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第2章 拠点開発

第63話 そこに広がるのは

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「前にヨタドリたちがいた北側を探索してくるからゾンとルアたちを頼むな。」

「シャー!」

 ゾンとルアたちを初めて狩りに連れて行った日から狩りに行く時はほとんど一緒に連れて行っているが、今日みたいに探索などで2人を拠点に置いていく時はこうして大蜘蛛に2人を頼んでいる。大蜘蛛が戦っている姿を実際に見たことは1度も無いが、大蜘蛛が狩ってくる獲物からその強さを推測することは難しくない。それになにより大蜘蛛が1番優れているのは戦闘力よりも探知能力だ。ここら辺周囲一帯に張り巡らされた大蜘蛛の糸がある限り、大蜘蛛の探知を掻い潜って拠点に入る事はほぼ不可能と言っていい。もし掻い潜って来れるとしたら今から探索に行く目的でもある川から来る魔物くらいだろうな。

「ゾンとルア、僕たちが留守の間は任せたよ。」

「任せてー!もし敵が来ても僕がやっつけちゃうよー!」

「うん。ウカノたちがいない間は私たちが拠点を守る。」

「はははっ、あんまり危ない事はしないで欲しいんだけどね。」

 僕としてはそんな意味で言ったわけじゃないのだが、2人はなぜかこの拠点を守る気満々だ。それだけこの拠点の居心地がいいという事だろうか。

「よし、それじゃあテンそろそろ行こうか。」

「キュイ!」

 まずは転移で霧の領域外へ行くので、テンが僕の方へと乗ってきた。すでに転移する時のいつもの定位置となったな。

「クァクァ!」

 よしさあ行こう、というところでヨタドリがこちらへ近づいてきて何かを訴えてきた。

「どうした?今日は仮に行くわけではないぞ?森の北側を探索に行くだけだ。」

「クァ!クァクァクァァァ」

 うーん、ヨタドリの言葉はそこまで理解できないのだが、こちらと森の北側を交互に見比べている。それを見るに僕たちが北側の探索に行くのは分かっていそうではある。

「クァクァクァ!」

 そして川まで行き、泳ぐ体勢を取りまるで乗れとでもいうかのようにこちらを見て1鳴きする。

 さすがに断ろうか、と思い当たってふと気づく。そういえばこいつらは北側の川のそばに居座っていたのだった。そこにずっと居着いていたというような感じではなかった。となると川を渡ってあそこまで来たのなら、川の最終地点とまではいかなくてもある程度の付近までは知っているのではなかろうか。ならば一緒に行った方がいいか。

「よし、なら乗せてもらうよ。」

「キュイ!」

 テンと共にヨタドリの上に乗せてもらう。群れの中でも1番大きい個体だが僕が乗っても沈む事なく十分泳げるらしい。全く重さを感じさせぬ速さでスイスイと進んであっという間に霧の領域を抜けてしまった。このまま何もなければかなりの距離を進む事ができるな。

 僕とテンのやる事といえば周囲の警戒位だが、どういうわけか魔物の気配が少ない。水が無ければ生き物は生きていけない。だから普通水場の付近は生き物の気配が多くするのだが、もしかしたらこことは別に水場があってそこに多くいるとかか?

 んっ、いきなり鼻につく匂いが漂って来た。たしか前回北側を探索した時もこんな匂いがして来たな。

「キュウ…」

 この臭いとも良いとも言えない独特な匂いにテンも戸惑っているので撫でて落ち着かせてやる。するとテンも僕の手に頭を擦り付けてくる。

 ヨタドリはこの匂いに構わずドンドンと進んでいく。まあそもそもヨタドリたちはこの匂いが漂っている所に居座っていたから当たり前と言えば当たり前か。

「ヨタドリ、疲れていないか?」

「クァー!」

 まだまだ元気そうだ。凄いな。もう1時間以上泳いでいると思うのだが。僕たちを乗せながらの長時間移動を出来るのはさすがに魔物といったところか。

 その後も1度の休憩も取らずに進んでいく。すでに森の浅層だろうというところで変化が現れた。川の幅が広くなったのだ。さらにドンドン進むにつれて更に広くなっていく。そして進むにつれて鼻につく匂いも強くなっていく。

 間違いなくこの先に何かがある、そう確信する。何があるか、何が起こるか分からないというのに心の内の大半がワクワクに染まってしまっている。昔はどんな事にも慎重になっていた気がするのだが悪い癖がついてしったか?

 いや、あの時は僕もテンも弱かった。今はそれだけ強くなったという事だろうか?

 そんな昔の事を回想していると森が開けてきた。森の先まで続くこの水が導く先。いったいそこにあるものは…
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