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9.悪役令嬢は入学式に参加する

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ついにこの時がやって来た。

アナスタシアは行きたくないとメアリーにごねまくった今朝のやり取りをまったく感じさせない足通りで馬車を降りてこれから起こるであろう事に絶望していた。

今日はアナスタシアの運命を変えた入学式当日。
出来るだけ王子達には近寄らずに平穏に死ぬ手段を取りたいとアナスタシアは考えていた。

あの人達はアナスタシアを心も身体も傷つけてから殺す手段に長けているが、アナスタシアはドMではない。痛い事は極力早く過ぎ去って欲しいし、長く痛めつけられて喜ぶ訳でもない。

辛い思いをして殺される危険分子は出来るだけ避けたかった。

「ごきげんよう」
学校指定であるブレザーの制服に身を包み、アナスタシアは馬車を降りてから玄関ホールまで歩くアナスタシアは見慣れた顔や知らない顔に声を掛けながら足早に通り過ぎた。

時折かけられる声に応えながら見渡す限り手入れの行き届いた噴水のある庭園を通り抜ける。
さすがは貴族の教育施設随一の王立学園。
無駄にお金がかかっている。

「アナスタシア・ヴィンターバルトです」
人の動きに習って進めば受付があり、アナスタシアは自分の名を告げる。
新入生が座るための席はすでに半分は埋まっている。
今まで通りだと私はこれから主人公の隣に座るはず。
そして、公爵である自分が何故平民の隣へ案内されるのかと、ブチギレるのだ。

もちろん私はそんな事しないで大人しく座ってみせます!
目立たず騒がす過ごせばきっとさっさと楽に死ねる…はず。

上級生だろう、タイの色が違う生徒が名簿を確認した後に祝いの言葉と共に席へと誘導してくれ、アナスタシアは微笑みを浮かべて隣の席に座る生徒に声をかけた。

そう、この世界の主人公であるアリアナに。

「ごきげんよう、お隣よろしいかしら」
「だ、大丈夫です!」

許可を得るためではない為、声をかけてから相手の返事を待たずに腰をかけたせいか、アリアナは大袈裟に肩を跳ねさせた。
それから素早い動きで椅子の端へと寄ってできる限りアナスタシアと距離を取るようする。

…何もしてないはずなのに私はそんなに嫌われているの?

アナスタシアはすでに距離を置こうとするアリアナの態度に絶望感を抱きながらも勇気を出して尋ねる事にした。

「えっと、別の席に座った方がいいかしら?」
「いっいえ!是非こちらにお座りください!」

アナスタシアの困惑した表情に何かを感じたのかアリアナは続ける。

「こんな私が恐れ多くもお隣に座ることになり申し訳ありせん!」

まるでマシンガンの勢いで言い切るとアリアナは赤べこ並に頭を動かして謝罪をし始めた。

勢いっ!勢いがすごいっ

完全に彼女のペースに巻き込まれてしまったアナスタシアは呆気に取られたままその光景を見つめていた。

ざわざわと、人が増え視線を感じたアナスタシアは、自分が騒動の真っ只中にいる事に気づき、我に帰ると勢いよくアリアナの手を掴んだ。

「落ち着いて、ここに居るからには貴方と私は同じ一年生。身分は関係ありませんわ」
落ち着かせようと掴んだ両手をアナスタシアは自分の胸に抱き抱えた。
騒動が大きくなる前に場を納めたい、その一心で。

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