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27 異変、そして明かされる聖女の謎
しおりを挟む――ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
また、揺れが発生した。島の魔物たちは不安に満ちた様子で動き回っており、あちこちから鳴き声や足音が聞こえてくる。
「みゃー! またゆれてるーっ!」
怯えながら飛びついてきたクーを、アレンは走りながら器用に受け止める。小刻みに震える小さな背中に、大丈夫だという意味を込めて優しく撫でつつ、アレンは改めて自分たちが向かっている方角を見上げた。
「エンゼルじいちゃん! その『コア』ってのが、島の中心部にあるんだよね?」
「そうじゃ! この揺れの原因も、恐らくそこにあるはずじゃ!」
焦りを抱くエンゼルが叫ぶように答える。その後ろでディアドラも、走りながら神妙な表情を浮かべていた。
「その『コア』って、要は魔力の塊みたいなものよね?」
「……そんなとこに僕たちが近づいて、ホントに大丈夫なのかな?」
「今は行くしかないぞ」
不安そうに言うアレンに、エンゼルが断言した。
「この目でしかと見ないことには、揺れの原因をハッキリさせることはできん」
「まぁ、確かになぁ……」
アレンは『百聞は一見に如かず』という言葉を思い出す。今がまさにその時なのだろうと思い、向かうしかないかと覚悟を決める。
やがてアレンたちは緩やかな坂道を抜けて、丘の頂上に辿り着く。
そこが島の中心部であった。
坂を駆け上がっている途中で、アレンは気づいていた。
中心部を象徴するようにそびえ立つ、見上げても見上げきれないほどに大きく長く伸びた『それ』を。
「……またでっかいなぁ。これって水晶?」
「建物とかでは、なさそうよね」
アレンに続いてディアドラが、引きつった表情でそれを見上げる。無論、てっぺんは見えていない。
「これがお爺さんの言ってた『コア』というものなの?」
「うむ。ワシらは『聖なるコア』と呼んでおる。島の守り神的な存在じゃ」
エンゼルが誇らしげに言うのも、アレンはなんとなく分かる気がした。しかし一つだけ疑問が浮かぶ。
「僕たちがこの島に来た時は、こんな凄いの見えてなかった気がするんだけど」
「いつもは結界で見えないようになっとるんじゃ。しかし今は、それもコアの暴走でかき消されてしまっておるがの」
「それでか……」
アレンは納得しつつ、改めて下から上までの全体像を見渡してみる。
「いきなりでっかい柱みたいなのが現れたから、何事かと思ったよ」
「スマンのう。流石にあの場所は、外から来たお前さんたちに、おいそれと話すわけにはいかんかったのじゃ」
「えぇ。それはまぁ、いいのだけどね……」
むしろこれだけのことを、軽々しく話すほうがどうかしている。エンゼルの言い分を理解しつつ、ディアドラは心を落ち着かせるべく大きく息を吐いた。
「万が一この島が見つかっても、中心部は分からない仕組み……か」
その目論見は成功したと言えるだろう。アレンたちがこの島で暮らし始めて、数日が経過しているが、島のコアについては知らなかったのだから。
「これもお爺さんたちが仕組んだことなの?」
「いや。ワシがこの島で暮らすようになったときには、既にそうなっとった」
「誰がそうしたかとかは、分からないってことね?」
「まぁな。とりあえず結界の存在については、今はさして問題ではない」
エンゼルの言っていること自体はもっともである。目の前の異変そのものをどうにかすることが先決だ。
「ここに来る途中からしっかり見えていたし、なんとなく思ってはいたけど……」
凄まじい光を放ち続けている『それ』の様子に、アレンは驚きを通り越したようなため息をつく。
「こうして見るとやっぱり、普通の状態とは言えない感じするよねぇ」
「うむ。それはワシも同感じゃ」
エンゼルも引きつった表情とともに頷く。
「最近、妙にコアの光が強まってきてはいたが、ここまで大きな変化はなかった。恐らくどこかで、聖なる魔力を無理して発動させている者がおり、それが悪い負担となって影響を及ぼしておるのだろう」
「え、あの、ちょっと待って!」
ディアドラが驚きの反応とともに、慌ててエンゼルの言葉に割り込む。
「それってつまり、聖なる魔力とコアが連動しているの?」
「うむ。連動しているというか、これこそが聖なる魔力そのものと言えるな」
エンゼルの回答に、ディアドラはまさかと言わんばかりに唖然とする。一方で隣にいるアレンは、悩ましそうに首をかしげていた。
「……ごめん。ちょっと意味がよく分かんない」
「分かりやすく言えば、このコアこそが、聖なる魔力を溜めておく『器』みたいなものということじゃ」
「あー、なんとなくイメージだけはできたかもしんない」
未だ丸まったままのクーを撫でながら、ぼんやりとアレンが言う。クーも少しだけ安らぎを得たのか、可愛らしく「にゅー」と鳴き声を上げた。
「まぁ、今はそう思ってくれれば十分じゃよ」
エンゼルも小さく笑い、改めてコアに視線を戻す。
「そもそも聖なる魔力自体、自然界における普通の魔力とは違うものなんじゃ。聖なる魔力はこのコアに溜め込まれたものしか存在せん。これが選ばれし者を通して世の中に放出されるのが、主な仕組みとなる」
その瞬間、コアから一瞬だけ、魔力が勢いよく噴き出した。まるで苦しいと叫んでいるかのように。
「その者からすれば、自分が聖なる魔力に目覚めたと感じておるじゃろうが、実際はただ単に、コアの魔力を使わせてもらっておるだけじゃからの」
「だから無理やり使おうとすれば、コアが悪い負担になっちゃうんだ?」
「そういうことじゃ」
アレンとエンゼルが進めていく会話の中で、ディアドラは一つ、無性に気になっている部分があった。
やり取りが落ち着いたのを見計らい、意を決して尋ねる。
「ねぇ。もしかして、その選ばれし者って……」
「お前さんたちで言うところの『聖女』と呼ばれる存在じゃの」
サラリと答えたエンゼルに対し、アレンとディアドラは目を見開くのだった。
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