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二章
中学時代
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中学生になっても、特に自分の取り巻く環境は変わらない――――。山奥の学校だから、クラスの面子は同じだ。ただやたらと転校生は多くて、それで空気が変わってくるくらいだった。
最初大人しい転校生も、慣れてくると活発になってきてクラスの中で目立つ存在になってくる。ムードメーカー的にでもあったり、反面悪巧みもする。だけどクラスの意見や、問題を解決する時には、何故か私にお役目が回ってくるという面倒臭い立場だった。
そのせいか、何かあったら先生も私に雑用とか頼むことが多かった、父も相変わらずな性格で、中学校でもPTA会長を率先してやっていたのもあって、先生方と仲良くしていた。
成績も落とさないように勉強したし、スポーツも代表に選ばれたりと、所謂『優等生』でいることに徹する――――。その方が、いざという時意見が通りやすという算段もあった。
周りを見下して、腹黒く生きていこう――――。年を取るにつれて、益々歪みが酷くなっていく。
そんな中でも、唯一心が安らぐ時間があった。絵を描くことだ――――。
これは母親も描くのが好きなのもあって、画材とかそこそこ揃えてくれたし、父からは自営業で印刷所をやっていた時の道具を譲って貰えた。
小学生の頃から、時間を見付けたは描き続けている。学校の写生大会は常に入賞したし、作品が代表として選ばれることもしょっちゅうだった。コンクールでも受賞していたのもあってか、美術の先生はいつも一目置いてくれた。
嫌なことは沢山あったけど、絵を描いていられたら十分だと思えた。自分の気持ちを誰にも伝えられない分、絵に詰め込んだ。
自分の声も、気持ちも、夢も、暗く沈む気持ちも――――。絵に吐き出して、現実とのバランスを保つ。
自尊心のための表向きの評価より、絵を褒められた時は素直に喜べる。
だって、本当の自分を見て貰えているような気がするからだ。
あぁ――――ずっと部屋に籠って、絵だけ描いていられたらいいのにな――――。
三歳年上の姉は、高校生だ。小学校の時からボーイッシュな恰好を好んで、高校では小学校の時から好きだったソフトボール部に入った。
だが姉は私と違って、男子との方が仲良く出来て、同性との折り合いが悪い。
半年くらい経つと、ソフトボール部内で上手くいかなくなったようで、そのタイミングで他の部活の顧問から声を掛けられた。
――――ボート部だ。
姉が進学した高校は、ボート部が有名だった。国体は常連参加、オリンピック選手も輩出していた。学校ではエリート部のボート部に誘われたことに気をよくした姉は、早々に部を変わった。
それだけのレベルの部なだけあって、練習は勿論ハードだ。夏休みとかは、四国の方まで行って合宿をしている。姉の高校生活は合宿ばかりだったから、家に居ることが殆どなくなった。
我が家は、三人家族みたいになった――――。
姉は元々高校を卒業したら、就職をするつもしだった。それは我家の経済的問題もあった。普通に生活している分には支障はないが、私たちが大学に行くほどの余裕はない。
もし行くとするなら、姉より勉強が出来た私が行くだろうと、両親も思っていたのだが――――。
姉が高校三年生にになった時、ボート部の顧問と姉のクラスの担任が家にまでやって来た。
姉を体育大に推薦したいとのことだった――――。
ボート部のコネもあって、大学と連携していたようだ。就職率は良いが、進学率はいまいち弱い高校側の意図もあって、学校で全面的に進学に協力すると言ってきた。
我家の状態を考えたら、断って欲しかった――――。でも姉本人も持ち上げられて、その気になってしまっていたし、頭を下げられて娘のことを期待されたら、お調子者の父は悪い気がしないだろう。いつもの良い格好を見せようと、先生方の頼みを受けてしまったのだ。
私は、その光景に丁度居合わせてしまった。
先生方に「恵里さんの妹さんですか?」と聞かれ、更に「背、高いね! スポーツやっているの? 良かったら内の高校に来て、お姉さんと同じボート部にどう!」とまで言われた。
私は即答で「行きませんので」と、答えた。
中学でも姉と、いつも比べられていた。
勉強もスポーツも、私の方が姉より出来ていたのに、明るく目立っていた姉は、先生方のお気に入りだったのだ。
そんな姉と同じようになって貰いたいと、母も言っていた。
家でも中学でも姉と比べられる苦痛から逃れるには、姉が関わっていない場所にいくしかないと思っていたのだ。
それに姉の通っていた高校は、偏差値が高くなかった。私はそこよりももっと高い所に行きたかった。
だから何を言われようと、絶対行かない――――。
私が先生方に、そう答えると「残念だな~」と笑って言っていたが、そのタイミングで父が言い放った――――。
「こういう訳だから、お前は大学行くの諦めてな」
シレっと、冗談なのか本気なのか――――この人はいつも、無責任に言ってくる。
先生方が一瞬固まってしまい、苦笑いでその場を誤魔化そうとしたが、私は冷たく答えた。
「言われなくても、分かっているよ」
――――分かっているよ。言われなくても最初から、大学なんて行くつもりなんてないし!
心の中でそう叫び、自分の部屋に戻ると、ベッドに顔を埋めた。
喉の奥が締め付けられたみたいに、キュゥっと痛い――――。
自分の道は、自分で決める。我家に大学に行かせるだけのお金がないことも分かっている。でもそれは誰のせい?
あんたが、好き勝手なことをしているからじゃないか――――。
泣きたい気持ちを堪えても、煮え滾る怒りは抑えられない。
こんな家族、大っ嫌いだった――――。
お調子者の父も、姉ばかり贔屓する母も、自分勝手な姉も――――皆、居なくなってしまえばいいと本気で思った。
何度も、そう願った。
だけど願うだけ、無駄なのだ――――。
私の心は、氷のように凍てついていった――――。
最初大人しい転校生も、慣れてくると活発になってきてクラスの中で目立つ存在になってくる。ムードメーカー的にでもあったり、反面悪巧みもする。だけどクラスの意見や、問題を解決する時には、何故か私にお役目が回ってくるという面倒臭い立場だった。
そのせいか、何かあったら先生も私に雑用とか頼むことが多かった、父も相変わらずな性格で、中学校でもPTA会長を率先してやっていたのもあって、先生方と仲良くしていた。
成績も落とさないように勉強したし、スポーツも代表に選ばれたりと、所謂『優等生』でいることに徹する――――。その方が、いざという時意見が通りやすという算段もあった。
周りを見下して、腹黒く生きていこう――――。年を取るにつれて、益々歪みが酷くなっていく。
そんな中でも、唯一心が安らぐ時間があった。絵を描くことだ――――。
これは母親も描くのが好きなのもあって、画材とかそこそこ揃えてくれたし、父からは自営業で印刷所をやっていた時の道具を譲って貰えた。
小学生の頃から、時間を見付けたは描き続けている。学校の写生大会は常に入賞したし、作品が代表として選ばれることもしょっちゅうだった。コンクールでも受賞していたのもあってか、美術の先生はいつも一目置いてくれた。
嫌なことは沢山あったけど、絵を描いていられたら十分だと思えた。自分の気持ちを誰にも伝えられない分、絵に詰め込んだ。
自分の声も、気持ちも、夢も、暗く沈む気持ちも――――。絵に吐き出して、現実とのバランスを保つ。
自尊心のための表向きの評価より、絵を褒められた時は素直に喜べる。
だって、本当の自分を見て貰えているような気がするからだ。
あぁ――――ずっと部屋に籠って、絵だけ描いていられたらいいのにな――――。
三歳年上の姉は、高校生だ。小学校の時からボーイッシュな恰好を好んで、高校では小学校の時から好きだったソフトボール部に入った。
だが姉は私と違って、男子との方が仲良く出来て、同性との折り合いが悪い。
半年くらい経つと、ソフトボール部内で上手くいかなくなったようで、そのタイミングで他の部活の顧問から声を掛けられた。
――――ボート部だ。
姉が進学した高校は、ボート部が有名だった。国体は常連参加、オリンピック選手も輩出していた。学校ではエリート部のボート部に誘われたことに気をよくした姉は、早々に部を変わった。
それだけのレベルの部なだけあって、練習は勿論ハードだ。夏休みとかは、四国の方まで行って合宿をしている。姉の高校生活は合宿ばかりだったから、家に居ることが殆どなくなった。
我が家は、三人家族みたいになった――――。
姉は元々高校を卒業したら、就職をするつもしだった。それは我家の経済的問題もあった。普通に生活している分には支障はないが、私たちが大学に行くほどの余裕はない。
もし行くとするなら、姉より勉強が出来た私が行くだろうと、両親も思っていたのだが――――。
姉が高校三年生にになった時、ボート部の顧問と姉のクラスの担任が家にまでやって来た。
姉を体育大に推薦したいとのことだった――――。
ボート部のコネもあって、大学と連携していたようだ。就職率は良いが、進学率はいまいち弱い高校側の意図もあって、学校で全面的に進学に協力すると言ってきた。
我家の状態を考えたら、断って欲しかった――――。でも姉本人も持ち上げられて、その気になってしまっていたし、頭を下げられて娘のことを期待されたら、お調子者の父は悪い気がしないだろう。いつもの良い格好を見せようと、先生方の頼みを受けてしまったのだ。
私は、その光景に丁度居合わせてしまった。
先生方に「恵里さんの妹さんですか?」と聞かれ、更に「背、高いね! スポーツやっているの? 良かったら内の高校に来て、お姉さんと同じボート部にどう!」とまで言われた。
私は即答で「行きませんので」と、答えた。
中学でも姉と、いつも比べられていた。
勉強もスポーツも、私の方が姉より出来ていたのに、明るく目立っていた姉は、先生方のお気に入りだったのだ。
そんな姉と同じようになって貰いたいと、母も言っていた。
家でも中学でも姉と比べられる苦痛から逃れるには、姉が関わっていない場所にいくしかないと思っていたのだ。
それに姉の通っていた高校は、偏差値が高くなかった。私はそこよりももっと高い所に行きたかった。
だから何を言われようと、絶対行かない――――。
私が先生方に、そう答えると「残念だな~」と笑って言っていたが、そのタイミングで父が言い放った――――。
「こういう訳だから、お前は大学行くの諦めてな」
シレっと、冗談なのか本気なのか――――この人はいつも、無責任に言ってくる。
先生方が一瞬固まってしまい、苦笑いでその場を誤魔化そうとしたが、私は冷たく答えた。
「言われなくても、分かっているよ」
――――分かっているよ。言われなくても最初から、大学なんて行くつもりなんてないし!
心の中でそう叫び、自分の部屋に戻ると、ベッドに顔を埋めた。
喉の奥が締め付けられたみたいに、キュゥっと痛い――――。
自分の道は、自分で決める。我家に大学に行かせるだけのお金がないことも分かっている。でもそれは誰のせい?
あんたが、好き勝手なことをしているからじゃないか――――。
泣きたい気持ちを堪えても、煮え滾る怒りは抑えられない。
こんな家族、大っ嫌いだった――――。
お調子者の父も、姉ばかり贔屓する母も、自分勝手な姉も――――皆、居なくなってしまえばいいと本気で思った。
何度も、そう願った。
だけど願うだけ、無駄なのだ――――。
私の心は、氷のように凍てついていった――――。
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