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5.元聖女は自分のことを知る決心をしました。
第139話
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「エルフ――ですか……?」
「ああ。レイヴィスの話だと君のお父さんだと思われる長い耳の男の人――エルフか魔族か、わからないけど――は、海向こうのアスガルドという国のミアラの村の宿屋に、君を置いて「どこかへ行く」と言って出て行ったんだって。それで、その先で、エルフの揉め事があったそうなんだ」
ステファンは、少し言葉を詰まらせて「アスガルドは、僕の実家がある国なんだ」と呟いた。
「アスガルドの辺境の奥にエルフが暮らしてるっていう『悠久の森』がある。エルフの争いごとに人間は関わらない決まりになっているから――、君のお父さんが何に巻き込まれたのか、エルフに聞いたら、もしかしたらわかるかもしれない。10数年前のことなんて、エルフからしたらつい最近のことだろうし」
「じゃあ、その『悠久の森』っていうところに行けば、お父さんのことが何かわかるかもしれないんですね!」
「いや」とステファンは首を振った。
「エルフは『悠久の森』に住んでるって言われてるけど――、彼らは部外者が自分たちの土地に足を踏み入れることを極端に嫌うから、彼らの国がどこにあるのか、一番近くにある国のアスガルドの人間も知らないんだ。探しに行くって言って、帰って来た人はいないって聞く」
「じゃあ、どうすれば……」
「魔法都市ロンバルドの魔術師ギルド本部にエルフがいるらしいよ。サミュエルさん――ノアの事件のときに協力してくれた魔法使い、覚えてるかな。あの人が魔術師ギルド本部に連絡してみてくれるって言っていたから、そのエルフに会えれば――、何か聞けるかもしれない」
サミュエルさん……。
私はマルコフ王国の王都で会った、黒い髪の細長い男の人を思い出した。
サミュエルさんに取り次いでもらって、その魔術師ギルドの本部にいるエルフの人とお話しできれば、お父さんのことがわかるかも……。
希望の光が差して、私は思わずステファンの手を取った。
「本当にありがとう!」
ステファンは、真剣な眼差しで私を見て言った。
「――でも、君が、魔族っぽいっていうのは、魔術師ギルドに伝わってしまったから――、もしかしたら――嫌なこと言われたりするかもしれない。特に、エルフは、魔族のことを目の敵にしてるっていうから」
……そう、なんですか。それは、嫌ですね。私はうーんと黙り込んだ。
そんな私にライガが声をかける。
「まぁ、俺らもついてくし、心配すんな」
ぱっと顔を上げる。
ついてきてくれるんですか!?
そんなおんぶにだっこで良いんでしょうか……。
私は恐る恐る聞く。
「いいんですか? そんな私のことになんかに、付き合ってもらって」
「アスガルド方面は土地勘があるしね。――それに、『なんか』なんて言わないでよ。知らないところで、レイラが今回みたいなことになったりする方が嫌だから、ついてくよ」
ステファンは私と目を合わせて、真剣な表情でそう言った。
「……ありがとう。嬉しいです」
そう言うと、ステファンは私にふとんをかけて、上をぽんぽんっと叩いて笑った。
「良かった。手がかりがあるといいね。――とりあえず、しばらくゆっくり休みなよ。回復魔法は神官に重ねてかけてもらったけど、しばらく安静にしてた方がいい」
***
それから、安静にすること2日――、遅れて魔術師ギルドの人たちが宮殿に到着しました。私の寝ている部屋にばたばたとナターシャさんが駆け込んできて、私はそれを知りました。リルさんとソーニャもいて、二人はお揃いの黒いローブを身に着けていました。ローブには交差した杖の形の紋章が入っている。
私はごくりと唾を飲んだ。それ、……すごく恰好良いですね……。
「レイラ――! 元気そうで良かった――! 到着してみたら、神殿はぶっ壊れてるし、何があったのかと思ったよ――! 急に出て行くし、心配してたよ!」
ナターシャさんは私を抱き上げるとくるくると回した。
……この二日で、大神殿は天井だけじゃなく壁まで崩れちゃいました。
飛んだ瓦礫で隣接する王宮もところどころ壊れてるし、大地震でもあった感じですもんね。
「ナターシャさん……。ご心配おかけしてすいませんでした……」
ちょっと目を回しながらそう呟くと、ナターシャさんは「いいんだよ」と笑った。
「それより、あの胡散臭かった大司教のことがいろいろはっきりして良かったよ。アンタのこともあるし、今後のこともあるし――、一番近い冒険者ギルドの代表者ってことでアタシも来たんだ」
「大司教様……どうなるんですか?」
「やったことがやったことだから――魔術師ギルド本部で裁くことになるでしょうねえ。似たようなことをやる人たちへ、やったらこうなるんだぞって、きちんと示さないといけないから、処罰は重くなると思うわ」
リルさんが口を濁したので、私はそれ以上聞くのを止めて、話題を変えた。
「ソーニャ、その黒いローブ恰好良いね」
そう言うと、ソーニャは「うふふ」と笑って、ばさっとローブを翻した。
「魔術師ギルドのローブよ」
リルさんが杖でソーニャを小突く。
「後で返してもらうわよ。あなたは急に出発することになった数合わせで、まだ研修中なんだからね、ソーニャ」
「わかってますよお」
ソーニャはうう、と口を膨らませた。ソーニャもリルさんには言い返さないんですよね。魔術師ギルドはけっこう上下関係があるんでしょうか……。
そのとき、ドタバタと足音がして、部屋にステファンと、ライガとエイダン様が入って来た。ステファンが手に、瓶のようなものを持っている。
「レイラ、あった」
ステファンがその瓶を私の手に握らせる。
透明なガラスの奥に、両掌くらいの長さの細長い干し肉?みたいなものが2つ入っていた。
「崩れた大神殿の、大司教の執務室を捜索してたら、あった」
「……何ですか、これ」
「たぶん、レイラの耳じゃないかな」
「み、耳……? 私のですか?」
瓶を持ち上げてしげしげと眺めていたら、ステファンが私の手を取って笑顔で言った。
「たぶん、形的に。――良かったね、くっつくよ!」
くっつくんですか……? これ?
「ああ。レイヴィスの話だと君のお父さんだと思われる長い耳の男の人――エルフか魔族か、わからないけど――は、海向こうのアスガルドという国のミアラの村の宿屋に、君を置いて「どこかへ行く」と言って出て行ったんだって。それで、その先で、エルフの揉め事があったそうなんだ」
ステファンは、少し言葉を詰まらせて「アスガルドは、僕の実家がある国なんだ」と呟いた。
「アスガルドの辺境の奥にエルフが暮らしてるっていう『悠久の森』がある。エルフの争いごとに人間は関わらない決まりになっているから――、君のお父さんが何に巻き込まれたのか、エルフに聞いたら、もしかしたらわかるかもしれない。10数年前のことなんて、エルフからしたらつい最近のことだろうし」
「じゃあ、その『悠久の森』っていうところに行けば、お父さんのことが何かわかるかもしれないんですね!」
「いや」とステファンは首を振った。
「エルフは『悠久の森』に住んでるって言われてるけど――、彼らは部外者が自分たちの土地に足を踏み入れることを極端に嫌うから、彼らの国がどこにあるのか、一番近くにある国のアスガルドの人間も知らないんだ。探しに行くって言って、帰って来た人はいないって聞く」
「じゃあ、どうすれば……」
「魔法都市ロンバルドの魔術師ギルド本部にエルフがいるらしいよ。サミュエルさん――ノアの事件のときに協力してくれた魔法使い、覚えてるかな。あの人が魔術師ギルド本部に連絡してみてくれるって言っていたから、そのエルフに会えれば――、何か聞けるかもしれない」
サミュエルさん……。
私はマルコフ王国の王都で会った、黒い髪の細長い男の人を思い出した。
サミュエルさんに取り次いでもらって、その魔術師ギルドの本部にいるエルフの人とお話しできれば、お父さんのことがわかるかも……。
希望の光が差して、私は思わずステファンの手を取った。
「本当にありがとう!」
ステファンは、真剣な眼差しで私を見て言った。
「――でも、君が、魔族っぽいっていうのは、魔術師ギルドに伝わってしまったから――、もしかしたら――嫌なこと言われたりするかもしれない。特に、エルフは、魔族のことを目の敵にしてるっていうから」
……そう、なんですか。それは、嫌ですね。私はうーんと黙り込んだ。
そんな私にライガが声をかける。
「まぁ、俺らもついてくし、心配すんな」
ぱっと顔を上げる。
ついてきてくれるんですか!?
そんなおんぶにだっこで良いんでしょうか……。
私は恐る恐る聞く。
「いいんですか? そんな私のことになんかに、付き合ってもらって」
「アスガルド方面は土地勘があるしね。――それに、『なんか』なんて言わないでよ。知らないところで、レイラが今回みたいなことになったりする方が嫌だから、ついてくよ」
ステファンは私と目を合わせて、真剣な表情でそう言った。
「……ありがとう。嬉しいです」
そう言うと、ステファンは私にふとんをかけて、上をぽんぽんっと叩いて笑った。
「良かった。手がかりがあるといいね。――とりあえず、しばらくゆっくり休みなよ。回復魔法は神官に重ねてかけてもらったけど、しばらく安静にしてた方がいい」
***
それから、安静にすること2日――、遅れて魔術師ギルドの人たちが宮殿に到着しました。私の寝ている部屋にばたばたとナターシャさんが駆け込んできて、私はそれを知りました。リルさんとソーニャもいて、二人はお揃いの黒いローブを身に着けていました。ローブには交差した杖の形の紋章が入っている。
私はごくりと唾を飲んだ。それ、……すごく恰好良いですね……。
「レイラ――! 元気そうで良かった――! 到着してみたら、神殿はぶっ壊れてるし、何があったのかと思ったよ――! 急に出て行くし、心配してたよ!」
ナターシャさんは私を抱き上げるとくるくると回した。
……この二日で、大神殿は天井だけじゃなく壁まで崩れちゃいました。
飛んだ瓦礫で隣接する王宮もところどころ壊れてるし、大地震でもあった感じですもんね。
「ナターシャさん……。ご心配おかけしてすいませんでした……」
ちょっと目を回しながらそう呟くと、ナターシャさんは「いいんだよ」と笑った。
「それより、あの胡散臭かった大司教のことがいろいろはっきりして良かったよ。アンタのこともあるし、今後のこともあるし――、一番近い冒険者ギルドの代表者ってことでアタシも来たんだ」
「大司教様……どうなるんですか?」
「やったことがやったことだから――魔術師ギルド本部で裁くことになるでしょうねえ。似たようなことをやる人たちへ、やったらこうなるんだぞって、きちんと示さないといけないから、処罰は重くなると思うわ」
リルさんが口を濁したので、私はそれ以上聞くのを止めて、話題を変えた。
「ソーニャ、その黒いローブ恰好良いね」
そう言うと、ソーニャは「うふふ」と笑って、ばさっとローブを翻した。
「魔術師ギルドのローブよ」
リルさんが杖でソーニャを小突く。
「後で返してもらうわよ。あなたは急に出発することになった数合わせで、まだ研修中なんだからね、ソーニャ」
「わかってますよお」
ソーニャはうう、と口を膨らませた。ソーニャもリルさんには言い返さないんですよね。魔術師ギルドはけっこう上下関係があるんでしょうか……。
そのとき、ドタバタと足音がして、部屋にステファンと、ライガとエイダン様が入って来た。ステファンが手に、瓶のようなものを持っている。
「レイラ、あった」
ステファンがその瓶を私の手に握らせる。
透明なガラスの奥に、両掌くらいの長さの細長い干し肉?みたいなものが2つ入っていた。
「崩れた大神殿の、大司教の執務室を捜索してたら、あった」
「……何ですか、これ」
「たぶん、レイラの耳じゃないかな」
「み、耳……? 私のですか?」
瓶を持ち上げてしげしげと眺めていたら、ステファンが私の手を取って笑顔で言った。
「たぶん、形的に。――良かったね、くっつくよ!」
くっつくんですか……? これ?
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