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43: ジュリア、待ち合わせ30分前に到着!遅くなってごめんね!

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「そんな凶器じみた目覚まし、何処に有ったのよ…。いつも好きなだけ寝てる癖に。」

「ごめんごめん、ファビオラ♪愛してるよ♡」

なんてヘラヘラ笑って、猛スピードで風呂の準備をする。

「「おはようございます、ジュリア様、ファビオラ様。」」

そんな俺に声をかける使用人二人。
彼等、パープルヘイズとラベンダーはファビオラのお気に入りで、なんと、様々なエステ術を心得てるのだ♪

「アンタ、朝の5時からパープルヘイズとラベンダーをこき使うなんて…」

呆れた…!と言わんばかりに目を大きく回し、ファビオラが自分の寝室に戻っていく。

何だかんだで、いつも本当に優しい俺の叔母に、今度何か礼をしなきゃだな…。

なんて考えながら、俺はザブリと湯船に滑り込む。
そこから二時間半、俺は磨きに磨かれ、ピッカピカのツヤツヤになって風呂場を後にした。

「少し早いが待たせたくないしな、もう待ち合わせに行っとくか。」

完璧に整えた髪型に服装。念入りに鏡の前でチェックして、ちょっとしたプレゼントもリボンが皺にならないように、でも無造作に見えるように、コートのポケットに入れて。

「…やっぱり、もうちょっと崩して髪型とか気取ってない感じを出した方が良いかな?…この辺とか、こう…。」

「アンタさっきもそう言って崩したり戻したりしてたじゃない。正直、違いが全く判らないわ、元々無造作ヘアなんだから。
さ、ブツブツ独り言五月蝿いから早くいってらっしゃい!可愛いネオンちゃんが一時間前に来てたらどうするの?遅刻よ??」

「そうだな、ありがとうファビオラ!行ってくるよ!」

シッシッと追い払う様に見送るファビオラに礼を言い、俺は扉に手を掛け……やっぱりこの辺もう少し……

「良いから早よ行け!大丈夫!髪型も服装も完璧よ!あー今日もジュリアはかっこよくてセクシーだこと!!」

「ホントに?!ホントに俺大丈夫!?」

「あーもう!コートに泥の足跡つけられたくなきゃ出てけー!」

ぐいぐいと背を押して俺を外に出そうとするファビオラに縋るように聞けば、火山噴火の様に怒鳴られ、俺は慌てて家を出た。

プレゼント、財布、ハンカチ…よし、忘れ物はない。服装も髪型ももう気にするのはよそう。ぁぁぁ、でも今日の俺ネオンに気に入って貰えるかな??

ドキドキしながら途中で邪魔にならない程度の花を買い、待ち合わせの公園に向かえば、噴水の煌めきと共に鮮やかな色が洪水のように目に飛び込んでくる。
なんと、ネオンを待たせてしまっていた。

「ネオン!ごめん、遅くなった!」

慌てて駆け寄れば、振り向いた拍子にネオンのサラサラ髪が陽射しに反射しキラキラと目を突き刺す様なショッキングピンクの光を放つ。

「あれ?ピンク!?」

昨夜の別れ際、ぼろアパートのドアにネオンを凭れさせ、見上げる潤む瞳を見詰めて何度もおやすみのキスを交わしたのがフラッシュバックする。

大分薄まってはいたけれど、あの時は確かに菫色と青色のグラデーションだったのに。

そんな疑問が思わず口をついて出る。
途端にネオンが何かを堪える様に眉を下げ、下唇を噛み、キューーッと真っ赤になった。

「……ッ!」

俺のトレードカラーのピンクよりかなり鮮やかなピンクだったが、俺に合わせて髪をピンクにしてくれたのは、その真っ赤な顔を見れば明らかで。

(余りの可愛さにラットになるかと思った。)

指摘されて恥ずかしくなったんだろう。
髪のピンクに負けない位真っピンクな頬、目の縁、耳、首…。
それはもう可愛くて、扇情的で、やっぱりピンクって良い色だよな、なんてしみじみ思う。

「凄く似合ってるよ、そのピンク。可愛い!……デートだから俺に合わせてくれたって、思っても良いのかな?」

「…その、いつもジュリアがピンク着てるの見てたら、ピンクって良い色だなって思ってさぁ…。…………その、デートだし、色剥げてきてたし………あ、合わせた…。」

花を渡しながらピンクの顔を覗き込む様に聞けば、真っ赤な顔を更に真っ赤にして、ネオンはへどもどしながら答えてくれた。

「嬉しいな♪ネオン!チュッ♡チュッ♡」

「ひゅぁあぁ……」

わざと音を派手に立てて真っピンクのサラサラ髪とさくらんぼみたいな色になった頬にキスをすれば、可愛い悲鳴をあげて頭が大判ストールのスカイブルーの中に引っ込んでいく。

何だか亀みたいな仕草なのに、それがまた可愛くて。

「もう、ネオン。可愛すぎて理性が持たなくなりそうだよ。いつまでも此処でイチャイチャしてしまう前に早く行こう!」

なんて笑いながら言って、俺は無理矢理ネオンと手を繋ぐと、ちょっと走る位のスピードで公園の出口を目指した。


そうでもしなきゃ、今すぐ連れ帰って閉じ込めて、俺のモノにしちゃいそうだったから…。


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