1 / 3
001
しおりを挟む
「わかっているんだろう? 君だってもう、『聖女』なんてものが国民に必要とされてないことは」
ゲスな笑みを浮かべて私に迫るのは、あろうことかグロイス王国の次期国王候補筆頭、ロイド王太子殿下だ。
普段外向きに見せる優雅で余裕のある表情から一転し、見にくく歪んだ気持ち悪い笑みを浮かべてこちらににじり寄ってくる。
「それ以上お近づきにならないでくださいませ。御存知の通り聖女は常に魔法障壁を展開しており、害意を持って近づくものには容赦しません」
「ほう? 僕のこの気持ちを害意というのかい? 君は。それにその魔法障壁を張っているのは君自身だ。危害が加われば君が罪に問われる。そうだろう?」
「くっ……」
婚約者シャーロット様が不憫でならない。
なんでこんなクズが次期国王なのかと頭を抱えた。
「歴代の聖女はその力とひきかえに自由を謳歌したそうだが、君はもう国民の支持も得られないのだ。僕の寵愛を受けておけば、色々と融通が聞くんじゃないかな? その大きな胸はそのためにあるんだろう?」
こいつ……。
どこまでも腐った男だった。
確かにロイドの言う通り、今私の、聖女の立場は非常に危ういものがある。
代々この国を『祈り』によって守り続けてきたのが歴代の聖女たちだ。
私もその力があることを教会に認められ、現在聖女として毎日『祈り』を捧げこのグロイス王国の平和を願ってきた。
その代わり、聖女は貴族を超える待遇で何不自由ない生活を送れる。
毎日数時間『祈り』を行えばあとは自由。
貴族たちにとっても聖女は有る種特別な存在であり、教会も聖女を囲い込んでいるがコントロールできる力関係にない。
つまり聖女は『祈り』を行うだけで一生遊んでいける……というのが先代聖女様までの状況だった、らしい。
「ほれほれ。僕の手腕によって王国騎士団の拡充、冒険者ギルドとの連携、周辺諸国との同盟……今や聖女の『祈り』なんて誰も必要としちゃいない。君はこのままじゃあ国にいられなくなるんだ。僕の言うことを聞いておきなよ。なに、僕は別に女性を痛めつける趣味はないさ。普通のことしか求めない。僕を満足させてくれればそれで構わないのだからさ」
厄介なことにこの王子は外交面で非常に優秀な手腕を発揮していた。
英雄色を好む……というのだろうか。好まれた方は溜まったもんじゃないというのに……。
ゲスな笑みを浮かべて私に迫るのは、あろうことかグロイス王国の次期国王候補筆頭、ロイド王太子殿下だ。
普段外向きに見せる優雅で余裕のある表情から一転し、見にくく歪んだ気持ち悪い笑みを浮かべてこちらににじり寄ってくる。
「それ以上お近づきにならないでくださいませ。御存知の通り聖女は常に魔法障壁を展開しており、害意を持って近づくものには容赦しません」
「ほう? 僕のこの気持ちを害意というのかい? 君は。それにその魔法障壁を張っているのは君自身だ。危害が加われば君が罪に問われる。そうだろう?」
「くっ……」
婚約者シャーロット様が不憫でならない。
なんでこんなクズが次期国王なのかと頭を抱えた。
「歴代の聖女はその力とひきかえに自由を謳歌したそうだが、君はもう国民の支持も得られないのだ。僕の寵愛を受けておけば、色々と融通が聞くんじゃないかな? その大きな胸はそのためにあるんだろう?」
こいつ……。
どこまでも腐った男だった。
確かにロイドの言う通り、今私の、聖女の立場は非常に危ういものがある。
代々この国を『祈り』によって守り続けてきたのが歴代の聖女たちだ。
私もその力があることを教会に認められ、現在聖女として毎日『祈り』を捧げこのグロイス王国の平和を願ってきた。
その代わり、聖女は貴族を超える待遇で何不自由ない生活を送れる。
毎日数時間『祈り』を行えばあとは自由。
貴族たちにとっても聖女は有る種特別な存在であり、教会も聖女を囲い込んでいるがコントロールできる力関係にない。
つまり聖女は『祈り』を行うだけで一生遊んでいける……というのが先代聖女様までの状況だった、らしい。
「ほれほれ。僕の手腕によって王国騎士団の拡充、冒険者ギルドとの連携、周辺諸国との同盟……今や聖女の『祈り』なんて誰も必要としちゃいない。君はこのままじゃあ国にいられなくなるんだ。僕の言うことを聞いておきなよ。なに、僕は別に女性を痛めつける趣味はないさ。普通のことしか求めない。僕を満足させてくれればそれで構わないのだからさ」
厄介なことにこの王子は外交面で非常に優秀な手腕を発揮していた。
英雄色を好む……というのだろうか。好まれた方は溜まったもんじゃないというのに……。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
結婚するので姉様は出ていってもらえますか?
基本二度寝
恋愛
聖女の誕生に国全体が沸き立った。
気を良くした国王は貴族に前祝いと様々な物を与えた。
そして底辺貴族の我が男爵家にも贈り物を下さった。
家族で仲良く住むようにと賜ったのは古い神殿を改装した石造りの屋敷は小さな城のようでもあった。
そして妹の婚約まで決まった。
特別仲が悪いと思っていなかった妹から向けられた言葉は。
※番外編追加するかもしれません。しないかもしれません。
※えろが追加される場合はr−18に変更します。
妹が「この世界って乙女ゲーじゃん!」とかわけのわからないことを言い出した
無色
恋愛
「この世界って乙女ゲーじゃん!」と言い出した、転生者を名乗る妹フェノンは、ゲーム知識を駆使してハーレムを作ろうとするが……彼女が狙った王子アクシオは、姉メイティアの婚約者だった。
静かな姉の中に眠る“狂気”に気付いたとき、フェノンは……
傷物の大聖女は盲目の皇子に見染められ祖国を捨てる~失ったことで滅びに瀕する祖国。今更求められても遅すぎです~
たらふくごん
恋愛
聖女の力に目覚めたフィアリーナ。
彼女には人に言えない過去があった。
淑女としてのデビューを祝うデビュタントの日、そこはまさに断罪の場へと様相を変えてしまう。
実父がいきなり暴露するフィアリーナの過去。
彼女いきなり不幸のどん底へと落とされる。
やがて絶望し命を自ら断つ彼女。
しかし運命の出会いにより彼女は命を取り留めた。
そして出会う盲目の皇子アレリッド。
心を通わせ二人は恋に落ちていく。
国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。
樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。
ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。
国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。
「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
本物の聖女なら本気出してみろと言われたので本気出したら国が滅びました(笑
リオール
恋愛
タイトルが完全なネタバレ(苦笑
勢いで書きました。
何でも許せるかた向け。
ギャグテイストで始まりシリアスに終わります。
恋愛の甘さは皆無です。
全7話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる