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3.元聖女は冒険者として仕事をします。
第64話(そのころキアーラ王国王都にて)
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そのころキアーラ王国の王宮では、国王が大臣が読み上げる国内状況についての報告に厳しい表情を浮かべていた。
「地方の村に魔物被害が多発しています。農作物・家畜の被害はもちろん、怪我人や――、死者も。騎士団と神官を派遣しておりますが、対処が間に合っておりません」
「――わかった。対応を考えよう」
大臣を下がらせた国王は頭を抱え込んだ。
「魔物被害――、光の女神さまの大神殿を建立した先々代より、キアーラではほとんどそのようなことはなかったのに」
傍らに立つ王太子のエイダンに視線を向ける。
「――やはり、お前があの聖女を追い出したのがいけなかったのではないか?」
エイダンは表情を険しくした。
「聖女? あの子どもは、大司教がどこかから連れてきた素性のわからない、どこの馬の骨とも知らない孤児でしょう。16歳と言っていたが、明らかにそうは見えないし――大司教の私生児ではないのですか? それを『聖女』だなどと、勝手に祀り上げ、あげく勝手に僕の婚約者になどと――。自分たちの操り人形を王妃にして、王家を乗っ取ろうとしたってそうはいかないっ!」
彼は言葉を荒げた。
「いけないのは、教会です、父上。魔物が湧くのは教会の祈りが足りないからです。多額の歳費を使っているというのにあいつらは、何をやっているのですか? あんな大司教の手駒の――、ハンナに嫌がらせをするような性格の悪いガキをひとり追い出したところで何の影響があると言うんですか!」
「しかし……、現に魔物が……」
「教会のやつらが、遊び呆けているからでしょう! 大体、僕の記憶の限りでは僕が幼いかったころは――神官というのは毎日教会で熱心に祈りを捧げていて――父上に口出しをするようなことはなかったはずだ! なのに、今はどうです。国の金を好きに使ってやりたい放題じゃないですか」
「しかし、現に魔物が――」
「大司教に、教会全体で祈りに全力で取り組むよう命令してください、父上! 国王なのですから!」
エイダンは父親の肩をつかんでゆすると、息を吐いた。
「魔物の対応は兵士の派遣を増やしましょう。僕から命令を出しておきます」
そして彼は玉座の間を出て行った。
残された国王は、王冠を両手でつかんで玉座にうな垂れた。
国王は、何故自分の代に限ってこんなことが起こったのかと、ひたすら自分の不運を嘆いていた。
そこに足音が近づいてきて、彼は顔を上げた。
「ミハイル大司教――」
「エイダン様がいなくなられたので、ようやく玉座の間に入れました」
ミハイルは困ったような笑顔で白髪交じりの髪を下げた。
今までは大臣からの報告を受けるときも、命令を下すときにも国王の横には彼がいたのだが、ここしばらくはエイダンが「玉座の間に大司教が国王と並ぶのはおかしい」と追い出していたのだ。
ミハイルは国王の耳元で囁いた。
「魔物の出現は、エイダン様がレイラを追い出したのが原因ですぞ、国王様」
「――そのレイラという少女は何なのだ? 神殿から少女が1人いなくなっただけで、どうしてこんなことになる。お前たちが祈るのではだめなのか?」
ミハイルは重々しく、国王の耳元に囁いた。
「――あれは、私が光の女神さまの教えを授け、善き存在に変えた魔族です」
「魔族!?」
国王はびくりと身体を震わせ、思わず立ち上がった。
魔族といえば、かつて、他の種族と全面的に争ったという悪しき存在のはず。
「正確には魔族の血が交ざった子どもですね。気味が悪いと親に捨てられた可哀そうな子を私が引き取り育てました」
「お前は、そんな娘をエイダンの婚約者に推薦したのか? お前の言うことだからと聞いてやったのに――」
「いずれ明らかにするつもりではいました。しかし――そのような娘が聖なる力を使っていたと考えると、それこそ奇跡だとは思いませんか? ――魔族でさえも、光の女神さまの教えのもとで聖なる力が使えるようになるのです。私はそれを実現した」
「確かに」と国王はミハイルを驚愕の目で見つめた。
「あの娘は――今は愚かなことに、自分も好きな生活ができると思い込んで外で羽を伸ばしているようですが、やがて神殿以外に居場所はない理解するでしょう。あの可哀そうな存在を受けいれてやれるのは、私たち光の神殿だけです。あの子は役割を与えてやればそれを果たします。あれに形だけでも地位を与え、祈らせれば――、長命ですから、キアーラはずっと安寧でしょう。我々神官が何人も祈りを捧げるより、あれを使った方が、よほど都合が良い」
ミハイルは国王に詰め寄ると、語気を強めた。
「今、困った事態になっているのは、王子がレイラを追い出したからです」
そして、優し気な口調で囁いた。
「父親に口答えするような息子と、ずっとあなたを支えてきた私のどちらを信じますか、国王様」
「地方の村に魔物被害が多発しています。農作物・家畜の被害はもちろん、怪我人や――、死者も。騎士団と神官を派遣しておりますが、対処が間に合っておりません」
「――わかった。対応を考えよう」
大臣を下がらせた国王は頭を抱え込んだ。
「魔物被害――、光の女神さまの大神殿を建立した先々代より、キアーラではほとんどそのようなことはなかったのに」
傍らに立つ王太子のエイダンに視線を向ける。
「――やはり、お前があの聖女を追い出したのがいけなかったのではないか?」
エイダンは表情を険しくした。
「聖女? あの子どもは、大司教がどこかから連れてきた素性のわからない、どこの馬の骨とも知らない孤児でしょう。16歳と言っていたが、明らかにそうは見えないし――大司教の私生児ではないのですか? それを『聖女』だなどと、勝手に祀り上げ、あげく勝手に僕の婚約者になどと――。自分たちの操り人形を王妃にして、王家を乗っ取ろうとしたってそうはいかないっ!」
彼は言葉を荒げた。
「いけないのは、教会です、父上。魔物が湧くのは教会の祈りが足りないからです。多額の歳費を使っているというのにあいつらは、何をやっているのですか? あんな大司教の手駒の――、ハンナに嫌がらせをするような性格の悪いガキをひとり追い出したところで何の影響があると言うんですか!」
「しかし……、現に魔物が……」
「教会のやつらが、遊び呆けているからでしょう! 大体、僕の記憶の限りでは僕が幼いかったころは――神官というのは毎日教会で熱心に祈りを捧げていて――父上に口出しをするようなことはなかったはずだ! なのに、今はどうです。国の金を好きに使ってやりたい放題じゃないですか」
「しかし、現に魔物が――」
「大司教に、教会全体で祈りに全力で取り組むよう命令してください、父上! 国王なのですから!」
エイダンは父親の肩をつかんでゆすると、息を吐いた。
「魔物の対応は兵士の派遣を増やしましょう。僕から命令を出しておきます」
そして彼は玉座の間を出て行った。
残された国王は、王冠を両手でつかんで玉座にうな垂れた。
国王は、何故自分の代に限ってこんなことが起こったのかと、ひたすら自分の不運を嘆いていた。
そこに足音が近づいてきて、彼は顔を上げた。
「ミハイル大司教――」
「エイダン様がいなくなられたので、ようやく玉座の間に入れました」
ミハイルは困ったような笑顔で白髪交じりの髪を下げた。
今までは大臣からの報告を受けるときも、命令を下すときにも国王の横には彼がいたのだが、ここしばらくはエイダンが「玉座の間に大司教が国王と並ぶのはおかしい」と追い出していたのだ。
ミハイルは国王の耳元で囁いた。
「魔物の出現は、エイダン様がレイラを追い出したのが原因ですぞ、国王様」
「――そのレイラという少女は何なのだ? 神殿から少女が1人いなくなっただけで、どうしてこんなことになる。お前たちが祈るのではだめなのか?」
ミハイルは重々しく、国王の耳元に囁いた。
「――あれは、私が光の女神さまの教えを授け、善き存在に変えた魔族です」
「魔族!?」
国王はびくりと身体を震わせ、思わず立ち上がった。
魔族といえば、かつて、他の種族と全面的に争ったという悪しき存在のはず。
「正確には魔族の血が交ざった子どもですね。気味が悪いと親に捨てられた可哀そうな子を私が引き取り育てました」
「お前は、そんな娘をエイダンの婚約者に推薦したのか? お前の言うことだからと聞いてやったのに――」
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ミハイルは国王に詰め寄ると、語気を強めた。
「今、困った事態になっているのは、王子がレイラを追い出したからです」
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