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後日談2:友人の恋路
3、小さな違和感
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ルクロイは苦笑のままでイブリナに頭を下げる。
「お久しぶりです、イブリナ様。何と言いますか、学院そのままの光景ですね。懐かしいものを感じます」
彼女はルクロイに苦笑を返した。
「本当ね。学院の外でもこんな怒鳴り声を上げるとは思わなかったわ。そして、貴方たちもね。結局、学院と同じ。一緒になった……いや、なれたのね」
そうして、イブリナはヘルミナに笑みを見せてきた。
「おめでとう、ヘルミナ。貴女が幸せそうで嬉しいわ」
その祝福の言葉に、もはや身をすくませている理由は無かった。
ヘルミナもまた笑みを浮かべる。
静かに頭を下げる。
「……はい。ありがとうございます」
「ふふふ、良い表情してるじゃないの。しかし、本当に良かったわね。ちゃんと正解を選べたみたいで」
ヘルミナは「はい?」と首をかしげることになった。
「あ、あの……正解ですか?」
「えぇ、そうよ。だって、あのバカ2人も貴女に恋い焦がれていたでしょ?」
その笑顔での問いかけに、にわかには返事は出来なかった。
(ば、バカ2人ですか?)
心当たりはついた。
イブリナの言うバカ2人となれば、浮かぶ顔は一組しか無い。
ただ、恋い焦がれてと言われると、口にするのに悩むところはかなりあったが、
「え、えー、ギネス様とカシュー様でしょうか?」
「他に誰がいるのよ? あの2人だと、貴女が苦労させられることは目に見えていたものね。けいがんよ。やるじゃない」
褒められて、しかし笑顔を返すことは出来なかった。
「あ、あの、そもそも私が選んだみたいなおこがましい話では……」
「あら、そうなの? 3人から口説かれたんじゃないの?」
「い、いえいえ、そんなまさか!」
「ふーん、だったらよくやったのはルクロイか。学院じゃ2人のなだめ役だったのに抜け駆けしたの。へぇ、貴方こそやるじゃない」
今度もお褒めの言葉だったが、夫もまたヘルミナと似たようなものだった。
ぎこちなく、作ったような笑みを返す。
「は、ははは。抜け駆け。まぁ、その、うん。色々大変でしたよ?」
「ふふふ。自業自得だし、その成果がヘルミナでしょ? 甘んじて受け入れるしかないわね」
「あー、はい。分かってます。ヘルミナと一緒になれたんですからね。その事実以上に大切なことはありませんから」
自業自得うんぬんはともあれ、くすぐったい一言だった。
ヘルミナはひかえめにだが笑みを浮かべることになるのだが、
「……良いわね」
イブリナの呟きだった。
その表情にヘルミナは内心首をかしげる。
少しばかり違和感があったのだ。
ただの称賛の表情には見えなかった。
彼女らしく無いと言うべきか。
羨望と呼べるような表情にヘルミナには思えた。
「お久しぶりです、イブリナ様。何と言いますか、学院そのままの光景ですね。懐かしいものを感じます」
彼女はルクロイに苦笑を返した。
「本当ね。学院の外でもこんな怒鳴り声を上げるとは思わなかったわ。そして、貴方たちもね。結局、学院と同じ。一緒になった……いや、なれたのね」
そうして、イブリナはヘルミナに笑みを見せてきた。
「おめでとう、ヘルミナ。貴女が幸せそうで嬉しいわ」
その祝福の言葉に、もはや身をすくませている理由は無かった。
ヘルミナもまた笑みを浮かべる。
静かに頭を下げる。
「……はい。ありがとうございます」
「ふふふ、良い表情してるじゃないの。しかし、本当に良かったわね。ちゃんと正解を選べたみたいで」
ヘルミナは「はい?」と首をかしげることになった。
「あ、あの……正解ですか?」
「えぇ、そうよ。だって、あのバカ2人も貴女に恋い焦がれていたでしょ?」
その笑顔での問いかけに、にわかには返事は出来なかった。
(ば、バカ2人ですか?)
心当たりはついた。
イブリナの言うバカ2人となれば、浮かぶ顔は一組しか無い。
ただ、恋い焦がれてと言われると、口にするのに悩むところはかなりあったが、
「え、えー、ギネス様とカシュー様でしょうか?」
「他に誰がいるのよ? あの2人だと、貴女が苦労させられることは目に見えていたものね。けいがんよ。やるじゃない」
褒められて、しかし笑顔を返すことは出来なかった。
「あ、あの、そもそも私が選んだみたいなおこがましい話では……」
「あら、そうなの? 3人から口説かれたんじゃないの?」
「い、いえいえ、そんなまさか!」
「ふーん、だったらよくやったのはルクロイか。学院じゃ2人のなだめ役だったのに抜け駆けしたの。へぇ、貴方こそやるじゃない」
今度もお褒めの言葉だったが、夫もまたヘルミナと似たようなものだった。
ぎこちなく、作ったような笑みを返す。
「は、ははは。抜け駆け。まぁ、その、うん。色々大変でしたよ?」
「ふふふ。自業自得だし、その成果がヘルミナでしょ? 甘んじて受け入れるしかないわね」
「あー、はい。分かってます。ヘルミナと一緒になれたんですからね。その事実以上に大切なことはありませんから」
自業自得うんぬんはともあれ、くすぐったい一言だった。
ヘルミナはひかえめにだが笑みを浮かべることになるのだが、
「……良いわね」
イブリナの呟きだった。
その表情にヘルミナは内心首をかしげる。
少しばかり違和感があったのだ。
ただの称賛の表情には見えなかった。
彼女らしく無いと言うべきか。
羨望と呼べるような表情にヘルミナには思えた。
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