恋愛短編まとめ(現)

よしゆき

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飼い猫が人間になっちゃう話

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 飼い猫が人間になったらイメージと全然違ってえーってなりつつ人間になった飼い猫との生活をはじめる。ある日同僚の男性に家に送ってもらったら嫉妬した猫に襲われる。

 猫×人



──────────────────





「あ~~っ、んまいっ」

 一気に飲み干し、空になった缶をローテーブルに置く。

「あとも~一本~」

 音を立てて酎ハイの缶を開ける。それを飲みながら、酒のつまみを口へ放り込んだ。

「あ~~、幸せな時間……」

 好きなバラエティ番組を観ながら晩酌。それは愛莉あいりの日々の楽しみだった。
 時間が経つにつれ、眠気が襲ってくる。
 最後と決めた一缶を飲み干し、ローテーブルの上に突っ伏した。

「ん~~、眠い……」

 いけないと思いつつ目を閉じてしまう。
 ニャーニャーと咎めるような鳴き声が耳に届く。ここで寝るなと注意しているようだ。
 彼は愛莉の同居人……いや、同居猫だ。子猫の時に引き取って、それからずっとこの部屋に一人と一匹で暮らしている。
 名前はぎん。今ではすっかり成猫になった。しっかり者の黒猫だ。
 鳴き声は聞こえているのだが、一度閉じた瞼はなかなか持ち上がらない。

「あーあ……銀が人間だったら、ベッドまで運んでもらうのに……」

 半分寝ながら、そんな事を口にする。
 もちろんあり得ないけれど、寝惚けた頭で銀が人間だったらどんな感じだろうと妄想する。
 銀は美形のスラリとした雄猫だ。きっと美青年に違いない。中性的で儚げで、スマートなイメージ。
 人間になってもうちの銀は世界一だと、ニヤニヤする。
 もう完全にこのまま寝てしまうパターンだ。
 明日も仕事だからちゃんとベッドで寝ないと駄目なのに。後悔するのはわかっている。しかし睡魔に襲われてしまえば、もう少しも体を動かしたくなくなってしまうのが人の性だ。
 そのまま夢の世界へ突入しようとしていた愛莉だが、いきなり体を抱き上げられた。

「っえ……!?」

 びっくりして目を開ける。
 すると筋肉ムキムキの精悍な顔つきの美形の男が愛莉をお姫様抱っこしていた。
 一瞬頭が真っ白になるが、「あ、コレ夢だ」とすぐに気づいた。
 酔っ払っていたって、さすがにこんな男が部屋に侵入してきたらわかるはずだ。しかも下は見えないが、上半身は裸だ。
 これが現実であるわけがない。自分はローテーブルに突っ伏したまま寝てしまったのだ。
 そう判断し、愛莉は再び目を閉じた。
 ゆっくりと運ばれていくのを感じながら、深い眠りへと落ちていった。





 アラームの音が聞こえる。
 ああ、もう朝だ。起きなければ。
 けどまだ眠い。もう少しだけ布団の中にいたい。
 布団の中でぬくぬくと微睡んでいる時間の何と幸せな事か。休みだったら最高なのだが、生憎と今日も仕事だ。いつまでもぬくぬくとはしていられない。
 このぬくぬくの布団から出なくてはならないなんて。辛すぎる。
 ……あれ。そういえば、いつの間にベッドに移動したんだっけ。昨日は確か、リビングでそのまま寝ちゃわなかったっけ。テレビも消さず、片付けもしなかった気がする。全く覚えていないけど、寝惚けてベッドまで来たのかもしれない。
 そんな事を考えながら、アラームを無視して布団の中に潜り続けていた。

「おい、愛莉、起きないと遅刻するぞ」

 布団の向こうからそんな男の声が聞こえてきてギョッとした。
 いやまさか。幻聴だ。この部屋には自分と愛猫の銀しかいないのだから。
 そういえば、銀はどうしたのだろう。アラームが鳴りはじめたらいつもベッドにやって来て、早く起きろと言うように体を踏みつけてくるのに。

「起きろって愛莉っ」
「っ!?」

 いきなり布団を引き剥がされた。
 驚く愛莉の視界に入ってきたのは、筋肉ムキムキの男だ。

「ひっ!! 誰!?」

 弾かれたように上半身を起こし、ベッドの上を後退る。すぐに後頭部が壁にぶつかった。

「いったぁっ……!!」
「何やってんだ……」

 呆れたようにこちらを見る男。
 ふと思い出す。夢に出てきた男ではないか。じゃあこれも夢? いや、ぶつけた頭はめちゃくちゃ痛かった。夢ではない。現実に、見知らぬ男が部屋に侵入しているのだ。

「だ、誰よアンタ!? 泥棒!? ってか何で裸なのよ!? 変態!? 変質者ってこと!?」

 改めて男を見据え、彼が全裸な事に気づいた。見知らぬ男が全裸で目の前に立っている。もうパニックだ。

「そもそも服は着てなかったんだ。猫なんだから仕方ないだろ」
「はああ!?」

 わけのわからない事を言われ更に混乱する。

「何なのもう!! いや、まず警察……っ」
「落ち着け、愛莉。俺は泥棒でも変質者でもない」
「じゃあ何!?」
「銀だよ」
「はあっ!?」
「俺は銀だ。お前と一緒に暮らしてる、猫の銀だよ」
「どこが!?」

 怒鳴り付けるように突っ込む。私の銀はこんな筋肉ムキムキの男ではない、そう言ってやろうとして気づく。よくよく見ると、男には黒い猫耳と尻尾が生えているではないか。
 銀の右の耳先は少し欠けている。そしてこの男に生えた右の猫耳の先も同じように欠けていた。

「いやいやいや、違う違う違う。そこだけ同じだけど、他は銀と似ても似つかないし。全然イメージしてたのと違うし。銀はもっとスラッとした美形で、こんな筋肉ムキムキの美形じゃないし。声だってもっと高くて、そんな低い声じゃないし」
「それは愛莉の勝手なイメージだろ。これが人間になった俺の姿なんだ」
「ウソだよ。そこにいるだけで溢れ出す銀の可愛さが一ミリも残ってないもん!」
「可愛いって思うのは愛莉が人間だからだろ。愛莉が俺と同じ猫だったら、可愛いなんて思わないぜ」
「そっ……それはそうかもしれないけど……。っていうか、百歩譲ってアンタが銀だとして、何で人間の姿になったわけ……?」
「お前が言ったんだろ」
「え?」
「俺が人間だったらって」
「…………」

 朧気な昨夜の記憶が蘇る。
 確かに言った。「銀が人間だったら、ベッドまで運んでもらうのに……」と。

「え、それで人間の姿になったっていうの? 酔っ払いの戯れ言で、そんな夢みたいな事が叶うの? あり得ないよ!」
「実際、そうなってんだろうが」
「もしかして、元々人間になれたとか? 今まで私に隠れてこっそり人間になってたり」
「いや。昨日のお前の俺が人間だったらって言葉に体が反応して、気づいたらこの姿になってた」
「ええー……じゃあもういいよ。ベッドに運んでもらって願いは叶ったわけだし、もう猫の姿に戻ってよ」
「って言われても、戻り方がわかんねーんだよ」

 男は困ったように頭を掻く。本当にわからないようだ。
 漸く彼が銀なのだと受け入れはじめていた。猫の銀の姿が見当たらないし、という事はこの男が銀なのだ。本物の銀を隠して銀に成り代わろうとしている、という可能性もなくはないのかもしれないが、そんな手の込んだ事をする意味がわからない。

「わ、わかった。戻れないなら仕方ないわ。それより、裸なのをどうにかしてよ」
「つっても、着るもんねーだろ」
「う……」

 正確には着れるものがないのだ。部屋には愛莉の衣服しかない。どう考えてもサイズ的に着るのは無理だろう。

「じゃあ、せめてタオルで下半身を隠してよ」

 正直、ずっと目のやり場に困っている。
 銀は溜め息を吐きながらタンスからタオルを取り出す。

「猫の時は気にしてなかったくせに」
「当たり前でしょ!」
「つーか、時間大丈夫か?」
「…………ひぃっ!!」

 時間を確認して悲鳴を上げる。

「ヤバい、遅刻する……!!」

 愛莉は急いで準備をはじめた。時間はかけられないので最低限の身だしなみだけ整える。
 鞄を引っ掴んで玄関へ走った。銀もついてくる。
 靴を履いている時に大事な事を思い出した。

「ああっ、銀の朝ご飯……っ」
「俺は勝手に食べるから、気にするな」
「ごめん! ごめんね、時間ないからもう行くね」
「ああ、行ってらっしゃい」
「行ってきます……!」

 男の姿をした愛猫に見送られ、愛莉は部屋を出た。





 遅刻せずに済み、いつも通りパソコンに向かい仕事をはじめた。しかし時間が経つと、徐々に銀の事が頭に浮かんでくる。
 あれは本当に現実だったのか。現実にあんな事が起こるのだろうか。
 銀と話ができたらいいのに、とは何度も考えた事はあるが、まさか人間になるなんて。しかも、自分のあんな何気ない一言で。
 しっかりとキーボードを叩きながらも思考はぐるぐると回っていた。
 戻り方がわからないと言っていたが、じゃあこれからずっと人間のままなのだろうか。いきなり人間になれたのなら、いきなり猫に戻るかもしれない。
 それよりも、ちゃんとご飯は食べてくれただろうか。
 というか、あの姿の銀は何を食べるのだ。キャットフードでいいのか。いや、姿が人間になったという事は味覚も猫の時とは違うのではないか。きっとキャットフードでは栄養が取れないだろう。部屋に食べ物は色々置いてあるが、銀はきちんと食べられるのだろうか。
 変な物を弄って怪我をしてないか。泥棒が現れて銀が襲われてないか。
 いや、もしかしたらもう猫の姿に戻っている可能性もある。でも戻っていたら、銀は自分でご飯を食べられないし水も飲めない。やっぱり遅刻してもいいからちゃんとお皿にご飯と水を用意してから出てくるべきだった。
 銀の事が頭から離れず、愛莉はずっとそわそわしていた。
 そして勤務時間が一時間を切った時、スマホにメッセージが届いた。愛莉の部屋にあるタブレットからだ。

『何時に帰るのか教えてくれ。飯作るから』

 そんなメッセージを目にして、ギョッとする。愛莉の所有しているタブレットから送られてきたという事は、送り主は銀だろう。
 いや……いやいやいや……。元々賢い猫だとは思っていたけど、天才すぎやしないだろうか。ずっと一緒に生活してきて、愛莉の動向は見てきただろうけれど。朝もちゃんとどこにタオルがあるのかわかっていて、迷わずタンスの引き出しを開けていた。
 だからって、言葉を理解してそれを入力できちゃうって……。
 いや、もう突っ込むまい。そもそも猫が人間の姿になった時点で充分ファンタジーなのだ。いちいち驚いていたらキリがない。
 メッセージを送れるという事は、銀はまだ人間の姿のままなのだ。それだけわかっていればいい。
 愛莉は深く考えずにメッセージを返した。
 定時を迎え、愛莉はまっすぐ家には帰らずショッピングモールへと足を運んだ。銀に着せる服を買うためだ。
 いつ猫に戻るかはわからないけれど、それまで全裸で部屋の中をうろつかれるのは困る。さすがにタオル一枚で過ごさせるわけにはいかない。
 正確なサイズはわからないが、筋肉ムキムキで身長も高かったのでとりあえず大きいサイズの物を適当に選ぶ。下着と衣服を何枚か購入し、帰宅した。




 ドアを開けると、可愛らしい黒猫ではなく、タオル一枚を腰に巻き猫耳と尻尾を生やした筋肉ムキムキの男が迎えてくれた。

「おかえり」
「………………ただいま」
「疲れた顔してんな。仕事、大変だったのか?」
「…………いや、衝撃的な光景に脳の処理が追い付かなかったっていうか……」
「は?」
「それより、コレ着て」

 愛莉は衣服の入った袋を銀に押し付けた。苦笑を浮かべ、銀はそれを受け取る。

「服、買ってきてくれたのか?」
「人間の姿で裸でいられると困るし。いつ猫に戻れるかわかんないし」
「悪かったな、わざわざ」

 そう言って、彼は部屋の奥へ行く。愛莉は洗面所へ行き、手洗いうがいを済ませた。寝室へ移動し部屋着に着替える。
 リビングへ行くと、服を着た銀が料理の乗った皿をローテーブルに運んでいた。

「えっ!? めちゃくちゃちゃんとしたご飯だ!!」

 ご飯に味噌汁、焼き魚に煮物にサラダ。しっかりとした料理の数々に愛莉は目を丸くする。
 正直、ここまでのものが出てくるなんて思っていなかった。

「何で作れるの!?」
「アレでレシピ見た」

 銀が指したのはタブレットだ。そりゃあ検索すればレシピはいくらでも見れるが。

「レシピ見たからって、普通作れる?」
「いつも、お前が作ってるの見てたからな」

 確かに、銀はよく冷蔵庫の上に上って料理中の愛莉を観察していた。
 愛莉が思うよりもずっと、銀は賢く、愛莉の行動をよく見て覚えていたという事なのか。
 部屋の中を見てふと違和感に気づく。

「あれ? もしかして、掃除もしてくれた?」
「ああ。暇だったからな」
「っていうか、洗濯もしてる!?」
「ああ。溜まってたからな」

 何でもない事のように銀は言う。ハイスペック過ぎて昨日まで猫だったとは思えない。

「早く食うぞ。冷める」
「あ、はい」

 愕然としている内に夕食の準備はすっかり整っていた。
 料理は二人分用意されている。キャットフードではなく、銀も人間用のご飯を食べるようだ。

「いただきます」

 手を合わせてから料理を口へ運ぶ。

「んっ…………う、美味い……」

 しっかりと味わってから飲み込み、その美味しさに驚愕する。
 思えば、誰かの手作り料理を食べるなんて何年ぶりだろう。いつも一人分しか作る必要がなく、自分で食べるのなら適当でいいやと手抜きする事が多い。
 人に作ってもらったちゃんとした料理に、愛莉は感動した。自分では気づかなかったが、誰かが作ってくれた家庭料理に飢えていたのかもしれない。

「美味しいよ、銀っ……。ありがとぉ……っ」
「何で泣きそうになってんだ……?」
「だって、嬉しくて……」
「大袈裟だな、これくらいで……」

 声を震わせる愛莉に、銀は呆れたような目を向ける。しかしすぐに嬉しそうに微笑んだ。

「でもまあ、愛莉が喜んでくれたんならよかったけどな」

 温かい視線を愛莉に送りながら、銀も器用に箸を使ってご飯を食べる。何で箸が使えるんだ……なんて、最早愚問だ。料理できるのだ。箸くらい使えるだろう。
 食事を終えた愛莉は、風呂に入るよう銀に言った。

「風呂? 俺が? 何で」
「何でもよ」
「まだ風呂の日じゃないだろ」

 銀は僅かに嫌そうに顔を歪める。
 数ヵ月に一度、猫の銀を風呂に入れていた。銀は抵抗はしなかったが、不服そうな様子で体を洗われていた。風呂が苦手なのだ。

「猫の時はいいけど、今は人間なんだからちゃんとお風呂に入って洗わないと」
「…………でも、耳にお湯が入りそうで怖い」

 不安そうな表情で頭に生えた猫耳を手で押さえる銀。
 その仕草が少しだけ可愛いと、胸をときめかせてしまった。しかし風呂には入ってもらう。

「じゃあ、頭は私が洗ってあげるから」
「……わかった」

 銀は頷いた。
 銀はわがままな性格ではない。聞き分けのいい子なのだ。
 彼のこういう態度を見ると、やはり銀なのだと改めて思う。
 二人で浴室へ向かった。銀は下着を身に付けたまま、愛莉は部屋着のまま入る。
 一人暮らし用のマンションの浴室はそこまで広くない。体格の大きい銀と入ると圧迫感を感じる。

「はい、椅子座って。シャワーかけるから下向いて、目、瞑っててね」
「ん」

 銀は素直に言うことを聞く。
 猫耳に気を付けながら、シャワーのお湯をかけていく。彼の黒い髪に指を差し込む。絹のように滑らかなその感触は、猫の銀を撫でた時と同じだった。
 その感触に癒されながら、頭を洗う。銀は嫌がる事なくじっとしていた。
 人の頭を洗うのははじめてで、しかも猫耳が生えている。慎重に丁寧に、しかし隅々までしっかりと洗った。

「よし、終わった!」
「ん。ありがとう」

 銀は顔を上げる。髪の毛は濡れてぺったりとなっていた。この感じも猫の銀を思い出す。

「じゃあ、体は自分で洗ってよね。その前に下着は脱いで洗濯機に入れてね。ボディソープはコレだから、スポンジにつけて泡立てて。パジャマと新しい下着用意しておくから、上がったらタオルで拭いてから着るのよ」
「わかった」

 愛莉はそそくさと浴室を出た。軽く濡れた手足を拭い脱衣所を後にする。
 相手は愛猫の銀だとわかっているが、やはり人間の姿だと裸は気まずい。水の滴る姿が無駄に色気を放っていて、なんだか自分がいけない事をしているような気分になってくる。
 そんな考えを振り払い、買ってきたパジャマと下着を取りに行った。





 ほどなくして、銀がリビングに戻ってくる。

「体、ちゃんと洗えた?」
「ああ」
「じゃあこっち来て。ここに座って」

 ソファに座る愛莉の前に銀を座らせる。愛莉の手にはドライヤーがある。

「乾かすから、じっとしててね」

 声をかけてから温風を当てる。猫耳に気を付けながら、ブラシを使って髪を乾かしていった。
 サラサラで艶やかな手触りは、やはり何度も撫でた銀の感触と同じだ。
 銀のようなキュートさやラブリーさは筋肉ムキムキの外見には全く見受けられないが、毛質は変わらないようだ。
 銀の髪を乾かし終わってから、愛莉も風呂を済ませた。
 何だか色々と疲れたので今日は酒は控えて早めに寝ようかと考えた愛莉だが。

「あっ……銀、どこで寝てもらえばいいんだろ……」

 今になって彼の寝る場所がない事に気づく。
 猫用のベッドは三つくらい置いてあるが、もちろん今の銀には小さすぎる。

「……そういえば、昨日はどこで寝たの?」
「床」
「床!? 全裸で!?」
「まあ、いつもの事だしな」

 いつもの事だろうが、そのいつもとは状況が違いすぎる。

「今日も床でいい」
「ダメよ! 猫の時とは体の作りが違うんだから!」

 飼い主として、銀にはちゃんとした寝床を用意しなければ。と言っても、ソファくらいしかないのだが。
 猫の時は一緒にベッドに寝ていたが、さすがに今の銀と一緒のベッドは使えない。相手は猫で、家族同然の存在である銀だとはわかっているが、大きさ的にも気持ち的にもちょっと無理だ。だってとびきり顔のいい筋肉ムキムキの青年なのだ。

「寝る時はソファ使って。毛布もちゃんとかけて寝るのよ」
「ん」

 そうして、愛莉と人間の姿になった銀との生活がはじまった。
 愛莉の生活は格段と楽になった。
 何せ掃除も洗濯も料理も、全て銀がやってくれるのだ。お弁当まで作ってくれる。
 お酒の量は制限されるが、それを守ればおつまみも作ってくれる。愛莉の味の好みを知り尽くした銀のおつまみは絶品で、それを食べたいので彼に言われるまま酒の量を減らした。
 ご飯は文句なく美味しいし、家事も完璧。間違いなく愛莉の生活は快適なものになった。
 けれど、不満があるとすれば。

「うう……銀のお腹吸いたい……」
「別にしてもいいぞ?」
「私はもふもふの銀のお腹を堪能したいの! そんなムキムキのお腹なんてイヤだぁ!」

 両腕を広げ待ち構える銀を拒否する。
 銀のふわふわのお腹が恋しくて仕方ない。香ばしい香りの肉球に踏まれたい。
 辛うじて猫耳と尻尾が残っているが、銀は耳と尻尾を触られるのが苦手なのだ。自分の欲求を満たす為に銀の嫌がる事はしたくない。
 猫と一緒に暮らしながら猫に触れないというストレスが愛莉を苦しめていた。
 そんな時、会社の飲み会が開かれた。
 ここ数週間銀に酒の量を制限され、猫吸いができない事で少なからずストレスを溜めていた愛莉は、つい飲み過ぎてしまった。

「大丈夫ですか、先輩?」
「らいじょーぶ、らいじょーぶ」
「いや、全然大丈夫じゃないですよね。送りますから、ほら掴まってください」

 そう言う後輩の男性社員にふらつく体を支えられ、愛莉はどうにか自宅マンションに辿り着いた。

「ここですか、先輩の部屋」
「うん」
「一人暮らしですよね? 鍵、出せます?」
「あー、らいじょーぶ、銀がいるからー」
「え、銀って……?」

 怪訝な顔をする後輩に構わずチャイムを鳴らす。玄関の前で待機していたのか、すぐに内側からドアが開けられた。
 もちろん、ドアを開けたのは銀だ。彼の姿を目にして、愛莉はへらりと笑う。

「ただいまー、銀」
「おかえり。遅かったな」
「んー、ごめんねぇ。ちゃんとご飯食べた?」
「ああ」

 愛莉と銀を交互に見ながら、後輩は二人のやり取りに呆然としている。

「えっ、えっ、先輩、彼氏いないって言ってましたよね? 誰ですか、この人……っ」
「あー、この子はねー」

 うちの飼い猫の銀だよ、と説明する前に銀に腕を引かれた。後輩に支えられていた体が、銀の腕の中へとすっぽりと収まる。
 ポカンとする愛莉に、銀が顔を覗き込むようにして言う。

「一人で帰れなくなって送ってもらったんだろ? ほら、ちゃんとお礼を言わないと」
「あ、うん。迷惑かけてごめんね。送ってくれてありがとう」

 心なしか顔が青ざめている後輩に、にっこり笑顔で礼を言う。後輩は逃げるようにその場から走り去った。
 銀はすぐにドアを閉め、鍵をかけた。
 靴を脱いで部屋に上がった愛莉を、銀が抱き上げる。

「っえ、ちょ、銀!? 私、自分で歩ける……」
「いいから、じっとしてろ」

 連れていかれたのは寝室だ。銀は無言で愛莉をベッドに下ろす。
 もう寝ろという事かと思ったら、銀がベッドに上がり覆い被さってきた。彼は愛莉を咎めるように鋭い双眸で見下ろしてくる。
 ビックリして、酔いが少し醒めた。

「ぎ、銀……?」
「さっきのオス、部屋に上げるつもりだったのか?」
「へ……?」

「さっきのオス」、というのは、ここまで送ってくれた後輩の事だろう。

「まさか! 銀がいるのに、上げるわけ……」
「俺がいなかったら?」
「え……?」
「俺が猫の姿だったら、上げてたのか?」
「いやいやいや、上げないってば」

 質問の意図がわからない。銀は人懐こいタイプではないので、他人が部屋に上がるのは許せないのかもしれない。たまにガスの点検などで人を呼ぶ事があるが、その時も警戒するような態度だった。

「あのオス、絶対愛莉を狙ってた」
「は?」
「愛莉をメスとして見てた」

 銀はギリッと歯を噛み締めた。彼の瞳には憤りが滲んでいる。

「愛莉は俺のメスなのに」
「…………え?」
「愛莉と俺の部屋に、他のオスを連れてくるなんて許せない」
「んむっ……!?」

 ぐっと顔が寄せられたと思ったら、そのままキスをされた。深く唇が重なる。

「んんっ……ちょ、んっんっ……待っ、ぅんっ、んんんっ」

 止めようとするが、体格ははるかに銀の方が勝っていて、力でも敵わない。
 銀の舌が口の中に入ってくる。擦り付けられた彼の舌は、猫の時ほどではないが少しザラザラしていた。
 そのほんのりとザラついた舌で舌を舐められる感触に、ぞくりと肌が粟立った。
 体が火照る。じわじわと全身に熱が灯っていく。
 力が抜けて、抵抗も弱くなっていった。

「んん……っ」

 銀のザラついた舌で上顎をねぶられ、愛莉は明確な快楽を感じ身を震わせた。じん……と脳髄が痺れる。

「はっ……んっんっ……ふぅっ……んんっ」

 鼻にかかったような甘えた声が漏れ、ぴちゃぴちゃと濡れた音に重なる。
 舌に舌が絡まり、ちゅうっと吸い上げられるとどうしようもなく気持ちいい。
 すっかり抵抗する力をなくしていた。そもそも相手が銀という時点で、愛莉に本気で抵抗などできなかった。
 唇が離されれば、寂しいとすら感じてしまう。
 口の端から零れた唾液を、銀の舌がペロペロと舐め取っていく。

「ひゃっ、んっ……待っ……落ち着いてよ、銀……」

 首筋をねぶり、はむはむと甘噛みする銀の頭を撫でる。銀は頭を撫でられるのが好きで、こうするといつも嬉しそうに目を細めていた。
 髪を洗ったり乾かしたりする時に頭に触れる事はあった。だが人間の姿になってから、猫の時と同じようにこうして頭を撫でるのははじめてだ。
 すると、彼の喉からゴロゴロと音が響いてきた。

「…………久しぶりに聞いた……銀の、ゴロゴロ」

 懐かしくさえ思えて、感動に似た感情を抱く。
 すると、銀は拗ねたように言った。

「お前が撫でないからだろ」
「え……いや、だって、猫の時と同じ扱いできないし……」

 見た目は成人男性なのだ。猫の姿の時と同じように頭や喉を撫でたりできない。
 愛莉はそう思っていたのだが。

「俺は俺だ」

 銀はきっぱりとそう言った。

「だから、今まで通りちゃんと撫でろ。可愛がれ」

 拗ねたような顔で可愛い事を言われて、思わず笑みが零れた。

「ごめん、愛猫を可愛がらないなんて、飼い主失格だよね」

 心地よい手触りの彼の頭を、猫の銀にしていたのと同じように撫でる。柔らかくて気持ちいい。
 ゴロゴロと喉を鳴らし、銀は愛莉の首筋をねぶる。舌を這わせながら、愛莉のシャツのボタンを外す。

「っあ、ちょ、銀……っ」
「んー?」
「んー、じゃ、なくてっ」

 ボタンを外し終えた銀は、シャツの前を広げる。

「だ、ダメだってば……!」
「何が? 何でダメなんだ?」

 銀は言いながら、キャミソールを捲り上げる。
 ブラジャーに包まれた胸を露にされて愛莉は顔を赤くする。いや、銀の前で散々着替えてきたけども。下着姿なんて何度も晒してきたけども。

「だ、だって、銀は猫で……っ」
「だから? そんなの関係なく、俺は愛莉が好きだ」
「私だって好きだけどっ」
「じゃあ、何が問題なんだ?」
「あっ……」

 ブラジャーをずらされて、ぷるんっと膨らみがまろび出る。

「何が、問題って……」

 問題は色々あるだろう。自分は人間で、相手は猫で。それに、それに……。何が問題なのだろう。
 数え切れないほどあると思っていた問題が、考えると全然出てこない。
 だって、誰かに迷惑をかけるわけでもない。誰が困るわけでもない。
 銀は自分を好きだと言ってくれて、もちろん愛莉だって世界で一番銀が好きで。
 だとしたら、彼を止める理由などあるのだろうか。そもそも愛莉は銀に本気で求められたら拒む事などできない。
 何も言えなくなった愛莉を見下ろし、銀は唇の端を吊り上げる。

「問題なんて、何もないだろ」

 否定できない愛莉の唇に、再び銀の唇が重なる。差し込まれる彼の舌を黙って受け入れてしまう。

「んっ……ぁ、んんっ」

 少しざらついた銀の舌で口の中をねぶられる感触に、ぞくぞくと背中が震える。
 愛莉は完全に、彼を止めようとする意思をなくしていた。
 絡み付いた舌に舌を引き出され、ちゅうっと吸い上げられる。彼の口の中に迎え入れられた舌は、濡れた音を立てて何度も吸われた。
 彼の口の中はとても熱くて、その熱を感じて愛莉の体はどんどん火照っていった。
 深く口づけながら、銀の手が愛莉の胸に触れる。柔らかく揉まれて、ビクッと肩が跳ねた。

「んぁっ……んんっ」
「はっ……柔らかいな、お前のここ……」
「あっ、やっ……恥ずかし、あんっ」

 二つの膨らみを銀の大きな掌に包まれ揉み込まれる。やわやわと優しく揉まれているだけで、どんどん体が昂っていく。
 銀の指先が胸の突起に触れた。

「あッ……んゃあっ」

 いかにも感じてますと言わんばかりの甘い声が漏れて、恥ずかしさに耳まで熱くなる。
 羞恥に悶える愛莉を見つめ、銀は嬉しそうに目を細めた。

「愛莉、そんな声出すんだな」
「やっ……恥ずかし、から、聞かないで……っ」
「聞くし、お前が恥ずかしいと思う声をもっと出させる。ずっと聞きたかった、愛莉の、発情した声……。俺だけに聞かせろよ、そのメスの声」
「も、そういうの恥ずかしいんだってばっ……あっ、やぁんっ」

 文句を言おうとすれば、それを遮るように乳首を弄られた。乳頭を指の腹で撫でられて、ぞくんっと肌が粟立つ。

「あっ、あっ、だめっ、それぇっ、んんっ」
「なんで? ここ、弄られんの気持ちいいんだろ?」

 確信に満ちた様子で、銀は突起を指で転がす。甘い快楽に、そこはツンと固くなる。

「んあっ、な、なんで、そんなこと、んっ、知ってる、のよ……っ」
「タブレットで調べた」
「っ、ばかっ、あっあっ、変な、知識つけないでよぉっ」
「俺と愛莉が愛し合う為に必要な知識だろ」

 銀はムッとした顔で、咎めるように乳首をきゅっとつまんだ。

「ひんっ」
「ちゃんと調べないと、愛莉を気持ちよくしてやれないからな」
「ふぁっんっ、あっあぁっ」

 指に挟んだ乳首をくにくにと捏ねられて、強い刺激に背中が仰け反る。
 快楽に喘ぎながら、事前に調べていたという事は、彼はこういう行為をするつもり満々だったという事に気づく。自分とそういう事をするつもりで色々調べていたのだと考えると、何とも言えない感情が湧き上がってきた。
 なんて事を考えていたら、銀に悟られる。

「考え事するな」
「んん……っ」

 耳元で囁かれ背筋が震える。銀の低い声は、耳に吹き込まれると子宮に響くような感じがして下腹部がじんじんする。

「やだ……耳、だめ……っ」
「そうか。ここも気持ちいいんだな」

 嬉しそうに呟いて、銀はぺろぺろと耳を舐めはじめる。少しざらついた舌で耳の内側を舐められると、擽ったさと快感に体がビクビクッと跳ねた。

「あっ、だめ……って、言ってるのに、んっあっ、一緒に、しちゃやだぁっ、あぁんっ」

 銀は耳朶をしゃぶりながら、爪の先で乳首を優しく弾く。
 蕩けるような快楽に、愛莉は身悶えた。脚の間から体液が溢れてくるのを感じ、ひっきりなしに内側を擦り合わせる。

「ひぁっ、あっ、あっ、ぎんっ、んあっ、ああぁっ」

 耳に甘く歯を立てられ、カリカリと乳首を引っ掛かれ、愛莉は嬌声を上げて身をくねらせた。爪先でシーツを掻き、ぐしゃぐしゃに乱していく。

「もう、だめぇっ、あっあっ、ぎんんっ」
「何言ってんだ。まだまだ、これからだろ。この程度で根を上げんなよ、愛莉」
「そんなっ……あっ、あんんぅっ」

 耳から唇を離した銀が、今度は乳首にしゃぶりついてくる。

「んひっ、あっ、それだめぇっ、あっ、ああぁんっ」

 口に含まれた先端にざらついた舌が絡み付く。敏感な突起を舐め回され、強い刺激に甲高い声が漏れた。もう片方は指で押し潰され、両方の乳首を攻められる快感に喘ぐ事しかできない。

「ひあっあっあぁっ、ぎんっ、んっあっあっ、ぎんんぅっ」

 ぢゅうっと強く吸い付かれると気持ちよくて、もっととねだるように背中が浮いてしまう。

「んぁあっ、ぎんっ、んっあっあっ、あぅんっ」
「エロい声……。そんなにここ、気持ちいいのか?」
「きもち、いいっ、そこ、きもちいいぃっ」

 素直に口にすれば、愛撫に一層熱が込められた。
 ちゅぱちゅぱと乳首をしゃぶられ、はしたなく腰が揺れる。下着がじわりと濡れていくのがわかった。

「ひっあぁっ、だめ、そんなに、しちゃ、あっあっ、ぎんっ」
「ここだけじゃ、もう物足りないのか?」
「違っ、ぅんんっ」
「ウソつけ。さっきからずっと腰揺らしてるくせに」
「っうぅ……」

 恥ずかしい事実を指摘され、顔が真っ赤に染まる。
 銀は下肢へと手を伸ばす。動いたせいでずり上がっていたスカートを捲られる。

「あっ、やだ、見ちゃ……っ」
「はっ……すげー濡れてんじゃねーか」

 べっとりと張り付く下着を見て、銀は瞳に情欲を浮かべ唇を歪める。

「やっ……恥ずかしいからっ……見ないでよ……!」
「俺に見られて恥ずかしいのか?」

 銀は笑みを深める。

「な、なんで、そんな嬉しそうなのよ……」
「嬉しいに決まってる。俺の事、オスとして意識してるって事だろ?」
「え……?」
「俺はずっと、愛莉を自分のメスにしたくて、そういう目で見てたのに、お前は俺の事、可愛い猫としか見てなかっただろ」
「そ、そりゃ……」
「やっとお前が俺をオスとして見て、意識するようになったんだ。嬉しいだろ」
「っ、っ……」

 一体いつから、彼は自分にそういう感情を抱いていたのだろう。全く気づかなかった事が申し訳ないやら恥ずかしいやら、彼にとって自分がそれだけ特別な存在だったのだとわかって嬉しいやら。色んな感情が込み上げてくる。

「俺が今までどれだけお前にこうしたかったか、たっぷりわからせてやる」
「ひゃっ……!?」

 銀は自分の唇をペロリと舐め、愛莉の下着に手をかけた。そのまま下ろされる。溢れた愛液が糸を引く。
 その光景を見つめ、銀は興奮したように荒い息を吐き出した。

「エロ……」
「っや、銀……」

 どろどろに濡れているだろう秘所を露にされ、羞恥に顔が熱くなる。恥ずかしさに悶えている間に下着を脱がされた。
 咄嗟に脚を閉じようとするが、太股を押さえられ更に大きく開かれてしまう。明るい室内で陰部を晒される羞恥に全身が赤く染まる。

「やだぁっ……」
「愛莉のここ、とろとろで、すげーメスの匂いがする」
「ばかっ、ばかばかっ、恥ずかしい事言わないでよぉ……っ」

 こっちは恥ずかしすぎて穴に埋まりたいくらいなのに、どうして次から次へと羞恥を煽る言動を繰り返すのだ。
 恥ずかしくて涙目になる愛莉を見下ろし、銀は獲物を狙う肉食獣のように舌舐めずりする。

「恥ずかしがってる愛莉、めちゃくちゃ美味そう」

 そう言って、彼は愛莉の下肢へと顔を近づける。

「えっ、やだうそ、待って……っ」

 銀のしようとしている事を察して慌てて止めようとするが、間に合わずぺろりとクリトリスを舐められた。

「ひあぁ……!」

 敏感な箇所に強い刺激を与えられ、甲高い声が漏れる。

「ああっ、あっ、待って、待ってぇっ、それむりっ、あっあっあっ、んゃぁあっ」

 銀のざらついた舌は刺激が強すぎる。待ってと訴えるのに、彼は無視してぴちゃぴちゃとクリトリスをねぶる。

「んひっ、あっ、んああぁっ、やっ、ぎんんっ、だめぇっ、あっ、あぁっ」
「そんなよがりまくってる姿見せられて、やめるわけないだろ」
「ひはぁあんっ」

 舌先でくにゅくにゅと肉粒を捏ね回され、腰をくねらせ快楽に身悶える。

「らめ、らめぇっ、銀の舌、気持ちよすぎるのぉっ、あぁっ、あっ、ひあぁっ」

 はしたない声が止められない。体がビクビク反応し、とめどなく愛液が溢れ出た。

「いくっ、いく、いっちゃうぅっ、んぁあっ、あっ、あ~~っ」

 激しく内腿を痙攣させ、愛莉は絶頂を迎える。脚を大きく広げ腰を突き上げ、痴態を晒す。けれどもう、恥じらう余裕もない。

「はあっ……匂い、どんどん濃くなっていくな」

 熱い息を吐き、銀はとろとろと蜜を滴らせる膣穴を見つめる。今度はひくひく震えるそこへ舌を伸ばした。

「んひぃっ……!?」

 達した余韻に浸る間もなく刺激を与えられ、目を見開き悲鳴を上げる。

「やあぁっ、らめ、そこ舐めちゃ、ああっ、吸わないでぇ……っ」

 愛莉の制止の言葉など意味はなく、溢れる蜜を啜られる。卑猥な水音が部屋に響き、羞恥と快感にくらくらした。
 銀の舌は外側だけでなく内側までねぶりはじめる。中に舌を差し込まれ、熱くざらついたその感触に痺れるような快楽に襲われた。

「ひあっ、あっ、なか、舐めちゃだめぇっ、んぁっ、あっあっんんぅっ」

 ぬぽぬぽと舌を出し入れされ、膣内を舐め回され、溢れる愛液を吸い上げられる。気持ちよくて体が跳ねる。

「んっあっ、きもち、いいっ、あっあっあっ、らめ、んぅ~~っ」

 散々中を舐められ、ちゅぽっと抜けた舌の代わりに次は指を挿入された。

「んあぁっ、ゆび、入って……あっあっ」
「愛莉の中、入れただけでぎゅうぎゅう締め付けてくるな」
「ひっんっ、うごかしちゃ、あぁっんっ」

 くちゅくちゅと音を立てて指を動かされ、その刺激に腹の奥が疼く。膣内が媚びるように彼の指に吸い付いてしまう。
 その反応に銀は嬉しそうに唇の端を吊り上げる。

「俺の指、美味そうにしゃぶってるのわかるか?」
「ちが、あっ、そんなの、してないっ、あぁっ」
「してるだろ? ほら、抜こうとすると吸い付いてくる」
「んゃああ……っ」

 彼の言う通り、きゅんきゅんと中が締まって指を引き止めようとする。愛莉が認めなくても、そこは彼の指を受け入れ求めていた。

「素直に認めればいいだろ」
「だってぇっ、はずかしぃ、もん……っ」

 顔を真っ赤にして言えば、銀は唇を綻ばせた。

「じゃあ、恥ずかしがる余裕もなくなるくらいめちゃくちゃにしてやるからな」
「やっ、むりっ、これ以上は……ああぁっ」

 再びクリトリスに舌を這わされ、快感が全身を駆け抜ける。

「ひっ、やあぁっ、りょうほう、しちゃらめぇっ、あぁっ、あっ、んゃ~~っ」

 膣内とクリトリスを同時に刺激され、愛莉は首を振り立て嬌声を上げた。
 銀はれろれろと舌を動かしながら、中の敏感な箇所を指で擦る。堪らなく気持ちよくて、体を震わせ声を上げる事しかできない。

「んあっあっ、ぎん、んっ、あっあっ、らめ、ひあぁっ」

 クリトリスにねっとりと舌が絡み付き、指の腹で感じる部分を重点的に弄られて、愛液が溢れて止まらない。ぐちゅぐちゅといやらしい粘着音が響く。

「いく、いくっ、またぁっ、あっ、っ、──~~~~~~っ」

 快楽に攻め立てられ、絶頂へと追い上げられる。
 ガクガクと腰をはしたなく上下し、蜜を漏らし激しく達する。

「やぅっ、んぁっ、らめ、ぎんんっ、いったからぁっ、もうらめなのぉっ、ああっ、あ~~っ」

 絶頂を迎えても銀は愛撫の手を緩めない。膣穴に二本目の指を差し込み、更に強い刺激を与えてくる。

「んひっ、あっ、むりぃっ、やあぁっ、くり、すっちゃらめぇっ、おまんこ、指でぐりぐりやめてぇっ」

 やめてと訴えるその声音は快楽に蕩けきっていた。
 やめてもらえるはずもなく、銀はクリトリスに吸い付き、膣内の指を出し入れする。
 腹の奥が疼き、胎内をきゅうきゅう締め付けてしまう。指が擦れて気持ちよくて、肉襞は悦ぶように収縮を繰り返した。

「ひうっ、うっ、いく、また、あっ、~~~~っ、あっ、いってる、のにぃっ、んっあっ、んぅ~~~~~~っ」

 いってもいっても終わらない。シーツをぐしゃぐしゃに乱し、快楽に身悶える。
 舐めて吸われ続けたクリトリスはぷっくりと固く膨らみ、じんじんと熱を持っている。いつの間にか増やされ三本の指で掻き回された膣内は、蜜にまみれ更なる刺激を求めていた。

「あっ、ひっ……ぎん、ぎぃん……っ」
「どうした、愛莉?」

 ちゅっと音を立ててクリトリスから唇を離し、銀がこちらを見つめてくる。
 情欲に濡れた彼の視線にぞくんっと背中が震え、胎内がまた疼いた。

「あっ、あっ……ぎん、ぎん……っ」

 蜜口からゆっくりと指が抜かれていく。引き止めるように媚肉が絡み付くけれど、ぬぽっと糸を引きながら指は抜けてしまった。
 腹の奥が疼いて、膣穴が物欲しげに開閉を繰り返す。
 頬を紅潮させ荒い息を吐く愛莉を見下ろしながら、銀は陰茎を取り出した。
 太くて長い肉棒が反り返りそそり立つ様が目に入る。
 愛莉の呼吸は更に乱れた。
 ぱくぱくと口を開ける膣穴に、太い亀頭が押し付けられる。それだけで、全身が甘く痺れた。

「んあぁっ……」
「ただ当ててるだけなのに、そんな声上げんのか」
「あぅん……っ」

 ずりゅっと裏筋でクリトリスごと秘所を擦り上げられ、快感にガクガク腰が揺れる。そのまま、ずりゅずりゅと陰部を擦られた。

「あぁっ、やっ、やらぁっ、ぎんんっ」
「嫌か、愛莉?」
「そこじゃなくて、中、擦ってほしいぃ……っ」
「中?」
「っ、入れて……銀のおちんちん、欲しい……あっ!? あああぁ──!!」

 言うやいなや、張り詰めた陰茎を捩じ込まれた。胎内を硬い楔に一気に貫かれ、その衝撃に目を見開く。

「あぁっ、あっ、はひっ、んうぅっ」
「……ああ、やっと愛莉に、オスとして求められた……っ」

 銀はとろりと目を細め、感嘆の溜め息を零す。
 内部に埋め込まれた陰茎はどくどくと脈打ち、じくじくと熟れた媚肉を擦りながら更に奥へと進んでいく。
 腹の中を彼の熱でいっぱいに満たされていく感覚に愛莉は身を震わせた。

「ひぁっ……なか、銀のおちんちんでいっぱいになるぅっ……んぁうっ」

 ずんっと腰を突き上げられ、背中が仰け反る。

「ひっあっ、いきなり、つよくしちゃ、らめぇっ」
「お前が、煽るようなこと、言うからだろ……。それに、愛莉のここは喜んでる、だろ……っ」
「んあぁっ、おく、おくぅっ、ぎんの、あたって……っ」

 最奥を亀頭でとんとんっと刺激されると、快感に膣内が蠢く。

「きもちぃっ、いいぃっ、あっ、ああぁっ」
「じゃあ、もっと奥、気持ちよくしてやる」
「ひあぁっ、おく、ぐりぐりしちゃ、あっ、いっちゃ、ああっ、いくぅっ、んう~~~~っ」

 ピンッと爪先を伸ばし、深い絶頂に全身を震わせた。気持ちよすぎて目の前がチカチカする。

「いってる、からっ、あっあっ、まってぇ、おく、らめぇっ」
「奥がダメなら、ここがいいか?」

 ずるりと最奥を離れた亀頭が、今度は入り口の近くの感じる箇所をぐりゅぐりゅと擦る。

「ひはぁっ、あぁっ、そこも、らめっ、んぁあっ、そこぉ、擦れるのきもちいぃっ、あっあっあーっ」
「はっ……愛莉の、中……俺も、気持ちいい……っ」

 きゅんきゅんと収縮する肉襞に陰茎を扱かれ、銀も感じ入ったように荒い息を吐く。

「あっあっあっ、そこ、そこぉっ、きもちい、あっ、らめぇっ、そこ、そんなにおされたら、ひっ、漏れるぅっ」

 太い亀頭でお腹側の肉壁をごりゅごりゅと押し潰すように擦られて、愛莉は悲鳴を上げた。

「らめ、らめっ、でるっ、もれる、ぅんううっ、──~~~~~~っ」

 耐える事も叶わず潮が噴き出す。二人の体に体液が飛び散る。
 羞恥心は快楽に塗り潰され、もう気持ちいいという事しかわからない。

「きもちいっ、あっあっ、銀のおちんち、きもちいいぃっ、あっあっ、ひっ、んあぁっ」
「やっと、素直になってきたか?」

 嬉しそうに唇に弧を描き、銀は陰茎をぬぽぬぽと抜き差しする。
 彼の太くて硬いもので胎内を擦られるのが気持ちよくて堪らない。体はもっとと求めるように快感を受け入れ、埋め込まれた彼の熱を締め付ける。
 また深くまでほしいと望めば、すぐに奥まで陰茎を突き入れられた。

「ひあぁっ、あっひぃっ、きもちいっ、なか、いっぱいなの、きもちいいっ、あっあっあ~~っ」
「すげー顔……ぐちゃぐちゃに蕩けて、エロくて、可愛いっ……ずっと見たかった、愛莉の、メスの顔……っ」
「ひっあっあっあっ、おくっ、ずんずんってぇっ、いくっ、~~~~っ、あっあっああぁっ」

 もう何度絶頂を迎えたのかもわからない。
 泣き喘ぐ愛莉に銀が顔を寄せる。目尻に浮かぶ涙を舐められた。少しざらついたその感触に、愛しさが溢れる。

「ぎん、ぎんんぅっ」

 両腕を伸ばし、ぎゅうっと銀にしがみつく。

「好き、ぎん、大好きぃっ」
「愛莉……っ」

 噛みつくようにキスをされ、胎内を激しく突き上げられる。
 ごちゅっごちゅっと最奥を穿たれる快感に襲われながら、必死に彼の体を抱き締めた。

「愛してる、愛莉……っ」
「んぁっ、しゅきっ、ぎんんっ、ずっと、すき、しゅきっ、ぎん、ぎぃん……っ」

 深く唇を重ね、下肢でも奥深くまで繋がり合う。
 大好きな銀と身も心も深く繋がれた感覚。
 幸せで、もっと強く彼を感じるために抱きつく腕に力を込める。
 互いに互いを抱き締めて、キスをして、求め合う。
 一際激しく内奥を穿たれ、短い呻き声と共に熱い体液を放たれた。それを感じながら愛莉も何度目かもわからない絶頂を迎える。
 達している間もぴったりと体も唇も重ねていた。
 暫くそのまま動かずにいたが、やがてそっと唇が離された。
 二人は荒い息を吐きながら、熱の籠った瞳で見つめ合う。
 嬉しくて照れ臭いような、むず痒い時間が流れた。
 ゆっくりと体が離されて、心地よい疲労感に包まれる。愛莉はそのまま眠ってしまいたくなる。

「愛莉、寝る前に風呂に入れよ。体、べとべとだぞ」
「んぇ~……じゃあ、銀がお風呂連れてってよ。銀のせいでべとべとになったんだから」

 冗談半分に言えば、彼は本当に浴室に連れていってくれた。
 いつもこちらが銀の頭を洗ってるが、今日は彼が愛莉の体の隅々まで洗ってくれた。洗いながらそういう雰囲気になってまたイチャイチャして、歩けなくなった愛莉を銀が寝室まで運んでくれた。
 彼に世話を焼いてもらうのがあまりにも心地よくて、甘える事に慣れてしまいそうだ。
 銀の温かい腕に包まれながら、愛莉は眠りに落ちていった。





 翌日目を覚ますと気だるさを感じた。股関節や腰に違和感がある。そして秘所に何が挟まったような感覚も残っている。
 ああ、そうだ……と昨晩の出来事を思い出す。
 あくびをしながら体を起こす。隣で一緒に寝たはずの銀の姿はない。
 すると、ベッドの下から「ニャー」と懐かしい鳴き声が聞こえた。ハッとして顔を向けると、そこには愛らしい黒猫の姿が。

「銀……!!」

 弾かれるようにベッドから飛び出し、銀に抱きつく。

「ぎぃんん~! 猫の姿に戻れたの? あー、この毛並み、このもふもふ、私の銀だぁ……!!」

 柔らかいお腹に顔を埋めてスーハースーハーする。ずっと味わいたかったこの感触。この匂い。
 今日は休みだ。一日中こうしていたい。こうしていようか。
 なんて事を考えていると、ふわふわの感触が唐突にムキムキに変わった。

「えっ……!?」

 ギョッとする愛莉の目の前には、人間の姿の銀がいる。憮然とした顔でこちらを見る銀に、パチパチと瞬きする。

「え、何でっ? 猫の姿に戻れたんじゃないの!?」
「猫にも人間にも、自由に姿変えられるようになったんだよ」
「そうなの? じゃあ、猫になってよ。もう一回銀のお腹堪能させてよ」
「別に猫の姿じゃなくてもいいだろ」
「よくないわよ! 私が吸いたいのはムキムキのお腹じゃなくてもふもふのお腹なんだってば!」
「どんな姿でも俺は俺だろ」
「そうだけど、感触が全然違うから!」

 そんな言い合いは、愛莉のお腹の音が鳴り響くまで続いた。
 愛猫との生活は今までよりも賑やかで楽しいものになりそうだ。





─────────────────

 読んで下さってありがとうございます。

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