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7章『恋敵編』
146「完全に犯罪だからな」
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だが、俺の暴れた原因は違って。
「帰る」
たった一言だけ天王寺に言うと、俺は階段を降り始めたのだが、背後から天王寺に腕を掴まれ、強引に引き寄せられ、そのまま抱きしめられた。
「まだ帰せぬ」
「いや、俺は帰る」
「帰せぬと言った」
絶対に逃さないと、腕に力をいれた天王寺はどうあっても俺を帰すつもりはないらしい。
こんなところで監禁生活なんて、牢獄だ。もはや犯罪だろう。
「監禁なんて、完全に犯罪だからな」
両手を突っ張って天王寺を引き離した俺は、睨みつけるように目を細めた。
すると、天王寺の方が驚いたのか、目を丸くしていた。
「監禁などと、誰が申したのだ」
「……お前だろう」
「確かに姫を監禁できるのならば、したいとは思うが、実行しようなどとは思ってはおらぬ」
「じゃあ、これはなんだよ」
部屋の入り口に警備を立て、部屋から出るなって、りっぱな監禁じゃないのかと、俺は迫る。
「部屋から出さぬようにしておったのは、屋敷が広すぎるがゆえに、姫が迷子にならぬように配慮したのだ」
「迷子……?」
「それよりも、私は姫に問わねばならぬことがある」
部屋から出すなと言づけたのは、屋敷の中で迷子になると困ると思ったからで、帰さないと言ったのは、どうしても聞きたいことがあるからだと述べた天王寺は、俺の二の腕を両手で掴むと真剣な眼差しを送ってきた。
正直、天王寺のこの目は怖い。何かを問い詰めるときの瞳の色。
「な、なんだよ、聞きたいことって……」
ゴクリと喉が鳴ったのは、本当は聞きたくないと思ったからだ。
「高城という輩に、助けを求めたというのは誠であるか」
「助け? ……俺が高城に?」
「私から逃れたいがゆえに、力を貸せと姫が依頼したと聞かされた」
「天王寺から逃げたいって、俺が……?」
「逃れたいと申したのではないのか」
危機迫る勢いで顔を近づけてきた天王寺に、俺は大きく首を振る。高城に天王寺から助けてほしいなんて一言も言ってない。むしろ、高城が離れるべきだと言ってきたのに。
「そんなこと言ってない」
俺がそう断言すれば、天王寺は再び俺を胸に抱き寄せた。
「やはり罠であったか。……姫と私を引き離そうなどと愚かなことを」
自分の考えが合っていたことに安堵した天王寺の声は、嬉しそうだったが、俺が高城と一緒に居たことは気に入らなかったらしく、苦痛にもにた声が降る。
「何もされてはおらぬであろうな」
高城と一緒にいて、何かされたのではないかと心配した天王寺に、俺は余計な水を差してしまい、自業自得という結果を招き入れる。
黙っていれば良かったと後悔したのは、2分後。
「キス……された……」
「おのれ高城、姫に手を出すなど許してはおけぬ」
「んん……?!」
怒りを露にした天王寺は、一瞬の間を置き、俺の後頭部をがっしりと掴むと逃さぬと、強引な口づけを与えてきた。
周り! 人目! てめえはここをどこだと思ってんだぁぁ――! と叫びたい俺の声は、一言も音にはならず、わずかに開く口元からは吐息しか漏れない。
「ンぅ、んん……やっ……んっぅ……」
手を思いっきり突っぱねてはみたが、全然離れない。どのくらい俺は唇を奪われていたのだろうか、唇は真っ赤に染まり、少し腫れたような気もするころ、ようやく解放された。
「消毒は早い方がよい」
「おい天王寺、……ちょ、何すんだって」
足が宙に……。俺はまたまたお姫様抱っこという醜態を晒され、足をばたつかせて逃れようともがけば、天王寺が俺を落としそうになって、周りにいた男に指示を出す。
「足を」
そう指示をだせば、男が素早い動きで俺の両足をどこに隠していたのか、持っていたロープで一纏めに括りやがったんだ。
その上両手首も括られて、俺の抵抗はあっけなく封じ込まれ、天王寺の腕の中に収められてしまう。
「大人しくせぬ姫が悪いのだぞ」
縛ったのは、暴れる俺が悪いと言い放って、天王寺は満足そうに歩き出す。
「……天王寺」
「怯えずともよい。高城に触れられた場所など、私が消す」
だからそれが怖いんだって。俺、どうなっちゃうの?
天王寺が怖くて、俺が怯えた瞳で見つめれば
「他には何もされておらぬであろうな」
氷点下の声がかけられた。
ここで2回もキスされたなんて、口が裂けても言えない。
俺は「されてない、されてない」と連呼するが、結局さっきの部屋に連れ込まれ、ベッドに沈められた。
「ここって……」
もしかしなくても天王寺の自室なんじゃないかと、俺が問えば、天王寺は拘束したままの俺の上に乗り上げてくる。
「私の自室であるが、家族以外を入れたことなどない」
俺は特別なのだと、天王寺は柔らかい笑みを浮かべたまま、次にさらりととんでもないことを口にした。
「帰る」
たった一言だけ天王寺に言うと、俺は階段を降り始めたのだが、背後から天王寺に腕を掴まれ、強引に引き寄せられ、そのまま抱きしめられた。
「まだ帰せぬ」
「いや、俺は帰る」
「帰せぬと言った」
絶対に逃さないと、腕に力をいれた天王寺はどうあっても俺を帰すつもりはないらしい。
こんなところで監禁生活なんて、牢獄だ。もはや犯罪だろう。
「監禁なんて、完全に犯罪だからな」
両手を突っ張って天王寺を引き離した俺は、睨みつけるように目を細めた。
すると、天王寺の方が驚いたのか、目を丸くしていた。
「監禁などと、誰が申したのだ」
「……お前だろう」
「確かに姫を監禁できるのならば、したいとは思うが、実行しようなどとは思ってはおらぬ」
「じゃあ、これはなんだよ」
部屋の入り口に警備を立て、部屋から出るなって、りっぱな監禁じゃないのかと、俺は迫る。
「部屋から出さぬようにしておったのは、屋敷が広すぎるがゆえに、姫が迷子にならぬように配慮したのだ」
「迷子……?」
「それよりも、私は姫に問わねばならぬことがある」
部屋から出すなと言づけたのは、屋敷の中で迷子になると困ると思ったからで、帰さないと言ったのは、どうしても聞きたいことがあるからだと述べた天王寺は、俺の二の腕を両手で掴むと真剣な眼差しを送ってきた。
正直、天王寺のこの目は怖い。何かを問い詰めるときの瞳の色。
「な、なんだよ、聞きたいことって……」
ゴクリと喉が鳴ったのは、本当は聞きたくないと思ったからだ。
「高城という輩に、助けを求めたというのは誠であるか」
「助け? ……俺が高城に?」
「私から逃れたいがゆえに、力を貸せと姫が依頼したと聞かされた」
「天王寺から逃げたいって、俺が……?」
「逃れたいと申したのではないのか」
危機迫る勢いで顔を近づけてきた天王寺に、俺は大きく首を振る。高城に天王寺から助けてほしいなんて一言も言ってない。むしろ、高城が離れるべきだと言ってきたのに。
「そんなこと言ってない」
俺がそう断言すれば、天王寺は再び俺を胸に抱き寄せた。
「やはり罠であったか。……姫と私を引き離そうなどと愚かなことを」
自分の考えが合っていたことに安堵した天王寺の声は、嬉しそうだったが、俺が高城と一緒に居たことは気に入らなかったらしく、苦痛にもにた声が降る。
「何もされてはおらぬであろうな」
高城と一緒にいて、何かされたのではないかと心配した天王寺に、俺は余計な水を差してしまい、自業自得という結果を招き入れる。
黙っていれば良かったと後悔したのは、2分後。
「キス……された……」
「おのれ高城、姫に手を出すなど許してはおけぬ」
「んん……?!」
怒りを露にした天王寺は、一瞬の間を置き、俺の後頭部をがっしりと掴むと逃さぬと、強引な口づけを与えてきた。
周り! 人目! てめえはここをどこだと思ってんだぁぁ――! と叫びたい俺の声は、一言も音にはならず、わずかに開く口元からは吐息しか漏れない。
「ンぅ、んん……やっ……んっぅ……」
手を思いっきり突っぱねてはみたが、全然離れない。どのくらい俺は唇を奪われていたのだろうか、唇は真っ赤に染まり、少し腫れたような気もするころ、ようやく解放された。
「消毒は早い方がよい」
「おい天王寺、……ちょ、何すんだって」
足が宙に……。俺はまたまたお姫様抱っこという醜態を晒され、足をばたつかせて逃れようともがけば、天王寺が俺を落としそうになって、周りにいた男に指示を出す。
「足を」
そう指示をだせば、男が素早い動きで俺の両足をどこに隠していたのか、持っていたロープで一纏めに括りやがったんだ。
その上両手首も括られて、俺の抵抗はあっけなく封じ込まれ、天王寺の腕の中に収められてしまう。
「大人しくせぬ姫が悪いのだぞ」
縛ったのは、暴れる俺が悪いと言い放って、天王寺は満足そうに歩き出す。
「……天王寺」
「怯えずともよい。高城に触れられた場所など、私が消す」
だからそれが怖いんだって。俺、どうなっちゃうの?
天王寺が怖くて、俺が怯えた瞳で見つめれば
「他には何もされておらぬであろうな」
氷点下の声がかけられた。
ここで2回もキスされたなんて、口が裂けても言えない。
俺は「されてない、されてない」と連呼するが、結局さっきの部屋に連れ込まれ、ベッドに沈められた。
「ここって……」
もしかしなくても天王寺の自室なんじゃないかと、俺が問えば、天王寺は拘束したままの俺の上に乗り上げてくる。
「私の自室であるが、家族以外を入れたことなどない」
俺は特別なのだと、天王寺は柔らかい笑みを浮かべたまま、次にさらりととんでもないことを口にした。
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