春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

文字の大きさ
324 / 557
第四章

縋られる日々――ララシア⑥

しおりを挟む
 夜風がそよぐ。
 この寝室からは、夜の海が展望できる。さわやかな潮風が吹いていた。

「ねえ、リッカ。ご飯、美味しかったね」

 私はベッドの上に座って、眠るリッカに語りかけていた。本日はもう、寝るだけだ。

「この国の人も、朗らかで優しくて――彼、みたいで」

 温かな人たちが、この国で幸せそうに生きていた。

「ララシアは、本当に素敵な国で――」

 私も横になった。毛布も布団もいらない。そのまま目を閉じた。




「……ん」

 まだ夜が明けてない中、私は目を覚ました。
 夜風に当たりたくなり、テラスに立つ。月明りを浴びた海を眺めている中。

「……!?」

 視界が揺らいだ……!? 見ている海が、歪んだかのようで。色だってそう、失われている?

「な、なに……?」

 寒気もおぞましさも止まらない。突如訪れた異様な光景、一体何が起きたというの……? 

「確かめなくちゃ……」

 私は手を伸ばそうとするも――。

「!」

 私は突風に目を閉じた。それから、恐る恐る目を開く。

「……?」

 煌めく夜空に、月を映し出す青い海。私は瞬きをする。先程までの異様な雰囲気は消え去っていた。幻だったかと、思えるほどに。

『ああ、そうだ。このララシアを、そして坊を見て欲しい――見た上で、考えて欲しいのだ』

 かの人はそう言っていた。

「……何かがあるというのなら」





「――おはよう、シャーリー」
「うん……おはよ」

 いつしか私も眠っていたようだ。リッカに顔面中を舐められて起こされた。船旅や慣れない土地での疲れもあったからかな。


 朝食も済ませ、支度をする。

「やっぱ、青色が気になるんだよね」

 私は洋服を物色していた。昨日とは違う、それでも青色のものを選択していた。その横にかけられているのは……水着。

「水着……」

 私はそれとなく水着を手にとった。機能美あるデザインだ。この水着を着たら、気持ちだけでも速く泳げそう……うん、持っていくだけ。私はバッグに隠し入れた。

「えへへー、美味しい食べ物ー。お花もたくさん嗅ぐんだー」

 お出かけでご機嫌ワンコがそこにいた。海で遊ぶとなると、全力で嫌がりそうなワンコだった。ちなみにリッカを連れて行かない、そんな選択肢はなかった。

「泳ぐ……は無しかな。ねえ、リッカー? 砂浜での遊びも楽しいよ?」

 エドワード君の故郷の海。あの子も泳ぎ回りたいだろうし。待っている間、別のことをしていたっていいよね。私は提案してみた。

「……砂浜。海に近いよ?」
「……うん、そうだね。でもね、たくさん掘り掘りできたり、色々作れたりするんだよ? 貝殻だって拾ったり。リッカ、たくさん見つけそうだね?」
「貝殻。僕、シャーリーにプレゼントしたい!」
「ああ、リッカぁ……」 

 すっかり乗り気になっていた、優しいねぇ……可愛いねぇ……私は撫でくり回した。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。 そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。 相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。 トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。 あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。 ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。 そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが… 追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。 今更ですが、閲覧の際はご注意ください。

【完結】狂愛の第二皇子は兄の婚約者を所望する

七瀬菜々
恋愛
    兄の婚約者を手に入れたい第二皇子ジェレミーと、特に何も考えていない鈍感令嬢リリアンの執着と苦悩の物語。

ヒュントヘン家の仔犬姫〜前世殿下の愛犬だった私ですが、なぜか今世で求愛されています〜

高遠すばる
恋愛
「ご主人さま、会いたかった…!」 公爵令嬢シャルロットの前世は王太子アルブレヒトの愛犬だ。 これは、前世の主人に尽くしたい仔犬な令嬢と、そんな令嬢への愛が重すぎる王太子の、紆余曲折ありながらハッピーエンドへたどり着くまでの長い長いお話。 2024/8/24 タイトルをわかりやすく改題しました。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

じゃない方の私が何故かヤンデレ騎士団長に囚われたのですが

カレイ
恋愛
 天使な妹。それに纏わりつく金魚のフンがこの私。  両親も妹にしか関心がなく兄からも無視される毎日だけれど、私は別に自分を慕ってくれる妹がいればそれで良かった。  でもある時、私に嫉妬する兄や婚約者に嵌められて、婚約破棄された上、実家を追い出されてしまう。しかしそのことを聞きつけた騎士団長が何故か私の前に現れた。 「ずっと好きでした、もう我慢しません!あぁ、貴方の匂いだけで私は……」  そうして、何故か最強騎士団長に囚われました。

処理中です...