思い付き短編集

神谷 絵馬

文字の大きさ
66 / 114
最近更新。

竜の愛し子の番。2

しおりを挟む
[あー!邪魔すんなよー。]

黄色っぽいけど白?のシャラシャラとした鱗の、手足が細くて翼の無い蛇に近い形態の竜さんは、黄緑の竜さんと桃色の竜さんを囲むようにフヨフヨと浮いてます。
何になのかは分からないけど、フシュフシュと鼻息も荒いし...どうやら怒っているみたい?
それにしても、翼が無いのにどうやって浮いてるんだろ?不思議ー。

[王族って面倒臭いよなー...。]

黄緑の竜さんに抱かれる私の頬に、生暖かい鼻先を擦り付けてから...力尽きたようにぐでーんっと怠惰に横に倒れたのは、情熱的に燃え盛る焔のように真っ赤なギラギラとした鱗の、これまた筋骨粒々で逞しい竜さんでした。
とある場所を見て、フンッ!と鼻で笑ったかと思えば、鼻先にこれでもかとシワを寄せて面倒臭そうに、地面にガリガリ爪を立ててる。
確か...あっちには王族の方々がいるって、父様に聞いた気がする?...多分。

[王女様だかなんだか知らんが、愛し子を含めた竜騎士達の番探しの場なのにな?
愛し子をこちらに寄越さずに、どの竜の番と認定されてもいない自分の側に置き続ける意味が分からん。]

私のほっぺたを爪の甲の円い部分で撫でてから、王族のいるらしい場所を褪めた目でボンヤリと見つめて溜め息を吐くのは、中心部が濃い紫になってて段々と薄い紫になっていく不思議な鱗の、お顔がほっそりとした中肉中背な竜さん。
竜さん達って、愛し子って人が大好きなんだね。

[いーとーしーごー!!]

[早く来ないと、皆でこの子とお空のお散歩しちゃうぞー!!]

いつの間にか紫の竜さんに抱っこされてて、黄緑の竜さんと桃色の竜さんが愛し子って人がいる方向に向かって叫んでます。
竜さんの声は、実際に聞くとグギャアォウヴーー!!って感じ?
なんとも説明しにくい声です。

[あら、ロン、貴方は大人しくしてなさいな?]

「いやいや、ちょっと待ちなさいって!」

この、優しそうな垂れ目でサラサラの茶髪の人がロンって呼ばれた人かな?
オレンジの竜さんと一緒で、筋骨粒々だね。
ロンさんは、竜さん達を強めにポフポフと撫でながら、私を救出?してくれました。
あの、ありがとうございます。
抱っこされることにより、急に視線が高くなってて少し怖かったの。

[もう、何よ?]

「肝心のご令嬢が、よく分からなくてキョトンとしてるじゃないか。」

「そうそう、君達威圧感たっぷりなんだから、ちょっと離れようか?」

[え、やだ!]

「やだ!じゃない。少し離れろ。」

あ、もう2人人がいたの?
気付かなかった...。

「驚かせてしまいまして、すみません。
竜達は皆、愛し子のことが好きすぎて、今暴走気味なんです。」

「ちょっとこっちに来てくれるか?」

「ととしゃまは?」

うん、竜さん達が暴走気味なのは、この状況がなんだかよくは分からないけど分かるよ。
竜さん達、私の周りをみっちりと囲んでしきりにお顔を私の頭にスリスリしてくるもんね。
可愛い可愛いって言いながら抱っこもしてくれるの。
高くてちょっと怖かったけど...。

「今、お父さんを呼んできてもらえるように頼んだから大丈夫だ。」

「はい!ありがとうございましゅ!」

良かったー。とと様来るのね。

[愛し子まだ捕まってるー。]

[あの王女、自分が俺達に選ばれなかったこと忘れてんじゃね?]

[馬っ鹿でーい!]

[阿っ呆でーい!]

[早く来ないかしらねぇ?
あの子の番は、ここにいるのよ?可愛いわぁ!]

[ぼくも!おねぇたん、だっこー!]

私をロンさんに奪われたと剥れた竜さん達が、凄く嫌いらしい王女様に矛先を向けたみたいで、かなり馬鹿にしてる...。
そして、日の光を浴びてキラキラ光る薄い紫の鱗の、私でも抱っこ出来そうな大きさの竜さん。
というか、子竜さん?

「えっと、しゃわってもだいじょうぶなの?」

[んぅ?だっこちてくれないにょ?]

「よろこんで!
だっこしゃしぇてくだしゃい!」

両手をこっちに向けて、ウルウルのお目々で首をコテンってされました。
可愛い!スベスベー!
鱗って、幼い頃はこんなにも柔らかいのね。
私の腕の中で、甘えたようにキュルキュウと鳴く子竜さん。
私の頬っぺたにスリスリしながら尻尾が元気にユラユラとしてて、懐いてくれたみたいで凄く可愛い。





*
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

この離婚は契約違反です【一話完結】

鏑木 うりこ
恋愛
突然離婚を言い渡されたディーネは静かに消えるのでした。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

悪役令嬢の父は売られた喧嘩は徹底的に買うことにした

まるまる⭐️
ファンタジー
【第5回ファンタジーカップにおきまして痛快大逆転賞を頂戴いたしました。応援頂き、本当にありがとうございました】「アルテミス! 其方の様な性根の腐った女はこの私に相応しくない!! よって其方との婚約は、今、この場を持って破棄する!!」 王立学園の卒業生達を祝うための祝賀パーティー。娘の晴れ姿を1目見ようと久しぶりに王都に赴いたワシは、公衆の面前で王太子に婚約破棄される愛する娘の姿を見て愕然とした。 大事な娘を守ろうと飛び出したワシは、王太子と対峙するうちに、この婚約破棄の裏に隠れた黒幕の存在に気が付く。 おのれ。ワシの可愛いアルテミスちゃんの今までの血の滲む様な努力を台無しにしおって……。 ワシの怒りに火がついた。 ところが反撃しようとその黒幕を探るうち、その奥には陰謀と更なる黒幕の存在が……。 乗り掛かった船。ここでやめては男が廃る。売られた喧嘩は徹底的に買おうではないか!! ※※ ファンタジーカップ、折角のお祭りです。遅ればせながら参加してみます。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

処理中です...