永遠の別れと流氷(仮)

藤見暁良

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二章

いつか死ぬ

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 他の学校はどうなのか知らないけど、内の中学はやたら家族参加系の行事が多かった。
 料理を作ったり、スポーツ大会をしたりと、運動会、文化祭以外にも何かしら行われた。
 ある年、ソフトボール大会が開催された。ソフトボールの審判免許を持っていた父は、張り切って参加した。私は姉程熱心ではなかったが、小学校の時少しは経験したのもあって、他の女子よりは出来る方だった。

 参加した父兄と全校生徒でチームが組まれて、トーナメント式で試合が行われる。
 全校生徒の人数も少ない、田舎の学校だ。部活の種類も少ない。男子は野球部とバスケ部、女子は軟球テニス部とバレーボール部しかなかった。
 ソフトボールなだけあって、野球部の男子はやはり活躍していた。バスケ部でも運動神経がいい男子は、動きが良い。
 女子はおまけみたいなものだ。外野に配置て、邪魔しないように動くぐらいだ。
 そんな中で、無理に出来るアピール必要はない――――。
 出来ることなら早々に負けて、観戦している方が楽だと思った。暇さえあれば、絵の構想を練っていた私には、その方が好都合である。

 田舎の校庭なだけに、無駄に広い。対角線で、二試合同時に行われた。
 時たま父を横目に見ると、試合中でも観戦中でも、とにかく煩くて目立つ。自分の親だと思うと、気が重くて仕方なかった。
 父が悪目立ちする分、私はひたすら大人しくしていた。

 試合も進み、いよいよ決勝戦になる。
 しかし――――私がいるチームは勝ち進んでしまい、決勝戦までいってしまった。それも対戦チームは、父のいる所だ。
 更に、そのタイミングで私がピッチャーにされてしまったのだ。今までピッチャーをやっていた生徒が怪我をしてしまった。
 本当にやりたくなくて嫌がっても、他にやれる人がいなくて、このままだと時間が押してしまう。
仕方なく渋々引き受けたが、父は敵チームのピッチャーが自分の娘なことに、益々テンションを上げてしまった。

 試合は結局、父の居るチームの方が、勝った――――。

 早く終わらせたかったが、年齢的にも勝ち負けには過敏にもなる。正直、相手チームより、父に勝ちたかった――――。
 しばらく父の自慢話が続くかと思うと、考えるだけで気が重い。実際夕飯時の父は、超ご機嫌で試合の話を繰り返していた。母も姉も苦笑いで聞いている。
 父はお酒も入っていたせいか、同じ内容を何度も繰り返し、自慢げに話す。
 中学生の混じった、たかが学校の行事なのに、さも自分の功績のように話しているコイツに腹が立ってくる。堪忍袋の緒が切れた私は、父の話を否定していった――――。
「そんなの、たまたまじゃん」
「所詮、中学の行事じゃん」
「運が良かっただけだよ」
 少し冷静になって欲しかった。ただ、それだけだったのに――――父は、逆切れをした。

 元々、単純なのもあってか感情的になりやすい。都合が悪くなると直ぐに怒鳴って、威圧的になる。
 私の言葉に小さなプライドが傷ついたのか、父は湯呑を私に投げつけてきた。湯呑は当たらなかったが、咄嗟に両手で身を庇った私の髪を掴みかかってくる。
 一気に修羅場と化した食卓が、騒然となった。
「止めてよ!」
 これ以上被害が出ないようにか、私を庇ってくれようとしたのか分からないが、母が声を荒げて止めに入ろうとしてくれた。
 その声に父が少し怯んだので、隙を見てダッシュでお茶の間を飛び出し、一気に二階に駆け上がる。運動神経がある父でも、俊敏さは私の方が上だった。
「待てっ!」
 隣近所に聞こえるくらいの怒号が聞こえる。
 私は父が追いかけてきても捕まらないように、ベランダに出て柵を飛び越えて屋根に上った。自営業用のプレハブが母屋に繋がっていたので、そこの屋根まで駆け上がる。
 お腹も出ていて体重が重い父が、軽々と柵を越えられないだろうと思ったからだ。
 暫く屋根の上で様子を伺っていたが、父が追いかけてくる様子はなかった。
 多分、母に窘められているのだろう。


 屋根に腰を下ろして、夜空を見上げる――――。山奥の空は澄んでいて、星も良く見えた。
 キラキラ光る星は、私を癒してくれるものの一つだ。
 今日も凄く綺麗な星空なのに、胸の奥はズキズキと痛む――――。綺麗なものに触れたところで、現実が変わる訳ではない。
「大丈夫、大丈夫……いつものことだから……」
 自分を守れるのは、自分だけだ――――。だから死ぬもの狂いで、自分が頑張れば良いんだ――――。

 『人間、いつかは死ぬんだから』――――。

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