ユキ・シオン

１人たす１匹は２人

３Ｐ

　独身の中年男が家にいる時間帯でよかった。男は大混乱ながらも救急車を呼んでくれて、意識がないばっちゃんと一緒に病院へ。俺は留守番。


　２日後、男がばっちゃんと一緒に帰ってきた。「ユキは命の恩人じゃあ」と元気な笑顔を浮かべて、俺を抱きしめてくれた。


　でも見たんだ。帰ってくる途中で買ったらしい真新しいカバンに、大量の薬が入っているのを。


　それからばっちゃんは定期的に病院に通院するようになり、隣の男もたまに様子を見に来てくれるようになった。


　ばっちゃんは高齢だ、何かしらの病気を患っていてもおかしくはない。余命宣告があったのかなかったのか、ばっちゃんの家族は姿を見せない。


　男と話をしているのを聞いたんだけどさ、昔色々あって家族との縁を切っているんだとか。２度と顔を合わさない約束をしているんだって言っていた。


　俺に似ているなって思った。俺は自分の意思で離れ離れになったわけじゃねぇけど、１人ぼっちだった。ばっちゃんも、１人ぼっち。


　じゃあ通院費は？もしも悪化して入院することになったら？ばっちゃんの年金だけじゃ足りない。


　俺が。今までまるで本物の我が子のように愛情をこめて育ててくれた恩返しに、俺が助けになりたい。ばっちゃんのためなら俺、何でもするから。


　そう思った翌日だったか。目が覚めると俺、いつものネコ用ベッドを枕に真っ裸で縮こまっていたんだ。


　あれ、ベッドが小さい？起き上がって超ビックリ。体が、人間の男の子だったんだからな。おもわず叫んじまったよ。大絶叫。



　近くで寝ていたばっちゃんも何事かと飛び起きて、初めて見る俺の姿に目がまんまる。