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~第一章~
本物の第二王女のお披露目
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「皆様、そろそろお時間でございます。」
式典の時間を知らせるように部屋の外から声をかけられた。
貴族達は固まっていた意識や体をビクっ!と動かして部屋から出ていった。
去り際に礼儀としてペコリと頭を下げていく。
陛下達に対して会わせる顔がないのか、それともこの空気が気まずいのか一切視線を合わせようとせずに下を向きながら去っていった。
「へ、陛下、王妃様方……で、では失礼致します。」
「……し、失礼致します。」
部屋から人数が減り、沈黙は更に重たい物となっていった。
窓の外から沢山の人の声が聞こえてきた。
恐らく式典が始まったのだろう。
王族は後から登場するのがいつもの事だ。
だから室内にはマルヴィーア王家の者とクリスディークの6名が残っていた。
このまま呼ばれるまで、沈黙が続くのかと思ったら王妃様が扇子で口元を隠しながらサマンサへと話しかけた。
「……第二王女。本日お披露目する事で王城内だけでなく外の世界でもそう呼ばれます。」
「……は、はい!」
「本来王族とは礼儀作法、気品、風格などは覚悟と努力そして経験さえあれば身につきます。ですが貴女はその中のどれ一つとして持ち合わせていません。」
「そ、それは……何もしなくていいと言われたから……」
「王族になるのに何もしなくていい? そんな事が本気でありえると思いますか。例えそう言われたとしても自ら何かを学ぼうとは、王族について知ろうとは思わなかったのですか? 仮にも隣国に嫁ぐ身なのに食べて寝るだけの生活が許されると本気で思ったのですか。」
「……だ、だって何も出来なくてもいいってこいつが!」
「は!? そ、それは……」
自分の自堕落した生活をクリスディークのせいにして指差したサマンサはなんでそんな事を言われなきゃいけないのかと心の底から思い、面倒くさいなと小さく溜め息を吐いた。
その姿に呆れたのか目元をピクリと動かした王妃は冷たく突き放すよう サマンサに告げた。
「人のせいにするのは止めなさい。見苦しい。私達は貴女に何も強制などしておりません。この数ヶ月クリスディーク王子の意向もあり、貴女の望みのままに過ごさせました。……ですがあの生活は貴女が望んだのです。仮に貴女が何かを学びたいと言えばきちんとした教師を用意しましたし、隣国の事を学べる書物も用意出来ました。ですが貴女は自分の欲望を満たす事以外何も望まなかった。」
「……っ…………」
「先程の貴女の態度から察するに王族として礼儀作法どころか、平民としての一般常識すらなさそうですね。」
「な、何であんたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」
「私がこの国の王妃だからです。」
「……ッ!……」
「良いですか。……どうせまともな対応は出来ないのですから式典ではただ黙って立っていなさい。何一つ発言はしなくて結構ですから与えられた位置に居なさい。……恐らくカーテシーさえ出来ないのでしょう。」
自分のお披露目なのに何もするな?
発言もしなくていい?
それではただの人形ではないか。しかも醜く肥えた化け物の見せ物だ。
見せるだけでいいなら私は居なくても良いじゃない!
そう、怒鳴りたかった。でも鋭く冷たい視線が突き刺さりサマンサは言葉に詰まってしまった。
自分の怠慢は認めるよ!
この体を見れば嫌でもだらけすぎたってわかる。
でもこの扱いは酷くない!?
私が礼儀作法やカーテシーを知らないのはあんた達が何も教えてくれなかったからでしょ!
不満や不信感が膨れ上がり、そしてようやくサマンサは気がついた。
自分が第二王女として、家族として受け入れられていない事に……
な、何よ! そんな風に睨んできて!
平民育ちっていうのがそんなに気にくわないわけ!?
サマンサにはそれ以外に嫌われる理由がわからなかった。
まさか皆から嫌われていると思っていた悪役令嬢のアクリアーナが家族からは溺愛されている少女だとは考えてもみなかった。
自分の行動によって愛するアクリアーナと引き離された事を恨んでいるとは気づきもしなかったのだ。
△▽△▽
あーー。鬱陶しい。何なのよ! 一体!
こんな筈じゃなかったのに!
第二王女として華々しいスタートを切るつもりだったのに!
王城のバルコニーに案内されたサマンサはクリスディークのエスコートで民の前に現れた。
ざわつく声と微かに聞こえる笑い声。
そしてあきらかに好意的ではない訝しげな視線が向けられた。
たかが平民のくせに!
私を笑うなんて許せない。……覚悟しときなさいよ。
絶対に許してなんかやらないから!
「先程説明を受けたとは思うが、此処にいるのが妖精の取り替え子として入れ替わっていたこの国の本物の第二王女だ。突然ではあるが隣に立っている隣国のクリスディーク王子との結婚が決まった為、本日隣国へ旅立つ事になった。この後出立式があるので気になる者は見ていってくれ。」
笑顔を一切浮かべず陛下はチラリと視線をサマンサへと寄越し、淡々と説明して興味無さげに話を打ち切った。
今日居なくなる人間の事など知る必要はない。と言わんばかりの適当な説明であった。
え……今のが私のお披露目? もう終わりなの?
出立式の宣伝もおざなりすぎじゃない?
あれじゃ、自分は見に行かないけど興味のある奴だけどうぞ。って言ってるだけじゃない!
気づいているだろうか?
陛下を始め、王家の者達は未だに一度も娘とも妹とも言わず、名前すら呼んでいない事に……
周囲にいた貴族もこれではあんまりだと思ったのか、同情的な声が上がった。
「へ、陛下……」
「サ、サマンサ様は貴方の実の娘ですぞ。」
「も、もう少し何か……」
だが臣下のそんな声を無視した陛下は声高らかに話し出した。
式典の時間を知らせるように部屋の外から声をかけられた。
貴族達は固まっていた意識や体をビクっ!と動かして部屋から出ていった。
去り際に礼儀としてペコリと頭を下げていく。
陛下達に対して会わせる顔がないのか、それともこの空気が気まずいのか一切視線を合わせようとせずに下を向きながら去っていった。
「へ、陛下、王妃様方……で、では失礼致します。」
「……し、失礼致します。」
部屋から人数が減り、沈黙は更に重たい物となっていった。
窓の外から沢山の人の声が聞こえてきた。
恐らく式典が始まったのだろう。
王族は後から登場するのがいつもの事だ。
だから室内にはマルヴィーア王家の者とクリスディークの6名が残っていた。
このまま呼ばれるまで、沈黙が続くのかと思ったら王妃様が扇子で口元を隠しながらサマンサへと話しかけた。
「……第二王女。本日お披露目する事で王城内だけでなく外の世界でもそう呼ばれます。」
「……は、はい!」
「本来王族とは礼儀作法、気品、風格などは覚悟と努力そして経験さえあれば身につきます。ですが貴女はその中のどれ一つとして持ち合わせていません。」
「そ、それは……何もしなくていいと言われたから……」
「王族になるのに何もしなくていい? そんな事が本気でありえると思いますか。例えそう言われたとしても自ら何かを学ぼうとは、王族について知ろうとは思わなかったのですか? 仮にも隣国に嫁ぐ身なのに食べて寝るだけの生活が許されると本気で思ったのですか。」
「……だ、だって何も出来なくてもいいってこいつが!」
「は!? そ、それは……」
自分の自堕落した生活をクリスディークのせいにして指差したサマンサはなんでそんな事を言われなきゃいけないのかと心の底から思い、面倒くさいなと小さく溜め息を吐いた。
その姿に呆れたのか目元をピクリと動かした王妃は冷たく突き放すよう サマンサに告げた。
「人のせいにするのは止めなさい。見苦しい。私達は貴女に何も強制などしておりません。この数ヶ月クリスディーク王子の意向もあり、貴女の望みのままに過ごさせました。……ですがあの生活は貴女が望んだのです。仮に貴女が何かを学びたいと言えばきちんとした教師を用意しましたし、隣国の事を学べる書物も用意出来ました。ですが貴女は自分の欲望を満たす事以外何も望まなかった。」
「……っ…………」
「先程の貴女の態度から察するに王族として礼儀作法どころか、平民としての一般常識すらなさそうですね。」
「な、何であんたにそこまで言われなきゃいけないのよ!」
「私がこの国の王妃だからです。」
「……ッ!……」
「良いですか。……どうせまともな対応は出来ないのですから式典ではただ黙って立っていなさい。何一つ発言はしなくて結構ですから与えられた位置に居なさい。……恐らくカーテシーさえ出来ないのでしょう。」
自分のお披露目なのに何もするな?
発言もしなくていい?
それではただの人形ではないか。しかも醜く肥えた化け物の見せ物だ。
見せるだけでいいなら私は居なくても良いじゃない!
そう、怒鳴りたかった。でも鋭く冷たい視線が突き刺さりサマンサは言葉に詰まってしまった。
自分の怠慢は認めるよ!
この体を見れば嫌でもだらけすぎたってわかる。
でもこの扱いは酷くない!?
私が礼儀作法やカーテシーを知らないのはあんた達が何も教えてくれなかったからでしょ!
不満や不信感が膨れ上がり、そしてようやくサマンサは気がついた。
自分が第二王女として、家族として受け入れられていない事に……
な、何よ! そんな風に睨んできて!
平民育ちっていうのがそんなに気にくわないわけ!?
サマンサにはそれ以外に嫌われる理由がわからなかった。
まさか皆から嫌われていると思っていた悪役令嬢のアクリアーナが家族からは溺愛されている少女だとは考えてもみなかった。
自分の行動によって愛するアクリアーナと引き離された事を恨んでいるとは気づきもしなかったのだ。
△▽△▽
あーー。鬱陶しい。何なのよ! 一体!
こんな筈じゃなかったのに!
第二王女として華々しいスタートを切るつもりだったのに!
王城のバルコニーに案内されたサマンサはクリスディークのエスコートで民の前に現れた。
ざわつく声と微かに聞こえる笑い声。
そしてあきらかに好意的ではない訝しげな視線が向けられた。
たかが平民のくせに!
私を笑うなんて許せない。……覚悟しときなさいよ。
絶対に許してなんかやらないから!
「先程説明を受けたとは思うが、此処にいるのが妖精の取り替え子として入れ替わっていたこの国の本物の第二王女だ。突然ではあるが隣に立っている隣国のクリスディーク王子との結婚が決まった為、本日隣国へ旅立つ事になった。この後出立式があるので気になる者は見ていってくれ。」
笑顔を一切浮かべず陛下はチラリと視線をサマンサへと寄越し、淡々と説明して興味無さげに話を打ち切った。
今日居なくなる人間の事など知る必要はない。と言わんばかりの適当な説明であった。
え……今のが私のお披露目? もう終わりなの?
出立式の宣伝もおざなりすぎじゃない?
あれじゃ、自分は見に行かないけど興味のある奴だけどうぞ。って言ってるだけじゃない!
気づいているだろうか?
陛下を始め、王家の者達は未だに一度も娘とも妹とも言わず、名前すら呼んでいない事に……
周囲にいた貴族もこれではあんまりだと思ったのか、同情的な声が上がった。
「へ、陛下……」
「サ、サマンサ様は貴方の実の娘ですぞ。」
「も、もう少し何か……」
だが臣下のそんな声を無視した陛下は声高らかに話し出した。
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