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08.神様と暮らします

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神は生贄を欲した事も求めた事もなく、ただただそこに存在しているだけだった。
だけれど人間は何かと理由をつけたり対処をしたりしないと気が済まないようで、ある時代に水害や疫病で大変な事になった時、勝手に生贄という制度を作ったようだ。
それから定期的に国が勝手にココに若い娘を放り込んで行くようになったそうだ。
国に帰る事も出来ない身寄りのない娘達ばかりで、生贄というより保護をしていたそうだ。そして気がついた、誰かと一緒にいる生活。
死ぬ事なんてない、長い長い悠久の時間。大半は眠って過ごしているらしが、娘が贈られた時だけは起きて一緒に過ごしていたそうだ。
娘の寿命が尽きるまで。
神に比べて短い人間の寿命だけれど、その短い時間がとても楽しく、自分がいかに寂しかったのか痛感したそうで、また生贄が贈られる事を悲しく思う反面、楽しみでもあったと————

「そうだったのですか……」

神の話を聞いて思った。少なくとも今まで生贄となった娘達は生贄となった事が幸いだったのではないかと。
身寄りがないという事は明日の生活すら分からない者の中から選んでいた可能性が高い。
ならば神の元に保護されていたのならば多少は穏やかな生活が出来たのではないのだろうか。
……幸せだったかどうかは別として。

自分の生い立ちを思い出す。
住む場所もあって、三食食べる事が出来て、学ぶ事も出来たし、身体を清潔に整える事も出来た。
確かに恵まれていただろう、外聞的には。
ただ、自由とか意思とかなかっただけで、私が私である必要がなかっただけで。心は貧しかったと言える。

「……話し相手になるだけ……ですか?」

私の口から出た問いかけるような言葉に、神はキョトンとした顔をした後、意図を汲み取ったのか答えた。

「いや、神の居住区に人間を連れて行く事は出来ないから、この近くに住む場所を作ってはあるんだけど、自給自足生活になるよ。話し相手だけというわけにはいかないかな……もし嫌なら出て行っても大丈夫だし」

少し寂しそうに神は言う。
けれど、私の目標は家を出る事であったし、どこか遠くの辺境へ行って生活するのか、ここにするのかの違いだけである。
すでに場所も用意してあって、一人じゃなく誰かが居るとするならば……それは私にとっても良い事なのではないだろうか。
居ないように扱われている感覚は一人で居るのと同じようなものだったけれど、寂しさに慣れているわけではない。

「これからお願いします。神様」

礼をしながら言うと、神は笑顔になって答えた

「喜んで!」
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