春の女神は知っている。~モフモフと力を合わせて、ヤンデレメリバフラグ回避してみせます!~

古駒フミ

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第四章

縋られる日々――ララシア⑧

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「――ならば、リッカ殿も共に泳ぐか?」
「!?」

 リッカは尻尾を立てていた。泳ぐという言葉に緊張していた。私もそうだけれど……もしかして、とも思った。

「……あ、そっか。エドワード君が教えてくれるってこと? ちゃんと浅いところで」
「いや? 海中だぞ?」 
「いやいやいやいや」

 それは無理があるでしょう……私は首を振った。足元の子犬はもっと高速だった。

「ふむ、リッカ殿。そなた、本当は泳いでみたいのだろう? さらにだ、シャーロット殿にも泳いで欲しい。違うか?」
「!」
「一歩、勇気を出してくれればいい」 
「……わんっ」 

 リッカは、一歩ずつ海に近づいていった。エドワード君はよくやったと頷いた……震えながら。彼は犬が苦手だった。それでも。

「――ならば、余も勇気を出すまでだ。そう、余が言い出したことぞ。ええい、ままよっ!」  

 エドワード君は勢いつけて、リッカを抱っこをした……って、抱っこしてる!?

「お、お、おう。余は、ついに。ついに、犬を克服したのだ! これも、愛の力がなせる技ぞ! さあ、参るぞ!」

 エドワード君の勢いは止まらず、リッカを抱えたまま海に入ってしまった。

「ちょっと、エドワード君!」

 私は水着に着替えている暇もないと、慌てて追おうとすると――。

「……?」

 駆け出そうとした足が止まった。私は目を見張った。

「わんわんっ」

 ご機嫌なリッカが――彼を包むような大きさの、水の泡の中に収まっていた。小さな足で走ると、水の玉は転がるように動いていく。リッカは大はしゃぎだった。

 エドワード君もリッカの側について、泳いでいる。それから私に手招きをしていた。水着に着替えたら、こっちに来てほしい。そういうことかな?

「も、もう……ヒヤヒヤさせないでって」

 まだ心臓がバクバクしている。私は急ぎ、近くの更衣室で着替えることにした。



「っていってもね。水着もドキドキなんだけどね……」

 体のラインも、普段は見せない部分も露わになる。そうそうない機会だったから……まだ鼓動が治まらない。それでも、待たせるわけにもいかない。

「着よう、着るんだ……!」

 リッカとエドワード君も待たせているんだから……!
 すいすい泳ぐご機嫌ワンコも見たいから……!




 着替え終えて更衣室から出ると、リッカとエドワード君がいた。迎えにきてくれたんだ。

「ありがとう。二人共、お待たせ」
「わふっ」

 リッカは私の足元にまとわりつく。大いにじゃれついていた。エドワード君はというと。

「……」

 私を見て、なんだろ、放心している?

「エドワード君?」

 私としては無難な水着を選んだつもりだった。競泳水着にも近いもので、泳ぎやすさを重視したもの。エドワード君は何も言わないまま。スルーしてくれるなら、その方が私は助かるかな――。

「はっ!」

 名を呼ばれたからか、エドワード君は気を取り戻した。それから即、顔をそらした。その顔を真っ赤にしながら……?

「な、なんとも眩しきものよ。人魚姫のお出ましぞ……!」
「人魚姫はさておいて、とりあえず、おかしくはないってこと?」

 褒められ過ぎと思いつつも、私は一安心だった。エド―ワード君はなんか息が荒い……? 変な風に興奮しているともいうか……激情しているというべきか。

「おかしくあるものか! 余よ……しっかりするのだ! 騎士として迎えにきたのだ! 不埒な目で見る者共から守る為に!」
「そんな、不埒って」
「そなたはもっと危機感を持つべきだ! ……まあよい。さあ、シャーロット殿。参るぞ」
「うん」

 エドワード君からのエスコート、私はその手をとった。


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