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7,元パーティメンバーはやらかします。本当によろしいのでしょうか。

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皆様、お待たせ致しました!
…え?待ってない?…(´・_・` )
やっと投稿出来ました!

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第2王子の執事と名乗るこの男、ミラバに連れられて、歩くこと数分…。


アキ達の目の前には豪邸とまではいかないけれど、そこそこ大きな屋敷があった。


だが、王族所有のものにしてはやけに小さい。


屋敷内へと進んでいく。


あたりは既に暗く、屋敷の光が外に漏れ、行く道を照らす。



不意に、前を歩くミラバの足が止まった。


「…どうした?」
「…申し訳ございません。私の主に会う前にお一つお聞きしたいことがありまして…」
「なんだ?聞きたいことがあるなら早くしろ。腹減ってるんだ。」
「…。ここ最近貴族に関して、なにかお話をご存じでしょうか?」
「貴族?」
「はい、貴族です。些細なことでも構いません。」
「どうしてだ?」
「それによって、事情が異なるからでございます。」
「…事情?」
「申し訳ございません。それ以上はまだお教えできません。」
「『まだ』ってことは返答次第で教えるかどうか決まるってことだな?」
「……」
「ふん、まぁいい。ここ最近の貴族の噂話でいいんだな?残念ながら、俺は噂に疎くてな。アリスやユキはどうだ?」
「そうね…あ、私聞いたことあるかも。あれでしょ?とある令嬢が婚約破棄されたやつ。アキにアイツの話をしようと戻ったときの帰り道に話してた人がいたよ。」
「婚約破棄?」
「うん。」
「…アリス様、詳しい事情もご存じでしょうか?」
「ううん、ミラバさん。私はその部分しか知らないよ。」
「おい、もういいだろ?話してくれんのか?」
「いえ。ユキ様にもお聞きしとかなければなりませんので。」
「ちっ…そうかよ。ユキ、どうだ?」
「そう…ですね。(私は多分ミラバさんの主の本当の正体、聞きたいこと、そしてアリスさんが言っていたとある令嬢が婚約破棄されたその真実と結末…知っている気がします。私の…ナミール男爵家の養子である、ミュラが、私の妹がその当事者、言わば黒幕なのですから…。)」
「どうした、ユキ?」
「…あ、少し考え事をしてましたわ。貴族の噂でしたわね。(ここは1度様子を見るべきだわ。下手に情報を流したらあとが怖いですしね。)…残念ながら私もそのような噂は知りませんわ。」

ユキは内心怖々とする。が、決してそれを外に出そうとはしなかった。これでも、貴族の令嬢だ。ポーカーフェイスはお手の物。

だが、それさえも見破っているかのような目でミラバはこちらを見ている。

「…」
「…」
「ほら、ユキもこう言ってる。もういいだろ?で?俺達はどうなんだ?教えてくれんのか?」

思わぬところからの助け舟。
ミラバは、アキを見やる。視線が外れた。

「…ええ。主がお待ちなので、行きましょうか。」


助かった。追求されずに済んだ。


「ふんっ!初めからそう言えばいいんだ!」
「ごはんっ!ごはん!私お腹減ったぁー。」


この2人は何も考えてないだろう。


だから、間違いなく、巻き込まれる。


もしかすると、既にもう巻き込まれているのかもしれない。



貴族の、



こいつらの、



思惑に。



もちろん、ユキ(私)含めて。



いざと言う時に動ける、

せめて…せめて、私だけでも助かるように。



妹の件で、崖っぷちの状況の中、ナミール男爵家をこれ以上他の貴族から貶め、蔑まれ、蹴落とされる訳にはいかないから。



お父様の代で、私の代で、終わらす訳にはいかない。





たとえ…この2人を犠牲にしてでも…






「(私がしなければなりませんわ…)」
「なんか言ったか?ユキ?」
「いいえ、何も無いですわ、アキ様。」




これにより、3人、正確には2人と1人の命運や未来は大きく変化した。





ここが『紅龍』メンバーの運命の分岐点だということは、誰にも分からなかった。





ー屋敷にて

食堂と思われる場所に案内された、『紅龍』メンバー。そこには、これでもかというくらい美味しそうな料理がずらりと並んでいた。


「「美味そうだな。(おいしそう!)」」
「(コース料理ではない??)」

アキとアリスは目の前にある美味しそうな料理に目が釘付けなのに対し、ユキだけは冷静であった。

そんなユキの疑問に思ったのか、
「本日は、コース料理ではなくバイキング形式としております。お好きなようにお食べくださいませ。」
「これもうとっていいの!?」
「はい、どうぞ。」
「やった!」

アリスとアキは颯爽と料理の方に向かっていく。ユキも後を追う。

と、その時、ミラバがユキを呼び止めた。

「ユキ様」
「…何か?(…やっぱり呼び止められたわね)」
「…貴女はなにか聞きたいことが…気づいていらっしゃることがあるのでは?(こいつ絶対知ってるだろ。)」
「あら、言っても宜しくて?(このみんなが聞いている場でいいの?言っちゃうよ?嘘つけなくなるよ?私たちのメンバーに。)」
「…(ダメに決まってるだろ。)」
「…貴方の主人はどこにいらっしゃるの?…その主人は私達に頼み事があるのではなくて?」
「…(言いやがった、こいつ。声は抑えてくれたみたいだが…)他の方とは違い、貴女は聡明なようだ。」
「それは褒めていらっしゃるのかしら?(もっと褒めてくれていいのよ?)」
「ええ、もちろん。(はっ、この女狐が。)…そうですね。詳しくはお教えできません。食事が、お済み次第主とお会いしていただきます。(貴女とは個人的にお話する必要があるみたいだな。)」
「…そう。(後で呼び出して。事情次第で力になるわ。)もうこれでよろしいかしら?」
「ええ。ごゆるりとお楽しみくださいませ。(呼ぶまで待ってろ。)」


ユキはミラバと話すのをやめ、料理の方に向かう。ミラバは、その後ろ姿を見ていた。

「…(絶対全部を知ってるだろ。あの仕草、表情…貴族だ。いや、なんで冒険者なんだ??まぁ、いい。その上で協力してくれんのか、どうか…。あいつは厳重注意しとかないとな。)」


一方、ユキの方

「(あの男、毒舌すぎない?詳しくは知られてないだろうけど、今のやり取りの中では大体のことは知られたはずだわ。立ち振る舞いに気をつけないと。…巻き込まれてなるものですか。)」

これが次第に恋に発展していき、二人とも両想いになり、婚約、結婚することになるとはこの時は誰も分からなかったであろう。





食事がすみ、落ち着いた頃、『紅龍』はとある部屋に呼び出された。

「我が屋敷によく来てくれた!『紅龍』!お前達の噂は知ってるぞ!そんなヤツらが俺の仲間に加わるとは!ついに俺にも…俺の元にも運が回ってきたのだな!これで…これで、俺は…」

部屋に入るなり、そう叫び出したのは、金髪に緑眼のイケメンな…だけどなんか残念な人だった。

「…エドワード様、まだ『紅龍』様方は説明さえもされていませんので仲間ではないですよ。あと、自己紹介を。」
「うるさいっ!ミラバ!そんなことはわかっている!『紅龍』は、俺の仲間になるに決まってる!」
「…はぁ。(なんで俺こっちについたんだろ。あ、連れてこられたんだっけ?適当なとこで逃げ出すか…巻き込まれんのやだし。まぁ、俺は現国王の味方だと、こいつ以外には知られてるし…いいか。)」

自称執事のミラバがそんなことを考えているとは露知らず、エドワードと呼ばれた男は自己紹介をし始める。

「よく聞け!俺の名は、エドワード=クラウン!この国の王弟殿下様だ!そして、ここの主だな!」
「「……(それ自分で言う?)」」
「なんだ?びっくりして声も出せないのか??」
「…第2王子殿下ではなかったのですか?」
「ユキ様、及び『紅龍』の皆様に訂正させていただきます。この方は私の主、エドワード=クラウン、(元)王弟殿下でいらっしゃいます。」
「…(元…なのね?)」
「…(はい。元、ですよ)」
「なんの話だ、ミラバ。それよりお前らも名を、」
「…どうかされましたか、王弟殿下様?」

急に声が止まったのを不思議に思って、エドワードを見る。エドワードは1箇所に視点が、固定されていた。

そのエドワードの視線の先は…



ユキがいた。



そう。ユキはこれでも男爵令嬢。おまけに美人で見事なスタイルの持ち主。


そして、エドワードが口を開く。

「…ユキ、と聞いた。俺にもそう呼ばせてくれないか?」


いや、こいつ誰だよ。と思うくらいの変わり身の速さ。

「…婚約者でもありませんわ。貴方には、既に想い人がいらっしゃるのでは?」


ユキは見事に拒絶。ユキは、義妹と一緒にされたくない。その一心だった。

「連れない事を言わないでくれ。俺と婚約してくれ。君は王族になれるんだ。」


熱心にエドワードはユキを口説いている。先日、自分な、婚約したばっかりの令嬢の姉とはしらずに。


「…それで、話とはなんでしょう?『紅龍』に話があるのですよね?ミラバ様?(いや、ほんと無理。助けて。)」


話に付き合うのもめんどくさくなり、強引に話を変えて、ミラバに振る。

「はい。(いや、俺に振るなよ。)…エドワード様、私からお話しても?」
「ああ、勝手にしろ。(ユキ…愛人に置いとくのも手か…。)」


ユキは寒気を感じた。


ミラバのは話し始める。



エドワードと元々話し合って決めたエピソードを。



真実とは程遠い、でっち上げの話を…。





「…つまり、そちらに座っていらっしゃる、エドワード元王弟殿下は、ありもしない罪を着せられて、廃嫡となってしまった。殿下を廃嫡に追いやったのは、現国王と王妃。そして、第1王子と国の重鎮達だと。そして、私たちには、この腐った国を立て直すために、手を貸してほしい。…であってる?…あ、あってますか?」
「そうだ!…アリス、君には普通に話して欲しい。俺のことはエドと呼べ。」
「…では、お言葉に甘えて。」
「エドワード様。手を貸してほしいとは、具体的にどのような?」
「アキと言ったな?勝手に口を開くな。気安く呼ぶんじゃない。この平民が!」
「…はい。申し訳ございません。」
「エド様、私も平民…」
「アリス、君はいいんだ。あ、ユキ…嬢もいいんだぞ?俺が許可する。」
「(理不尽…)」
「あ、ありがとうございます!」
「…」
「で、具体的にだったな?…簡単に言えば暗殺だ。王族のな。なに、俺にとっては身内だ。あいつは…兄上はあくどい事をやってる(に違いない)!」
「…(確証ねぇのかよ!)」
「エド様素敵です!」
「…(真実知ってる分虫唾が走るわ。)」
「…(おう、ユキ嬢。俺もだ。)」
「だから、俺のために!いや、国のために力を貸してくれないか??」
「アキ様!手伝おうよ!」
「…いや、でも…」
「…おい、平民、『紅龍』メンバーは、成功した暁には英雄に祭り上げるだろう。一生働かなくていい。女、食べ物好きなだけ…どうだ?」
「いい…ですね…いいですね!」
「そうだろう!(ちょろいな。)」
「…おい、ユキはどうだ?いいか?(こんなの滅多にないチャンスだ!一躍有名な英雄!素晴らしいじゃないか!これこそ俺が待ち望んだ未来だ!)」
「…考えさせていただけますか?」
「…何故だ?ユキ?こんなのまたとないチャンスだぞ!?」
「…お願いします、アキ様。エドワード、いえ、エド様。(ここではこう読んだ方が意見が通るかもしれない。)考えさせて貰えますか?」
「…ふ、ふむ!ユキ嬢がここまで言うのなら仕方ないな!二人は参加するんだな?…だが、3人で『紅龍』なのだろう?もし、ユキ嬢が参加しない場合のことを考えたとしたら…」
「(せっかくのチャンスなのに!なんでユキ賛成しないのよ!あ、いいこと思いついた!)…え、じゃあユキしばらく休暇取りなよ!それだったら、大丈夫じゃない?エド様、アキ様?」
「いい考えだな!ユキ、それでいいか?(うん。と言ってくれ!じゃないと、せっかくのチャンスがなくなってしまう!そもそも、なんで、ユキは国のために戦わないんだ?英雄だぞ?貴族になれるかもしれないんだぞ?)」
「ユキ嬢、2人がこう言っていることだし、もし気が変わったら言ってくれ。いつでも迎え入れよう。(2人しか、女は1人しか釣れなかったか。まぁ、『紅龍』Sランクパーティなんだから、1人くらい抜けても、Aランクくらいに落ちだけだろう。大丈夫だな。)」



こうして、アキとアリスは反乱軍へと加わった。



自分たちが騙されていることも、



この先、破滅が待ち受けてるとは知らずに。




そして、エドワードも勘違いをしていた。

ユキが抜けてSランクがAランクとなったと思っていたが、

実際は、
シエンというSSSランクの冒険者が抜けて、既に『紅龍』はCランクになっていることに気づかずに…。




こうして、狂ったまま物語は進んでいく。





ー〇〇邸にて

「…よく来たね、ユキ嬢、いや、ナミール男爵令嬢。」
「あら、よく分かったわね。この短時間で。凄いわ。」
「ふふ…。まさか君が、あのミュラ=ナミールの義姉、ユキ=ナミール男爵令嬢だとは…。義妹の後始末大変だった?」
「ええ。…全て知っていて、それ聞いているでしょう?タチが悪いわ。…ミラバ=フランクレナ子爵子息様?」
「おっと、俺の事も知られてたか。君こそよくこの短時間で分かったね。」
「貴族の名前を覚えるのは常識でしてよ?」
「冗談だろ?もし本当なら、その言葉、上層部のお偉いさん方に見習わせたいよ。」
「あら、バレました?…あの元王弟殿下側についている人間で、こちらの陣営の者は間違って処罰されないよう覚えていました。そして、貴方のことも。」
「良かった。俺は現王国側の人間だって、説明する手間が省けた。間違って処罰されたくないしな。」
「ふふふ…。それで、どうなさるの?」
「『紅龍』含めた、反乱軍かい?」
「ええ。」
「『紅龍』だけが問題だと思う。あとは、なんてことない。」
「あら、それなら大丈夫なはずよ。だって彼らはSランクではなく、Cランクですもの。」
「は?どういう意味?」
「ほんの数日前、追放さた方がいらっしゃったの。私もあの時はどうかしていたわ。その方は、唯一のSSSランク『幻光』シエン。貴方も聞いたことがあるのではなくて?」
「え、あの『幻光』!?まじかよ…。終わったな。よかったぁー、反乱軍側つかなくて!」
「ええ。誘いに乗らなくてよかったわ。」
「ふふふ…」
「「あはは…」」

2人は顔を見合わせ、微笑み合う。お互い、心が打ち解けあい、いい感じの雰囲気を醸し出している。


「…ねぇ、君の事ユキって呼んでもいいかい?」
「…ゎ」
「…?」
「いいわよ…私も…私も貴方のことミラバと呼びたいわ。」
「ミラと呼んでくれ。」
「!?…ええ!」
「ユキ?」
「なぁに、ミラ?」
「呼んだだけだよ。」
「あら、そう?…私、あなたといたら楽しいわ。」
「…俺もだよ?」
「ふふふっ!」
「あははっ!」




静かで、楽しげな笑い声が、木霊する。


夜は更けてきたばかりだ。






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
レイです。
アキとアリスは落ちる所まで落ちて行かせる予定です。

慌てて書いたので後々修正入れていきたいと思います。

次は、『8,王族を襲撃から守ります。本当によろしいのでしょうか。』ですね!
書き終わり次第、投稿していきたいと思います!不定期ですみません…。
引き続き宜しく御願い致します。

修正入れました(2019.7.6)
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