【完結】姉は全てを持っていくから、私は生贄を選びます

かずきりり

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09.生活の場所

「……凄い………」

神に連れてこられた場所での朝。
私は庭に出て、めいっぱい空気を肺に吸い込んだ。
木々の騒めき、鳥の鳴き声、川のせせらぎ。美しい自然に囲まれている。
小さいながらも立派な家が建っており、周囲は少し開けていて、しっかりした畑もある。
家は二階建てで、一階にキッチンとリビング。二階にベッドルームがあった。
棚や生活に必要な雑貨等も完備していて、もう十分と言える。むしろほぼ身一つで何とかしようと思っていた私にとっては贅沢なんじゃないだろうか。

「おはよう、マリア」
「おはよう、シヴァ」

神の名はシヴァと言うらしい。
あれからお互い呼び名も分からないのは不便だと名乗りあい、ここに来た。
実は祠にある祭壇の影には、陣のようなものが隠れていて、乗るとココへ移動出来るのだそうだ。
家の隣にある小屋にも同じ陣が描かれていて、神が居なくても娘達が行き来できるように陣を描いておいたという。つまりそれはいつでも逃げ出して良いという意思表示だったのだろう。
束縛する事なく、無理に留める事なく。それでもこの地で寿命まで神の側に皆居たというのならば、それはこの地での生活が穏やかだったと言う事だろうと思って安心した。

「そういえば……シヴァは食事をするの?」

朝食にしようと畑から野菜を一緒に収穫しながら尋ねる。

「まぁ食べられない事はないけど、食べる事は出来るよ。マリアみたいに贈られてきた子が居る時は一緒に食べるよ!」

だって一人で食べるより美味しいんでしょ?僕も楽しいし。と笑顔になりながらシヴァは言う。
確かにその通りではあるから、私も少し嬉しくなる。
……というか……

「シヴァ……手際良いね」
「贈られてきた子達に沢山教わったからね!」

野菜を取るのも、洗うのも、切るのも。
シヴァは手慣れていた。むしろ私が虫に驚き、洗うのにもたつき、包丁で指を切り……只今、シヴァの包丁さばきから盛り付けからを見学させていただいている。
初日の朝食で、自分が何も出来ない事に打ちひしがれた感じはする。
一人なら一人で、それでも何とかしていたかもしれないが……
シヴァの横顔を眺めていると、心が温かくなったような気がする。
問いかけたら、答えてくれる。会話が成立する。助けてくれる。
それが……嬉しくて。くすぐったいような気持ちになる。

「シヴァ。色々教えて」
「良いよ」

私は人に頼った事があっただろうか。いつも押し付けられて我慢していただけだった……。
しかし、生活に必要な知恵と技術を身に着ける為に頑張ろうと、神様に頼る事を決めた。
勿論、シヴァは笑顔で了承してくれた事に、少し安堵の息を漏らした。

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