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街へ
しおりを挟む「朔様!まさか俺を捨てるんですか!?金なんて要りません!それ以上にお世話になっているのに、恩返しすらさせてもらえないのですか!?」
僕はここで勇護とお別れするつもりだった。
どうして僕が捨てる側なんだ、どう考えても捨てられるのは僕だろう。今のところこの世界で僕にできることはないんだから。あわよくば、街までの道案内はして欲しいとは思っていたが、頭が痛い。
恩というのも勇護の母親で、尊おじさんの奥さん、柚木おばさんの治療費を払った程度だ。親が残したもので、僕が稼いだお金じゃない。手術が無事成功したのは、ドナーを探した尊おじさんと、それまで耐えてきた柚木おばさんと医者のおかげだ。
僕にとって柚木おばさんは、尊おじさんと同じように親のような人だから、助けるのは当たり前だし、家族を助けるようなものだった。恩に着ますと頭を下げられた時は、幼くても一線を引かれたと感じて、少し寂しく思ったものだ。
ボディーガードだったのに僕の父を守れなかった、という責任感から僕を守り、世話をするような人だ。元々義理堅かったのもあるんだろうけれど、一家全員に恩を感じられると流石に重く感じることがあった。今は物理的に重いなぁ。
「しがみつくな、みっともない。じゃあ、昔みたいに友達に戻るってことでいい?」
「はい!では早速街に行きましょう!少し遠いので、この紐を持って乗っていただけますか?紐から手を離さないでくださいね、落ちたら危ないので」
目の前には首輪をつけて四つん這いになった勇護。首輪に付いてる紐を馬の手綱みたいに使って、僕に乗れと。
前々からおかしいやつだと思っていたのに、異世界来てから悪化したんじゃないかな。
もし、言われた通りに乗ったら傍目からはお馬さんごっこに見えなくもないかもしれない。今の僕は小さい子供の姿だし。それでも気乗りはしないなぁ。
「遠慮する、僕は歩いていく。それと友達に敬語は使わないでしょ」
「敬語は癖みたいなものなのでなかなか抜けないとは思いますが、善処します。ここから街まで歩いて3日かかります。朔様だともう少しかかるでしょう。その上、今の俺たちは水も食べ物もありません。やはり俺の背に乗ったほうがいいと思うんですが」
うーん、確かに。こんな子供の体で食料もなく何日も歩き続けるのは無理がある。お腹も空いてきたし、できれば早く街に着きたい。仕方ない、街に着く前におろしてもらおう。人に見られなければいっか。
「ところでこの首輪苦しく無いの?」
「聞くなら引っ張らないでください。苦しくは無いですが、本来は獣に使うものらしいです。俺が使っても問題ないそうで、神からプレゼントされました」
ごめんごめん、紐が取れないか安全確認したくて。にしても、変なものプレゼントされたんだなぁ。
「それじゃあ、街までお願い」
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