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32: ジュリアは名探偵ですか?
しおりを挟む「確かにマスターは優しい、今度礼をせんとな。だが、色々大概なネオンに言われたくないって言いそうだぞ♪……それに、いくら母親みたいに甘えられる存在だからって…二人でベッドにいる時に、他の男の話は嫉妬しちしまうな…♡」
手に付いたパン屑とマスタードの種をうっとり舐め取る俺に、ぎしり、とゆっくりマットレスに体重を掛け、ジュリアが顔を寄せて囁く。
その嫉妬という言葉に、生まれて初めて向けられた感情に、俺はドキドキと鼓動を早めながらも、同時に疑問も抱えた。
「嫉妬だなんて…そんなの言われたの初めてだ♪…ていうか、ジュリアの国では母親って皆、マスターみたいに優しいものなのか?」
実は昔、俺に、両親兄弟姉妹と一緒に暮らしていた数年だが、マスターみたいに優しくしてくれる人が居たのだ。その人は料理長の奥さんで、俺が厨房に顔を見せる度に何某かの世話を焼いてくれたものだ。
俺は、頭を撫でてくれるその、優しく、温かい、皮が分厚いけれどふかふかした掌が大好きだった。
樽みたいに丸く厚いのに柔らかい、不思議な体で包み込むように抱っこしてくれるのが大好きだった。
だから、ジュリアも何かと優しいし…もし、あの奥さんがジュリアと同郷とかで、あれがお国柄の様なものならば、俺はいつかその国で暮らしたいな、なんて思ったのだ。
だが、ジュリアは俺の顔を見詰めたまま片眉を上げて口を開いた。
「……ははーん、さてはネオン、お前の両親はどっちもαで兄弟もαが大半なんだろう?」
凄い、何で判ったんだろう。
俺は目を丸くして驚き、その通りだと答えた。
「何処もα主義な貴族は一緒だな…。子供に厳しくて、父母というより厳しい教師の上司だ。子供を甘やかすのは軟弱者のする事だと考えてやがる。」
確かに、母上と父上は、家庭教師の上司だ。雇い人だものな。でも、それって……?
「……?α主義…?とやらな貴族だからなのか?
家庭教師には、サキュレントの母とは厳格で、常に子供の手本になるような凛とした人であることが尊ばれていると習ったぞ。」
「…その家庭教師もαなんだろ?」
た、確かに。俺達の再従兄弟で、αだらけの我が一族の末端の方の家の出身だが、とても優秀なαだと言われてた人だった。
「確かに、そうだけど……。それに、サキュレントの貴族たる者、たとえ未成年であっても、幾人その背に寄り掛かろうとも、頼られようとも倒れぬよう、しっかりと支えて立てる人物でなければならないって。…サキュレント貴族の常識だって…。」
喋る毎にジュリアの顔が曇っていくので俺は、最後の方は大分モゴモゴと、言い訳みたいに呟いた。
(何か、違ったのかな……。)
はぁぁ~っ。とジュリアが大きく溜め息を吐いた。
その、少しおどけたオーバーな仕草に、気まずさが吹き飛ばされて行く。
「αばっかの集団て、すーぐそーゆードライでストイックで馬車馬みたいな理想論掲げるんだよなー。子供もαが半数以上占めたりして、それについて行けたりしちまうから尚質が悪い…。」
そう言って、笑いながら俺の髪をクシャクシャに掻き混ぜるジュリアの瞳が、何だか凄く優しくて、俺はサンドイッチを齧りながらケタケタ笑った。
「フフ、ストイックな馬車馬…まさにそれだ。」
「だろー?ハハハ…!」
そうやって、マスターの愛情たっぷりサンドイッチをジュリアと二人で平らげた俺は、まだまだ食い足りなかったりもしたけれど、何だかとっても甘~い♡雰囲気になって……。
ジュリアの指先がそっと肩を押すままベッドに寝そべり、撫でられるまま顎を上げ、唇を開き、舌を迎え入れた。
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