春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
320 / 557
第四章

縋られる日々――ララシア②

しおりを挟む


 エドワード君と四六時中一緒だと思いきや、そういうわけでもなかった。彼は着いて早々、商売を手伝っていた。最終日も商売の追い込みと、帰還の準備で慌ただしくなると。彼は申し訳なさそうに伝えてきた。

『明日、明日ならば時間を作ってみせる! 余はな、どうしても一緒にいたいのだ。待ち合わせはここにしよう、時間はだな――』

 仲間たちにせっつかれながらも、エドワード君は必死に伝えてくれようとしていた。

『あああ、無情ぞー! まだ話が終わっておらぬ――』

 私が返事する前に、エドワード君はついに連れていかれた……せめてと頷いたけれど、伝わったかな?

 私はララシア本土に目を向けていた。別行動ならば、色々と調べられるだろうと。こうして訪れたのだから、どうしても有力な情報を持ってかえりたかった。せめて――。




 私が通されたのは、海に最も近いホテルだった。エドワード君が手配してくれていたようだった。

「あわわ……」

 立派な建物に緊張が高まる。どれだけの金額を返せばいいのかと、私は震撼していた。

「きゅーん……」

 リッカも尿のことを心配して震えていた。

「長旅お疲れ様でございました。ごゆるりとお寛ぎくださいませ――こちらは、御着替えでございます。サービスになっております。他にもご入用でしたら、何なりとお声がけくださいませ」
「は、はいっ。ありがとうございました」

 世話係ともいえる女性は深々とお辞儀をし、退出していった。私は緊張の余り、過剰に反応してしまった。

「ふう……」

 私は胸元を服で仰いだ。心地の良い暑さであるものの、なにせ厚着のまま。お金以外、身一つで来ていたので着替えは持ってきていなかった。

 スタッフさんが提示していたのが、客室内のクローゼット。そこにはリゾート用のワンピースや水着が多くかけられていた。私は着替えの前に、リッカを見た。

「へっへっ……」

 お気に入りのケープもここだと暑い。リッカは舌を出して体温調節をしていた……。

「リッカ、外そうね」
「がるるるる」
「がるるって。暑いでしょ……」

 これだけ気に入ってくれるのは嬉しい。それでも暑そうにしているリッカを思えばと。私は唸られる中でケープを外した。

「ほら、これを代わりに。ね?」

 私は花冠を外し、リッカの首にかけた。上手い具合にフィットしてくれた。
 小首を傾げた子犬を見て……私は悶絶した! 手元にスマホがあったら連写だし、SNSへの拡散や、ショート動画にも投稿したいくらいだった!

「っと、いけないいけない。うん、苦しくも暑くもなさそうだね」
「わんっ」

 リッカも気に入ってくれたみたい。花の香りも良いんだね。良い香りだね。

「ねえ、シャーリー。それならね、これつけてほしいのっ」
「あ、いいね! 交換だねっ」
「うんっ」

 リッカが耳元を見せてきた。飾られていた花だ。私の髪にも挿せるようになっていた。

 リッカは花冠ならぬ花の首飾り。私は花のコサージュ。お互いに笑い合った。

 リッカの次にと、私は自分の服を選ぶことにした。ダイヤノクトの夏はかなり涼しい。こうしたワンピースを着るのは久々だった。

「うん、これにしよっと」

 シンプルでいて、涼しそうな青色のワンピース。私によく馴染むって思えたの。




 リッカと一緒に、活気溢れる港町を歩く。商売人たちの掛け声が飛び交う。犬連れの人ともすれ違う。ワンちゃん、リッカと鼻で挨拶していた。

「おっ、観光の人だね。これ、食べてみるかい?」

 女店主さんに勧められたのは、味付け前の肉串だった。私は財布を取り出そうとするも。

「いいんだよ、サービスだ! ほら、ワンちゃんに冷ましてやんな!」
「ありがとうございます。フーフーするから待っててね」

 私の方で冷まし、リッカに与えた。味付け前で良かった。彼は肉汁滴るそれを美味しそうに頬張った。

 リッカがお肉に夢中になっている間、私は尋ねてみることにした。

「お聞きしたいことがありまして。私以外、観光の方が見当たらないんですけど。こういったことって、よくあるんですか?」
「いやいや、そんなことはないさね! いつもだったら、賑わっているんだけどね――『王』がね。観光禁止令のお触れをだしたのさ。せっかく来てくださった方々も、お帰り願ったと」
「え……そうなんですか」

 そんなことはあるの? あるものなの?

 それに『王』ときた。この国の王であっているのかな。観光客を寄せつけなかったこと、予想だにしていなかった。ただ一人の観光客の私は戸惑っていた。いいのかな、よかったのかなって……。

「私、入ってますね。あの、ララシアの子に連れてきてもらっていて」
「ああ、エドだろ? 知り合いなんだよ。彼が招き入れたってんなら、もちろん歓迎するよ。こっちとしちゃ……お客さんいてくれた方が助かるからねぇ。ここだけの話だよ?」
「それなら良かったです……」

 私が安心すると、店主は微笑む。

「私らはね、それはそれで良かったって思ってるんだよ……明日の夜に控えた儀式を思えばね、王のご決断も間違ってはいないってさ」
「儀式、ですか」
「――ああ。とても神聖で厳かなるなものだよ。お嬢さんもご覧よ」
「はい、ありがとうございます――」



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜

高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」 公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。 これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。 2024/8/24 タイトルをわかりやすく改題しました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

【完結】ここって天国?いいえBLの世界に転生しました

三園 七詩
恋愛
麻衣子はBL大好きの腐りかけのオタク、ある日道路を渡っていた綺麗な猫が車に引かれそうになっているのを助けるために命を落とした。 助けたその猫はなんと神様で麻衣子を望む異世界へと転生してくれると言う…チートでも溺愛でも悪役令嬢でも望むままに…しかし麻衣子にはどれもピンと来ない…どうせならBLの世界でじっくりと生でそれを拝みたい… 神様はそんな麻衣子の願いを叶えてBLの世界へと転生させてくれた! しかもその世界は生前、麻衣子が買ったばかりのゲームの世界にそっくりだった! 攻略対象の兄と弟を持ち、王子の婚約者のマリーとして生まれ変わった。 ゲームの世界なら王子と兄、弟やヒロイン(男)がイチャイチャするはずなのになんかおかしい… 知らず知らずのうちに攻略対象達を虜にしていくマリーだがこの世界はBLと疑わないマリーはそんな思いは露知らず… 注)BLとありますが、BL展開はほぼありません。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...