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マジックアイテム
しおりを挟む「1ベリンスです」
いつの間にか横にいた勇護が一枚の硬貨を差し出していた。そんなあっさり出せるような額なの?というか、僕たち今いくら持ってるんだろう。寝てたせいでギルドの報酬でいくら貰ったのか知らない。後で聞こう。
「ごめんなさいね、言葉が足りなかったわ。この指輪はマジックアイテムなの」
「マジックアイテムってなんですか?」
「二人とも知らないの?冒険者なら知ってるとばかり思ってたわ。簡単に言うと意思を持ったアイテムのことよ。ほとんどが凄い力を宿してて、みんなこぞって欲しがるのだけど、マジックアイテムが認めた人しか手に入れられないの。もし認められなくても軽く弾かれる程度よ。どう?試してみる?」
「やめときます。そんな凄いものだとは思わなくて」
凄い力とか要らないし、特別な物も要らない。僕はただ、ゆったり過ごしたいだけだ。
「あ、もし身の危険を案じてるなら大丈夫よ。一目見てこの指輪がマジックアイテムだと気づいた人は今までいなかったの。基本的にマジックアイテムってもっと豪華な装飾が施されたものがほとんどなのよ。この指輪みたいに質素なものは他に見たことがないから安心して」
「そうじゃなくて、なんとなく気になっただけで欲しかったわけでもないんです」
「そう、残念。……ねぇ、一度だけでいいから試してみてくれない?この指輪はね、昔からこの店にあったものなの。でも、誰にも見向きされなくってなんだか可哀想でね。この指輪に興味を持ってくれる人が、次に現れるのか心配なのよ。もし、認められたらお代はいらないから。ね、お願い」
うっ、断りづらい。まぁ、一度だけならいっか。どうせ、そんな凄いものに認められるとも思えないし。
「わかりました。指にはめればいいんですか?
「ありがとう!身につけると思って触れれば大丈夫よ」
恐る恐る指輪に手を近づける。相変わらず見ろ!という圧を感じる。とても今まで見向きされなかったようには見えない。なんだか怪しく思えてきて、女性に視線を向けた。
「は、どうして」
左手薬指にピッタリとはまった指輪。僕はまだ触れてない。と言うことは、目を離した隙に勝手に動いた?
「やっぱりね!やけに光っていたから、もしかしてと思ってたのよ!にしてもマジックアイテムから向かってくるなんて聞いたことないわ。よほどあなたを気に入ったのね」
怪しく感じたのは気のせいじゃなかったみたいだ。だからって、嬉しそうに笑ってる人に指輪を突き返すこともできない。
「ま、変わったマジックアイテムだから、どんな効果なのか気になってたのもあるのよねぇ」
ニンマリとそう言われた時にやられたと思った。
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