20 / 31
後日談2:友人の恋路
3、小さな違和感
ルクロイは苦笑のままでイブリナに頭を下げる。
「お久しぶりです、イブリナ様。何と言いますか、学院そのままの光景ですね。懐かしいものを感じます」
彼女はルクロイに苦笑を返した。
「本当ね。学院の外でもこんな怒鳴り声を上げるとは思わなかったわ。そして、貴方たちもね。結局、学院と同じ。一緒になった……いや、なれたのね」
そうして、イブリナはヘルミナに笑みを見せてきた。
「おめでとう、ヘルミナ。貴女が幸せそうで嬉しいわ」
その祝福の言葉に、もはや身をすくませている理由は無かった。
ヘルミナもまた笑みを浮かべる。
静かに頭を下げる。
「……はい。ありがとうございます」
「ふふふ、良い表情してるじゃないの。しかし、本当に良かったわね。ちゃんと正解を選べたみたいで」
ヘルミナは「はい?」と首をかしげることになった。
「あ、あの……正解ですか?」
「えぇ、そうよ。だって、あのバカ2人も貴女に恋い焦がれていたでしょ?」
その笑顔での問いかけに、にわかには返事は出来なかった。
(ば、バカ2人ですか?)
心当たりはついた。
イブリナの言うバカ2人となれば、浮かぶ顔は一組しか無い。
ただ、恋い焦がれてと言われると、口にするのに悩むところはかなりあったが、
「え、えー、ギネス様とカシュー様でしょうか?」
「他に誰がいるのよ? あの2人だと、貴女が苦労させられることは目に見えていたものね。けいがんよ。やるじゃない」
褒められて、しかし笑顔を返すことは出来なかった。
「あ、あの、そもそも私が選んだみたいなおこがましい話では……」
「あら、そうなの? 3人から口説かれたんじゃないの?」
「い、いえいえ、そんなまさか!」
「ふーん、だったらよくやったのはルクロイか。学院じゃ2人のなだめ役だったのに抜け駆けしたの。へぇ、貴方こそやるじゃない」
今度もお褒めの言葉だったが、夫もまたヘルミナと似たようなものだった。
ぎこちなく、作ったような笑みを返す。
「は、ははは。抜け駆け。まぁ、その、うん。色々大変でしたよ?」
「ふふふ。自業自得だし、その成果がヘルミナでしょ? 甘んじて受け入れるしかないわね」
「あー、はい。分かってます。ヘルミナと一緒になれたんですからね。その事実以上に大切なことはありませんから」
自業自得うんぬんはともあれ、くすぐったい一言だった。
ヘルミナはひかえめにだが笑みを浮かべることになるのだが、
「……良いわね」
イブリナの呟きだった。
その表情にヘルミナは内心首をかしげる。
少しばかり違和感があったのだ。
ただの称賛の表情には見えなかった。
彼女らしく無いと言うべきか。
羨望と呼べるような表情にヘルミナには思えた。
「お久しぶりです、イブリナ様。何と言いますか、学院そのままの光景ですね。懐かしいものを感じます」
彼女はルクロイに苦笑を返した。
「本当ね。学院の外でもこんな怒鳴り声を上げるとは思わなかったわ。そして、貴方たちもね。結局、学院と同じ。一緒になった……いや、なれたのね」
そうして、イブリナはヘルミナに笑みを見せてきた。
「おめでとう、ヘルミナ。貴女が幸せそうで嬉しいわ」
その祝福の言葉に、もはや身をすくませている理由は無かった。
ヘルミナもまた笑みを浮かべる。
静かに頭を下げる。
「……はい。ありがとうございます」
「ふふふ、良い表情してるじゃないの。しかし、本当に良かったわね。ちゃんと正解を選べたみたいで」
ヘルミナは「はい?」と首をかしげることになった。
「あ、あの……正解ですか?」
「えぇ、そうよ。だって、あのバカ2人も貴女に恋い焦がれていたでしょ?」
その笑顔での問いかけに、にわかには返事は出来なかった。
(ば、バカ2人ですか?)
心当たりはついた。
イブリナの言うバカ2人となれば、浮かぶ顔は一組しか無い。
ただ、恋い焦がれてと言われると、口にするのに悩むところはかなりあったが、
「え、えー、ギネス様とカシュー様でしょうか?」
「他に誰がいるのよ? あの2人だと、貴女が苦労させられることは目に見えていたものね。けいがんよ。やるじゃない」
褒められて、しかし笑顔を返すことは出来なかった。
「あ、あの、そもそも私が選んだみたいなおこがましい話では……」
「あら、そうなの? 3人から口説かれたんじゃないの?」
「い、いえいえ、そんなまさか!」
「ふーん、だったらよくやったのはルクロイか。学院じゃ2人のなだめ役だったのに抜け駆けしたの。へぇ、貴方こそやるじゃない」
今度もお褒めの言葉だったが、夫もまたヘルミナと似たようなものだった。
ぎこちなく、作ったような笑みを返す。
「は、ははは。抜け駆け。まぁ、その、うん。色々大変でしたよ?」
「ふふふ。自業自得だし、その成果がヘルミナでしょ? 甘んじて受け入れるしかないわね」
「あー、はい。分かってます。ヘルミナと一緒になれたんですからね。その事実以上に大切なことはありませんから」
自業自得うんぬんはともあれ、くすぐったい一言だった。
ヘルミナはひかえめにだが笑みを浮かべることになるのだが、
「……良いわね」
イブリナの呟きだった。
その表情にヘルミナは内心首をかしげる。
少しばかり違和感があったのだ。
ただの称賛の表情には見えなかった。
彼女らしく無いと言うべきか。
羨望と呼べるような表情にヘルミナには思えた。
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
「通訳など辞書で足りる」と追放された令嬢——三国会談で、婚約者は一言も話せなくなった
歩人
ファンタジー
宮廷通訳官エレノーラは五つの言語を操り、婚約者クラウスの外交を陰で支えてきた。
だがクラウスは言った。「通訳など辞書で足りる。お前は要らない」
追放されたエレノーラは隣国で新たな道を歩み始める。
一方、クラウスは三国会談の場で辞書片手に立ち往生。
誤訳が外交問題に発展し、窮地に陥ったその場に、隣国の通訳官として現れたのは——。
「その言葉は、もう翻訳できません」
結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした
三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。
書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。
ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。
屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』
ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく――
※他サイトにも掲載
※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに対して、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載しております。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
婚約破棄されたので田舎の一軒家でカフェを開くことにしました。楽しく自由にしていたら居心地が良いとS級冒険者達が毎日通い詰めるようになりました
緋月らむね
ファンタジー
私はオルレアン侯爵令嬢のエルティア。十四歳の頃、家の階段を踏み外して頭を打った衝撃で前世を思い出した。
前世での名前は坂島碧衣(さかしまあおい)。祖父母の引退後、祖父母の経営していた大好きなカフェを継ぐつもりでいたのに就職先がブラック企業で過労の挙句、継ぐ前に死んでしまった。そして、自分が息抜きでやっていた乙女ゲーム「星屑のカンパニー」の悪役令嬢、オルレアン侯爵令嬢エルティアに転生してることに気がついた。
エルティアは18歳の舞踏会で婚約破棄を言い渡される。それだけならまだしも、婚約者から悪役令嬢として断罪され、婚約破棄され、父親から家を追い出され、よからぬ輩に襲われて殺される。
前世だってやりたかったことができずに死んでしまったのに、転生してもそんな悲惨な人生を送るなんて、たまったもんじゃない!!それなら私は前世継ごうと思っていた祖父母のやっていたようなカフェを開いて楽しく自由な人生を送りたい。
森が開けた自然豊かな場所で念願のカフェを侍女のシサとともに開いて楽しく自由にカフェをやっていたら、個性豊かなS級冒険者たちが常連として私のカフェにやってくるようになりました!