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第六章:共栄連合構想──繁栄は交差する
第十八節:帝国皇女の誘い
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波音が、静かに耳を撫でる。
港路の先──今では使われていない水車小屋の前に、加賀谷・零は足を止めた。
軋む扉を押し開けると、中には思いのほか丁寧に整えられた空間が広がっていた。紅い燭台、黒革の椅子、中央には一輪の花が差された水差し。かつて粉挽き場だった面影は消え失せ、まるで臨時の執務室だった。
「ようこそ、カガヤ・レイ殿。夜更かしは得意?」
軽やかな声。
セレスティア・ヴァルクライア──帝国継承権第三位、赤髪の皇女は頭の先から爪先まで黒の軍装を纏いながらも、どこか子どもじみた笑みを浮かべている。背後には帝国三大将の隻眼の蒼雷将ヴェルグラードが無言で控えていた。
加賀谷は椅子へ腰を下ろしつつ、苦笑で応じた。
「深夜の密会とは物好きですね、皇女殿下」
「密会は刺激的でしょ? ――ご所望はもっと明るい場所?」
片目をウインクめかして閉じる仕草に、かすかな無邪気さが混じる。だが灰色の瞳は底冷えの水のように冴えていた。
セレスティアはにこりと笑ってグラスを傾けた。冗談を言い合うには異様な場だが、むしろ互いにそのズレを愉しんでいるかのようだった。
「あなたみたいな人間は、ちょっと脅しでもかけないと来ないと思っていたもの。……でも、ちゃんと来てくれてちょっと驚いてる」
「礼儀には礼儀で返すようにしているだけですよ。皇女殿下とあれば、たとえ廃屋でも無視はできません」
セレスティアはグラスを置くと、足を組み直して言った。
「じゃあ礼儀ついでに、ひとつ聞いてもいい?」
「なんでしょう」
「自由都市ヴェステラの《共栄連合構想》、あれってどこまで本気なの?」
加賀谷は少しだけ目を細めた。
「そこまで掘り下げた話をしたいのなら、まずはあなたが“本気”かどうかを確認させてください。……それによって、話せる情報の“価格”も変わってきます」
「ふふ、なるほど。“相手の熱意次第で出資額を変える”――商人らしい返しね」
セレスティアはくすくすと笑い、少し身を乗り出した。
「そういうところ、好きよ。王族のクセがないもの」
セレスティアはそう言って微笑む。だがその瞳は、どこか本気だった。
「……まあ、本質は一介の商人なんでね。血筋や忠誠じゃなく、“価値があるかどうか”で動くのが性に合ってます」
加賀谷の言葉に、彼女はくすりと笑った。
「なら、単刀直入にお願いするわ。──カガヤ・レイ、私と婚姻してちょうだい」
静まり返る室内。水車の軋む音が、外からわずかに聞こえている。
加賀谷は片眉だけを上げた。
「それはつまり──皇女殿下の軍門に下り、帝国の継承戦争に加勢しろと?」
「まあ、そう解釈されても仕方ないわね」
セレスティアは肩をすくめ、軽い口調で続けた。
「……でも、純粋な乙女心からの求婚を、最初からそんなに警戒するなんて。心外よ?」
「警戒は当然です。戦場に花束を持って現れる人間ほど、信用できないものですから」
「ふふ、言うわね。……でもその通り」
セレスティアの笑みが、ほんの一瞬だけ消えた。
「帝国のやり方は、もう時代遅れよ。権威と血筋にすがりついて、古い形式をなぞるばかり。──このままいけば、属州や周辺国を巻き込んで、派手に滅ぶと思ってる」
彼女はグラスを指で転がしながら、淡々と続ける。
「だから私は、違う火を点けたいの。“帝国の未来”ではなく、“未来の帝国”を作るために。……その起点に、あなたが築いた公国や《ヴェステラ》が必要なの」
「つまり、公国を買い叩きたいと?」
「違うわ。“帝国やこの大陸を時代ごと再編する”の。私があなたを利用するように、あなたも私を利用する。互いに“共犯者”としてね」
セレスティアの声は静かだった。けれど、その一言には明確な熱が宿っていた。
「共犯者、ね……」
加賀谷は椅子の背に軽くもたれ、視線を宙に泳がせた。
「ええ。“婚姻”は形式よ。ただ、帝国に切り込むにはあらゆる切り札が要るの」
「それにしても随分な大胆さですね。まさか皇女殿下から“取引”の申し出を受けるとは思いませんでした」
「そんなに珍しいことかしら? 時代が変われば、求められる振る舞いも変わるわ」
セレスティアはグラスを置き、立ち上がって加賀谷に一歩近づく。マントの裾が床をさらりと鳴らす。
「──あなたは、王の器ではない」
唐突な断言に、加賀谷は目を細めた。
「ほう。ずいぶんはっきり言われる」
「けれど、その目は王たちよりよく国を見てる。民を、金の流れを、外交の呼吸を知ってる。……“商人”として、この国の未来を測っている」
セレスティアの声音には、確かな敬意と、そして打算が同居していた。
「私の兄たちは“帝国のため”に戦うでしょう。けれど、私は“帝国という枠”そのものを変えるつもり。壊して、組み替えて、再定義する。あなたがヴェステラでやったように」
「……評価はありがたいですが、私の目的は改革でも統治でもありません。ただ“価値を創る”ことが商売人の本分です」
「それでいいのよ。あなたには王になってほしいんじゃない。ただ、私が帝国を変えるその舞台で、“誰も持っていない視点”を貸してほしいの」
セレスティアは、少しおどけるように言った。
「……ねえ。こういう話、興奮しない?」
「興奮、ですか?」
「そうよ。誰も想像しなかった未来を、一緒に仕込んでいくの。──退屈な政治の舞台じゃなくて、もっとスリリングで、利回りのいい賭けに乗る感覚。あなたなら、きっと嫌いじゃないと思うの」
加賀谷はしばらく口を閉じたまま、セレスティアを見返した。
その目は挑発的で、どこか無邪気で、けれど冷酷な計算の奥底を隠しもしない。
「……面白いことをおっしゃる」
「でしょ?」
「けれど私は、熱に浮かされた博打は打ちません。冷静に、損得を見極めてから動く主義でして」
「当然よ。だから、“今夜は返事を求めない”って最初に言ったでしょう?」
セレスティアは含みを持って微笑んだ。
「ただ、ひとつだけ覚えておいて。──あなたがどう考えてどう動いても私は勝手にあなたやあなたの周りを容赦なく巻き込んでいくから」
その言葉には、帝国第三皇女としての“確信”があった。
そして再びヴェルグラードが影の中から姿を現し、何も言わずにセレスティアの後ろに立つ。
「今宵はここまでにしておくわ。楽しい夜をありがとう、カガヤ・レイ」
翻るマント。セレスティアは水車小屋の出口へと向かい、扉の前で立ち止まる。
「……またすぐに会うことになるわ。そのとき、あなたが“どちら側”に立っているのか──それだけが、私の興味よ」
そう言い残して、彼女は夜の港路へと消えていった。
残された加賀谷は、深く息を吐く。
「……これは、随分と危ない札を引いたな」
それは愉快とも、憂鬱ともつかぬ声だった。
港路の先──今では使われていない水車小屋の前に、加賀谷・零は足を止めた。
軋む扉を押し開けると、中には思いのほか丁寧に整えられた空間が広がっていた。紅い燭台、黒革の椅子、中央には一輪の花が差された水差し。かつて粉挽き場だった面影は消え失せ、まるで臨時の執務室だった。
「ようこそ、カガヤ・レイ殿。夜更かしは得意?」
軽やかな声。
セレスティア・ヴァルクライア──帝国継承権第三位、赤髪の皇女は頭の先から爪先まで黒の軍装を纏いながらも、どこか子どもじみた笑みを浮かべている。背後には帝国三大将の隻眼の蒼雷将ヴェルグラードが無言で控えていた。
加賀谷は椅子へ腰を下ろしつつ、苦笑で応じた。
「深夜の密会とは物好きですね、皇女殿下」
「密会は刺激的でしょ? ――ご所望はもっと明るい場所?」
片目をウインクめかして閉じる仕草に、かすかな無邪気さが混じる。だが灰色の瞳は底冷えの水のように冴えていた。
セレスティアはにこりと笑ってグラスを傾けた。冗談を言い合うには異様な場だが、むしろ互いにそのズレを愉しんでいるかのようだった。
「あなたみたいな人間は、ちょっと脅しでもかけないと来ないと思っていたもの。……でも、ちゃんと来てくれてちょっと驚いてる」
「礼儀には礼儀で返すようにしているだけですよ。皇女殿下とあれば、たとえ廃屋でも無視はできません」
セレスティアはグラスを置くと、足を組み直して言った。
「じゃあ礼儀ついでに、ひとつ聞いてもいい?」
「なんでしょう」
「自由都市ヴェステラの《共栄連合構想》、あれってどこまで本気なの?」
加賀谷は少しだけ目を細めた。
「そこまで掘り下げた話をしたいのなら、まずはあなたが“本気”かどうかを確認させてください。……それによって、話せる情報の“価格”も変わってきます」
「ふふ、なるほど。“相手の熱意次第で出資額を変える”――商人らしい返しね」
セレスティアはくすくすと笑い、少し身を乗り出した。
「そういうところ、好きよ。王族のクセがないもの」
セレスティアはそう言って微笑む。だがその瞳は、どこか本気だった。
「……まあ、本質は一介の商人なんでね。血筋や忠誠じゃなく、“価値があるかどうか”で動くのが性に合ってます」
加賀谷の言葉に、彼女はくすりと笑った。
「なら、単刀直入にお願いするわ。──カガヤ・レイ、私と婚姻してちょうだい」
静まり返る室内。水車の軋む音が、外からわずかに聞こえている。
加賀谷は片眉だけを上げた。
「それはつまり──皇女殿下の軍門に下り、帝国の継承戦争に加勢しろと?」
「まあ、そう解釈されても仕方ないわね」
セレスティアは肩をすくめ、軽い口調で続けた。
「……でも、純粋な乙女心からの求婚を、最初からそんなに警戒するなんて。心外よ?」
「警戒は当然です。戦場に花束を持って現れる人間ほど、信用できないものですから」
「ふふ、言うわね。……でもその通り」
セレスティアの笑みが、ほんの一瞬だけ消えた。
「帝国のやり方は、もう時代遅れよ。権威と血筋にすがりついて、古い形式をなぞるばかり。──このままいけば、属州や周辺国を巻き込んで、派手に滅ぶと思ってる」
彼女はグラスを指で転がしながら、淡々と続ける。
「だから私は、違う火を点けたいの。“帝国の未来”ではなく、“未来の帝国”を作るために。……その起点に、あなたが築いた公国や《ヴェステラ》が必要なの」
「つまり、公国を買い叩きたいと?」
「違うわ。“帝国やこの大陸を時代ごと再編する”の。私があなたを利用するように、あなたも私を利用する。互いに“共犯者”としてね」
セレスティアの声は静かだった。けれど、その一言には明確な熱が宿っていた。
「共犯者、ね……」
加賀谷は椅子の背に軽くもたれ、視線を宙に泳がせた。
「ええ。“婚姻”は形式よ。ただ、帝国に切り込むにはあらゆる切り札が要るの」
「それにしても随分な大胆さですね。まさか皇女殿下から“取引”の申し出を受けるとは思いませんでした」
「そんなに珍しいことかしら? 時代が変われば、求められる振る舞いも変わるわ」
セレスティアはグラスを置き、立ち上がって加賀谷に一歩近づく。マントの裾が床をさらりと鳴らす。
「──あなたは、王の器ではない」
唐突な断言に、加賀谷は目を細めた。
「ほう。ずいぶんはっきり言われる」
「けれど、その目は王たちよりよく国を見てる。民を、金の流れを、外交の呼吸を知ってる。……“商人”として、この国の未来を測っている」
セレスティアの声音には、確かな敬意と、そして打算が同居していた。
「私の兄たちは“帝国のため”に戦うでしょう。けれど、私は“帝国という枠”そのものを変えるつもり。壊して、組み替えて、再定義する。あなたがヴェステラでやったように」
「……評価はありがたいですが、私の目的は改革でも統治でもありません。ただ“価値を創る”ことが商売人の本分です」
「それでいいのよ。あなたには王になってほしいんじゃない。ただ、私が帝国を変えるその舞台で、“誰も持っていない視点”を貸してほしいの」
セレスティアは、少しおどけるように言った。
「……ねえ。こういう話、興奮しない?」
「興奮、ですか?」
「そうよ。誰も想像しなかった未来を、一緒に仕込んでいくの。──退屈な政治の舞台じゃなくて、もっとスリリングで、利回りのいい賭けに乗る感覚。あなたなら、きっと嫌いじゃないと思うの」
加賀谷はしばらく口を閉じたまま、セレスティアを見返した。
その目は挑発的で、どこか無邪気で、けれど冷酷な計算の奥底を隠しもしない。
「……面白いことをおっしゃる」
「でしょ?」
「けれど私は、熱に浮かされた博打は打ちません。冷静に、損得を見極めてから動く主義でして」
「当然よ。だから、“今夜は返事を求めない”って最初に言ったでしょう?」
セレスティアは含みを持って微笑んだ。
「ただ、ひとつだけ覚えておいて。──あなたがどう考えてどう動いても私は勝手にあなたやあなたの周りを容赦なく巻き込んでいくから」
その言葉には、帝国第三皇女としての“確信”があった。
そして再びヴェルグラードが影の中から姿を現し、何も言わずにセレスティアの後ろに立つ。
「今宵はここまでにしておくわ。楽しい夜をありがとう、カガヤ・レイ」
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