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第五章 光風の国ブリサルト
50.ミジャルーサ戦に向けて2
しおりを挟む「……な、なんてこった!!全部で十個って言ってたけど、打ち込む場所は八箇所も……!ミス出来るの二回だけじゃん!!」
それに、状態異常毒は回避出来ない
これはかなり荒っぽくはなるが、やはり女郎蜘蛛を倒すまで無理やり回復飯で体力を保ちつつ、クリアをして瘴気を断つしかない…
「そうだラシエル。飯はあとどのぐらいあったっけ」
「えーと、二人合わせてあと四食分ですね」
「はっ!?何でそんなに少ない!?あぁっ!!」
そうだった!!この光風の国ブリサルトでは、瘴気の影響で国周辺の野生の動物や草花は採っても料理には使えない
なのでブリサルトの中の飯屋で購入するしかないのに、サラが突然居なくなったせいで逃げるように国から出てしまって補給も出来ていないんだった!
ミジャルーサの隠れる洞穴を目前にして、俺達はかなり詰んでいる事に気付いた
「どうしよう……ペガサス飛行も今は使えないっぽいから狩りを出来る場所に行くのはかなり遠くになるし……」
「?今見えているあの中に蜘蛛がいるんじゃないんですか?どうして遠くに…?」
「あ…そう、だよな。ごめん、俺だけ先走ってても仕方ない。ラシエル、俺が言う事を、よく聞いて欲しい」
そうしてこれからのミジャルーサ戦に向けての作戦を、俺達は練っていった
食糧は四つ。
毒で常に削られていく体力ゲージを考えると、ミジャルーサからの通常攻撃は当たる訳にはいかない
洞窟に入った側から状態異常を起こすが、俺はサラから貰ったアメを昨夜食べていた為に、女郎蜘蛛からの攻撃を受けるまでは瘴気を絶っている
なので、ミジャルーサの攻撃範囲外からラシエルに彼女の攻撃パターンを伝える事が出来る
何度もやり込んでいたおかげで、毒を吐くタイミングや八本の脚の攻撃の予備動作は全て把握済みだ
そしてここらが重要になってくるのが、ミジャルーサを覆う鋼鉄を剥がす為に関節に矢を当てること。サラが居なくなった事により、矢に装填したトリケシのアメの分しか放つことが出来ない。
本当ならば、サラが仲間にならない場合はお城の抜け道ルートの隠し部屋に同じ効果のトリケシの実というレアアイテムがあるが、急いでいたせいで手に入る事が出来なかった
なので、ミスは二回しか許されない
これは俺が関与できないラシエルの技量次第になってくるので、正直かなり不安なところではある
俺も初見プレイでは、めちゃくちゃなエイムで矢を50本も無駄にしたっけな……
「これが女郎蜘蛛戦に向けての作戦だけど、大丈夫か?」
「はい。俺は攻撃を避けて矢を関節に当てれば良いんですよね」
「そうだけど……回復も忘れるなよ?」
何だか軽いなぁ。大丈夫か?
とりあえず考えても仕方がない。やるしかないんだ
俺は自分と、ラシエルを信じてミジャルーサの潜むいる洞窟に入った
.
中は暗くジメジメと嫌な空気を感じる
壁のそこら中に蜘蛛の巣が張り巡らされ、触れると毒の状態が悪化し、一定時間身動きが取れなくなるのでタチが悪い
「……ッ!ローブを着ているのに身体が……」
「ここはローブの魔術効果を遮断しているんだ、毒が回る前に急ごう、ミジャルーサはこの先にいる!」
ラシエルは自分の事よりも俺の事を心配しているようだが、やはりトリケシの実と効果が同じだった為、俺は今のところ状態異常は起きていないのはかなり幸いだった
ラシエルの体力を考えて、俺達は急ぎ足で洞窟の奥へと進んだ
「ここから見える広い空間があるだろ、そこら中に蜘蛛の巣が張ってある。ミジャルーサは天井に引っ付いている筈だから、慎重に行くんだ」
岩を切り崩した広い空間の上部を壁伝いに見上げると、大きな繭のようなモノが見える
魔物に侵食されかけているミジャルーサが、自身を糸で巻き付けその圧迫で自害しようとしているのだ
あれを阻止しなければ、ミジャルーサは完全な魔物に成り果て死んでしまう
「ラシエル……平気か?ここから先は俺が行っても足手纏いになるから……お前に掛かってるんだ…」
「ふふ、平気ですよ。よくフータスと狩りをしていましたから、腕には自信があります」
「そ、か……」
そうなんだよな。ナナギ村に住むラシエルの親友フータスの弓矢の腕は、実は幼少期にメルサを巡って狩りの勝負をよくラシエルに仕掛けていて、そのおかげで腕が磨かれていき弓矢の名手になった。そして当時はそのどの勝負にも勝っていたのはラシエルだった。というキャラ設定がある
フータスはその頃に一方的にメルサを諦めたが、ラシエルはメルサと婚約を交わさなかったので、その後はフータスとメルサがくっつくことになる
そういえばサラも急に居なくなってしまったし、今更だけどラシエルの婚約イベはどうなるんだろう…
「俺、行ってきますね。ここも危ないと思ったら、すぐに逃げて下さい」
そんな余計な事を考えていると、ラシエルはいつの間にか十本の矢にトリケシのアメを全て装填した後だった
「あ…うん。ラシエル、死ぬなよ」
「死にませんよ。貴方との約束を果たさないといけませんから」
ラシエルは笑って、女郎蜘蛛のいる洞窟の中心部に向かった
「え?約束……?約束って……」
街の広場でのラシエルの言葉を思い出し、ボッと顔が熱くなる
別に約束はしてないし!!
そう口に出そうとしても、パクパクと口が動くだけでただラシエルの背中を目で追うことしか出来なかった
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