永遠の別れと流氷(仮)

藤見暁良

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二章

摂氏零度

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 父と母はお見合い結婚だった――――。
 父の妹――叔母さんが母と同じ学校の同級生で、父を紹介されたそうだ。お嬢様育ちで世間知らずだった母は、二十代半ばにもなって周りが次々と結婚していったから内心焦ってもいたそうで、父とは年が十歳くらい離れていたけれど、そんなもんだろうと思って結婚を決意してしまったと言っていた。
 結婚してから両親は、九州から関東に移り住んだ。
 知らない土地、言葉が通じない――――最初は慣れないことが多すぎて、外に出るのが怖くなってしまっていた。
引っ越したばかりはまだ市内だったが、父が田舎暮らしが好きなもあってか、スーパーもない山ばかり見える所に家を買ってしまった。それは私が二歳頃だ――――。
 その村のみたいな土地は因習深い所で、最初の来たばかりの時は我が家は余所者扱いされていた。
 ただ、父は無駄に行動力があって目立ちたがり屋だったのもあってか、積極的に地域の活動に参加したりもしていて知り合いも増えて、私が小学校に入る頃には余所者もされなくなっていた。
 暫くすると、近所に新しい家が次々に建ち始め、引っ越してくる人も増えて『余所者』の勢力の方が強くなっていった気がする。
 そして『余所者』の中では古株の方になった我家に父は、元来のお調子者性格が益々増長してしまったのかもしれない――――。

 父は兎に角好奇心が多い。そして色々と出来てしまう器用さがあった。
 でもそれが災いの元だったと思う――――。
 自営業をやってみたり、健康グッズを売って見たりと、興味があるものに直ぐ手を出してしまった。
 母は逆で、堅実的だった。安定的な収入がない中でも、コツコツと貯金をしていたし、なんとか家計のやりくりをしていた。
 小さい時は、そんな家庭状況を分からず我儘も言ってしまったが、小学中学年くらいにもなると、自分の欲しいものは殆ど言わなくなった。
 私が言わない分、三歳上の姉は自己中だったけど――――。

 姉は自分の思い通りにならないと、直ぐに怒って不貞腐れて自分の部屋に籠ったりした。感情的な姉の姿が見ていてみっともなく思えた私は、反面教師でますます我儘を言わなくなったし、感情も抑えるようになっていまう。
 だけど母からしたら、感情的だけど素直な姉の方が分かりやすかったみたいで、私への態度は距離を感じていた。


 人間の習性か――――卑怯者は徒党を組む。
 『余所者』の中で、リーダーシップを取る男子が現れた。私の一学年上で、家も近い。
 その男子は学校中の生徒から、持て囃されるようになっていた。背が高くて、スポーツも出来て、性格も明るかったからだろう。
 でもそれは表向きの顔――――。普段学校でも、家でも良い子ちゃんぶっていたせいか、ストレスが溜まっていたのかもしれない。男子を先導して、何故か私に虐めをするようになってきた。
 いくら小学生とはいえ、多勢に無勢だ。女子一人では勝てない。自分より学年が下の男子まで、便乗して嫌がらせをしてきた。
 姉が居る頃は少し庇ってくれたりもしたが、姉が苦手な私はあまり頼りたくはない。そんな姉でも、少しは役に立っていたのかもしれない。姉が小学校を卒業したら、壁になってくれる人は誰もいなかった。
 怪我を負わせられるようなことはされなかったけど、言葉の暴力を浴びせられていた。
 男子に虐められていることも、首謀者が誰かも、両親は知っていたが、母は近所付き合いの関係もあって、首謀者の親には強く言えなかった。
 父はと言えば――――「泣いたら負けだ」と言うだけだ。
 
 その時悟ったのだ――――。この世で自分を守れるものは、自分だけ・・・・なんだ――――って。
 私はどんなことしても、一人で戦っていく決意をした。友達も、姉も親も――――誰も頼らないと――――。
 負けたくなかった。勉強もスポーツも人一倍努力した。
 山奥の小さな学校なのもあって、勉強や体育の成績も、男子より私が上回っていた。
 そうでもしないと、自尊心が保てなかったのだ――――。徒党を組んでしか卑怯なことを出来ない連中を見下して、自分の気持ちを救おうことしか出来なかった。

 どんなことが起きても咄嗟に判断出来るように、常日頃から色んなことを考えた。同級生や、自分を取り巻く人を注意深く観察するようになっていく。そのせいか、妙に察しが良くなってしまった。
 虐めてくる連中に負けまいとしようとしていたことが、功を奏したか、仇なのか――――私は学級のまとめ役になることが多くなってしまった。
 男子とは苦手意識もあって仲良く出来なかったが、女子と先生方からは信頼を得るようになっていく。

 だけど負った傷は簡単には消えない――――。
 首謀者が卒業して中学生になり、虐められることが殆どなくなったが、私の精神状態は常に冷え切っていた――――。

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