33 / 126
第33話 なんか名前が変わってるんだけど?
しおりを挟む
いきなり俺の家に遊びに来るなんて事になった時は驚いたけれど、みんな意外と真面目に話を聞いてくれて助かった。
おかげで教えられる範囲の事はだいたい網羅できたと思う。
それでも夕方には講義(?)も終わり、みんなを外まで送迎してこの日は終了。
ちょっと帰りはうっかり事故って紅先生が死んじゃったけど、ギリ蘇生できたのでよしとしよう。危ない危ない……。
とりあえず全員レベル100近くにはなったし、ダンジョンでも事故死は減るはず。
そうも思うと次回のダンジョンが楽しみに思えてならない。
こうして興奮も冷めやらない中で日曜も過ごし、また次の週がやってきた。
――とはいえ、だ。
ダンジョンはそこまで速いスパンで出現する訳ではないらしい。
どうやら先週が異常だったようだ。
なので結局、何事も無いまま週末へと突入してしまった。
それで今週の授業も終わり、さっそく部室へ。
つくしの冗談を鼻で笑いながら扉を開けたのだけど。
「こんちゃーっす……あれ、二人とも何観てるんすか?」
「今朝アップされた動画さー。ちとヤバめって感じだけどぉ」
なんか先に来ていた先輩二人がスマホを眺めていた。
しかも真面目な顔を合わせて食い入るように。
空気もなんとなく重い。
聞こえてくる音も叫び声みたいなのが上がっているし。
もしかして修羅場という奴なのでは?
「まぁ今終わったとこだしぃ、改めて見たいから一緒に見よっかぁ」
「やった! 楽しみー!」
「ぶっちゃけ、あんま面白くないよぉ。もうバラエティにもならないくらい」
「そんな酷いんだ?」
「うん、今までで指折りかもぉ」
そんなに酷いのか。
どれどれ、澪奈部長のタブレットが出てきた所で動画がまた出てきたぞ。
「投稿者は?」
「ネオすえつぐ」
「誰だよぉぉぉぉーーーーーー!」
「こないだうちらの動画でバズらせた奴っしょ!」
「あ、そーだった! なんか名前変わってるし!」
「なんかこないだの動画以来、結構行動的になったっぽくてさー。ダン攻委員会から案件も来てるらしくて、今回は生放送で撮る事になったらしーよ」
「やるじゃんネオすえつぐ。あーそっか、だから澪奈パイセン不機嫌なのか」
「違う違う。今回はマヂで攻略内容がヤベーッての。すえつぐの動画自体はクオリティアップしてて割と見られるようになってっし」
「え、澪奈パイセンが褒めてる……! 何があったしー!」
わからん!
だけど前と違って好反応だし、本当に造りが良くなったのかな。
もっと面白いものになってるとすると俺の理性が保てるかどうか。
さて、では見させてもらうとしよう。
酷いと言われるくらいの戦況を。
『みなさん、おはようございます! ネオ~ッすえつぐですっ! 今日はダンジョン攻略委員会より案件をいただきまして、朝一で九州の大分県まで来ています!』
「九州! 遠いなー」
「どこに沸くかもわかんないからねぇ」
『委員会からの要望もあり、今回はいきなりのライブ放送でお送りさせていただきまーす! なので今日のプレイヤーさん達には是非ともカッコよくキメていただきたいっ!』
「あれれー、すえつぐ顔出ししてるじゃん。前は出さなかったのに」
「そうなんよねぇ、意外とイケメンで最初ビビッたんよー」
「澪奈パイセン……意外と面食いだったりする?」
俺は男の顔なんてどうでもいい。
顔見せなんてしている暇があったらプレイヤーを紹介してくれないだろうか。
お、期待に応えてくれているぞ。
ほうほう、中九州にはトップオブトップスとやらの一団体がいるんだな。
よくわからないが、なんだかすごそうだ!
――なんだよ! そいつら不参加かよ!
じゃあ紹介すんなよ紛らわしい!
「はいはい彼方っち、タブレット握らないでねー割れちゃうからぁ」
「す、すんません……」
『今回の参戦者数は三七人と少なめだが結果は果たして! プレイヤーがなだれ込んでいくぞ! みんな、今日も頑張ってくれぇ!』
たしかに、聞いてみると台詞のキレが鋭くなっている。
前はなんかボソボソした感じだったけど、今はすごく聞き取りやすいぞ。
実は中身が別人とか無いよな!?
……と、こんな感じで始まった動画だけど、以降はいたって普通。
特にハプニングもないまま分かれ道に遭遇し、部隊を分けて進むのを見送るだけ。
強いて言うならちょっとトークがわざとらしくなったなと思うくらいか。
これのどこが酷いのだろうか?
「そろそろだねぇ」
「えぇ、来るわ」
「「えっ?」」
なんだ、酷い所ってそういきなり来るものなのか?
ちょっとドキドキしてきたんだが。
『おっ、道が三つに分かれたと思ったらもうコア部屋! だが敵はゴブリンよりも強敵なレッドオークの軍勢だ! しかし俺達のプレイヤー達はそれでも恐れず乗り込んでいく! ……あれ?』
「おや、なんだ? 敵の中に一人だけで歩いていく奴がいるぞ?」
『何か様子が変だ。ちょっと音声拾ってみる……』
『どうか我々の話を聞いて欲しい! 我々はこれ以上無駄に戦うつもりはない!』
『こ、これは……説得だ! 武器をしまって説得を試みようとしているみたいだぞ!』
なっ……!?
これって一体どういう事だ!?
武器まで納めるなんて、このプレイヤーは一体何を考えているんだよ!?
おかげで教えられる範囲の事はだいたい網羅できたと思う。
それでも夕方には講義(?)も終わり、みんなを外まで送迎してこの日は終了。
ちょっと帰りはうっかり事故って紅先生が死んじゃったけど、ギリ蘇生できたのでよしとしよう。危ない危ない……。
とりあえず全員レベル100近くにはなったし、ダンジョンでも事故死は減るはず。
そうも思うと次回のダンジョンが楽しみに思えてならない。
こうして興奮も冷めやらない中で日曜も過ごし、また次の週がやってきた。
――とはいえ、だ。
ダンジョンはそこまで速いスパンで出現する訳ではないらしい。
どうやら先週が異常だったようだ。
なので結局、何事も無いまま週末へと突入してしまった。
それで今週の授業も終わり、さっそく部室へ。
つくしの冗談を鼻で笑いながら扉を開けたのだけど。
「こんちゃーっす……あれ、二人とも何観てるんすか?」
「今朝アップされた動画さー。ちとヤバめって感じだけどぉ」
なんか先に来ていた先輩二人がスマホを眺めていた。
しかも真面目な顔を合わせて食い入るように。
空気もなんとなく重い。
聞こえてくる音も叫び声みたいなのが上がっているし。
もしかして修羅場という奴なのでは?
「まぁ今終わったとこだしぃ、改めて見たいから一緒に見よっかぁ」
「やった! 楽しみー!」
「ぶっちゃけ、あんま面白くないよぉ。もうバラエティにもならないくらい」
「そんな酷いんだ?」
「うん、今までで指折りかもぉ」
そんなに酷いのか。
どれどれ、澪奈部長のタブレットが出てきた所で動画がまた出てきたぞ。
「投稿者は?」
「ネオすえつぐ」
「誰だよぉぉぉぉーーーーーー!」
「こないだうちらの動画でバズらせた奴っしょ!」
「あ、そーだった! なんか名前変わってるし!」
「なんかこないだの動画以来、結構行動的になったっぽくてさー。ダン攻委員会から案件も来てるらしくて、今回は生放送で撮る事になったらしーよ」
「やるじゃんネオすえつぐ。あーそっか、だから澪奈パイセン不機嫌なのか」
「違う違う。今回はマヂで攻略内容がヤベーッての。すえつぐの動画自体はクオリティアップしてて割と見られるようになってっし」
「え、澪奈パイセンが褒めてる……! 何があったしー!」
わからん!
だけど前と違って好反応だし、本当に造りが良くなったのかな。
もっと面白いものになってるとすると俺の理性が保てるかどうか。
さて、では見させてもらうとしよう。
酷いと言われるくらいの戦況を。
『みなさん、おはようございます! ネオ~ッすえつぐですっ! 今日はダンジョン攻略委員会より案件をいただきまして、朝一で九州の大分県まで来ています!』
「九州! 遠いなー」
「どこに沸くかもわかんないからねぇ」
『委員会からの要望もあり、今回はいきなりのライブ放送でお送りさせていただきまーす! なので今日のプレイヤーさん達には是非ともカッコよくキメていただきたいっ!』
「あれれー、すえつぐ顔出ししてるじゃん。前は出さなかったのに」
「そうなんよねぇ、意外とイケメンで最初ビビッたんよー」
「澪奈パイセン……意外と面食いだったりする?」
俺は男の顔なんてどうでもいい。
顔見せなんてしている暇があったらプレイヤーを紹介してくれないだろうか。
お、期待に応えてくれているぞ。
ほうほう、中九州にはトップオブトップスとやらの一団体がいるんだな。
よくわからないが、なんだかすごそうだ!
――なんだよ! そいつら不参加かよ!
じゃあ紹介すんなよ紛らわしい!
「はいはい彼方っち、タブレット握らないでねー割れちゃうからぁ」
「す、すんません……」
『今回の参戦者数は三七人と少なめだが結果は果たして! プレイヤーがなだれ込んでいくぞ! みんな、今日も頑張ってくれぇ!』
たしかに、聞いてみると台詞のキレが鋭くなっている。
前はなんかボソボソした感じだったけど、今はすごく聞き取りやすいぞ。
実は中身が別人とか無いよな!?
……と、こんな感じで始まった動画だけど、以降はいたって普通。
特にハプニングもないまま分かれ道に遭遇し、部隊を分けて進むのを見送るだけ。
強いて言うならちょっとトークがわざとらしくなったなと思うくらいか。
これのどこが酷いのだろうか?
「そろそろだねぇ」
「えぇ、来るわ」
「「えっ?」」
なんだ、酷い所ってそういきなり来るものなのか?
ちょっとドキドキしてきたんだが。
『おっ、道が三つに分かれたと思ったらもうコア部屋! だが敵はゴブリンよりも強敵なレッドオークの軍勢だ! しかし俺達のプレイヤー達はそれでも恐れず乗り込んでいく! ……あれ?』
「おや、なんだ? 敵の中に一人だけで歩いていく奴がいるぞ?」
『何か様子が変だ。ちょっと音声拾ってみる……』
『どうか我々の話を聞いて欲しい! 我々はこれ以上無駄に戦うつもりはない!』
『こ、これは……説得だ! 武器をしまって説得を試みようとしているみたいだぞ!』
なっ……!?
これって一体どういう事だ!?
武器まで納めるなんて、このプレイヤーは一体何を考えているんだよ!?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
457
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる