春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

縋られる日々――ララシア②



 エドワード君と四六時中一緒だと思いきや、そういうわけでもなかった。彼は着いて早々、商売を手伝っていた。最終日も商売の追い込みと、帰還の準備で慌ただしくなると。彼は申し訳なさそうに伝えてきた。

『明日、明日ならば時間を作ってみせる! 余はな、どうしても一緒にいたいのだ。待ち合わせはここにしよう、時間はだな――』

 仲間たちにせっつかれながらも、エドワード君は必死に伝えてくれようとしていた。

『あああ、無情ぞー! まだ話が終わっておらぬ――』

 私が返事する前に、エドワード君はついに連れていかれた……せめてと頷いたけれど、伝わったかな?

 私はララシア本土に目を向けていた。別行動ならば、色々と調べられるだろうと。こうして訪れたのだから、どうしても有力な情報を持ってかえりたかった。せめて――。




 私が通されたのは、海に最も近いホテルだった。エドワード君が手配してくれていたようだった。

「あわわ……」

 立派な建物に緊張が高まる。どれだけの金額を返せばいいのかと、私は震撼していた。

「きゅーん……」

 リッカも尿のことを心配して震えていた。

「長旅お疲れ様でございました。ごゆるりとお寛ぎくださいませ――こちらは、御着替えでございます。サービスになっております。他にもご入用でしたら、何なりとお声がけくださいませ」
「は、はいっ。ありがとうございました」

 世話係ともいえる女性は深々とお辞儀をし、退出していった。私は緊張の余り、過剰に反応してしまった。

「ふう……」

 私は胸元を服で仰いだ。心地の良い暑さであるものの、なにせ厚着のまま。お金以外、身一つで来ていたので着替えは持ってきていなかった。

 スタッフさんが提示していたのが、客室内のクローゼット。そこにはリゾート用のワンピースや水着が多くかけられていた。私は着替えの前に、リッカを見た。

「へっへっ……」

 お気に入りのケープもここだと暑い。リッカは舌を出して体温調節をしていた……。

「リッカ、外そうね」
「がるるるる」
「がるるって。暑いでしょ……」

 これだけ気に入ってくれるのは嬉しい。それでも暑そうにしているリッカを思えばと。私は唸られる中でケープを外した。

「ほら、これを代わりに。ね?」

 私は花冠を外し、リッカの首にかけた。上手い具合にフィットしてくれた。
 小首を傾げた子犬を見て……私は悶絶した! 手元にスマホがあったら連写だし、SNSへの拡散や、ショート動画にも投稿したいくらいだった!

「っと、いけないいけない。うん、苦しくも暑くもなさそうだね」
「わんっ」

 リッカも気に入ってくれたみたい。花の香りも良いんだね。良い香りだね。

「ねえ、シャーリー。それならね、これつけてほしいのっ」
「あ、いいね! 交換だねっ」
「うんっ」

 リッカが耳元を見せてきた。飾られていた花だ。私の髪にも挿せるようになっていた。

 リッカは花冠ならぬ花の首飾り。私は花のコサージュ。お互いに笑い合った。

 リッカの次にと、私は自分の服を選ぶことにした。ダイヤノクトの夏はかなり涼しい。こうしたワンピースを着るのは久々だった。

「うん、これにしよっと」

 シンプルでいて、涼しそうな青色のワンピース。私によく馴染むって思えたの。




 リッカと一緒に、活気溢れる港町を歩く。商売人たちの掛け声が飛び交う。犬連れの人ともすれ違う。ワンちゃん、リッカと鼻で挨拶していた。

「おっ、観光の人だね。これ、食べてみるかい?」

 女店主さんに勧められたのは、味付け前の肉串だった。私は財布を取り出そうとするも。

「いいんだよ、サービスだ! ほら、ワンちゃんに冷ましてやんな!」
「ありがとうございます。フーフーするから待っててね」

 私の方で冷まし、リッカに与えた。味付け前で良かった。彼は肉汁滴るそれを美味しそうに頬張った。

 リッカがお肉に夢中になっている間、私は尋ねてみることにした。

「お聞きしたいことがありまして。私以外、観光の方が見当たらないんですけど。こういったことって、よくあるんですか?」
「いやいや、そんなことはないさね! いつもだったら、賑わっているんだけどね――『王』がね。観光禁止令のお触れをだしたのさ。せっかく来てくださった方々も、お帰り願ったと」
「え……そうなんですか」

 そんなことはあるの? あるものなの?

 それに『王』ときた。この国の王であっているのかな。観光客を寄せつけなかったこと、予想だにしていなかった。ただ一人の観光客の私は戸惑っていた。いいのかな、よかったのかなって……。

「私、入ってますね。あの、ララシアの子に連れてきてもらっていて」
「ああ、エドだろ? 知り合いなんだよ。彼が招き入れたってんなら、もちろん歓迎するよ。こっちとしちゃ……お客さんいてくれた方が助かるからねぇ。ここだけの話だよ?」
「それなら良かったです……」

 私が安心すると、店主は微笑む。

「私らはね、それはそれで良かったって思ってるんだよ……明日の夜に控えた儀式を思えばね、王のご決断も間違ってはいないってさ」
「儀式、ですか」
「――ああ。とても神聖で厳かなるなものだよ。お嬢さんもご覧よ」
「はい、ありがとうございます――」



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