は普通の人間としてこれからは生きていく。つまり戦う意思はないのだ。だから魔物に襲われる心配ももはやない」
「だから、そう思っている我々の元にあなたのような超消滅士がいてもらっては困る。あなたがいては、また魔物に襲われるやもしれない」
「もしもあなたが17年前戦線離脱した事を申し訳なく思っているのなら、どうかこの屋敷から出ていってくれないだろうか。平穏を取り戻して17年経った......もう我々の暮らしを邪魔しないでくれ」
光琉と音羽は彼らが言った言葉の数々が同じ天葉一族のものなのかと怒りを抱いた。
「みんなが言ってる事は超消滅士を否定してるように聞こえるんだけど」
光琉が問い詰めると彼らは「その通り。超消滅士は必要ないという事だ」と言い切った。一族の中には光琉や隆史以外にも超消滅士は何人かいる。だがそんな彼らでさえ「これからは普通の人間として生きていきたい」と答えたのだ。
「......」
彼らの話を聞いていた鞘は「わかりました」と言うと「私を天葉鞘本人であると認めて下さっただけで十分です」と結んだ。
その後彼女は一族の者、美咲、隆史に「長い事時間をとらせてしまい申し訳ありませんでした」と一礼すると、光琉と音羽の元に向かい黒刃を受け取った。
「光琉さん、音羽さん本当にお世話になりました。私を見つけて下さって目覚めさせて下さってありがとうございました」
2人にも一礼した鞘は布袋に入った黒刃を持ち、道場をあとにした。
『俺が宝刀として収められてた天葉一族って、あんなに腑抜けた連中だったっけ?』
歩きながら鞘の腕の中にいた黒刃が怒りを含めた声で話しかける。
「あのような体験をしたのです、弱気になっても仕方がありませんよ。普通の人間としてこれからは生きていきたいとおっしゃる皆さまの気持ちを尊重します」
『器が大きいんだな鞘は』
「そんなものではありません。せめてもの償いのつもりなだけです。理由はどうであれ私はあの時戦線離脱をしたのですから、私に発言権などありませんよ」
『で? これからどうするんだ? ここ以外に頼れる先はないんだろ?』
確かに黒刃の言う通りだった。ここの人たち以外に鞘を知ってるものは17年経った今は皆無なのだから。
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