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第四章
縋られる日々――ララシア③
しおりを挟む私たちはさらに市場の中心へと向かっていた。先程の店主さんに教えてもらったのは、ララシアの現状について。そして、エドワード君たちが商売しているお店のこと。
「喜んでくれるよね」
私は彼らへの手土産にと肉串を買っておいた。人数がわからないので、足りなかったらまた戻ると先方に伝えた。店主さんは大層喜んでいた。
「美味しかったし、精もつくだろうし――」
足元から視線が感じる。圧をかけられているようでもあった。リッカが舌を何度もぺろぺろしながらも、見上げてきた。その瞳は期待に満ちていた。
「……ああ!」
私はその視線には抗えなかった。しゃがみこむと、リッカにまた食べさせることにした。リッカはワンとお礼と言って、肉を食べていた。
「リッカ? タレついてないの、それで最後だからね? もう食べられないよ?」
君の追加分も買っておいたけどね? けっこうな量でもあるでしょ? ……って。
「きゅーん、きゅーん……」
「うっ……!」
リッカ、きゅるきゅるの瞳で見上げてくるんだ……! 私は、私は今すぐUターンして、タレ無し肉串に買いに……ううん、その衝動にも抗ってみせる……! 食べすぎは君の為にも良くないんだよ、リッカ……!
「きゅーん……」
「わかってほしいの、リッカ……!」
と、葛藤しつつも。
彼らの臨時出店の場所までやってくると、威勢の良い声が聞こえてきた。よく響くのはエドワード君の声だった。
「――ああ、そちらの美女よ! こちら、北国で仕入れてきた極上なる宝石ぞ! そなたの為に、そなたと巡り合う為に存在していたのだ! さあさあ、手にとるのだ!」
エドワード君が客引きをしながら、商売をしていた。巧みに商談を持ちかけて、次々と売りつけていく。
「む。そなた武人か! この小刀もダイヤノクトから仕入れてきたものぞ。あちらの刀匠は中々のものだ。どれ、試し斬りもしてみてはどうだ?」
いずれもどの客にも合いそうなもの、所望していそうなものを瞬時に見抜いていた。たくさんの客を彼がほとんど捌いていた。
「……む?」
「あっ……」
声をいつ掛けようかと、困っていた私に気づいたみたい。エドワード君はこっちに向けて大きく手を振っていた。
「おお、よくぞ参ったのだ! ちょうどよい、よく似合うものがたくさんある。ここは余がもつぞ」
「いい、いいから! 様子見にきただけだし、あと差し入れくらいで」
「なんと! さあさあ、シャーロット殿こちらへ――」
私を引き入れようとしたところで、仲間の一人に軽くどつかれたエドワード君。商売中だと怒られていた。
「……はあ、この調子じゃな。休憩いってこい」
仕方ないと、海賊の人に言われてもいた。
「あいわかった!」
即答したエドワード君は、私の手をとった。そのまま、店の裏手に回る。予め麻布が敷かれていたので、私たちはそこに腰かけることに。
「ふっ、よくぞ余の店がわかったものだ。これはまさしく運命ぞ」
「それはね、お店の人に教えてもらったからなんだ」
「……そなた、そういうところだぞ」
エドワード君は恨めしげに私を見つつも、近くにあった包みを開いた。お昼ご飯のようで、豪快な男飯といったところだった。以前にエドワード君が作ってきた料理と似通っていた。彼らから教わったんだね。
「あ、これ。差し入れ。人数的にも足りそうで良かった」
私も包みから肉串を取り出した。店は少人数で回しているようだったので、十分足りそうだった。それを見て興奮しているのはエドワード君。
「なんと! そなたからの差し入れとな……! よし、余らで占めようぞ!」
「ちゃんと分けてね?」
「……わかった。世の中甘くないものだ。贈り物、いたく感謝するぞ」
落ち込むエドワード君とリッカ……って、リッカ? 君はさらに食べたというのに……。
「なに、リッカ殿。余の弁当からも差し上げようぞ……シャーロット殿からもらってくれ」
「わふっ」
「シャ、シャーロット殿からな。余からではないぞ、余からでは!」
エドワード君は弁当を遠くにして、差し出していた。リッカは嬉しくなり、近づこうとする。尻を動かして後退するのはエドワード君……。
「……えっと、気を遣ってくれてありがとうね。良かったね、リッカ」
エドワード君なりの優しさだよね。リッカも尻尾を振って感謝していた。
「シャーロット殿も、良かったら」
「うん、少しいただくね。前のも美味しかったし」
「……! そうだろうそうだろう!」
私はリッカの分ももらうついでに、自分のもとることにした。いただきますと食べる。見た目は豪快ながらも、味付けは濃いということはない。素材の味を生かしたものだった。
「うん、美味しい。あとさ、君に会えてよかったんだ。話したいことあったから」
「シャーロット殿……」
私が微笑むと、エドワード君の頬も火照っていた……暑いのかな? うん、伝えよう――。
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