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12.悪役令嬢は出会いイベントを台無しにする

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今日は少し違う対応を取ってしまったが、本来ならアリアナの隣を嫌がったアナスタシアが騒ぎを起こしたと騒ぎになってアルバートが騒ぎを収めようと現れるはずだった。

今まで通りの動きを取らなかったことに一度失敗したかと肝を冷やしたが、この世界は外れたレールをすぐに修正する恐ろしい力が働いていた。
すぐにアリアナが大声をだし、騒ぎを起こしたというひと悶着が起きて、アルバートは今まで通り呼び寄せられるように現れ、ループしてきた事と特に変わらず進むことになった。

…槍が飛んでこなくてよかったわ。

軌道修正の力はあっという間もなくアナスタシアをいつも死に追いやっていた。
無意識でやった事とはいえ、今までと違う行いをしたことが後にどうやって影響するか考えていなかったアナスタシアは今後は出来るだけこれまでのレールを踏むことを誓った。

死にたいと願ってはいるが自分で死期を選びたいと思っているだけで理不尽な死をアナスタシアは受け入れるつもり
はなかった。


今のこの状況を改めてみると少しおかしかった。アナスタシアからの理不尽な言葉を受けて悲しむアリアナにアルバートが気づき、アリアナを打とうと扇子を振り上げるアナスタシアから守ろうとするシーンが抜けていた。

その結果本来ならアナスタシアが立つ位置にアルバートが立ち、アリアナがアルバートの位置に、そしてアリアナが立つはずだった誰かの背中に庇われる位置へアナスタシアはたたされていた。

「アリアナさん、貴方はここじゃなくてアルバート様の後ろにいるべきですわ」

とりあえずアナスタシアはこの普通じゃない状況をもとに通りのレールに戻そうとアリアナに言葉をかけた。

「どういうことでしょう…?」

突拍子もないアナスタシアの言葉を受けてアリアナは趣旨が全く読み取れずにいた。

いつの間にか広げた扇子で口元を覆ったアナスタシアがアリアナを困った子を見る目で見つめた。

「あら、言葉の通りですわ。貴方はアルバート様と良い関係を望んでいらっしゃるのでしょう?」

これはアナスタシアのただの予想でしかない事だったが、アリアナがアルバートと結ばれたいと願うのであればここで敵対しているような立ち位置にずっと立たせる訳にはいかなかった。

アナスタシアは良心100%でアリアナとアルバートの出会いを感動的なものにしなくてはならないと自分を奮い起こしてアリアナに気を使っていた。

…2人が結ばれて平穏な日々になれば私は理不尽に殺される恐怖に怯えずにタイミングを見計らって死を選べるはず。

ほんの少しだけ自分勝手な気持ちが良心に入っているのはアナスタシアだけの秘密だった。

「今初めてお話した方より私を気遣って下さったアナスタシア様と仲良くなりたいです」

そう言ってアナスタシアはアリアナに手を取られて真剣に告げられた。
嘘を言っているとは微塵も思えない瞳の輝きにアナスタシアは驚きに睫毛を瞬いた。

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